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更新日:2017年2月1日
浅川改良事務所
ダム湖ができると、その湖岸で地すべり・崩壊が生じることはよく知られています。その崩壊は原因別に4つに分類できます。
第1は、地すべり土塊の脚部が、抵抗体として働いているときに脚部が水没して浮力により軽くなり、抵抗力が減少するものです。風呂の中の体が、浮力により軽くなり、横からの力で簡単に動くことと似ています。
第2に、山側から浸透する地下水がある場合には、ダム湖の水位が上昇するに伴い、その傾斜内の地下水は流れ出る口を封ぜられた形で、ダム湖の水位以上に上昇します。このことが斜面を不安定化することになります。
第3は、ダム湖の潅水が完了した後に、ダムのゲートを開けて放水したとき、その水位の低下速度が速いと、岸辺で地すべりが発生することがあります。ダム湖の水位が低下するほど速くは、斜面の中の水位が低下できないので、斜面内に高い水位が残留し、地すべりを発生させる働きをします。
第4は、ダム湖の水面付近で、小規模な斜面の侵食が生じるもので、水際では斜面が削り取られるように、少しずつ崩落するものです。
それぞれのタイプに応じて対策を講じますが、地すべり対策は斜面内の水との戦いといえます。
ダム湖周辺の地すべりによる大災害は、1963年10月9日イタリアのバイオントダムで発生しました。幅2キロメートル、長さ1.4キロメートル、厚さ200メートルの石灰岩の岩塊2億7,000万平方メートルが、ダム湖に崩落しました。
水をためた洗面器に大きな石を投げ込んだように、水は津波となってダムを乗り越え、下流の集落を襲い、死者2,125人という大災害を引き起こしました。ここでは、最初の貯水のおり、小規模な地すべりが発生しており、その対策が不十分であったとみられます。
この事故を教訓に、その後の多くのダム工事では、慎重に工事が進められます。
浅川ダムのダム湖内にも、活動歴のある地すべりがあります。一ノ瀬では、左右両岸に長さ300メートル程の地すべりがみられます。両岸で5箇所の地すべり対策箇所があり、水抜き工・杭打工・排土工等の対策が計画されています。
また川の両岸の相対する地すべりという位置関係を利用して、川の中に押え盛土をするという安全で効果的な工事が検討されています。この盛土の高さは15メートル程ですが、ダムの常時満水面より少し高くなり、ダム湖にいい広場ができることになります。
洪水時にこの盛土が削りとられることのないよう、技術的な検討は必要です。
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