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更新日:2014年9月25日
平成26年度9月補正予算案の概要
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、県民の皆様の負託を受けて2期目の県政を担当するに当たっての所信の一端を申し述べます。
はじめに、本年7月の台風第8号に伴う大雨により、各地で大きな被害が生じました。特に、南木曽町の被害は、猛烈な降雨により大規模な土石流災害が発生し、尊い人命が失われ、多くの住宅が全壊するなど極めて大きなものでした。お亡くなりになられた方と御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復興に向け、被災された方々への支援や被害箇所の復旧に取り組んでまいります。
【2期目のスタートに当たって】
2期目のスタートに当たり、知事としてこの議場に立ち、改めて身の引き締まる思いです。長野県の現在及び未来に対する大きな責任を自覚し、初心を決して忘れることなく、県民の皆様のしあわせと長野県の発展のため、県政に全力を尽くす決意です。議員各位をはじめ、県民の皆様の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。
政策面では、昨年、県政運営の基本として策定した「しあわせ信州創造プラン」の着実な実現を目指します。また、行政経営理念を含む「長野県行政・財政改革方針」に基づく取組を進め、引き続き行政サービスの質の向上に努めていきます。この4年間、私が常に心掛けてきたこと、すなわち、県民の皆様とのお約束を守ること、長野県の特色や強みを最大限生かすこと、見過ごされがちな課題にもしっかりと目を向け光を当てていくこと、この3点については、今後ともその姿勢を堅持します。
知事1期目においては、政策推進の方向性を決定することが多く、丁寧に県政の舵(かじ)を切ってまいりました。「しあわせ信州創造プラン」で県政の基本的な方向が定まったこれからは、政策を具体化し、成果を上げていく4年間にしていかなければなりません。そのためにも、幅広い県民の力の結集と、スピード感ある県政運営に一層努めてまいります。
様々な施策の具体化には、広く県民の皆様と問題意識を共有し、共に考え、行動することが重要です。これまで以上に県民の皆様とのコミュニケーションを重視して県政運営を行います。キーワードは「共感」と「対話」です。私をはじめ、県で働く職員それぞれが、自らの職務に対する強い思いを持ち、県民の皆様との間で一方通行ではない、双方向の「共感と対話」を基本として、今後、県政を進めてまいります。
9月1日、新たな任期の開始に当たり、私が基本政策集に掲げた施策のうち、早急に取り組むものを「スタートダッシュ・アクション7」として取りまとめ、発表いたしました。そのうち、「人口定着・確かな暮らし実現会議」の設置や「2015信州発信事業」につきましては、早速、今回の補正予算案に計上したところです。今後とも有言実行でスピーディーに県政を進めてまいります。
【地方創生のフロントランナーへ】
現在の日本は、人口の急速かつ大規模な減少、地域や産業の活力の低下、非正規雇用の増大等による格差の広がりなど、数多(あまた)の危機に直面しています。そして私たち長野県もその例外ではありません。
私たちは、こうした状況にひるむことなく、勇気を持って真正面から向き合っていかなければなりません。そして、これまでの延長線上ではない新しい視点で積極的な挑戦を行うことにより、今日の危機を、むしろ長野県の更なる発展への大きな契機にしていかなければなりません。
今回の知事選挙で県内77市町村をくまなく回る中で、改めて優れた環境や景観など長野県の強みに接し、また、意欲溢(あふ)れる多くの県民の皆様と触れ合うことができました。長野県の潜在力や発展可能性の大きさを改めて深く認識したところです。長野県の未来のためには、こうした潜在力や発展可能性を十分に引き出すことが必要であり、そのためには次の三つの視点に立った政策推進が重要だと考えます。
まずは、「東京スタンダードからの脱却」です。我が国は、政治、経済、メディアなど多くの機能が東京に一極集中しており、これまで多くの事柄が東京や大都市の視点で論じられ、評価されてきました。このことは、地域の多様性を過少に評価し、画一的な「豊かさ」を押し付けることにもなりかねません。むしろこれからは地域が持つそれぞれの個性を尊重し、地域間の差異を価値として捉える発想こそが大切だと考えます。多彩な地域が相互に補完し、協力し合うことが、長野県を元気にし、ひいては日本の活力につながるのです。「長野県らしさ」にこだわって政策を進めてまいります。
次に、「知識社会における優位性の向上」です。世界的に著名な経営学者、ピーター・ドラッカーは、ポスト資本主義社会の基本的な経済資源は、資本でも天然資源でも労働でもなく「知識」だと述べています。これからの社会では、様々な知恵や知識を持った人たちが暮らし、活動していること自体が地域の競争力の源泉になると考えます。そのため、教育や医療の充実、まちの賑わいづくりなど、暮らしの質の改善を図り、多くの人々を惹(ひ)き付けることにより、地域の優位性を高めていくことが重要です。
そして、最後に「持続可能性の追求」です。世界的には人口が増加し続け、益々多くの資源が消費されるようになる中で、様々な分野で持続可能性を意識した取組を進めることが、長野県のみならず、全地球的にも求められています。まず、私たちの生存に不可欠な水や食料、エネルギーを確実に確保していかなければなりません。また、地球温暖化の防止、森林の保全、資源の循環利用などにより、次世代に優れた環境を引き継いでいかなければなりません。このため、地域にある資源を最大限有効に活用し、環境と調和した持続可能な地域づくりを、私たちのライフスタイル自体の見直しも含めて、追求していくことが重要です。
ときあたかも、地方創生が日本全体の大きな政策テーマとなりました。私は、独自の伝統や文化を持ち、美しく豊かな自然環境に恵まれ、東京をはじめとする大都市圏とも近接し、地域の絆や自治意識が強固で「県民力」が強い長野県こそが、地方創生のフロントランナーにならなければならないと考えています。
安心して働ける長野県、希望する結婚や子育てができる長野県、人を惹(ひ)き付ける魅力ある長野県を目指し、大胆に政策を進めてまいります。
【政策推進の方向性】
今回の知事選挙では、「しあわせ信州創造プラン」で目指す長野県の将来像の実現に向け、「人材教育県づくり」、「生きがい健康県づくり」、「環境・経済県づくり」、「人口定着県づくり」、「グローバル・観光県づくり」の五つの観点で、60項目にわたる施策の推進を県民の皆様にお約束いたしました。
今後、これらの施策を織り込みつつ、「確かな暮らしが営まれる美しい信州」を創造するため、政策推進に尽力してまいります。
以下、「五つの県づくり」に則して、政策推進の方向性を申し上げます。
第一に「人材教育県づくり」です。
「どんなに方法や制度のことを論じようとも、それを動かす人がいなければ駄目である。」維新の三傑とも称される西郷隆盛の言葉です。これまでの4年間、知事として様々な分野の未来を考えてきた私の実感でもあります。県民一人ひとりのしあわせと長野県の更なる発展の基礎として、誰もがその個性や能力を最大限伸ばすことができ、活き活きと活躍できる人材教育県づくりを進めます。
教育再生につきましては、これまで、中学校までの30人規模学級の拡大、「信州型コミュニティスクール」の実施、不登校や発達障がいの児童生徒への教育支援の充実などを進めてまいりました。今後、教育や人づくりに、これまで以上に力を注ぎ、自他共に認める「教育県長野」の復活を目指し、教育委員会とも十分に連携して施策を進めてまいります。そのため、まずは法律の施行を待つことなく、「総合教育会議」を年内にも立ち上げ、本県の教育課題や目指す姿を教育委員会と共有してまいります。
子どもたちが、長野県の風土を理解し、地域の活動に参加する「信州学」の導入や、情報活用能力を高める「ICT教育」、国際的なコミュニケーション能力を高める実践的な「外国語教育」など、「21世紀型教育」を積極的に推進します。「信州型コミュニティスクール」については、シニア世代をはじめ多くの県民の皆様に御協力をいただく中で、平成29年度までに全ての小・中学校での実施を目指します。「いじめ防止条例(仮称)」につきましては、年度内の制定に向け検討を進めます。特別支援学校における教員の増員や発達支援が必要な子どもの早期発見により、全ての子どもが能力を最大限発揮できる環境づくりに努めます。
「県立4年制大学」につきましては、平成30年度の設立に向け、若者たちが夢をかなえることができる大学となるよう準備作業を加速化します。県内の大学・短期大学とは、今後、更に連携を強め、「長野県産学官協働人財育成円卓会議」の検討結果の具体化などにより、高等教育全体を振興してまいります。
本県産業を支える人材の育成・確保も急務です。持続的な地域産業の発展を確保するため、これまでも、農業大学校の機能強化や、観光や林業の分野における人材育成塾の開催などに取り組んでまいりました。今後、こうした取組に加え、平成28年4月開校予定の「南信工科短期大学校」の整備を着実に進めます。また、経営者の高齢化や後継者の不在が大きな課題となる中で、中小企業や農林業等における円滑な事業承継や後継者育成を図ります。
第二に「生きがい健康県づくり」です。
世界に誇る本県の長寿は、永年にわたる様々な関係者の努力と県民の皆様の取組の成果です。この成果の上に、県民一人ひとりが生きがいを持ち、健康で自分らしい生涯を安心して送ることができる県づくりを目指して取り組みます。
この4年間、公約でもあった2機目のドクターヘリの導入や地域医療の再生により、医療体制の充実に取り組んでまいりました。特に、地域医療の再生については、総事業費約850億円規模で、救急医療やがんの高度専門医療体制の整備、医師など医療従事者の確保・養成などを行ってきたところです。
今後、運動習慣の定着、定期的な健診の受診、食生活の改善を通じて健康づくりに取り組む「信州ACE(エース)プロジェクト」について、幅広い関係者をネットワーク化し、県民総ぐるみで展開してまいります。また、医療・介護サービスの提供体制改革のための基金を活用して在宅医療の推進などに取り組み、「地域包括ケア体制」の構築を目指します。「人生二毛作社会」の実現に向けては、シニア世代の方々の就業や社会参加を促進するための具体的な仕組みづくりを進めます。
障がい者の社会参加と雇用の促進につきましては、就労継続支援施設の設置支援や「ぷれジョブ」の普及に加え、手話の普及に向けた「手話言語条例(仮称)」の制定を検討します。また、生活困窮者の就労や生活面での自立を促進するため、パーソナル・サポート事業の更なる拡大・強化を図ります。
子どもの貧困対策につきましては、これまで、ひとり親家庭に対する生活相談や、経済的な理由から進学が困難な高校生を支援するための全国初となる給付型奨学金の創設など、生活や教育への支援を実施してまいりました。今後、子どもの貧困対策に係る計画の策定などにより、取組の更なる強化を図ります。また、児童養護施設の入所児童の自立支援、里親やファミリーホームなど家庭的養護の充実に取り組み、全ての子どもが生まれ育った環境に左右されずに成長できる社会の実現を目指します。
第三に「環境・経済県づくり」です。
誰もが未来への希望を持って暮らすことができるよう、経済発展と環境との調和がとれた持続可能な県づくりを進めます。
これまで、「長野県産業イノベーション推進本部」を中心として、健康・医療、環境・エネルギー、航空・宇宙といった成長期待分野への展開支援や、様々な規制改革など、経済構造を転換するための具体的な取組を進めてまいりました。引き続き、成長期待分野への中小企業の参入や、新規の創業を促進することにより、本県産業力の強化を図ってまいります。また、本年3月に制定した中小企業振興条例に基づき、県内中小企業の受注機会の拡大に努めるとともに、県民の皆様に県産品を積極的に選択していただくための県民運動を具体化してまいります。
農山村の暮らしを支える農林業の振興につきましては、青年就農給付金などによる就農支援に加え、農林業の6次産業化や、長野県オリジナル品種等の生産拡大・ブランド化、効率的な栽培方法の導入などを進め、農家所得の向上を目指して全力で取り組みます。また、県内林業活性化の起爆剤としての「信州F・POWERプロジェクト」を推進するとともに、林業先進国であるオーストリアとの連携を更に深め、収益性の高い林業を確立します。さらに、木材加工製品等の普及促進や、森林セラピーなど、森林を活用した地域活性化の取組を支援し、「木と森の文化」を積極的に創造します。
自然エネルギーの普及・拡大につきましては、これまで、「1村1自然エネルギープロジェクト」や「長野県自然エネルギー地域基金」の創設などにより、地域主導型の自然エネルギー事業等を支援してまいりました。平成24年7月に固定価格買取制度が導入されて以来の自然エネルギー設備導入容量の増加率は2倍を超え、いわゆる「エネルギー自給率」は、平成25年度で69.8パーセントと平成29年度目標である70パーセントの達成目前です。太陽光や小水力、木質バイオマスなどの自然エネルギーは、長野県の特性に合致し、地域の自立にも重要な役割を果たすことから、更なる取組の強化を図り、エネルギー自給率目標も上方修正します。
第四に「人口定着県づくり」です。
暮らしの拠点としての商店街や集落等に活力があり、若い世代も元気な、人が集う県づくりを進めます。
長野県では、日本創成会議の提言が出される以前から、人口減少を大きな危機と捉え、結婚や子育てに対する支援、女性の雇用と社会参画の促進、移住・交流施策の推進に積極的に取り組んでいます。
この間、「婚活サポーター」の設置や「出会い応援ポータルサイト」の構築、病児・病後児保育など地域のニーズに応じた保育サービスへの支援等により、結婚、子育てをしやすい環境づくりに着手してまいりました。今後、人口減少の加速化が見込まれる中で、地域社会を維持し、活性化するためには、更に踏み込んだ少子化対策が必要です。そのため、子育て支援につきましては、現在、「子育てと仕事の両立」、「子育てに伴う経済的負担の軽減」、「子育ての孤立化の防止」の3点をテーマとして、市町村と共同で設置したワーキンググループにおいて、具体的な支援策の検討を進めています。この検討結果を踏まえ、年内には総合的な「子育て支援戦略」を策定し、早急に具体化してまいります。また、安心して子どもを出産し、育むことができるよう、妊娠から子育てまでを一貫して支援する「長野県総合母子保健センター(仮称)」の設置を検討します。
移住・交流につきましては、これまで、三大都市圏における「移住・交流センター」の設置や「信州田舎暮らしセミナー」の開催、「国際青少年交流農村宣言」に基づく学習旅行など、移住者や交流人口の拡大に取り組んでまいりました。今後、「銀座NAGANO」における移住、就農相談などの実施や、県外大学との協定締結による学生のUターンの促進など、移住したい都道府県ナンバーワンの強みを活かして、人口の社会増を目指した取組を一層強化します。また、スポーツ合宿や国際会議等の誘致により交流人口の更なる拡大を図るとともに、「地域おこし協力隊員」の倍増を目指します。
心の豊かさを実感できる社会を実現するためには、文化芸術の振興が重要です。そのため、「県民文化部」の設置や近藤誠一前文化庁長官の長野県文化振興事業団理事長就任など、文化行政を進める上での体制整備を図ってまいりました。今後は、文化振興事業団への芸術監督の配置や、「文化振興基金(仮称)」の年度内設置などにより、市町村や関係団体とも協力して、「信州ミュージアム・ネットワーク(仮称)」の構築や若手芸術家の育成などの具体的な取組を進めてまいります。
2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックも見据え、スポーツの振興にも力を入れてまいります。世界の舞台での活躍が期待される選手の育成強化や、全国的スポーツ大会の誘致等に積極的に取り組みます。また、武道を振興するための施設のあり方について、引き続き検討を進め、本年度中に方向性を示してまいります。
災害に対する県土の脆弱性(ぜいじゃくせい)を克服し、事前防災及び減災その他迅速な復旧等に資する施策を総合的に実施するため、本県における様々な分野の計画等の指針となる「長野県強靭化計画(仮称)」を、平成27年度中に策定してまいります。
最後に第五として「グローバル・観光県づくり」です。
美しく豊かな自然環境や優れた伝統文化を有する長野県は、県内77市町村全てが観光地であり、感動と癒(いや)しの場であると言っても過言ではないと考えます。こうした強みを活かし、グローバル社会において存在感があり、世界中の人々が訪れたくなる魅力的な県づくりを積極的に推進します。
まず、日本一の山岳環境や美しい農村景観を活かし、世界水準の山岳高原観光地づくりを進めます。これまで、「信州 山の日」を制定し、「山」に親しむ取組や発信を充実したほか、県内3地域を山岳高原観光地づくりの重点支援地域として指定し、受入環境整備や観光マーケティング講座の開催などハード・ソフト両面から支援してまいりました。今後、3地域における先進事例を県内各地へと広めてまいります。また、トレッキングやサイクリングなどによる移動行程自体を楽しむ「NAGANOモビリティ(仮称)」のルートを構築し、長野県から新しい旅のスタイルを発信します。さらに、外国人旅行者の更なる誘客に向け、主要観光地における外国語表記を含む案内標識や、無料公衆無線LANの設置を進め、平成24年に約25万人であった外国人宿泊者数の倍増を目指します。
国内外から選ばれる魅力ある観光地域づくりを進めるため、「信州・観光地域づくりマネジメント塾」による人材の育成や、「ずく出し!知恵だし!おもてなし」プロジェクトを通じたおもてなしの推進に加え、旅行者が快適に利用できる「信州まごころトイレ」の認定など、幅広い県民の参加による観光地域づくりを進めます。
「『信州』の価値向上と発信」については、平成25年度から信州ブランド戦略をスタートさせ、「しあわせ信州」のロゴマークの普及や県民参加型プロモーションの実施などに、市町村や企業の皆様と一緒に取り組んでまいりました。来月26日には首都圏総合活動拠点としての「銀座NAGANO ~しあわせ信州シェアスペース~」を東京銀座にオープンいたします。信州の「ヒト」、「コト」、「モノ」をトータルな形で強力に発信し、多くの皆様から繰り返し選ばれる対象となるようオール信州で取り組んでまいります。
これからの地域づくりや行政運営に当たっては、情報化の推進が重要です。「情報化推進担当部長」を配置し、地域情報化やICTを活用した業務改善など情報化施策の充実強化を図ります。
「本州中央部広域交流圏」構想を推進し、高速交通網を整備することは、長野県発展の基礎づくりです。北陸新幹線(長野経由)の延伸やリニア中央新幹線の整備を地域振興に確実に結びつけるとともに、信州まつもと空港機能強化のための調査検討を行います。また、中部横断自動車道、三遠南信自動車道、中部縦貫自動車道、松本糸魚川連絡道路、木曽川右岸道路などの基幹的道路の整備を促進し、道路ネットワークの強化を図ります。
本県の持つ強みや価値を世界に対してアピールし、観光誘客や経済の活性化につなげるため、2016年に我が国で開催予定の主要国首脳会議(サミット)の誘致活動を展開します。昨日立ち上げた「誘致推進協議会」を中心に、関係者が一丸となり機運の醸成や国への働き掛けなどの活動に積極的に取り組んでまいります。
【経済情勢等への対応】
我が国の経済情勢は、個人消費など一部に弱さが見られるものの、緩やかな回復基調が続いています。県内経済につきましては、国内外での需要が堅調であることから、生産も緩やかに回復しているとの判断がなされています。しかしながら、他方で、消費税率引上げに伴い、本年4月から6月期の国内総生産(GDP)は、2四半期ぶりのマイナス成長となっています。加えて、この夏の台風災害や天候不順などにより、観光客の減少など県内産業への影響が生じています。
今回の補正予算案では、このような状況を踏まえ、観光、物産の振興等、必要な対策を講じることとしています。
【人口減少社会への対応】
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、本県の人口は、今後30年間で48万人減少し、2040年には166万8千人になるものと見込まれています。こうした中、県民の皆様の暮らしを守り、地域や経済の活力を維持・向上させていくことが急務です。このため、今月19日、経済団体、労働者団体、行政等で構成する「人口定着・確かな暮らし実現会議」を立ち上げました。会議では、人口減少の抑制と人口減少を踏まえた地域社会の維持・活性化の取組を全県挙げて推進していくことを確認しました。今後、将来人口の見通しを定める「人口ビジョン」の取りまとめや、将来の長野県の姿を見据えた「人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」の策定を進めてまいります。
政府においては、新たに地方創生担当大臣を創設するとともに、内閣総理大臣を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、人口減少を克服し、地方が成長する活力を取り戻すべく各種施策の検討に着手しました。
今後、地方への人口定着を促進するための様々な施策、例えば、総合的な子育て支援策の拡充などについて、具体的な提言を国に対して積極的に行ってまいります。将来予測の数値を単に悲観的に捉えるのではなく、この危機を長野県にとっての大きな転機とすべく、政策を総動員して取り組んでまいります。
【県立4年制大学】
新たな県立4年制大学につきましては、新大学の理事長及び学長の予定者を去る7月17日に公表いたしました。理事長予定者はソニー生命保険株式会社名誉会長の安藤国威氏、学長予定者は慶應義塾大学名誉教授の金田一真澄氏であります。御二方は、豊かな経験や高い見識、そして幅広い人脈をお持ちであり、新大学の設立に向けた諸準備や、開学後の法人、大学の運営に責任を持って当たっていただくこととしています。
今月17日には、この御二方を中心に、新たに「県立大学設立委員会」を立ち上げ、教育課程編成方針、教員選考基本方針等、新大学の設立に向けた具体的な検討をスタートさせたところです。今後、学部長など大学運営の中核となる教員の選考を進めるとともに、全学での海外プログラムの実施や4学期制の導入など、詳細に教育内容を作り込んでまいります。
【子どもを性被害から守る取組】
子どもを性被害から守る取組につきましては、「子どもを性被害等から守る専門委員会」の報告と、県青少年育成県民会議の報告を踏まえて、慎重な検討を行い、「子どもを性被害から守るための県の取組み(案)」として取りまとめ、本日公表いたします。
本県の青少年健全育成の取組は、これまで、他の都道府県のような包括的な規制を行ういわゆる青少年保護育成条例に拠らず、地域ぐるみの県民運動として取り組み、有害図書類の自動販売機の撤去など大きな成果を上げてきました。私は、本県の青少年健全育成は、今後とも県民運動を基盤として取り組むことが望ましいと考えており、包括的、網羅的な青少年保護育成条例を制定する考えはありません。
しかし、性被害によって、子どもたちが悩み苦しみ、精神的に大きな傷を負っているという現実を私たちは重く受け止め、具体的な行動に移す必要があります。看過できない子どもの性被害の現状の中で、性被害を未然に防止するための教育や、被害に遭ってしまった子どもを救済するための被害者支援、そして県民運動の再活性化については、早急に取り組んでまいります。
一方で、子どもを性被害から守る限定的な条例の制定については、専門委員会からは「現状の対策の延長では子どもを性被害から守りきれない」、県民会議からは「新たな県民運動と条例との両輪が必要」と、条例の必要性の提言をいただいています。
しかしながら、条例でいわゆる淫行禁止規定を設けることについては、構成要件をどこまで明確化できるか、自由な恋愛まで規制するおそれはないかなどの論点があり、条例化という一歩踏み込んだ取組を行うには、県民の皆様の幅広い合意形成が必要だと考えます。現時点では、必ずしも県民的な議論が十分尽くされたとは言えません。県民的な議論を深めるためには、子どもたちの性被害の実態や性の現状を更に把握し、法的な観点から、専門家による十分かつ慎重な検討を行った上で、具体的な判断材料を県民の皆様に提供する必要があると考えます。その上で、県民の皆様の御意見を伺い、最終的にその是非を判断したいと考えております。
【リニア中央新幹線】
先月26日、JR東海は、リニア中央新幹線に係る「環境影響評価書」を国土交通大臣に提出し、併せて、工事実施計画の認可申請を行いました。今後、リニア中央新幹線建設の動きが本格化します。県としては、環境等に関する地域の懸念に十分留意するとともに、リニア中央新幹線が伊那谷に、そして長野県全体にも大きな経済効果をもたらすものとなるよう取り組んでまいります。
今後とも、JR東海に対して、事業実施に当たっての十分な環境への配慮や、地域との丁寧な合意形成を求めてまいります。また、リニア新幹線駅へのアクセス確保に必要な道路整備箇所等を早急に取りまとめるなど、リニア中央新幹線を地域の振興、発展に最大限役立てるための取組を関係市町村とともに進めてまいります。
【新幹線長野・金沢間の開業】
新幹線長野・金沢間の開業が来年3月14日と決まりました。東京・長野間の運転本数は現行の27往復から40往復へと大幅に増加し、長野駅には全列車が停車します。また、新設される飯山駅には12往復24本が停車することとなりました。長野駅を除く県内既存駅については、今後の具体的なダイヤ編成の中で停車本数が決定されることから、現行以上の停車本数の確保を引き続きJRに働き掛けてまいります。また、新幹線開業と同時にJRから経営が分離される予定の信越本線長野・妙高高原間については、新しい「北しなの線」として、大勢の皆様に信頼され利用される鉄道となるよう、しなの鉄道と連携して取り組んでまいります。
今回の新幹線金沢延伸を長野県の発展につなげていかなければなりません。観光誘客については、これまで、「全国旅行商品販売促進会議」を開催し、全国の旅行会社に対して観光周遊ルートの提案などを行ってまいりました。こうした取組に加え、今回の補正予算案では、首都圏や北陸における観光PRに係る経費を計上し、金沢延伸や善光寺御開帳も見据えて、重点的かつ集中的に観光プロモーションを実施してまいります。今後とも市町村や経済団体とも連携し、観光誘客や北陸地方との経済交流の拡大に努めてまいります。
【信州まつもと空港の活性化】
信州まつもと空港につきましては、これまで、FDAが就航している福岡線や札幌線の認知度向上と利用促進に、市町村や経済団体等と連携しながら取り組んでまいりました。平成25年度の定期便利用率は、ジェット化開港以来最高の75.4パーセントとなり、本年度も好調に推移しています。また、本年8月、JALにより1か月の季節運航便として復活した大阪線につきましても、90.1パーセントと高い利用率を確保しました。
信州まつもと空港が、長野県の交通体系の中で、より大きな役割を果たしていくためには、既存路線の複便化、大阪線の通年運航、国際線も含めた新規路線の開設など、空港の更なる利便性の向上が必要です。このため、今回の補正予算案では、就航路線の拡充に向けた可能性を探るため、旅客需要の調査などに要する経費を計上いたしました。今後、この調査結果等を踏まえ、路線拡充や空港機能強化に関する基本方針を策定してまいります。
【土砂災害等への対応】
南木曽町で発生した土砂災害への対応について申し上げます。7月9日の災害発生後、県では、速やかに災害対策本部を設置し、南木曽町に災害救助法を適用しました。人命救助を最優先に災害対応に当たり、住民の皆様の安全確保と被災された方々の生活支援に関係機関と連携して取り組んだところです。また、観光客の減少などによる観光産業への影響を極力回避すべく、名古屋市において重点的に観光PRを実施するなど、誘客促進にも力を入れてまいりました。大きな被害を受けた南木曽町の施設を中心に、今回の台風第8号等による災害で被災した道路や河川、砂防施設などの復旧工事と、災害復旧事業の対象とならない補修や調査・設計に要する経費を今回の補正予算案に計上いたしました。速やかな復旧と今後の災害の防止に努めてまいります。
今回の土砂災害及び8月に広島市で発生した土砂災害を教訓として、ハード・ソフトの両面で土砂災害対策を強化します。土砂災害警戒区域の指定については、基礎調査を追加実施し、指定作業の計画を1年前倒しして、平成28年度中に完了させます。また、河川の増水に伴う避難勧告等の発令の目安となる氾濫危険水位等について、本年度中に改定を行います。さらに、先般、土砂災害警戒情報の適切な利用について市町村担当者に対し説明会を開催いたしました。あわせて、私から市町村長の皆様に対して、災害発生の危険性が高まった際の的確な避難勧告の発令等に当たり、情報収集や情報伝達方法などに留意して万全な対応を行っていただくようお願いしたところです。
【県財政の状況】
県財政の状況について申し上げます。平成25年度決算に基づく実質公債費比率は14.2パーセント、将来負担比率は185.0パーセントと、財政改革により、前年度に比べ着実に改善し、この4年間では、それぞれ1.4パーセント、35.8パーセント改善いたしました。しかしながら、社会保障関係経費の増加などにより財政構造の硬直化が進むなど、県財政は依然として厳しい状況であると認識しており、引き続き「長野県行政・財政改革方針」に基づき歳入確保、歳出削減の取組を徹底してまいります。あわせて、臨時財政対策債の廃止や地方交付税の法定率の引上げを含め、抜本的な地方財政制度の改革を国に求めてまいります。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を申し上げます。
補正予算案は、一般会計68億4,376万9千円、特別会計5億642万7千円、企業特別会計8,517万5千円であります。
一般会計補正予算案には、県民生活の安全・安心の確保、長野県の発信と地域活性化、人づくりと子ども支援などに要する経費を計上いたしました。
県民生活の安全・安心の確保といたしましては、先ほど申し上げた土砂災害等への対応に加え、災害時に備えた緊急輸送道路の整備や河川改修など地域防災力の向上につながる事業を重点的に実施します。また、大雪時の交通障害を防ぐため、交差点等に交通情報カメラなどを設置するほか、老朽化した衛星系防災行政無線設備を更新します。さらに、本年5月以降に県下各地で発生した降ひょう等による農作物被害に対し、病害虫防除のための農薬購入等に要する経費を市町村と協調して支援します。
長野県の発信と地域活性化といたしましては、「2015信州発信事業」として、首都圏や北陸における観光PRや海外における雑誌広告等を活用した情報発信など、観光誘客の拡大につながる取組を今年度後半から来年度にかけて、切れ目なく展開してまいります。また、「銀座NAGANO」の開設にあわせ、「おいしい信州ふーど(風土)」の商談会を開催するなど、県産品等の販路拡大と認知度の向上に努めます。さらに、松本平広域公園陸上競技場の大型電光掲示盤の改修を行うほか、全国的スポーツ大会の誘致やプロスポーツの振興等を図るため、松本平広域公園内の運動施設等の機能向上について調査、検討します。
人づくりと子ども支援といたしましては、高等教育の振興に向けた「高等教育参与」の設置や平成27年4月開設予定の「子ども支援センター(仮称)」の開設準備などを進めます。
このほか、グリーンニューディール基金の積立てに要する経費などを計上いたしました。
以上申し上げました一般会計補正予算案の財源として、県債17億5,200万円、繰入金15億9,439万9千円、繰越金12億516万3千円、地方交付税など22億9,220万7千円を見込み、計上いたしました。
本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8,668億6,641万9千円になります。
特別会計の補正予算案は、流域下水道事業費など2会計、企業特別会計の補正予算案は、電気事業に係るものであります。
【条例案、事件案、専決処分報告】
次に、条例案は、新設条例案2件、一部改正条例案5件の合わせて7件であります。
このうち、「長野県手数料徴収条例等の一部を改正する条例案」は、薬事法の一部改正に伴い、規制緩和により医療機器等の製造業の許可制度に代えて登録制度が導入されたため、登録に係る手数料を定めるものであります。
また、「民生委員の定数を定める条例案」など4件は、地方分権に関するいわゆる一括法を受けて、本県の特性を踏まえた基準を定めるものであります。
事件案は、「上田リサーチパークの処分について」など16件であります。
専決処分の報告は、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」など8件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。
何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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