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更新日:2023年1月30日
水産試験場
外来生物のすべてが問題というわけではありません。地域の自然環境などに大きな影響を与える場合が問題なのです。
たとえば、
・在来生物を食べてしまう。
・近縁の在来生物と交雑し、雑種をつくってしまう。
・在来生物の生育環境を奪ってしまう。
・在来生物の餌を食べてしまう。
・毒を持っていたり、人を刺したり、かんだりする。
・農林水産物を食べたり、畑を踏み荒らしたりする。
このように、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物の多様性を脅かす外来生物を、「侵略的外来生物」といいます。
微妙なバランスのもとに成り立っている生態系や人の生命、身体それから農林水産業などへ影響を与えることが問題なのです。
外来魚の場合の問題点を代表的な侵略的外来生物であるブラックバスとブルーギルを例にあげると・・・
・口に入る大きさの在来の小魚、昆虫、エビなどを食べてしまう。
・稚魚は、在来魚が食べるミジンコなどのプランクトンを食べるため、
餌の奪い合いになってしまう。
・漁師の漁獲対象の魚(ワカサギなど)を食べてしまう。
・ブラックバスのひれには、鋭いとげがあり、刺さると危ない。
なぜこのような問題が起きてしまうのでしょうか?
ブラックバスの産卵床(大町市木崎湖5月下旬) |
第一に在来魚との生活様式の違いがあります。
ブラックバスやブルーギルは、オスが産卵床という巣をつくり、そこにメスを誘って産卵します。産んだ卵は、オスが他の魚から守ります。これは卵がふ化した後、仔魚(しぎょ)になってもしばらく続きます。
このことは、成魚にまで生き残る確率が高く、増えやすいことにつながります。
ブラックバスは肉食性で自分の体の半分くらいの長さの魚まで食べることができます。50cmくらいまで成長するブラックバスに比べて、在来魚はコイやフナなどの一部を除くと小型です。つまり、大型のコイやフナ以外はみんな餌になってしまいます。魚以外にもエビや昆虫も良く食べます。
ブルーギルは雑食性で、魚の卵が好物です。産んだ卵を守るブラックバスやブルーギルと違って在来魚は卵を産みっぱなしにする種類がほとんどです。これらは、みんなブルーギルに食べられてしまいます。
ブラックバスの胃袋から出てきたもの | ||||
エビ |
ワカサギ |
モツゴ |
タナゴ(上) オオクチバス(下) |
ヤゴ |
ブラックバスとブルーギルがいる場所では、小型の魚は食べられてしまい、コイやフナの成魚のみが生き残ります。これらの大型魚は産卵しますが、生んだ卵はブルーギルに食べられてしまいます。運良くふ化しても、一足早く生まれたブラックバスの稚魚のちょうどいい餌になってしまいます。また、稚魚の餌は在来魚、外来魚ともミジンコなどのプランクトンなので餌の奪い合いになり生き残るのは大変です。
小さな溜池などではこの傾向がはっきり現れ、大きなコイとブラックバスとブルーギルしかいない状況がしばしば見られます。
在来魚の中にもナマズやウナギなどの肉食魚はいますが、なぜ、彼らは問題にならないのでしょうか?
考えられることとして、つきあいの長さがあげられます。彼らは、肉食魚であっても日本の在来魚の一員として代々長い時間をかけて進化してきました。つまり、お互いを良く知っていて、上手くやってきたわけです。
ブラックバスやブルーギルも原産地のアメリカでは現地の魚たちと上手くやってきたに違いありません。しかし、日本の在来魚はブラックバスやブルーギルの怖さを知らないため、ブラックバスにとっては目の前に無防備な餌が食べ放題の状態で、ブラックバスやブルーギルもまた手加減を知らず食べまくってしまった結果、在来の生態系が変化してしまったのではないでしょうか?
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