平成18年度 第2回長野県食と農業農村振興審議会
第2回 長野県食と農業農村振興審議会の開催状況
日時:平成19年1月19日(金曜日)
午後1時から午後5時
場所:県庁第1特別会議室
1 出席委員(19名・欠席委員 1名)(※敬称略・五十音順)
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市場祥子委員(学校栄養士) 木下茂人委員(県議会議員) 小池利仁委員(農業委員) 小松千万蔵委員(県議会議員) |
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佐々木隆委員(大学教授) 竹内広光委員(小売会社取締役) 中澤隆雄委員(農業者) 羽毛田盛雄委員(調理師) 原楫委員(食生活改善団体) |
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藤原忠彦委員(川上村長) 藤原勇三委員(土地改良団体常務理事) 堀雄一委員(卸売会社社長) 宮川かほる委員(農業者) |
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山崎袈裟盛委員(池田町長) 山田三夫委員(農業者) 横山敬子委員(消費者団体) 米山春彦委員(農業者) 鷲澤正一委員(長野市長) |
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若林甫汎委員(農業団体専務理事) |
2 次第
(1)会長あいさつ
(2)議事
- 地区部会及び分科会の設置について(資料1・資料2)
- 意見交換(資料3、参考資料1・2・3、追加資料)
- 今後のスケジュールについて(資料4)
- 請求資料について(資料5)
3 議事の内容
(1)地区部会及び分科会の設置について
【地区部会】条例に規定されている地区部会については、第1回審議会の検討を踏まえ、地区の意見を幅広く聴取することと、地区部会の目的・任務に「地域別の発展方向」についての策定及び検証を行うことを明確に記載し、さらに、地区部会において、審議会並びに様々な関係者と密接な連携が図れるようオブザーバーの参画など、次の事項について修正し、地区部会を設置することが決定された。 |
- 地区部会の目的・任務に、「地域別の発展方向」の策定と検証を追加。
- 地区部会委員を10人程度に追加して修正。
- 部会委員以外の方も、オブザーバーとして、参画できる項目を追加。
【分科会】
第1回審議会で、条例の目指す基本理念が、食と農業農村の広範な分野にわたっていることから、より効率的に委員の議論を深める機会設定の要望を受け、専門的知見を有する委員の意見を反映した振興計画とするため、審議会に分科会を設置することが決定された。 |
- 審議会に「食分科会」・「農業農村分科会」の2つの分科会を設置。
- 分科会は、審議会長が審議会委員から担当委員を指名し、1分科会5名以内で構成し、分科会の協議内容は審議会に報告。
- 担当委員の指名(敬称略・五十音順)
「食分科会」:市場委員・小松委員・佐々木委員・竹内委員・原委員
「農業農村分科会」:木下委員・小池委員・白戸委員・中澤委員・堀委員
(2)意見交換
これからの長野県の食と農業農村が目指すべき将来像などに関して、出席委員の意見発表(詳細は、議事録参照)
【市場委員】
- 食育基本法及び食育基本計画を参考に、食材の消費実態と結びついた農業農村を考える。
- 具体的には、学校給食に地域食材を活用する仕組みづくりや、農業体験を行う教育ファームの充実を図る。
- そのためには、生産サイドと学校給食関係者・地域住民の相互理解の醸成が、重要となるが地域食材を学校給食に円滑に届ける体制づくりと、教育ファームを地域の観光などに連携させ、地域の活性化を促すことが重要。
- 指標としては、学校給食での地域食材利用率の30%余りを40%にまで引き上げる。
【木下委員】
- 分科会及び地区部会の設置は、効率的に議論を深める上で、必要である。
- 消費からのアプローチも重要であるが、生産額が減少している状況を打開し、生産者の農業経営を儲かる経営に、立て直すためには、農作物ごとの生産計画を立て、検証していく体制づくりも重要な視点と考える。
- 体制づくりとしては、地域ごとに主要品目ごとの部会的な関係者の集まりで、明確な数値目標を持った生産計画を立て、毎年、検証していくことが大事、その目標達成のために施策が連動してくるのが理想と考える。
- 生産額を上げるためには、ブランドづくりが特に重要で、画一的な栽培方法から、他の産地とはことなった、こだわりのある栽培形態などについて、研究・流通機関などの協力を受け、研究していくべきである。
【小池委員】
- 今後、農村集落が消滅してしまう限界集落が、増加してくる。とにかく、農村は疲弊している。
- 特に、鳥獣害は人間と共生する状況ではなく、被害が深刻であり中山間地では、大きな問題である。
- 遊休農地対策として、バイオマスの活用を国も含め、十分検討すべき。
- 中山間の集落の維持には、都市との交流、消費者との結び付きが大切で、グリーンツーリズムなど地域の活性化も大切。
【小松委員】
- これからの方向性として、集落営農を引っ張る地域リーダーの育成、消費を考えた安全安心な食料生産、農村の機能を守る、3点が大事。
- 特に地域リーダーは、行政が集落の農業振興に関する業務を委嘱するシステムの創設も検討。
- 地産地消に合わせ、他の産業と連携し、農業生産の幅を広げることも必要。
- その他、価格安定対策や遊休農地対策など長野県の特性を踏まえた、対策が求められている。
- 数値目標は、県の自給率53%を80%に近づけ、学校給食など地場産の利用率の数値も検討。
- 地域別の発展方向では、農家だけでなく、非農家を巻き込んだ地域づくりを検討。
【佐々木委員】
- 縮小社会の時代に困難ではあるが、3つの視点を取り入れては、
- 1つは、農業と他の産業との連携による産業構造の構築、特に長野県は観光・食品加工業界との連携が重要。
- 2つは、差別化された農産物の割合を増やすべき、農産物の価格を上げるためには、個性のアピール、地域ブランドが重要。
- 3つは、農業がそばに感じられるライフスタイルの定着。長野県が長寿県である要因は様々だが、高齢者の就業率が高い、とりわけ農業である。団塊の世代などを新しい農業の力とし、60歳以上の方の多くが、農業に従事するライフスタイルをもっと定着させては、それが、食の問題、食育にも拡がる。
- 食では、イギリスで言われているバイ・ローカル、セル・ローカルの地域流通のほか、アメリカのCSA(Community Supported Agriculture)など、消費者と連携した契約取引により支えられる農業が盛ん。日本では、停滞している、これからは地域において、食を通じて消費者と連携した農業が大事。
【竹内委員】
- 消費拡大は、消費者が欲しい商品を欲しい形、欲しい量で、リーズナブルな価格での提供が大事
- 消費者が求めている商品、作物を作っていかないと消費拡大にはつながらない。
- 安全・安心をポイントとして、価格安定につなげる。
- 特に、長野県しかない商品開発。リンゴでもこの商品は長野県という商品が必要である。
- 小売業の地産地消的な地場野菜コーナーは、年々増加傾向であり、売り上げ比率で10~15%であるが、頭打ちになっている。
- お客様に支持される商品をどう作るかである。
【中澤委員】
- 農業改良普及センターの充実をお願いしたい。担い手、農業振興を考えたときに普及員が大事なため、人も増やしてもらうということである。
- 一人でも多くの農業者を育成していくためには、農政の施策を担い手育成に集中してもらいたい。
- また、すばらしい自然環境にある農業と観光をセッティングする検討も必要。
- 農協の問題だが、農協経営上、貯金や保健に力が入るのであろうが、農業生産販売や担い手育成に力をいれないと大方の農家の理解は得られない。
【羽毛田委員】
- 農業と観光が一体となっていかなければならないのではないか。
- 開田村が日本で一番美しい村と認定されたが、農山村の原風景があるからではないか。農林業あって、人が来てもらう場所になるのではないか。
- 農業農村があるから、観光業がある、他産業との連携を深める時代である。
【原委員】
- 豊かな自然が多い県で、子どもたちが元気で長寿をまっとうしていける、人づくりが大事。
- 栄養調査をしてみると野菜県でありながら、野菜摂取量がすくない。学校給食で子どもに教えて逆発信の形になる。
- 地産地消では、なかなか長野県の特産品が出てこない。
- 高齢者・団塊の世代がターゲットだが、零細な農業でも採算があう仕組みづくりの検討が大事。
- 鳥獣害は、森林と農地の境界の明確な分離が必要。
【藤原忠彦委員】
- 農家も商品農業に傾斜して、食と農が分離している。消費者・生産者とも食と農の一体化した認識を醸成すべき。
- 地産地消は、流通システムを含め、長野県の食料自給率の実態を掘り下げ、地産地消のエリアを大きくすることが、地産地消のパイを大きくする。
- 農村の自立、農家の自立が盛んに言われるが、農家の経済支援をしていくことは難しく、農村社会の自立は、風景や風土を守ることで、もっと大変であり、地域産業を通じて守ることを、続けなないと、農山村はもたない。
- 農村対策は逆を言えば、都市政策である。都市政策のために農村政策があると国民に認識させることで、農村政策は永久に保護政策をしていくべきではないか。
- 生命産業を守るたことは、教育や福祉と同じという意識でやらなければ、農山村は枯渇してしまう。
【藤原勇三委員】
- 国内の消費人口は減ってきているわけで、右肩上がりの生産はあり得ない。国内市場だけの振興計画ではなく、外に向けた計画も必要
- 農業農村の持続的な発展には、多様な担い手の育成確保と農業生産基盤の整備が大事
- 安全安心はトレーサ・ビリティの確立、また、県の食料自給率を設定するなど地産地消の計画的な推進が重要。
- 安全な村づくりでは、防災対策としてハザードマップ、地すべり地域、ため池などのマップ作成が大事。
- 農村の地域資源の有効活用では、荒廃地対策で、水田には米をつくり、超多収米でバイオ燃料とする計画も検討しては。
【堀委員】
- 本県の農産物は、夏秋であり9割が県外でお金を得ていく産業である。そこを意識して、活力を高めることが必要。
- 人口減少社会で、消費量の拡大が望めない時代、農産物は過剰、10年で2~3割価格が低下し、農家の所得減少につながっている。まず、競争力を高めていくことが大事。
- 競争力を高めるため、生産性を高める。低賃金の労働力を使う法人化が進んでいる。外国人労働者を含めた受け入れ態勢は重要ではないか。
- 次に、守りから攻めへの転換。補助金も限度があるわけで、活力がある方向にどう使うか見直す。
- できたものを売る時代から、求めているものを作らないと売れない時代であり、マーケットから生産に入ることが大事。
- 市場法の改正もあり、今後は、提案型の販売、契約的な販売が増える。価格を決め供給する契約取引が、今は2~3割、将来はさらに4割になってくるかもしれない。この販売競争力を高めることが大事。
- だが、契約取引では、天候に左右される青果物にリスクがある。契約取引でのリスク軽減の支援策も大事。
- 観光を含めた長野県のブランドイメージをどう宣伝していくかが大事、今は、不足している。
- 地産地消では、観光県で、大農業県といわれながら、葉菜類に偏った生産が強すぎる。消費は小量多品目に変わっている。
- その他、地球温暖化対策。長野のりんごも適地が変わってきている。的確に対応することの検討も必要。
【宮川委員】
- 普及員の充実は、担い手対策上、特に重要。
- 果樹農家では、夫婦二人のうち、どちらかが病気になったり、ひとりになると経営が立ち行かない。荒廃農地にしないためにも、稲作のような作業受託などを、果樹にも導入できないか。
- 農業委員、理事、参与、総代など、女性登用が進んでいるが、果樹の選果場役員に、女性の登用が進まない。
【山崎委員】
- 国の品目横断的経営安定対策の採択基準のハードルが、個人でも集落営農でも高い。
- 特に、集落営農の経理一元化は課題である。今後は、行政・JAと一体化で町をひとつの集落として考えることも必要。
- 遊休荒廃農地対策で、資金不足、土地所有者の権利意識、農業の魅力低下により、受益者や地域からの同意が得られにくく、復旧事業が進まず、回復できない。
- また、都会からの移住者は遊休農地復旧を「自然破壊」という論理で、反対運動が持ち上がってしまう。
- 地区部会においては、地域の特色ある観光と農業をどう結びつけていくかが大事。
【山田委員】
- 振興計画は、若い農家のやる気を促し、計画を実践する担い手の育成が鍵。
- 認定農業者制度も、それぞれの経営改善計画が実現できているのか。優良な事例を参考に指導すべき。
- 家族経営を継承していきたい、後継者が積極的に経営を継承したくなる、もうかる、魅力的な農業経営を育成すべき。
- 環境に優しい農業の減農薬減肥に取り組んで努力しても、生産効率のよい海外からの輸入作物に勝てないのが現状、国産を消費者が好んで買う社会に行政は誘導すべき。
- 日豪FTAの締結は、日本の農業にとって、大きな影響があり、問題である。
- 観光と農業の連携には、まず、その地域の伝統ある行事、お祭りを進めている人の意見を聴取すべき。
【横山委員】
- 食の量的・質的安全・安心を柱にする。
- 二番目は農地の宅地化、市街化に何らかの歯止めをかける。
- 基本的な施策として、東北で旅館からでる食品残渣を集めて堆肥化し、その堆肥で農家が野菜をつくり、それをまた旅館に提供して循環するシステムがある。食品リサイクル法で一定業者の20%以上がうたわれているが、有機質循環でブランド化を検討しては。
- トレーサ・ビリティでは、消費者が全部確認しなくても、信州産は安全な農産物であるという、信州ブランドの確立を検討し、環境認証も積極的に拡大すべき。
- 会社組織で、遊休農地を借りて、就農希望者を受入れる体制づくりなどの検討。
- 教育ファームでは、修学旅行で、滞在型の観光の受入れも検討
- 地産地消では、県内加工業者・外食産業・ファーストフードと連携し、県産食材の使用量を高める指標の設定などを盛り込む。
【米山委員】
- 担い手育成には、普及センターの充実が必要。
- 特に、経営目標を意識した農家の経営改善(技術力・経営力)が重要。
- 消費拡大には、他産業とのコラボレーションによるPR活動も検討。
- 食の大切さは、子供はもちろん、大人や消費者の理解の高まりが必要。それには行政の啓発活動が最も大切
【鷲澤委員】
- 農業を自立させる。もうかる農業を目指す。これが全て
- そのために、農業経営基盤の強化。特に、長野市では、集落営農組織の育成と農業公社を設立する。公社は、農業委員会等の業務の一元化、JAができない部分を引き受ける。
- 中山間地域の活性化の受け皿組織の支援として、中山間地域の直接支払、有害鳥獣の対策強化を実施。特に、都市住民との交流が大事。農家民宿をPRする。修学旅行の受け入れなど好評。今後は、体験プログラムの充実、グリーンツーリズム指導者、空き家の利用、旅行業者との連携が必要。
- 儲からなければ後継者は生まれない。出稼ぎのように、山間地から市街地に来るのも必要。
- 個人的には、中山間地向けに、地域を維持するため、農業をやりながら、行政の仕事を手伝っていくようなシステムづくりを検討したい。これを中山間地域でやらない限り人がいなくなってしまう。
- 遊休農地の復元と有効活用として、小麦、大豆、そばの奨励補助金により、遊休地の増加防止を図っており、大変、効果が上がっている。
- さらに生産した小麦・大豆・そばを原料として市内の食品産業で使う。地産地消である。
- 農業は生産性を上げて、将来性がある産業にしない限り、再生できない。
- マーケティング的に、商品別、価格別、どれくらい何を作れば、産業として、成り立つのかを県は示すべきでは。
- 今後は、契約栽培が主流になるのではないか。農協が契約栽培で買い、市場がリスクをもつなど。契約栽培で農業も確実に計算できる産業にしていかなければならない。
- 農業は低生産性であるので、補助がない限りはやっていけない分野。これは海外との競争。補助の体制がどうあるべきかは、国、県で考えていただきたいと思う。
- 林業とも連携し、森林環境税は大賛成で、都市にきれいな水、癒しを提供しているから税をかけ補てんしないと、農業農村は成り立たない。
4 議事録 (PDF形式、101KB)
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