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更新日:2021年7月5日

水産試験場

水田での食用ブナ養殖 ~ 施肥から取上げまで ~

 水産試験場佐久支場

 水田での食用ブナ養殖は、水田利用再編対策を契機に、稲作生産調整用の転作作物として昭和53年頃から佐久地域の水田で取り入れられてきたもので、その基礎となったのは「稲田養鯉(とうでんようり)」と称して培われてきた水田でのコイの養殖技術と、改良ブナと呼ぶ食用ブナの誕生でした。
 今でも佐久地域では、毎年200戸近い農家がこの食用ブナを養殖しています。また、駒ヶ根市などでも、規模は小さいですが水田で養殖が行われています。

水田の構造と収穫量

 生産力の面では稲を全く植えないで全面を飼育池にする全面転作田が最適ですが、部分的に転作した稲作田や通常どおりに稲を植え付ける稲作田でも養殖は行われています。事前に畦畔を補強して、全面転作田では30cm以上、稲作田でも15cm以上の水深は確保します。収獲量は基本的には水深に比例しますが、その年の気象条件や飼育技術の差などによって異なりますので、全面転作田で150~250kg、稲作田で50~150kg(いずれも10a当たり)を目安に考えます。

作業の実際(図参照)

 (1) 動物プランクトンの培養
 5月に入ったら動物プランクトンを発生させる準備を始めます。図には全面転作田での作業手順を示しましたが、稲作田では中旬頃に田植えの作業が入ります。
なお、施肥は水の中の栄養分(NやP)を高め、ミジンコなどの繁殖を長続きさせるために施すものなので、毎年フナを養殖して地力の肥えた水田では省略します。この時期に水を溜めると昼間の水温は20~25℃に温むので、プランクトンは10日もすれば発生してきます。

(2) 採卵(親ブナ放養)
 フナの採卵は、5月下旬の好天時をねらって行います。それまで流水池で蓄養していた親ブナを、水温が20℃前後に温んだ魚溜りの囲い網の中に移してやると、温度と移動の両方の刺激が加わって1~2日のうちに産卵が始まります。産卵巣にはバイカモなどの水草を使いますが、放養が午後になると産卵が翌々日にずれ込むので、翌日の採卵を計画している場合は、必ず早朝に作業を行います。
 親ブナには、改良ブナと呼ばれるフナを水田10a当たり10~20kg使用します。改良ブナとは、緋ブナの種苗生産の過程で出現した黒いフナを親に、当場が昭和47年頃から選抜育種してきた食用ブナの系統で、体に丸みがあり、骨が柔らかい特徴があります。手に入らなければ、川や湖などで採取したギンブナ(マブナ)を親として用いても構いませんが、雄の出現率が極端に少ないことから、生産効率は低下します。

(3) 給餌管理(ふ化~取上げ)
 卵は4~6日でふ化しますが、プランクトン量が極端に少ないとふ化直後から餌不足による減耗が生じます。このため、動物プランクトンはフナのふ化に合わせてたっぷりと発生させ、ふ化から3日間はたっぷりと食べさせることが大切です。
 ふ化から5日ほど経過したら、コイ用の粉末飼料を1日3回水面に散布して、配合飼料に餌付けます。7月に入ったら配合飼料を粉末からペレット(コスト削減)に切り替え、水で練って団子状にした餌を田の周囲に置いていく置き餌方式で、9月上旬まで給餌管理を続けます。
 注水は動物プランクトンが見られなくなったら始めますが、注水量はフナの生育に合わせて徐々に増やす必要があります。7月に入ったら酸欠防止のために夜間の注水を始め、8月以降、収獲までは常時注水に切り替えます。
 このほか、飼育密度が高くなる8月は魚病やサギによる被害に十分留意します。

(4) 取上げ(落水法)
 水田の水を落として徐々に減水すると、フナは水流に逆らって注水口の魚溜りに集まるか、水と一緒に排水口めざして流れ下ります。あらかじめ水田内に溝を掘っておくのは、フナの通り道を確保してこの2か所にフナを誘導し、効率的にフナを取上げるためですが、フナを傷めないで短時間に作業を終わらせるためにはある程度の人手が必要となります。

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水田フナ養殖の手引き(PDF:1,308KB) 

食用ブナの消費動向

 収穫されたフナは農協等に集荷され、活魚1kg入りの酸素詰めパックでスーパーなどの店頭に並び(店頭価格約1,800円、農家手取り約1,300円)、甘露煮にして賞味されます。佐久地域や駒ヶ根市では依然として根強い消費動向がありますが、新たに養殖を試みようとする地域では、消費を開拓する意味で、ある程度の産地化をめざす必要がありそうです。

 月刊誌ながの「農業と生活」(長野県農業改良協会)平成19年3月号に掲載 




 

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所属課室:長野県水産試験場 

長野県安曇野市明科中川手2871

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