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更新日:2023年9月7日
環境保全研究所
この講座は毎年同じ時期に同じ場所でセミのぬけがらを集め、それらの種類や数を調べ、気候変動など環境の変化との関係について親子で考えるきっかけになればと、2012年から県内6会場で開催しています(図1)。今年は、8月1日(火曜日)の市立大町山岳博物館(大町市)を皮切りに、8月6日(日曜日)まで毎日1会場で行いました。酷暑の中、大変ありがとうございました。
図1自然ふれあい講座の会場位置。1:長野市川中島古戦場史跡公園(約350m)、2:大町市市立大町山岳博物館(約780m)、3:上田市市民の森公園(約910m)(2022年から)(2021年までは染屋の森(約500m)、4:松本市アルプス公園(約760m)、5:伊那市鳩吹公園(約950m)、6:飯田市かざこし子どもの森公園(約610m)。
会場(公園や雑木林)で参加者全員が40分程セミの抜け殻を採集し、セミの種類ごとに数を数え、他の地点や過去の結果と比較しました。全6会場で115人(うち、子ども66人)の方に参加していただき4036個の抜け殻を集めました。集計後に、セミの生態や地球温暖化と身近な自然の関係について学習しました。
日時 | 会場 | 参加数 | 担当職員(自然環境部) | |
---|---|---|---|---|
第1回 |
8月1日(火曜日) 午前10時~12時 |
大町市 市立山岳博物館 |
8名 |
栗林正俊・堀田昌伸 |
第2回 |
8月2日(水曜日) 午前9時~11時 |
飯田市 かざこし子どもの森公園 |
23名 |
堀田昌伸・栗林正俊 |
第3回 |
8月3日(木曜日) 午前10時~12時 |
伊那市 鳩吹公園 |
17名 | 高野宏平・栗林正俊 |
第4回 |
8月4日(金曜日) 午前9時~11時 |
松本市 アルプス公園 |
15名 |
浜田崇・高野宏平・陸斉 |
第5回 |
8月5日(土曜日) 午前10時~12時 |
上田市 市民の森公園 |
13名 | 堀田昌伸・畑中健一郎 |
第6回 |
8月6日(日曜日) 午前9時~11時 |
長野市 川中島古戦場史跡公園 |
39名 |
畑中健一郎・浜田崇・陸斉 |
長野県環境保全研究所
自然観察指導員長野県連絡会・セミの抜け殻しらべ市民ネット
飯田市美術博物館・かざこし子どもの森公園・大町市立大町山岳博物館・松本市・松本市教育委員会・自然観察の会ひこばえ・TOYBOX・伊那市・上田市・上田市教育委員会・豊かな環境づくり上小地域会議、NPO法人やまぼうし自然学校・長野市・長野市立博物館
天候にも恵まれて、楽しみながらセミの抜け殻探しができました。集めた抜け殻の分類は、担当職員やボランティアスタッフがサポートし、各自でやっていただきました。
信州に生息する12種類のセミやセミの生態、「セミの抜け殻探し」のこれまでの結果について解説しました。毎年継続することで、みんなで集めたセミの抜け殻から地球温暖化の影響がみえてくるかも知れないことを学んでいただきました。
ヒマラヤスギに鈴なりにぶら下がっているヒグラシの抜け殻。(伊那会場)
抜け殻は木の上ばかりじゃない、地面にもたくさん落ちているよ。(飯田会場)
結果発表、誰がチャンピオンかな?(松本会場)
図2各会場におけるセミの抜け殻の総数(上の数字)と各種の割合。上田_1は染屋の森、上田_2は市民の森公園を指す。
今年は、飯田ではその会場で過去最高の997個の抜け殻を収集しました。また、上田では昨年から会場を市民の森公園に移しましたが、今年も抜け殻数も種類も多く多様性の高いところで、参加した皆さんに楽しんでもらえたのではないかと思っています。
さて、今年の報告では、各会場の環境と観察されるセミとの関連に少し触れて見たいと思います。どの会場も子どもたちに安全に楽しんでもらうために、整備された公園や博物館の敷地を利用しています。その中でも、鳩吹公園のように整備された公園以外に隣接する林でも採集するところや、アルプス公園のように草刈りされてない場所が混在するところ、2021年まで会場だった染屋の森はあまり草刈りされず小川沿いの日陰が多く湿潤な環境のところもあります。また、標高も異なり、最も標高の低い川中島古戦場史跡公園(約350m)から最も標高の高い鳩吹公園(約950m)まで様々です。今年のセミの抜け殻結果をみると、どの会場もアブラゼミの割合が高いのですが、アルプス公園や染屋の森のようにミンミンゼミの割合が高い会場もあります(図2)。標高の高い鳩吹公園、上田市民の森公園、市立大町山岳博物館では、山地帯に生息するエゾゼミが一定の割合で採集されます。毎年、鳩吹公園ではヒグラシの抜け殻が多く採集され、今年も142個(28.9%)が採集されました。多い年には8割を超えることもあります。実は、公園内にある特定のヒマラヤスギに毎年多くのヒグラシの抜け殻がつくためです(写真1)。ご存じのように、セミの幼虫は長い年月土の中で過ごします。そのため、その土地がどのように利用されているかに大きく左右される可能性があります。アンケートの中に、「ミンミンゼミは鳴いているのに、抜け殻がないのはなぜ?」といった気づきのあった子もいました。セミの成虫は飛ぶことができるので、羽化した場所からはなれて鳴きます。そのため、セミの生活にとって重要な環境(土の中)のことを考えるときには、抜け殻がどこにあるのかをみることが重要かなと思います。
参加者のアンケートをみますと、講座に満足(95.3%)、おおむね満足(3.1%)を占め、「二回目の参加で、(子どもたちに)今年の参加を伝えると大変喜んでいました。来年も参加したい。」、大町と松本の2会場に参加した方からは「大町と松本で取れる種類の数が違って面白い。」など多数の意見をいただきました(表1)。
表1講座内容についてのアンケート結果
会場 | 大町 | 飯田 | 伊那 | 松本 | 上田 | 長野 | 合計 |
満足 | 4 | 12 | 13 | 5 | 8 | 19 | 61(95.3%) |
おおむね満足 | 1 | 1 | 2(3.1%) | ||||
普通 |
1 | 1(1.6%) | |||||
やや不満 | |||||||
不満 |
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