ここから本文です。
更新日:2023年7月11日
奈良井川改良事務所
河川改修計画を策定する際には、沿川の自然条件や社会条件、本川支川を含めた流域全体のバランスを考慮しつつ、河川の重要度や過去の災害履歴などから、どの位の流量を流せるようにするかを決定する必要があります。
川の水は下流ほど多く集まるため、支川より本川、上流より下流ほど多くの流量を流せるようにする必要がありますし、さらには、沿川の社会的、経済的重要度が高いほど、洪水被害発生に対する安全性を高める必要があります。
このようにして河川改修の目標となる流量を流域全体で検討し、それに基づく具体的な河川整備方法を定めたものが全体計画です。
河川改修にあたり、まず、改修のレベル(=計画規模)を決めます。計画規模は「何年に一度の割合で発生する大雨による洪水に対して安全な川にするのか」という目標で表されますが、この「何年」にあたる数字が大きくなるほど計画規模も大きくなります。ちなみに計画規模を治水安全度とも呼びます。
国が管理している河川では、計画規模を100年から200年に一度(1/100~1/200)としていますが、県の管理河川では、各河川の重要度に応じて計画規模を決めており、奈良井川流域では80年に一度(1/80)としています。
計画規模が決まると、それに相当する洪水の流量を算出します。奈良井川流域における過去の気象データや観測データを統計的に解析し、80年に一度の割合で発生する洪水とはどの程度の雨量によるものかを推定します。そして、この降雨が起きた場合に各河川に最大どのくらいの水が流れるかを計算したものが「基本高水流量」です。
基本高水流量をそのまま流すことができるように川の断面を広げることが一番理想的ですが、住宅やビルが立ち並ぶ市街地で川幅を広げようとすれば、用地買収や建物の移転、数多い橋の架け替えなどに莫大な費用が必要となります。例えば、中上流部にダムや遊水池といった施設を設け、それらの施設に洪水を一時的に溜め、ある程度の時間差を付けて下流に流し出すことにより洪水水量を分散し、下流市街地に至る流量を減らすことで河川断面の拡大を最小限にすることができ、経済的にも有利となる場合があります。このダム等の施設により低減されたあとの最大流量が「計画高水流量」(単に「計画流量」とも呼びます。)となり、堤防や護岸整備といった河川計画の目標となります。
それぞれの河川で、計画高水流量を流すことができるように断面と縦断勾配を検討し、これを基に改修計画を立てています。断面の基本形を示したものが次の図です。
奈良井川(田川合流点付近)
田川(松本電鉄鉄橋付近)
鎖川(大久保工業団地付近)
女鳥羽川(松本商工会館付近)
薄川(JR鉄橋付近)
奈良井川流域の下流域は松本市の中心市街地にあたるため、どの河川も拡幅するには建物の移転が必要となり、それらの補償や用地買収等莫大な費用が必要となります。このため、下流部では川幅を広げずに川底(河床)を掘り下げることで必要な断面を確保する計画としています。
また、松本市街地は、湧水の豊富な扇状地に形成され、地下水位が高いことが特徴です。河床を掘り下げると地下水位が下がり、井戸枯れや地盤沈下が懸念されるため、地下水対策を並行して行っていく必要があります。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください