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更新日:2024年3月28日
林業総合センター
大矢信次郎・田中裕二郎・柳澤賢一・加藤健一
人工林における小面積皆伐後の更新を低コストで行う方法として,アカマツの天然更新を検討した。諏訪市の民有林3カ所において,高齢アカマツ林を20~25本/ha保残して伐採し,その後発生したアカマツ実生の消長と樹高の推移を調査した。その結果,地表処理を行った試験地では尾根・平衡斜面ともに多数のアカマツ実生が発生・定着したが,地表処理を行わなかった試験地では尾根でのみ多数の実生発生が認められ,A0層の堆積がアカマツ実生の発生及び定着を阻害することが示唆された。また,再造林地における競合植生のうち収益を上げられる樹種としてタラノキに着目し,その発生動態と管理方法を検討した。地拵え方法別に植栽面と地拵え棚におけるタラノキ発生密度を調査した結果,特にバケット地拵えの棚でタラノキが集中的に発生し,その密度は1万本/ha前後であった。タラの芽を持続的に収穫するためには,タラノキをバケット地拵えの棚において集中管理することで植栽木との競合を避け,なおかつタラノキの樹高を低く保つためには,タラの芽収穫後の5月頃,2年ごとに根元から切り返しを行い,株を更新させることが有効と考えられた。
キーワード:アカマツ天然更新,低コスト再造林,バケット地拵え,タラノキ,切り返し
柳澤賢一・清水香代*・戸田堅一郎*・田中裕二郎*・岡田充弘*
被害先端地や標高800mを超える高標高地におけるマツ材線虫病被害の推移と防除対象となる媒介昆虫種を把握することを目的とし,被害が激害化している松本地域における被害の程度別および標高別の媒介昆虫種とその保持線虫種等を調査した。その結果,冷涼な気候でも生息できるカラフトヒゲナガカミキリは標高800~1,000mでマツノザイセンチュウを保持していたがその保持頭数は少なく,標高1,000m以下では被害の進行とともに媒介昆虫種がマツノマダラカミキリに短期間で置換したと考えられたことから,この標高帯の主な本病媒介者はマツノマダラカミキリであると結論した。一方,カラフトヒゲナガカミキリは少なくとも標高1,400m付近までは標高の制限を受けることなく繁殖できることに加え,被害の拡大速度とマツノマダラカミキリへの置換は標高が上がるほど遅いと推測されたことから,高標高側の被害先端地ではマツノザイセンチュウを保持したカラフトヒゲナガカミキリが出現する可能性があった。
キーワード:マツ材線虫病,被害先端地,高標高地,マツノマダラカミキリ,カラフトヒゲナガカミキリ
増野和彦・城石雅弘*・中村美晴*・古川 仁
美味しいきのこ生産技術の開発のため,味認識装置による味分析を活用して,ナメコの優良育種素材の選抜及び流通・保存技術の開発に取り組んだ。その結果は,以下のとおりである。(1)食味官能評価によって,ナメコ野生子実体の味が美味しいと評価された。(2)美味しいと評価された野生ナメコ子実体は,味分析により「苦味雑味値が小さく旨味値が大きい」ことが分かり,これを美味しいナメコの評価基準とした。(3)一定の栽培効率性のある野生菌株から,味分析による評価基準に基づき美味しいナメコの優良育種素材を選抜した。(4)味分析の結果,ナメコの過度な水洗いが苦味雑味値を増加し旨味値を低下させることが分かった。(5)味分析の結果,3℃の冷蔵によってナメコの旨味値が増加する傾向を確認した。
キーワード:ナメコ,味認識装置,官能評価,菌床栽培,原木栽培
-過熱水蒸気処理材の寸法安定性,強度性能,材色について-
奥原祐司・吉田孝久・今井信・山口健太・小池直樹・吉川達也・丸山淳治*・桑山知子**
環境への負荷が低い製品使用が今後期待されることから,県産針葉樹4樹種(カラマツ,アカマツ,スギ,ヒノキ)を木材改質処理装置により過熱水蒸気処理し,製品化に必要な処理方法と処理材の諸性能を検討した。
その結果,(1)過熱水蒸気処理により含水率は1~2%となり,収縮率は,4樹種とも幅(接線方向)及び厚さ(半径方向)で6%前後となった。(2)吸水率は,中温乾燥材に比べ過熱水蒸気処理材の方が5割程度低下していた。また,カラマツの吸水率は,他の樹種に比べ低い結果となった。(3)曲げ強さは,中温乾燥材に比べ過熱水蒸気処理材の方が低かった。(4)過熱水蒸気処理材の材色は,明度が低下し黒色化した。また,カラマツについてはこの傾向が強かった。(5)乾湿繰り返し試験における寸法変化では,中温乾燥材に比べ過熱水蒸気処理材の寸法安定性が高かった。
キーワード:過熱水蒸気,寸法安定性,材色,高耐久性
―県産広葉樹材の異樹種混載乾燥スケジュールの検討及びニセアカシア材の利用方法の検討―
山口健太・奥原祐司・小池直樹・吉川達也・今井信・吉田孝久
県内産15樹種の広葉樹について,少量多樹種に対応した異樹種混載による人工乾燥試験と,低コスト乾燥術として天然乾燥+ガラスハウス乾燥試験を実施した。また,ニセアカシアについては利用方法を検討するため,高付加価値化のための黒色化乾燥スケジュールの検討を行い,製品の試作評価を行った。
その結果,異樹種混載による人工乾燥試験において,80℃中温乾燥により全乾燥時間334時間(約14日間)で,30mm厚の広葉樹をどの樹種においても含水率10%以下かつ水分傾斜の少ない材に仕上げることができた。また,天然乾燥+ガラスハウス乾燥試験は,400~500日で30mm厚の広葉樹を10%以下の含水率まで低下させることができた。
ニセアカシアの利用方法の検討では,蒸気圧力併用式乾燥機により120℃19時間の過熱水蒸気処理を行い,内部まで重厚感のある黒色に変化させることができ,この黒色化を生かした製品の試作では,色合いも加工性もブラックウォルナットと同等の評価を得た。
キーワード:未利用広葉樹,異樹種混載乾燥,ニセアカシア,過熱水蒸気処理,ガラスハウス乾燥
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