「長野県障がい者共生社会づくり条例(仮称)」条例骨格案 検討報告書 (案) 長野県社会福祉審議会 障がい者権利擁護専門分科会 (令和2年3月) 1ページ T はじめに   あるべき社会の姿は、障害者基本法第一条にある「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」です。  共生社会の実現のため、国では障害者基本法の改正をはじめとする国内法を整備(差別禁止規定に合理的配慮の提供を追加)するとともに、「障害者の権利に関する条約」を平成26年1月に批准しました。  また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が平成25年6月に成立し、平成28年4月より施行され、障がいを理由とする差別の解消に向けた施策が実施されました。  長野県においても、障がい者差別解消推進員の配置や、推進員による出前講座による周知・啓発について取り組んできました。  しかしながら、県に寄せられる相談件数は年々増加傾向にあり、障がいのある方の実態調査では、「自分の障がいに対して理解されていない」と感じたり、「障がいがあることで、困ったり嫌な思いをした経験がある」方が半数を占めている状況でした。  また、県内の障がい当事者団体からは、法律施行後も障がい者差別が解消されていないため、県に対して「障がい者差別解消条例」の制定要望も寄せられていました。  このような状況などを受けて、平成31年4月、知事から長野県社会福祉審議会に対して、障がいのある人に対する差別がなく、多様な価値観を認め合い、相互に人格と個性を尊重しあう社会の大切さを県民全体で共有し、一体となって共生社会を目指すための歩みを確かなものとするための条例の骨格について諮問がありました。この諮問を受けて、本審議会では具体的な検討を障がい者権利擁護専門分科会に委ねました。  障がい者権利擁護専門分科会は、学識経験者、障がい当事者、支援団体、福祉関係団体及び教育関係者による10名の委員で構成し、条例の骨格に盛り込むべき内容について検討を重ねてきました。  また、県民からの条例に対する意見を検討報告書に反映させるため、障がい当事者団体の方や事業者等14団体からの意見聴取、県民からの条例に関する意見募集及び意見交換会等の実施を行い、県民参加型の報告書の作成に努めました。  今般、知事に対する答申である「長野県障がい者共生社会づくり条例(仮称)検討報告書」を取りまとめましたので、検討・議論の経過を含めて報告します。 2ページ U 検討経過 1 長野県社会福祉審議会障がい者権利擁護専門分科会の開催 区分 回 月日  検討事項 第1回 6月13日 (1) 県条例に望むこと (2) 障がい者の範囲 (3) 障がい者差別(不当な差別的取扱い)の定義 (4) 合理的配慮の定義 (5) 基本理念として盛り込むべき内容 第2回 7月22日 (1) 障がい者差別の対象範囲 (2) 障がい者差別の付帯条件 (3) 県民・事業者の役割(責務) 第3回 8月30日 (1) 障がい当事者からの意見聴取、意見交換 (2) 共生社会実現のための施策(学校教育・社会教育) (3) 障がい者差別の禁止を担保する仕組み 第4回 9月17日 (1) 県の責務 (2) 市町村の役割、市町村との連携 (3) 共生社会実現のための施策 第5回 10月28日 (1) 共生社会実現のための施策 (2) 条例の目的、前文に盛り込む事項 (3) 主な論点の再整理 第6回 11月21日 検討報告書(案)に基づき議論 第7回 12月24日 (1) 検討報告書(案)前回修正案 (2) 不当な差別的取扱いの判断基準について 第8回 1月16日 検討報告書(案)最終案 2 当事者団体及び事業者団体等からの意見聴取  (14団体・事業者から意見を聴取) 意見聴取団体等 長野県視覚障害者福祉協会、長野県聴覚障害者協会、長野県肢体不自由児者父母の会連合会、ながの盲ろう者りんごの会、長野県身体障害者施設協議会、長野失語症友の会、長野県知的障がい福祉協会、ポプラの会・長野県ピアサポートネットワーク、長野市障害ふくしネットけんり部会、上小圏域障がい者総合支援センター、長野県信鈴会、信州難聴者協会、長野県旅館ホテル組合会、マックスバリュ長野(株)(順不同) 3ページ 3 県政モニターアンケート(令和元年度第1回県政モニターアンケート調査)   障がい者差別や共生社会に関するアンケート調査を実施 (1) 調査対象者 県政モニター 1,256人(回収数:1,006人) (2) 調査方法  郵送又はインターネット (3) 調査期間  令和元年5月24日〜令和元年6月10日 4 政策対話の実施   多様な県民ニーズに対応するため、県が取組む政策の課題や方向性について県民と県職員等が対話を行い、県民意見を今後の政策に活かす「政策対話」において、「共生社会づくり」をテーマに対話を行いました。 (1) 日時  令和元年9月1日(日曜日)13時30分〜16時25分 (2) 場所  県立長野図書館3階 信州・学び創造ラボ (3) テーマ 「共生社会づくりについて」 (4) 参加者 23名 5 県民からの意見募集  7月8日から10月31日まで県のホームページで「障がいの有無にかかわらず誰もが暮らしやすい共生社会づくりに関する意見」を募集し、98件の意見・要望がありました。  また、11月29日から12月27日まで県のホームページ等により「長野県障がい者共生社会づくり条例(仮称)条例骨格案検討報告書(案)」について意見募集を行い、64件の意見が寄せられました。 6 県民との意見交換会  「長野県障がい者共生社会づくり条例(仮称)条例骨格案検討報告書(案)」について、広く県民の意見を聴き報告書に反映させるため、県内2ヵ所において意見交換会を実施しました。 (1) 開催年月日  令和元年12月14日(土曜日)、15日(日曜日) (2) 開催場所 12月14日:松本市松南地区公民館  12月15日:県立長野図書館  (3) 参加者 松本会場:15名 長野会場:28名 7 その他 ・県内4地区障がい福祉団体地域連絡会にて報告・意見交換(11月6日、12日、14日、15日) ・自立支援協議会にて報告・意見交換(11月12日) ・障がい者施策推進協議会にて報告・意見交換(8月7日) ・情報保障・コミュニケーション支援研究会にて報告・意見交換(12月23日) 4ページ V 条例の検討経過及びその内容 前文について 1 議論のポイント   前文には、どのような内容、要素、表現、考え方で記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見   〔分科会での意見〕  ・長野県は、長野パラリンピックを開催し、地域移行を進めてきた県である。地域移行の理念に基づいて「地域で暮らす」及び「地域で学ぶ」ことを保障する部分を最初に記載したら如何か。 ・長野県は観光県として、障がい者への様々な施策を進めていくという視点も重要。 ・障がい者もパワーアップして、様々な要望を皆さんに訴えられることをエンパワーメントしていくことも盛り込んで欲しい。 ・長野県のやっていること、やってきたことをアピールして欲しい。 ・全ての県民は、人として強みや弱みがあるという視点から入って欲しい。人は得意なこと不得意なことは誰にでもあり、その中で特別な配慮が必要な方をある意味障がい者と呼ぶが、それは特別な存在ではない。 ・障がい者が特別な場所で支援を受けるのではなく、社会モデルの考え方に基づき、本来の場所で支援を受けられるべきという考え方を盛り込んで欲しい。 ・長野県では障がい者差別を絶対に許さないという強い意思を記載して欲しい。 ・「障害者権利条約の批准により障がいを理由とした差別が禁止された」こと、「障がい者は生産阻害要因として位置づけられ差別と偏見に満ちた長い歴史があること」を記載して欲しい。 ・「健常者中心の社会福祉の結果、様々な障壁があり、社会的障壁の除去が社会に求められている」こと、「障がい者の生きづらさの原因は、社会の側にあるということの普及が急がれている」ことも盛り込んで欲しい。 ・知的障がい者は、自分の意思が表現できない者が多いが、その人も人権が尊重されてしかるべきで、その中で、長野県が全国に先駆けて地域移行に踏み込み、現在に至っているという素晴らしい実績は是非記載して欲しい。 ・障がい者が特別視されず、当たり前という社会となるような前文となれば良いと思う。 ・「社会モデルの考え方」や「本人の意思決定の尊重」を是非、全面に出していただきたい。 ・「本人の独力では解決できない生きづらさを抱える方」の存在や配慮という趣旨は条例の前文等に入れて欲しい。 5ページ ・精神障がい者の地域移行は様々な問題があるので、「先進的」のような「長野県は進んでいる」と誤認される表現は避けて欲しい。 〔県民からの意見等〕 ・できるならば障がい者・健常者を分けず、県民すべてを対象として欲しい。〔県民〕  3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 委員から出された意見を踏まえ、長野県らしい前文を作成して欲しい。 〇 特に多くの委員から発言があった、 「障がい者が地域で安心して暮らせる仕組みづくりを全国に先駆けて取り組んだ」 「社会モデルの考え方」 「障がい者が特別視されることなく、障がい者がいることが当たり前となる社会」 「様々な理由により生きづらさを持つ人への配慮」 「長野県としては差別を絶対に許さないという強い意思表示」   などの要素を盛り込んだ前文として欲しい。        〇 分科会の全体の議論を通じ 「幼少期からの学びや体験を通じた障がい者理解」 「障がいが特別視されることなく、それぞれが役割を持ち共に活動すること」 「障がい者本人の意思決定の尊重」  は多くの場面で委員から意見があり、特に非常に重要な視点である。  前文に限らず、条例全体にその視点が活かされるようにして欲しい。 6ページ 1 目 的 1 議論のポイント 条例の目的とすれば、どのような内容とすべきなのか。 長野県における「共生社会」の姿として、どのように表現することが望ましいのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・目的は、誰にも理解できる文章にして欲しい。 ・目的は、他県を見ても、ほぼ同じで、金太郎飴みたいな表現となっている。仕方がない部分もあるが、障がい者の持つ「強み」を十分発揮できるようにという趣旨は盛り込めないか。 ・人は誰でも、他人より優れた能力を持っている。それは障がい者であっても同じ。障がいのある人の優れた能力を見いだせるような、ゆとりある社会の構築が是非必要ではないか。 ・県の障がい者プランにある 「誰にでも居場所と出番がある県づくり」は非常に良いと思っている。 ・「人々の多様なあり方を相互に認め、支え合う」に加え、「活かしあう」のような、もう一歩前に出るような表現はできないか。 〔県民からの意見等〕 ・条例が障がい者の権利を保障するために制定するものであることを明確にして欲しい。〔県民〕 ・障がいの重い軽いに関わらず、人権が尊重され地域社会の中で安心して生活できる長野県を目指す姿勢を示して欲しい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 目的は、「共生社会の実現」とすることが望ましい。 〇 「共生社会」の記載内容については、全ての県民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、互いの人格と個性を尊重し、多様な在り方を相互に認め、支えあい、活かしあう共生社会という内容が望ましいと考える。 〇 目的は、できるだけ平易で分かりやすい文章とすることを望む。 7ページ 2-1 定義(障がい者) 1 議論のポイント   条例の対象となる「障がい者」についてどのように考え、表記するのが適切か。 ・ 障害者差別解消法と同一の範囲、表現とした方が良いのか。 ・ 理解されやすいように工夫した方が良いか。また、他に加えるべき事項はあるのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・障がいの社会モデルを踏まえ、社会的障壁で生活に相当の制限を受ける者を幅広く捉えるべき。 ・基本法の附帯決議で言及されている難病や高次脳機能障がいについても障がいに含まれるということを意識しておくべき。 ・医学的には「障がい」に該当しなくても、生きづらさを抱える方々のことを考えてほしい。 ・「ひきこもり」の人々も、障がいと生きづらさを抱えている人達たちなので、「障がい者」の定義に加えてほしい。 ・「本人の独力では解決できない生きづらさを抱える方」という趣旨は条例の前文等に入れて欲しいが、「障がい者の定義」ということであれば、法律の定義からは離れられない。 ・障がい児も対象となることが分かるような工夫をして欲しい。 ・国の規定そのままではなく、「継続的」という表現は削除したらどうか。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・SDGsを踏まえ、理念は障がい者だけに絞ったものにしないで欲しい。〔県民〕 ・生活に支障のある方を障がい者として欲しい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 障害者差別解消法の障がい者の記載内容、国会での附帯決議を踏まえ、以下のような記載が望ましいと考える。 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい及び高次脳機能障がいを含む)、難病に起因する障がいその他心身の機能の障がい(以下「障がい」という。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により日常生活及び社会生活に相当な制約を受ける状態にあるもの。 〇 定義については、障がい児も対象となることが明確になるように工夫すること。 〇 医学的には障がいに該当しなくても、生きづらさを感じている方々がいるので、条例の前文等に記載するなどの工夫をして欲しい。 8ページ 2-2 定義(不当な差別的取扱い) 1 議論のポイント  「不当な差別的扱い」について、どのように条例に盛り込むのか。 ・ 障害者差別解消法と同様な記載とすべきか、別の記載とすべきか。 ・ 障害者差別解消法の要素と、内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針による基本的考え方」(以下「基本的な考え方」という)を踏まえ、障害者差別解消法の記載以外の記載とすべきか。 ・ 該当事案毎(教育、医療、公共交通等)に差別の内容を例示すべきか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・差別を例示することは分かりやすいが、条文が長くなりすぎる上、全てを記載することは困難なので、包括的な表現が良い。 ・直接的な差別だけではなく、間接差別や関連差別についても県民への周知できる文言を考えて欲しい。 ・「不当な差別的取扱い」というのはわかりづらく、県民にも、当事者にも、何が差別なのかわからない。例示を示すのも一つの方法。 ・「合理的配慮」と比較し、表現が固い。もう少し表現が柔らかくわかりやすい表現とならないか。 ・「不当な差別的取扱い」よりは「不当な差別的扱い」の方がベターではあるが、もっと良い表現はないか。 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 障害者差別解消法の「不当な差別的取扱い」という表現は、何が差別なのかわかりづらい。 〇 差別を例示するのはわかりやすい反面、全ての事案を記載することは不可能。 〇 差別がイメージでき、かつ、包括的な以下のような内容が望ましいと考える。  正当な理由なく障がいまたは障がいに関連する事由を理由として障がいのある人に対して次に掲げる行為などをすることにより障がいのある人の権利利益を侵害する行為   @ 障がいのある人の社会的参加を拒否すること   A 障がいのある人の社会的参加の場所、時間などを制限すること   B 障がいのない人には付さない条件を付けること    なお、社会的参加とは、財、サービス、各種機会の提供など障がい者が日常生活または社会生活を営む上で必要となる行為をいう。  〇 なお、障害者差別解消法等で用いられている「不当な差別的取扱い」という表現は、「物的な表現」であるため「不当な差別的対応」とする方が望ましいと考える。  9ページ 2-3 定義(合理的配慮) 1 議論のポイント  「合理的配慮」について、どのように条例に盛り込むのか。 ・ 障害者差別解消法と同様な記載とすべきか、別の記載とすべきか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・意思表明が困難な者や意思決定支援が必要な者についての合理的配慮については、家族、支援者からの求めについて担保できる仕組みを考えるべき。 ・「合理的配慮」という言葉が一般の県民には分かりにくい。 ・雇用促進法の指針が非常にわかりやすく記載されているので参考にして欲しい。 ・当事者によっては、合理的配慮を求めない方もいる。一方、求めなくても合理的配慮をしてもらえるものだと誤解している方もいる。 ・合理的配慮は、どこまで、どういうふうに捉えていいのか、難しい。 ・合理的配慮の定義には、「建設的対話」又は「対話による相互理解」といった表現は必要。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・合理的配慮という概念は難しいので、「ちょっとした配慮」等の言い方をしている。〔事業者〕 ・障がいのある女性に対する配慮を基本理念だけでなく、京都府や東京都のように他の項目にも盛り込んで欲しい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「合理的配慮」という概念は、一般県民には分かりづらいので、可能な限り平易な表現とすべき。 〇 意思決定支援が必要な者についての合理的配慮については、家族、支援者等からの求めについて担保できる仕組みを明記すべき。 〇 「合理的配慮」については、可能な限り平易な表現とすべきであり、また、障がい者と行政、事業者との対話による相互理解が必要であることから、以下のような表現を基本にすることが望ましいと考える。    障がいのある人の求めに応じて、障がいのある人が、障がいのない人と同等の日常生活または社会生活を営むために支障となっている事案を改善するために、改善方法について対話を行い相互の理解により、性別、年齢、障がいの状況などに応じて必要かつ適切な措置を行うことをいう。ただし、その実施に伴う負担が過重となるものを除く。   なお、障がいのある人がその意思を表明することが困難である場合にあっては、その家族又は支援者等が表明することができる。 10ページ 2-4 定義(障がい者、不当な差別的取扱い、合理的配慮以外の事項) 1 議論のポイント  「障がい者」「不当な差別的取扱い」「合理的配慮」以外に条例で定義した方が良いと思われる用語はあるか。  その用語は、どのように定義すれば良いか。  (事務局から提案した事項 「社会的障壁」・「社会モデル」) 2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・社会モデルは、非常に大事な考え方なので、是非規定して欲しい。 ・社会モデルの定義における東京都の表現では、「相対する」で留まっているが、障がいがあっても特別な場所でなく、本人の意思に基づいて望む場所で暮らせる社会というもう一歩進んだ表現はできないか。 ・「意思決定支援」も重要な考え方であるが、何も定義せずに使用されている。県の条例において、定義しておいた方が良いのではないか。 〔県民からの意見等〕 ・障がい者は、「社会」が作ったものであることを強く打ち出すことで、長野県らしさを示せる。〔県民〕 ・「社会モデル」という言葉が専門用語であり難しいと思われる。「社会モデル」を平易な分かりやすい言葉で表現し、丁寧に説明する必要があるのではないか。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「社会的障壁」・「社会モデル」・「意思決定支援」は、定義する必要があると考える。 〇 「社会的障壁」は、障害者差別解消法の規定を準用することが適切で、その表現は下記のとおり。     障がいのある人にとって日常生活、社会生活を営む上で障がいとなるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの。        〇 「社会モデル」については、東京都等の表現よりもう一歩進んで、下記の表現が望ましいと考える。     「障がい」は個人の心身機能の障がいと社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという考え方。 11ページ 〇 「意思決定支援」は、厚生労働省の意思決定支援に係るガイドラインに記載されている定義を基本として、下記の表現が望ましいと考える。 自ら意思を決定することに困難を抱える障がいのある人が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、本人の意思の確認や意思及び選好を推定し、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、最後の手段として本人の最善の利益を検討する支援の行為及び仕組みをいう。 〇 その他条例策定上必要な定義は、県において適切に規定すべきと考える。 12ページ 3 基本理念 1 議論のポイント  県の条例として「基本的理念」は、どのような項目を盛り込むべきか。   2 委員等から出された主な意見 〔総論的意見〕  ・基本理念の項目に、長野県が取り組んでいる「地域移行」を入れてほしい。〔委員〕 ・これまでの県の取組や県の基本計画との整合性、関係性を明確にすることは大切。〔委員〕 ・社会や大人の都合で良い子に育てられるのではなく、生まれたその子がその子らしく意思決定支援がされる条例にして欲しい。〔県民〕 ・個性が尊重できるような事を盛り込んだ条例にして欲しい〔県民〕 〔幼少期からの理解促進〕 ・理解不足による無意識の差別が多いと思われるので、幼少期から障がい特性を学ぶことが重要で、理解促進や教育も入れてほしい。〔委員〕 ・小学校より保育園の方が、吸収が早い。〔委員〕 ・障がい者の人権が享受できない社会の現実があることから、「人権」についての教育は、若年層から行うことが、効果的ではないか。〔委員〕 ・小さな時から障がいがあっても、「共に地域で一緒に」という方向性を示したものにして欲しい。〔委員〕 ・小さい時から、障がいや手話について教えていく必要がある。〔団体〕 〔障がい者理解〕 ・社会が障がいを受容してくれれば、障がい当事者も受容しやすくなる。〔委員〕 ・障がい特性を含めた障がい者理解の促進を条例に盛り込んで欲しい。〔委員〕 ・障がい当事者は「特別な人ではない」ことを認識すべき。〔団体〕 ・障がい特性が理解されないので、差別となる事例は多い。そのため孤立し、引きこもりになる事案もある。〔団体〕 ・障がい者が受ける差別が起こる根本的な原因、社会的障壁が起こる根本的原因を是正する内容にして欲しい。〔県民〕 〔障がい者との活動機会(交流)〕 ・一緒に体験することで、人と人の距離が縮まった。人は活動して仲良くなる。〔委員〕 ・何らかの役割を持って活動して交流が深まるので、そういう意味での記載をして欲しい。〔委員〕 ・障がい者に慣れることは重要。県の広報などに障がい者の活用を検討して欲しい。 〔ゲストスピーカー〕 13ページ ・障がい当事者と県民が一緒に参加するイベントの実施を。(ごみ拾い等) 〔団体〕 ・交流機会の拡大を図ることは大賛成。 〔県民〕 〔複合的な要因を有する障がい者への配慮〕 ・女性の障がい者に対する配慮の記載はあいまいな形ではなく明記して欲しい。〔委員〕 ・障がいのある女性は、結婚なども含め様々な不当な取扱いを受けることがある。また、一般的な女性になされる配慮がないことも多い。〔ゲストスピーカー〕 ・権利条約の中にも記載されている障がいのある女性の複合差別については、条例の中に盛り込んで欲しい。〔県民〕 ・障がいのある子どもの事も条例で触れて欲しい。〔県民〕 ・障がいのある子供が抱える生きづらさに対する配慮についても盛り込んで欲しい。〔県民〕 〔県外者への配慮〕 ・対象者の範囲について、県民の他に旅行者(国内、海外)に対する配慮も必要なのではないか。〔委員〕  3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「障害者基本法」第3条(地域社会における共生等)の項目  @ 基本的人権の尊重(前文)  A 社会を構成する一員としてあらゆる分野の活動に参加する機会の確保  B どこで誰と生活するかについての選択の機会の確保  C 意思疎通のための選択機会の確保 は、障がい者施策の基本となる項目であり、県の基本理念にも記載すべき。 〇「理解の促進」は、非常に重要な項目であり、基本理念に記載すべき。 〇 障がい者理解には、幼少期からの「学び」や「障がい者も役割を持った上で一緒に活動すること」がとても大切である。これらの要素も含め、「理解の促進」を記載していくべき。 〇 また、障がいや障がい者に限らず、「社会モデル」も含めた理解促進とすることが望ましいと考える。 〇 特別な配慮を必要とする者(女性や子ども、高齢者など)や県外や海外からの障がい者にも配慮することは大切なことなので、「基本理念」に加えるべき。 〇 以上から、本分科会としては、以下の基本理念(分科会案)を参考に、基本理念を定めることが望ましいと考える。 14ページ  【基本理念】(分科会案) 1 全ての県民は、障がいの有無にかかわらず、基本的人権を享有する個人をしてその尊厳が尊重されること。 2 全ての障がいのある人は、社会を構成する一員として、自らの意思によって社会、経済、スポーツ、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。   3 全ての障がいのある人は、どこで誰とどのように生活するかについて自らの意思によって選択する機会が確保されること。 4 全ての障がいのある人は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段について選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 5  全ての県民は、幼少期からの学びや活動を通じ、自ら体験することで、障がい、障がい者及び社会モデルに対する理解を深めるとともに、障がいのある人とない人が共に役割を持ち一緒に活動する機会に積極的に参加すること。 6  障がいがあることに加え、女性であること、子どもであること、高齢であることなどにより、更に困難を抱える状況に置かれている場合は、その状況に応じた配慮がなされること。 7  県内に暮らす障がいのある人の生活のみならず、県外から訪れる障がいのある人に対しても、その状況に応じた配慮がなされること。 15ページ 4 県の責務 1 議論のポイント 県の責務として、どのような項目が必要か。 各項目において、どのような事項、内容を盛り込むべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・提案のあった項目で、必要なキーワードが盛り込まれていて、文章的に意味が通じるものであれば良いと思う。(提案のあった項目:総合的な施策の推進、普及啓発、市町村への支援、県民等への支援、他機関との連携、障がい者・障がい者団体の意見反映)大切なのは、つくりっぱなしにせず、定期的に有効な条例かを確認すること。 ・当事者の意思表示がなくては、施策も合理的配慮もなかなか進まない。行政本来の責務として、共生社会づくりに積極的に関わっていく必要がある。 ・普及啓発に関しては実効性、効果的な広報という表現を入れていただきたい。 ・障がい者及び障がい者団体の意見を聴くという趣旨は、どこかに入れて欲しい。 ・障がい者の特性を理解したうえで、関わっていけるような啓蒙活動を。〔ゲストスピーカー〕 ・社会で活躍した障がい者を積極的に広報する環境の促進を図って欲しい。〔ゲストスピーカー〕 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・障がい当事者として何ができるかと思ったとき、障がい者の存在、生活を伝えることが大切と思った。〔団体〕 ・県が積極的に何をすべきなのか明確に記載すべき。〔県民〕 ・障がい者意見の反映は義務化すべき。反映できない場合は、その理由を障がい者に伝えるような規定も必要と考える。〔県民〕 ・条例を実効性のあるものにするため、県が率先して何を行うのか示すことが効果的である。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 行政本来の責務として、共生社会づくりの積極的に関わる必要があるので、「総合的な施策の推進」という項目は必要である。その際、主体的・積極的に共生社会づくりを進めるような表現を望む。 16ページ 〇 県民から「普及啓発」に関しては多く意見をいただいており、県の責務として位置づけるべき。 条例に盛り込むまでの必要性はないが、普及啓発活動には、障がい当事者を積極的に起用するようにして欲しい。 〇 「県民、事業者への支援」については、県の責務として盛り込むべき。その際は、障がい者への理解を深める、障がい者差別解消だけではなく、障がい者と共に活動する機会なども支援対象とすべきと考える。 〇 「障がい者意見の施策への反映」という項目は、県の責務として盛り込むべき。 〇 「手話言語条例」にもある「県の財政上の措置」は条例のどこかに記載すべきと考える。 〇 条例に盛り込むどうかは別にして、条例が有効に機能しているのかは、定期的に県の責任において、確認していくことを望む。 17ページ 5 市町村との連携 1 議論のポイント 市町村の役割(責務)を盛り込む必要があるのか。 県と市町村の連携は、どのような項目、内容を盛り込むべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・市町村は1国1城の主なので、連携や協力は良いが、責務というところまで入っていくスタンスは良くない。ただし、市町村が主体的に積極的に取組を頑張ろうとする場合は、県は積極的に支援していくというスタンスは取って欲しい。 ・「連携する」「施策に協力する」という表現は、地方自治法との関係でわからなくもないが、少し及び腰という印象を受ける。 ・障がい者にとっては、住んでいる市町村の施策が非常に重要。県で条例ができれば、追随する市町村もあるかもしれない。県の条例が先頭に立つような条例であって欲しい。 ・市町村からは、県は、より専門的な相談という部分を担って欲しいという意見がある。こうした内容を含められないか。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・市町村においては、人材不足もあり、市町村の負担が増大する条例は避け、活用できる条例として欲しい。(市町村)   3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 県と市町村との関係は、ひとつの項目でまとめた方が望ましい。 〇 連携や協力は良いが責務というのは、難しいと考える。 〇 盛り込むべき項目としては、「県が実施する施策への市町村の協力」と「市町村が実施する施策への県の協力、支援」の両方の要素が必要。 〇 市町村は、県の有する専門性に期待しているので、専門的見地からの助言や支援を積極的に行って欲しい。 また、条例に盛り込む内容ではないが、市町村が主体的かつ積極的に施策を実施し頑張ろうとする場合は、県は積極的に支援して欲しい。 18ページ 6・7 県民の役割、事業者の役割 1 議論のポイント 県民、事業者の役割を別に記載するべきか。一緒に記載するのか。 県民・事業者の役割につて、どのような項目、内容を盛り込むべきなのか。  障がい者団体の役割についても、条例に記載すべきか。 2 委員等から出された主な意見 〇 記載方法  〔分科会での意見〕 ・県民と事業者の役割は、別々に記載した方が分かりやすい。 ・「県民の役割」及び「事業者の役割」は、はっきり示した方が良いと思う。 ・県民の中には事業者も含まれるので、特に分ける必要はないのではないか。    〇 県民の役割 〔分科会での意見〕 ・人は仲良くしろと言われて仲良くなるのではなく、一緒にいる環境が保障されて、その中で一緒にいる中で認め合っていくというプロセスの結果である。 ・プロセスがない中で「共生」と言ったところで、その場で終わってしまう。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・あいサポート運動でサポーターが増加すれば、ヘルプマークも利用しやすい。別々の運動ではなく、こういうものを一体化し、条例の中に推進事項として加えて欲しいい。〔県民〕 ・様々な特性を持つ障がい者にどのように接していけばよいかを理解し、交流できる社会を作りたい。〔県民〕 ・障がい者自身が情報発信していき、受け身だけではなく、障がい者自身を知ってもらう努力が必要。〔障がい者団体〕 ・障がい者に任せ、責任を持たせる事項の記載を希望する。〔障がい者団体〕 〇 事業者、障がい者団体の役割 〔分科会での意見〕 ・事業者の役割を記載している他県の表現は、抽象的である。もっと、踏み込んだ表現とならないか。 ・建設的な対話についても、合理的な配慮を行う前の段階でしっかり対話していくことが大切。日本では、相手方を訴えたら関係が終わってしまう。 ・障がい者団体が理解促進を図る活動というのは、当然のことなので、条例に盛り込む必要はない。 19ページ 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・世の中権利主張する人が増加しており、あまり事業者への責務を詳細に決め込むと重箱の隅をつついたようなクレームに繋がる可能性がある。〔障がい者団体〕 ・事業者は多岐に渡る。初めは運輸事業者など多数の県民が利用する事業者に理解を求め改善を指導すべきであり、義務化していくべき。〔県民〕 ・義務化は必要だが、事業者を守れる体制も大切。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 県民と事業者、県とは役割が違うので、別々に記載すべき。 〇 義務化は難しいと考えるが、県民、障がい者、事業者が積極的な参加を取り組むことを求めるような記載とすることを望む。 〇 障がい者団体については、理解促進を図る活動というのは、当然のことなので、条例に盛り込む必要はない。 〇 県民の役割としては、 ・ 「障がい者等への理解促進」はもとより、障がい者と共に活動しその中で互いを認め合うプロセスが重要であることから、「障がい者と共に活動する機会への参加」も盛り込むべき。 ・ 「県や市町村が行う施策への協力」は多くの県で採用しており、採用したが方が良いと考える。 ・ 障がい者が活躍するには、全ての県民の協力や配慮が必要不可欠であるため、「支援を必要とする障がい者への適切な配慮や支援」も盛り込むべき。県民全体で障がい者の活動をサポートする社会の実現を図って欲しい。 ・ 障がい者団体から、「障がい者自身の情報発信も重要」等の意見をいただいていることもあり、「障がい者の役割」についても「自らの障がい特性や必要な配慮を、可能な範囲で周囲に伝える」旨の記載すべきと考える。 〇 事業者の役割としては、 ・ 県民の役割で示した「障がい者等への理解促進」、「県や市町村が行う施策への協力」については事業者の役割としても記載すべき。 なお、「障がい者と共に活動機会への参加」について、一緒に働くという観点がより重要であり、事業者の役割とする必要はなくても差し支えないと考える。 ・ 県民と異なり、事業者はサービス提供者、雇用主等の立場もあることから、「障がい者が利用しやすいサービス提供」、「障がい者雇用の促進」「障がい者に配慮した職場環境」などの項目を盛り込むべきと考える。 20ページ 8 不当な差別的取扱いの禁止 1 議論のポイント  「不当な差別的取扱い」の禁止について、どのように条例に規定するのか。 ・ 障害者差別解消法の規定は、行政機関、事業者であるが、拡大する必要があるか。 ・ 参考文案のような拒否や制限等をせざるを得ない場合に障がい者に理由を説明し理解を求める規定は必要か。その際に、「正当な理由」が拡大解釈されないための規定を設ける必要があるのか。 〔参考文案〕 正当な理由があると判断し、障がい者に対して財、サービス、各種機会の提供を拒否し、又は、提供に当たって場所、時間帯など制限する、若しくは障がいのない人に対して付さない条件を付した場合には、障がい者にその理由を説明し、理解を得るように努めなければならない。 2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  〇対象範囲 ・権利条第8条をそのままストレートに翻訳すると、対象範囲は「何人」になるのでは。 ・県、事業者に任意活動団体も含め、あらゆる活動を含めると、実質的には何人と全く同義になる。 ・事業者の表現は違和感がある。「全ての人」という表現が適切なのでは。 ・事業者及び個人を含め、長野県条例では差別を決して許さないと県民にアピールすることは大切。「何人」とするのが良い。 ・障がい者差別の範囲は、ちょっと拡大した考えで進めて欲しい。 〇障がい者に説明し理解を求める規定、「正当な理由」が拡大解釈されないための規定 ・同じ内容、同じ人でも合理的と判断する人により変わる。「建設的対話」のプロセスが欠けたら、訳の分からないものになってしまう。(合理的配慮に関する部分での発言) ・「正当な理由がある場合には、障がい者にその理由を説明する」という趣旨に異論はないが、最初にこの文言が来てしまうことには違和感がある。 ・対話等の努力のプロセスがあって、初めてこの趣旨が生きる。最初から、正当な理由を主張すれば良いとも取れるので、それだとかえって困ってしまう。 ・「不当な差別的取扱いを可能な限り回避する努力の中で」的な表現があった方が良い。 ・このような条項を設ける趣旨には賛成。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・障がい者と地域住民が対立構造にならないような話し合いの場等の機会が重要〔団体〕 21ページ ・聴覚障がい者が大きな研修会を開催するため施設に問い合わせたところ「施設に手話ができる人がいないので、他の施設を利用したらどうか」と回答したところ、「断られた」「こんなことが許されるのか」ということになった〔事業者〕 ・差別の解消ではなく、「障がい者差別の禁止」を全面に打ち出すと分かりやすくなる。〔県民〕 ・障がいのある人が、障がいのない人の話に押し切られる気がする。「丁寧に」という言葉を加えて欲しい。〔県民〕 ・不当な差別的取扱いの禁止項目に「当事者間で話し合いが〜(中略)〜せざるを得ない場合には、障がい者にその理由を説明し、理解を得るように努めなければならない」とあるが、「〜障がい者にその理由を説明しなければならない。」としたほうが、二つの差別(不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供)の考えの整合性がとれる。〔県民〕 ・「男女などの性別による違い、家族形成における差別の禁止」の条項を入れて欲しい。〔県民〕 ・医療の場合、様々な場面で家族以外は認めないことが多いので、柔軟に考えて欲しい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「不当な差別的取扱い」の対象範囲は、事業者及び個人を含め、長野県条例では差別を決して許さないと県民にアピールするという観点からも、「何人」とすべきである。 〇 「正当な理由」が拡大解釈されないためにも、「差別的取扱いをせざるを得ない場合には、その理由を説明し障がい者に理解を求める」旨の規定は必要である。一方、正当な理由を主張すれば、差別的対応ができると解釈されないように留意する必要がある。 〇 上記を踏まえ、「不当な差別的取扱いの禁止」については、以下のように規定することが望ましいと考える。 1 何人も、障がいを理由として、不当な差別的取扱いをすることにより障がい者の権利利益を侵害してはならない。 2 当事者間で話合いが行われてもなお、障がいのある人に対して、不当な差別的取扱いで定義した社会的参加について拒否し、制限し、障がいのない人に対して付さない条件を付すなどの対応をせざるを得ない場合には、障がい者にその理由を丁寧に説明し、理解を得るように努めなければならない。 22ページ 9 合理的配慮の提供 1 議論のポイント  「合理的配慮の不提供」の禁止について、どのように条例に規定するのか。 ・ 障害者差別解消法の規定は、行政機関は義務、事業者は努力義務である。対象範囲を拡大する必要があるか。事業者に対して、義務化する必要があるのか。 ・ 「不当な差別的取扱い」と同様、合理的配慮が提供できない場合は、障がい者にその理由を説明し理解を得る旨の規定を設ける必要があるのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・法施行後3年が経過していることもあり、場合によっては義務化も必要ではないか ・同じ内容、同じ人でも合理的と判断する人により変わる。「建設的対話」のプロセスが欠けたら、訳の分からないものになってしまう。 ・合理的配慮の範囲が広いので、つなぎ目がない形で相談をしながらよりよいものを提供していくことが望ましい姿なのでは。 ・事業者は合理的配慮が努力義務になっている。合理的配慮の不提供をいかに少なくしていくかが重要である。 ・事業者に対する合理的配慮の義務化の問題は、現在、国でも議論されている。東京都など条例で義務化されたところでの問題点を検証し、データを集めて今後方針を出す予定。国でも、障がい者団体は義務化を、事業者団体は努力義務の継続を望んでいる。 〔障がい者団体の意見〕   ・事業者に対する合理的配慮を義務化して欲しい。 〔事業者の意見〕 ・当社はセルフサービスなので、ホテル等のフルサービスと同等のサービスを提供できる訳ではない。 ・一時的に過重と思われるレベルまで引上げると、それが基準になり他の業務に歪が生じることもある。 ・努力義務化にしておいて欲しい。 ・規制で縛る部分を最初から作り過ぎずに、徐々に進めていって欲しい。 〔県民からの意見〕  ・過重な負担の考え方がある以上、合理的配慮は、義務でも努力義務でも同じ。「合理的配慮」の義務化より、「建設的対話」を義務化すべきと考える。 ・合理的配慮は、行政の民間も東京都のように義務化して欲しい。 23ページ 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 合理的配慮の提供範囲は、県民の役割との関連性を踏まえ、障害者差別解消法の規定と同様で良いと考える。 〇 事業者に対する合理的配慮の義務化については、障がい者団体は義務化を望み、事業者は努力義務のままを望む意見であり、両者間の意見の隔たりは大きい。 また、現在、障害者差別解消法の見直しの議論が進んでおり、事業者に対する合理的配慮の義務化もひとつの論点であるが、国では、検証に入る準備の段階であり、検証結果も、国としての方向性も示されない状況である。 このため、現段階では、分科会としては結論を出せる状況にはない。今後、国の動向等を把握した上で、県において方針を決定していただきたい。 〇 不当な差別的取扱いと同様、障がい者が望む合理的配慮が提供できない場合は、その理由を障 がい者に説明し、理解を求める規定は必要で、その内容は以下のような文章が適切と考える。 当事者間で話合いが行われてもなお、過重な負担により、障がいのある人が求める合理的は配慮が提供できない場合は、障がい者にその理由を丁寧に説明し、理解を得るように努めなければならない。 〇 なお、検討過程において、一部委員からは、事業者に対する合理的配慮の義務化を望む強い意見があった。 24ページ 10 障がい者差別の禁止を有効に機能させるために必要な事項 1 議論のポイント  一般的な他県の条例に記載されている「不当な差別的取扱いの禁止」、「合理的配慮の不提供の禁止」以外に、障がい者差別の禁止を有効に機能させるために必要な事項はあるのか。 〔議論のたたき台として提示した事例〕 ・事前的改善措置 (福岡県、三重県での規定を参考に提示) ・障がい者差別事案の分析 (福岡県、三重県の規定を参考に提示)   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・合理的配慮は、当事者が要求することによってボタンが押されるのではなく、当事者が合理的配慮の意思表示をしなくてもよい社会をつくらなければいけない。 ・具体的なトラブルが発生した折には、常に客観的に、持続的に安定した判断の根拠となる条例を希望する。 ・差別の事例は、今後も増加すると思うが、差別を分類し体系化するための継続的な作業の必要性を条例に盛り込んで欲しい。〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・合理的配慮の好事例を広げて欲しい。合理的配慮について具体的に示して欲しい。〔団体〕 ・差別事案を細則などに公表して欲しい。健常者は言わないとわからないことが多い。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 障がい者差別の禁止を有効に機能させるために、以下の2項目が必要と考える。 @ 合理的配慮に対する環境整備(事前的改善措置) A 障がい者差別事案の分析、公表 〇 合理的配慮に対する環境整備としては「障がい者からの求めを待つことなく、あらかじめ必要な措置を講じるよう努める」と規定した上で、 ・自らの設置する施設及び設備のバリアフリー化 ・情報保障・情報バリアフリーの継続的な支援  という項目を規定すべきと考える。 〇 障がい者差別事案の分析、公表は、具体的なトラブルが発生した際の客観的な判断を示す上で必要不可欠な事項である。 そのため、「県に寄せられた障がい者差別事案等について、その事案の原因、経過、対応等を分析するとともに、それを公表していく」ことも条例で規定すべきと考える。 25ページ 11-1 共生社会実現のための施策(全体) 分科会としての考え方 共生社会の実現や障がい者差別解消のためには、障がい者の自立及び社会参加の促進が必要不可欠であり、そのため共生社会実現のための施策は、幅広く記載する。 記載内容について、包括的内容だけを記載するのではなく、将来の施策の方向性も分かるような内容で記載することが望ましい。 11-2 福祉及び医療 1 議論のポイント 「福祉及び医療」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・基本法に挙げられた項目は、全て大事な項目だと思うが、「医療、介護、福祉、生活支援その他、自立支援のための適切な支援を、他領域連携や包括的、一体的に受けられるように」という趣旨を加えて欲しい。 ・ライフステージに応じた支援については、「本来の社会モデルに基づいた地域生活が実現できるよう」とした上で、「途切れのない支援」として欲しい。 ・総合相談、地域移行といった長野県が先駆的に取り組んでいるものを、記載していけば長野県らしさが出てくるのではないか。 ・障がい者の包括的支援体制である地域生活拠点は、長野県は全国的にも進んでいる。これは、従来から、他領域連携や包括的・一体的な支援の基盤があったからで、長野県の特徴である。 ・医療的ケアが必要な子どもたちに焦点を当てて欲しいい。 ・医療から可能な限り早期に福祉につながるような取組の記載が必要ではないか。 ・福祉人材の確保は重要であるが、求められる人材像は、専門的知識や技能を有するのみでは不十分で、障がい者の意思決定支援や社会モデルの中で専門性が発揮できる能力が必要。 ・福祉人材が不足している中、福祉職全体のイメージを向上させる取組も必要ではないか。 26ページ 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・サービス提供者側の意識の向上を図ることは重要 〔県民〕 ・障がい者、高齢者等分断して支援するのではなく、誰でも利用できる福祉サービスを。〔県民〕 ・障がい者であっても子供を産み育てられる支援策の拡充を加えてほしい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「福祉及び医療」として以下のような内容を記載することが望ましい。            〇 「障がい者が、自ら選んだ地域で、自分らしく安心して生活していける」ために、必要な支援の整備を盛り込むことが必要。 その際、長野県が取り組んできた「総合相談、医療、福祉、生活支援」が、包括的・一体的に受けられるような内容を含んで記載することが望ましい。  〇 障がい者は必要な支援がライフステージに応じて異なるので、その観点での記載は必要。 記載にあたっては、「社会モデルに基づいた地域生活が実現できる」とした上で、「切れ目のない支援」という内容とするこがが望ましい。  〇 障がいのある子どもに対する支援は、別に項目を定めて記載すべきと考える。 記載に当たっては、「成長に応じ、可能な限りその身近な場所において」といった子どもの特性に配慮した内容とすることが望ましい。 〇 障がい者への支援については、保健、医療、福祉、教育など多職種連携が重要であるため、この点についても、項目として盛り込むことが望ましい。 〇 福祉人材の確保、資質向上の観点も必要。 その際には、福祉職全体の人的確保の観点と福祉に求められる人材の質的向上の双方の観点を記載することが必要と考える。 27ページ 11-3 教育 1 議論のポイント 「教育」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・重い障がいのある子どもたち、医療的ケアの必要な子どもたちに、まず焦点を当てて欲しい。 ・学校現場での制度と現実の乖離は大きな問題。意思の尊重が大切。 ・障がいのない児童・生徒が正しい知識、理解を深めるための教育を進めてほしい。 ・PTAへの教育も一緒に進めることにより、より理解が深まるのではないか。 ・最終的には、通常の学級でしっかり授業を受けられる仕組みを。 ・障がい当事者もきちんと学習し、自分達はどう行動すればいいのか勉強すべき。 ・国では、生涯教育課に障がい専門の部署があり、特別支援教育と並ぶくらいに生涯教育を推進している。 ・運に左右されず、誰もが選択できる環境を整えることが重要。 〔ゲストスピーカー〕 ・特別支援学校にいる障がいのある子どもが、障がいのない子どもと、定期的に交流できる機会を設けて欲しい。〔ゲストスピーカー〕 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・特別支援学校が多いが、分けて教育するメリットとデメリットがある。学校の先生の実力も影響し、一緒に教育すると障がい者がつぶれてしまうケースもある。〔障がい者団体〕 ・小学校の現場で、障がい者が同じクラスで学べる環境といじめが発生しない教育が必要。〔障がい者団体〕 ・企業の研修の中でも学んで欲しい。中高年への理解を広めて欲しい。〔障がい者団体〕 ・学校教育の中に障がい者理解を反映して欲しい(現行は時間が短すぎ)〔県民〕 ・養護学校という名称を特別支援学校に変更して欲しい。養護されている訳ではなく、スペシャルなニーズがある子供に過ぎないのであるから。〔県民〕 ・障がいのない人を基準に作られた社会の基準を、まずは学校から変えていって欲しい。〔県民〕 ・副学籍交流がもっと進む形になれば良いと考えている。〔県民〕 ・幼少期から障がい者と関われる施策を考えて欲しい。〔県民〕 ・教育は何も学校だけではなく、地域、市町村、県として進めていくことを望む。〔県民〕 28ページ ・学校の選択は、子ども自身と家族の意図を汲み、希望に沿うよう配慮すべきこと。〔県民〕 ・児童期から障がいのある方と自然に触れあえる機会が必要であり、それに加え大人の障がい者に対する正しい理解が必要。〔県民〕 ・インクルーシブ教育により、障がいの有無に関わらず共に学ぶ場が保障される一方、障がいを同じにする子ども達同士の学びの場の減少や、大人になった後の障がい当事者のコミュニティーが形成できないことが危惧されるので、多面的な教育の必要性を感じる。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「教育」として以下のような内容を記載することが望ましい。            〇 障がい当事者にとっては選択できる環境が大切であるので、「学びの場に関する必要な情報を十分に得ることができ、本人(保護者)の意思や障がいの状態に応じて、学びの場及び進路の選択等を適切に行うことができる」旨の内容は是非とも盛り込むべき。 〇 障がい者が選択したそれぞれの学びの場で「一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育が保障される」ことは大切な視点と考える。 〇 学校教育において、障がいのある子どもと、ない子どもが一緒に活動することは重要であり、「障がいのある子どもと障がいのない子どもとが、共に学び相互に理解を深め合う中で多様な他者とつながる力、思いやりの心を育む力や多様な価値観の中で相互に成長する機会の確保」という内容の項目を設けるべき。 〇 学校教育以外の教育も重要な分野と考える。「県民が、幼年期から障がい等に対する正しい知識を持つための学びの機会の確保」という旨の項目を設けることが適切と考える。 〇 条例の記載には馴染まないが、学校現場での制度と現実の乖離は大きな問題であり、障がい者の意思が尊重される教育となるように改善を進めて欲しい 29ページ 11-4 就労支援 1 議論のポイント   「就労支援」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・就労について、就労後も継続的に支援ができるような体制をつくってほしい。 ・特性に応じた支援が就労支援では最も大切。 ・就労支援事業所など障がい福祉サービス施設の従事者にもっと精神障がいについて理解して欲しい。 ・特別支援学校から就労時に移行する段階でトラブルが一番起きやすい。就職、就業継続のところで、差別が起こらないようなニュアンスを含んだものにしていただきたい。 ・一般就労すると支援が受けられない。継続して支援できるような体制を作って欲しい。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・法定雇用率の中で障がい者を雇用している企業では理解が進むと思われるが、そうした場に遭遇する場面のない人にどういう啓発をしていくのか。〔団体〕 ・健常者でも仕事が遅い人や失敗する人がいるが、障がい者雇用に至っては「〇〇障がい」の人だからとされてしまう。1人の障がいのミスマッチを、障がい特性と位置付けられてしまう。〔団体〕 ・知的障がい者には、その人にあった頑張りがあり、過剰な負担を求めてはいけない。〔団体〕 ・就労支援に、「障がい者を取り巻く相談・福祉等によるネットワークの構築」を入れてほしい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「就労支援」として以下のような内容を記載することが望ましい。            〇 障がい者の就労支援としては、大きく分けて2つの視点は欠かせない。ひとつは就労支援、もう一つは就職した後の定着支援である。 〇 就労支援については、「多様な就労機会の確保」、「特性に応じた職業相談、指導、訓練及び職業紹介」といった内容を含むことが適切と考える。 〇 就労定着支援では、就労という環境変化に伴う「日常生活上の支援」が大切な点であることはもとより、「就職前の体験・指導」がその後の定着に大きく影響することから、この点についても条例に盛り込むことを望む。 〇 また、「就労継続支援事業所等における賃金及び工賃水準の向上」も重要な視点であるので、条例に盛り込むことが適切と考える。 30ページ 11-5 防災・減災、災害対応 1 議論のポイント 「災害対応」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・災害時などの視覚・聴覚障がい者への配慮を盛り込むこと。 ・長野県においては、クライシスプラン作成の取組みが、基幹相談支援センターを中心に全県的に広まっている。そうしたことも踏まえ、単なる「配慮」ではなく、もう少し踏み込んだ表現として欲しい。 ・福祉避難所として利用することも考慮し、県立学校等公的施設のバリアフリー化を進めて欲しい。 ・条例であるのであまり具体的なことには踏み込めないと思うが、個人の特性に応じた「予防プラン」が各地で作成されている。一人ひとりの状況に応じた、具体的な予防体制を進められたら良いと思う。 ・表題に「防災、減災」を加えて欲しい。 ・個人情報保護があり、障がい者に対する民生委員等の対応にバラつきが多い。〔ゲストスピーカー〕 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・障がい者は地域で生活しているし、災害時も地域コミュニティが重要な役割を果たす。〔団体〕 ・台風19号の災害でも、障がい者はないがしろにされている。地域社会の中で障がい者との交流が日常的にあれば、そんなことはなかったかと思う。地域の中にそういう関係を作っていくことが大切で  ある。〔県民〕 ・福祉避難所の開設は早期に行い、避難できる場所に行けるよう全ての人に伝達することを目指すこと。聞こえても伝わらない、避難できる場所がわからない、確認ができない人もたくさんいることを県民全体に知ってもらいたい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「防災、減災・災害対応」として以下のような内容を記載することが望ましい。            〇 他県の例を参考にすれば、「市町村への支援」と「県の実施すべき事項」に大別されるが、ともに重要な事項であるので、この両方の内容を条例に記載すべきである。 31ページ 〇 市町村への支援の視点では、「災害時における情報伝達」「避難所における障がい者への配慮」が、特に重要な事項と考えるので、この項目について条例に盛り込むべきと考える。 〇 条例に盛り込むのは難しいと考えるが、障がい者の個々の状況に応じた「予防プラン」を事前作成しておくことが非常に重要であるので、県として市町村に対し、当該プランの作成の勧奨と支援をして欲しい。 11-6 情報保障・情報のバリアフリー 1 議論のポイント 「情報のバリアフリー」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・行政文書全てを点字化することは不可能。合理的配慮に限界があることを障がい者も理解をすべき。 ・手話が利用できる方は、かなり限られている。コミュニケーション弱者に対しての情報保障という形で盛り込むのが妥当ではないか。 ・情報保障と情報バリアフリーでは役割が違う。表題は、双方を盛り込むことが適切ではないか。 ・「障がい者にとっての円滑な情報な取得」の前提は、情報発信者側の配慮であり、そこを明記する必要があるのではないか。 ・聴覚障がい者は、得られる情報が少ないし、情報も遅れる。〔ゲストスピーカー〕 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・ろう者には、筆談ができず、手話でないとコミュニケーションが取れない者がいる。そうした点についても条例に記載して欲しい。〔団体〕 ・「喋れるが聞こえない」という障がい者がいることを県民には理解して欲しい。〔団体〕 ・難聴者は手話が使えない。障がいにより必要なコミュニケーション方法が異なるので、そうした方がスムーズに情報を得られる支援や啓発を行って欲しい。〔県民〕 ・手話があまりできないので、ipadやLINEを活用している。〔事業者〕 ・障がい者は受ける側の立場だけでなく、発信する側の立場になることもあるので、その場合の視点を追加できないか。〔県民〕 32ページ 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「情報保障・情報のバリアフリー」として以下のような内容を記載することが望ましい。 〇 「障がい者が分かりやすく利用しやすい方法による情報提供の普及」という視点は重要である。この場合、手話や点字以外にも多くの情報伝達手段があることに配慮して欲しい。 また、障がい者が利用しやすい情報の取得には、情報発信者の配慮が必要であるので、その点についての配慮も必要である。 〇 「意思疎通支援者」の養成という観点も重要と考える。この場合においても、手話通訳以外の様々な支援者がいることがわかるように配慮して欲しい。 〇 県の条例であるので、県政に関する情報発信については、可能な限り、様々な障がいのある人に配慮した方法での情報提供に努める旨の規定は入れるべきと考える。 11-7 住環境の整備 1 議論のポイント   「住環境の整備」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   「福祉のまちづくり条例」との関係をどのように考えるべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・福祉のまちづくり条例には「何人も障がい者等が安全かつ容易に利用できるよう整備された施設の利用を妨げることをしてはならない」と規定されている。この精神は条例に是非入れて欲しい。 ・身体障がい者にとって、物理的な社会的障壁の観点から一番関係が深く、これが解消できれば、共生社会に近づく。ただ、情報が縦割りで管理され、その意見が生かされていないことが問題なので、県として、しっかり横の連携をして欲しい。 ・この項目は、ハード面での配慮だけではなく、地域で暮らす時の住宅確保等のソフト面における住環境の整備も盛り込んで欲しい。 ・福祉まちづくり条例はあるが、本条例でもハード面の整備は盛り込むべきではないか。 ・障がい者が地域で暮らすという観点からも、県営住宅に限定しても良いので、障がい者の優先入居に対する配慮を記載して欲しい。 33ページ 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・建物内のバリアフリー化は進んでいるが、屋外道路は見落とされている。〔県民〕 ・健常者と同じように支障なく動ける施設、まちづくりが共生社会にとって最も必要なこと。〔県民〕 ・住環境の整備も大切だが、住む場所を選択できる状況を地域で整える必要がある。障がい者理解を深め、地域の協力者を増やすことこそが、地域共生社会だと考える。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「住環境の整備」として以下のような内容を記載することが望ましい。 〇 身体障がい者にとっては、物理的な社会的障壁除去が非常に重要であることから、「福祉のまちづくり条例」はあるが、本条例でも、「障がい者が安心して行動でき、社会に参加できる福祉のまちづくりに関しては、福祉のまちづくり条例に基づき、着実に推進する」という内容を記載すべき。 〇 「障がい者の地域での安定した生活及び地域移行」を促進する観点から、ソフト面の住環境の整備は重要な課題でありので、条例に盛り込むべきと考える。   また、障がい者が地域において安定した生活を営めるよう、「県営住宅への入居において特別な配慮を行う」旨の規定も盛り込んで欲しい。  11-8・9 障がい者スポーツ、文化芸術活動 1 議論のポイント   障がい者スポーツ、文化芸術活動について、分けて記載するのか。同一の項目とするのか。   障がい者スポーツ、文化芸術活動について、どのような項目、内容を盛り込むべきなのか。    2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・丁寧に書くということでは分けて記載すべきだと思う。 ・文化芸術活動推進法が施行され、都道府県や市町村が推進法を受けどのように推進していくのか。   それと整理し、芸術のところは書く必要があるのではないか。 ・「地域交流」は非常に重要。スポーツと文化を独立させるのではなく、それらを絡ませたような表現の仕方が良いのでは。 34ページ ・アメリカとの違いを肌で感じたのは、スポーツ、芸術への参加と、それを促進する機器開発。 ・文化芸術は、積極的な参加以外に、鑑賞できる機会も取り入れられないか。 ・障がい者スポーツは特殊なスポーツという意味合いが強い。障がい者と健常者が一緒に参加できるスポーツというようなものも加えて欲しい ・障がいのある人もない人も楽しめたり、一緒に競技できる場を増やして欲しい。 ・大きなイベントが終わるとトーンダウンしてしまうことが多い。継続的に県民性とか文化として残していって欲しい。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・スポーツや芸術に触れる機会を増やす。〔県民〕 ・2027年の国体を見据えた障がい者スポーツの普及・啓発活動を考えてみてはどうか。〔県民〕   3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 両分野は丁寧に、分けて記載することが望ましい。 〇 障がい者スポーツの分野では、来年度の東京パラリンピックや2027年に全国障害者スポーツ大会が内々定していることを踏まえ、 ・ 障がい者が、スポーツに参加できる機会の拡大 ・ 障がいのある人とない人が一緒に参加できるスポーツの普及と機会の拡大 ・ そのための指導者養成や資質向上 ・ 全国、海外で活躍できるアスリートの養成    といった項目を盛り込むべきと考える。         〇 文化芸術活動では、障害者文化芸術推進法が施行されたことも踏まえ、 ・ 障がい者が文化芸術活動に参加できる環境や作品を発表する機会の確保 ・ 障がい者が、文化芸術作品や活動を鑑賞できる機会の確保といった項目を盛り込むべきと考える。 〇 条例に記載すべきことではないが、障がい者スポーツも文化芸術活動もオリンピック・パラリンピックなどの大きなイベントを契機として盛り上がるが、イベントが終了すると熱が冷め活動が停滞することが多い。長野県においては、そのようなことなく、継続的に着実に進めて欲しい。   35ページ 11-10 選挙 1 議論のポイント 「選挙」について、どのような項目、内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・選挙(投票)に対する配慮だけではなく、障がい者の被選挙権に対する配慮も規定し、政治参加全般の保障を。  〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・選挙会場に学校の体育館を使用することが多く、車いすで選挙会場に入れないという事案もあった。事前に知らせてもらえれば、期日前投票で役所に行って投票することもできる。マイナスの情報であっても知らせて欲しい。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「選挙」として以下のような内容を記載することが望ましい。    〇 法律又は条例の定めるところにより行われる選挙おいて、「障がい者が円滑に投票できるようにするための取組を推進する」という内容は是非とも盛り込むべき。 〇 また、障がい者の被選挙権にも配慮した規定として欲しい。 11-11 障がい者の権利擁護 1 議論のポイント 「権利擁護」という項目は必要なのか。必要だとすれば、どんな内容を記載すべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・究極の差別事案が虐待であるので、虐待防止は是非、条例の中に記載して欲しい。 ・権利擁護では、意思決定支援の観点も必要ではないか。 ・司法参加という観点も重要。知的障がい者が逮捕された場合のサポート等は今後重要 36ページ な課題となってくる。 ・権利擁護は、どこまで記載するかは悩ましい部分がある。 ・司法は何を指すのか明確でない。 ・知的障がい者は、捜査段階で安易に不利な供述をしてしまうことが多い。そこを救う活動が社会福祉士会とかで始まっている。そういう支援が必要で、実施している市町村もある。 ・女性障がい者への配慮は、基本理念以外にも記載する必要がる。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・障がいのある女性など複合的な要因を抱える生きづらさに対する配慮を基本理念のみでなく、条例条項にも記載することを希望する。〔県民(同様な意見多数)〕 ・権利が守られないことは、すなわち虐待だと明記すべき。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「権利擁護」として以下のような内容を記載することが望ましい。    〇 障がい者差別の究極の形が虐待であり、虐待防止に関する内容の記載が必要である。 〇 障がい等により自分の権利を自分で守ることが困難な障がい者に対する支援も必要で、意思決定支援の研修や成年後見制度の普及なども条例の盛り込むべきと考える。 〇 警察職員に対する研修など刑法・司法分野への支援について条例に盛り込むことを望む。 〇 障がいのある女性など複合的な要因を抱える者に対する配慮を求める意見が数多く寄せられており、基本理念以外にも記載することを強く望む。 37ページ 11-12 人材育成 1 議論のポイント   「人材育成」について、この項目は必要なのか。   各分野で必要な人材は、当該項目に記載するとすれば、人材育成としてどのような内容を記載すべきか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・共生社会実現のための策施なので人材育成、資質向上という観点もあるが、大きなテーマは障がい者差別解消であるので、障がい者差別解消や権利擁護という位置づけで人材育成としていくことも考えられる。 ・福祉人材とか、医療、保健分野は別に盛り込む必要があるのではないか。 ・各分野の人材育成というのは不要で、障がい者差別というのを総論的に扱って欲しい。そうすると、対象範囲は、何人もということになる。障害者基本法、虐待防止法、バリアフリー法など様々な法律があるが、こういうものを総合的に理解する人の養成は必要になる。 ・行政の職員が障害者差別解消法の内容を理解していない。これを改善する必要がある。 ・警察職員に対する研修も必要。知的障がい者は、捜査段階で安易に不利な供述に同意してしまう特性がある。警察職員にはそのことを理解して欲しい。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕    ・県職員特に警察職員に手話を覚えて欲しい。〔団体〕    3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 各施策において必要となる人材はそれぞれの分野の施策に記載することとし、「人材育成」としては、障がい者差別解消や権利擁護などの大きな観点での人材育成について記載すべき。 〇 また、県での条例であるので、警察職員を含めた県職員に対する障がい者理解を深めるための取組を記載すべき。 (県の責務でも良い) 38ページ 12-1 障がい者差別の禁止を担保する仕組み(総論) 1 議論のポイント 「障がい者差別の禁止」を担保する仕組みをどう構築するのか。 「相談」、「あっせん」、「勧告」、「公表」等の仕組みを構築する必要があるか。また、どこまで必要か。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・障害者雇用促進法は、厳しい規定を設けているので、できるだけその仕組みに近いものをつくってほしい。 ・長野県のまちづくり条例との整合性を図り、まちづくり条例の仕組みを踏襲してほしい。 ・条例は、権限を持った勧告等の行為が出来るような条例でなければいけないと思っている。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・紛争解決の仕組みは必要だと思う。是非、盛り込んで欲しい。〔障がい者団体〕 ・明確な紛争解決の手段や悪質なものについては、場合によっては処罰規定まで含んだ内容にして欲しい。〔障がい者団体〕 ・第三者機関にあっせんを付託するのが知事となっているが、教育委員会や選挙管理委員会などの行政委員会は、知事部局と異なるため、こうした組織が第三者機関にあっせんを付託することもあっても良いのではないか。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 「障がい者差別の禁止」を担保する仕組みとして、「相談」、「あっせん」、「勧告」、「公表」の仕組みを構築する必要がある。(詳細な考え方は各論で記載) 39ページ 12-2 障がい者差別の禁止を担保する仕組み(各論) 1 議論のポイント 「障がい者差別の禁止」を担保する仕組みとして、「相談」、「あっせん」、「勧告」、「公表」の仕組みを構築する必要があるが、具体的にどのような仕組みとすべきなのか。   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・構造としては、相談からあっせん申立て、調査、あっせんの実施、勧告、公表と連続的になるので、対象者は一貫してなければならないのではないか。 ・障害者虐待防止法には立入調査権が認められている。それに準じた形で、相談があった事案について事実確認の調査権が認められるようなニュアンスを持たせられないか。 ・相談窓口を一本化し、障がい者虐待、差別解消及びほじょ犬等の相談について統合し、対応を図ってほしい。 ・「あっせん」ではなく「仲介」とか、話し合いの機会を設けて理解を求めるような仕組みがあるというのも考えられる。圧力みたいなもので強制させるのではなく、県が積極的に中に入り、理解を求められるような仕組みも考えられるのでは。 ・協議会はどんなメンバー(組織)を想定しているのか。また、協議会の機能をどのように規定するかが大切になってくる。 ・紛争解決の仕組みは、「あっせん」「勧告」「公表」だけではない。これ以前の対応があって、最終的にはフロー図のようななることを丁寧に記載するべき。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕 ・障がい者に限らず第三者に判断していただく必要がある苦情はたくさんある。〔事業者〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 別添のような仕組みを構築すべきと考える。 40ページ 紛争解決の仕組み (分科会案) 1 相談 対象者は何人も。 相談を受けた際の対応内容については、相談に応じ、必要な助言および情報の提供 相談に係る事実確認を行い当事者その他の関係者間の調整 関係行政機関への通告、通報その他の通知。 障がい者差別解消推進員が対応。推進員は、第三者機関に相談し回答を求めることができる。 下矢印 相談により解決しないときは、 下矢印 2 県に対して「あっせん」の申し立て。 対象は、障がい者とする。ただし、家族、後見人、養護者が本人に代わり申請することも可能。 申し立てができない事項は、 障害者雇用促進法に該当するもの 障害者虐待防止法に該当するもの 行政不服法等その他の法令で対応可能なもの 代理人の申立てが障がい者の意に反するとき 同一案件で過去にあっせん等の申し出を行ったもの 下矢印 3 調査  実施主体は、県。 調査への協力は、申立人及び当事者 下矢印 4「あっせん」の求め  県が第三者機関に調査委任 「あっせん」の求めのできない場合は、 あっせんを求めることが適当でない場合 あっせんを求めることが必要がない場合。 下矢印 5 「あっせん」の実施 第三者機関で実施 委員構成 有識者・弁護士等、障がい当事者(a)事業者代表(b)(a・bは同数、a・bとも案件により委員追加) 第三者機関の役割  その1あっせん事案に対する調査〔調査を県に委託すること可〕 * 調査に対する協力義務あり。  その2あっせん案の作成・提示。  その3障がい者差別解消推進員からの相談に対する対応。 あっせんを行わない(終了)する場合   その1 あっせんの必要がないと認める場合(取り下げ等)。  その2 対象事案が解決したとき。  その3 あっせんを受諾したとき。  その4 対象事案の解決の見込みがないと認められるとき 等  下矢印 6 勧告の求め 第三者機関から県に勧告を求める 勧告の求めの条件は、あっせんを受託しない。従わない。放置する、正当な理由なく調査を避ける。虚偽の報告 等。 下矢印 7 勧告 知事が実施 勧告の要件は、必要があると認めるときは、勧告することができる。 下矢印 8公表 知事が実施 公表の要件は、正当な理由なく勧告に従わないときは、公表することができる 41ページ 13 その他必要な事項 1 議論のポイント 1〜12まで検討された項目以外について、条例の記載するべき項目はあるのか。   その内容は、どのようにものとすべきか。   〔事務局での議論提供:守秘義務違反の罰則・条例制定後の検討〕   2 委員等から出された主な意見 〔分科会での意見〕  ・守秘義務は、罰則規定がないゆえに守秘義務が守れない状況になるのか。 ・初めての条例でもあるので、条例施行後3年をめどに見直しする規定を設けて欲しい。 ・内閣府では障害者政策検討委員会が、次の障害者差別解消法の改正に向かって議論が今本格化している。 〔障がい者団体・県民からの意見等〕   ・処罰規定を設けて欲しい。努力義務ならやらなくても良いと捉えられる。〔県民〕 3 議論を踏まえた分科会としての考え方 〇 初めての条例であり、また、現在内閣府で障害者差別解消法の改正に向かって議論がされている状況を鑑みると、本条例についても条例施行後、一定期間後に検討する規定は必要と考える。 〇 期間や表現等については県において検討すべきであるが、少なくとも、障害者差別解消法が改正された場合においては、必ず検討を行うことが望ましい。 〇 処罰規定については、処罰規定がないと守秘義務が守られない状況が発生した場合に、上記見直しにあわせて検討することとし、施行時には記載しなくても良いと考えられる。 ○ 「障害のある人もない人も共に生きる社会を目指す研究会」から平成24年11月に提出された報告書は、多くの障がい者や事業者等から意見を聴き、検討を重ねて取りまとめられた報告書である。   県において、今後、条例案について具体的に検討することとなるが、当該報告書の内容や考え方も踏まえるとともに、「障害を理由とする差別と思われる経験」として寄せられた726件の事案についても障がい者差別事案の分析、公表の際に活用することを望む。 42ページ W 障がい者共生社会づくり条例案の全体骨子(案)について 【前 文】 【総 論】 1 目 的    「共生社会の実現」 とする 2 定 義    障がい者  社会的障壁  不当な差別的取扱い  合理的配慮  社会モデル  意思決定支援 3 基本理念 (1)基本的人権の尊重 (2)社会の一員として、あらゆる分野の活動に参加する機会の確保 (3)誰とどこで生活するについて、自らの意思による選択機会の確保 (4)意思疎通手段の選択機会の確保、情報の取得・利用に関する選択機会の確保 (5)幼少期からの学びや活動を通じ、障がい等への理解促進と、一緒に活動する機会の拡大 (6)女性や子ども、高齢者など複合的な要因を抱える生きづらさに対する配慮 (7)県内に暮らす障がい者のみならず、県外・海外から訪れる障がい者への配慮 4 県の責務 (1)総合的な施策の推進 (2)障がい等に対する理解及び障がい者差別解消のための効果的で実効性のある啓発活動 (3)県民、事業者等が行う理解促進、障がい者差別解消、活動機会の拡大に対する支援 (4)障がい者施策の策定に関し、障がい者の意見を聴き、その意見を施策に反映するように努める 5 市町村との連携 (1)県が実施する施策の市町村の協力 (2)市町村が実施する施策への県の協力 43ページ 6 県民の役割 (1)障がい等に対する理解を深め、障がい者との活動機会に積極的に参加するよう努める (2)県、市町村が実施する施策への協力するよう努める (3)支援を必要とする障がい者に対し、それぞれの立場でできる適切な配慮や支援に努める (4)障がい者が、自らの障がい特性や必要な配慮を、可能な範囲で周囲に伝えるよう努める 7 事業者の役割 (1)障がい等に対する理解の促進に努める (2)県、市町村が実施する施策への協力するよう努める (3)障がいのある人が利用しやすいサービスの提供や障がい者雇用の促進、障がい者に配慮した職場環境の整備に努める   8 不当な差別的取扱いの禁止 (1) 何人も、不当な差別的取扱いを禁止 (2) 当事者間の話合いが行われてもなお、拒否、制限、条件付けをせざるを得ない場合には、障がい者に理由を丁寧に説明し、理解を得るように努める 9 合理的配慮の提供 (1) 県の合理的配慮は義務 (2) 事業者の合理的配慮は、努力義務又は義務 (3) 当事者間の話合いが行われても、なお障がい者が望む合理的配慮が提供できないときは、障がい者に理由を丁寧に説明し、理解を得るように努める   10 合理的配慮に対する環境整備  合理的配慮の提供を行うための環境整備として、障がい者からの求めを待つことなく、あらかじめ下記の事項を講ずるように努める  ・自ら設置する施設及び設備のバリアフリー化  ・情報提供・情報バリアフリーの継続的な支援 11 障がい者差別事案の分析、公開  県等に寄せられた障がい者差別事案等について、その事案における原因、経過、対応策等を分析するとともに、その結果を公開する。 12 財政上の措置 44ページ 【共生社会実現のための施策】 1 福祉及び医療 (1) 自ら選んだ地域で、自分らしく安心して生活していくために必要な、総合相談、医療、福祉生活支援の確保 (2) 社会モデルに基づいた地域生活が実現できるライフステージに応じた切れ目のない総合的な支援 (3) 障がいのある子どもが、成長に応じ、身近な場所で支援を受けられる体制の整備 (4) 保健、医療、福祉、教育などに従事する者の一層の連携に努める (5) 福祉人材の確保と資質向上 2 教育 (1) 学びの場に関する必要な情報を十分に得ることができ、本人の意思や障がいの状況に応じて、学びの場及び進路の選択等を適切に行うことができるようにするとともに、それぞれの場において十分な教育を受けられるよう必要な施策 (2) 障がいのある子どもとない子どもとが、共に学び相互に理解を深め合う中で多様な他者とつながる力や思いやりの心を育む力や多様な価値観の中で相互に成長する機会の確保 (3) 県民が、幼少期から障がい等に対する正しい知識を持つための学びの機会の確保  3 就労支援 (1) 障がい者の就労を促進するため、多様な就労機会の確保、特性に配慮した職業相談、指導、訓練及び職業紹介 (2) 障がい者の職場への定着を図るための支援 (3) 就労継続支援事業所等の賃金及び工賃の水準の向上のための支援 4 防災、減災・災害対応 (1)県は防災、減災に関しての施策を講じる際は、障がいの特性及び状況を踏まえる (2)県は、災害時における情報伝達、避難所における障がい者への配慮等について、市町村に対し必要な支援を行う 5 情報保障・情報のバリアフリー (1)障がい者が分かりやすく利用しやすい方法による情報提供の普及 45ページ (2)意思疎通支援者の養成、技術向上 (3)県政等に関する情報を発信するに当たっての配慮 6 住環境の確保 (1) 安心して行動でき、社会参加にできる福祉のまちづくり条例に基づき着実に推進 (2)地域で安定した生活及び地域移行を促進するための住環境の確保 7 障がい者スポーツの振興 (1) 障がい者が、スポーツに参加できる機会の拡大 障がいのある人とない人が一緒に参加できるスポーツの普及と機会の拡大 (2) 障がい者スポーツに関する指導員の養成、資質向上 (3) アスリートの育成 8 文化芸術活動の振興 (1) 障がい者が文化芸術活動に参加できる機会や発表する機会の確保 (2) 障がい者が文化芸術作品や活動を鑑賞できる機会の確保 9 選挙等における支援 (1)障がい者が円滑に投票できるようにするための取組を推進 (2)障がい者の被選挙権に対する配慮 10 障がい者虐待、権利擁護 (1) 障がい者虐待の防止 (2) 自分の権利を自分で守ることが困難な障がい者に対する支援 (3) 女性や子どもなど複合的な要因を抱える障がい者に対する配慮に努める 11 人材の育成・資質向上 (1) 障がい者差別の解消や権利擁護などにあたる者の養成・資質向上 (2) 県職員の障がい等に対する理解の向上 【障がい者差別の禁止を担保する仕組み】 1 相談 (1) 何人も障がいを理由とする差別に関する相談をすることができる (2) 相談があった際は、 46ページ @ 必要な助言及び情報の提供   A 事実確認及び両者間の調整 B 関係行政機関への通告、通報  を実施 (3) 県は、相談があった場合に、第三者機関に相談することができる 2 相談員の配置      相談員の配置、守秘義務 3 あっせんの申立て (1) 障がい者は自己の障がいを理由とする差別に対して、相談しても解決しない場合は、知事に対して、あっせんの申立てができる (2) 申立ては、家族等が代理することも可能 (3) 申立てができない事項 (他法令に基づく措置、雇用促進法・虐待防止法対象案件 等) 4 調査の実施   申立時には調査を実施、関係者の調査への協力、身分証明書の携行   5 あっせん (1) 知事は、必要があると認めるときは、第三者機関にあっせんを付託 (2) 第三者機関はあっせんを実施(必要がない場合、適当でない場合を除く) (3) 第三者機関での調査の実施、調査への協力、県への調査委任 (4) 第三者機関は、あっせん案を作成し、これを当事者に提示 (5) あっせんの終了 (解決した時、解決の見込みがない時) (6) 第三者機関の知事への報告 (行わなかった時、終了した時) 6 勧告 (1) 第三者機関は、知事に対し、勧告を求めることができる ・正当な理由なく、受託しない、従わない、放置する ・正当な理由なく、調査を拒む、妨げる、忌避する ・調査に対して、虚偽の資料提出又は申立て (2) 知事は必要に応じて、当該事業者に対して勧告を行うことができる 7 公表 (1) 知事は、正当な理由なく勧告に従わないときは、その旨公表することができる (2) 公表に当たっては、あらかじめ、陳述機会を設ける (3) 知事は、公表に当たり、第三者機関の意見を聴くことができる 47ページ 【その他】 〇 社会環境の変化等により条例の見直しが生じた場合、必要な措置を講じる 【条例に盛り込まないが必要な対応を行うもの】 〇 「条例が有効に機能しているか」については、既存の審議会等の対象事案に追加するなど必要な対応を行い、実質的に機能する体制を整える 〇 条例の考え方を具現化する施策については、「障がい者施策推進協議会」で検討を行うこととする   以上。