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更新日:2024年10月1日
水産試験場
卵の水カビ防除には、「パイセス」を使用してください
水産用医薬品の使用に関して薬事法及び薬事法関係省令が大幅に改正され、平成17年(2005年)7月31日をもってその猶予期間が終了し、未承認の水産用医薬品は使用できなくなっています。マス類の卵の水カビ防除剤として長く使用されてきたマラカイトグリーンは未承認の薬品であるため現在は使用できません。その代替薬としてノバルディスアニマルヘルス社から新たに水産用医薬品である「パイセス」が発売されています。卵の水カビ防除には必ず「パイセス」を使用してください。
「パイセス」の成分はブロノポール(C3H6BrNO4)で、化粧品などに抗菌性保存剤として汎用されており、卵消毒剤としては既にイギリス、ノルウェー、カナダ、チリなど10か国以上で使用されている実績のある薬剤です。「パイセス」の用法・用量は次のとおりです。
★薬浴時期:受精翌日から発眼卵として検卵するまでの毎日
★薬浴時間:規定濃度に達してから30分間の薬浴
★薬液濃度:用水1Lに「パイセス」0.1mLを混合
滴下時間(分) = 卵収容槽容量(L) ÷ 流量(L/分) + 30
薬剤必要量(mL)= 〔流量(L/分)×滴下時間(分)+ 滴下用水槽や配管(注水路)容量(L)〕 ÷ 10
「パイセス」の作用は穏やかで、水生菌の繁茂を強くは抑制しません。水産試験場の実験では、毎日、2日に1回、3日に1回、無処理の水生菌付着率はそれぞれ0.2、4.1、9.1、32.6%でした。やはり毎日処理が必要でしょう。「パイセス」をより効果的に使用するには水生菌が繁茂しにくい状況を作ってあげる必要があります。親魚の選別間隔を今までより短くし、良卵を得る。採卵時には血液、壊卵を取り除き、洗卵をきちっと行う。受精後、精子を流してから吸水を十分に行い、収容するなど、原点に戻った卵管理を行ってほしいと思います。
薬剤経費について、滴下によるかけ流し方法の事例で積算してみました。20日間処理するとして卵1万粒あたり約300円の経費がかかりました。また、バスポンプなどを使用して薬液を繰り返し使用する循環方法でも効果が期待できます。循環方法の経費は約100円でした。ただし、実施に当たってはエアレーションを行うなどして卵が酸欠にならないよう注意してください。
「パイセス」は使用が始まったばかりの新薬です。いろいろ問題が出てくるかと思いますが、みなさんと一致協力して問題を解決していきたいと考えています。各養魚場の施設はそれぞれ異なりますので、水産試験場としては個別に対応する予定でいます。遠慮なくご相談ください。
(環境部 降幡充)
【参考事例:40万粒収容した水槽を2槽、計80万粒を処理した場合】
1 注水量(L/分:卵1万粒あたり0.5L/分の注水が必要として)
40万粒×2槽×0.5=40L/分
2 滴下時間(分)と薬剤量(mL)
卵収容槽200Lが2個:400L、注水流量:40L/分
滴下時間(400÷40)+ 30 = 40分 薬剤量 〔(40×40)+ 10 + 50〕÷ 10 = 166mL
3 用水10Lを入れた滴下用バケツに薬剤166mLを入
れ、希釈する。希釈薬剤を40分間かけて滴下する。
4 卵1万粒あたりの経費
1回当たり:(7250円×166mL÷1000mL)÷80万粒=15.04円
発眼期まで20日間:15.04円×20回=300.9円
水産だより第25号(平成17年(2005年)12月発行)に掲載したものです。
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