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更新日:2024年2月2日
林業総合センター
大矢信次郎・近藤道治*・戸田堅一郎・中澤昌彦*・高野毅*・小林直樹
針葉樹人工林の健全な育成のための管理技術を確立するため,高齢級林分における間伐効果の検証を進めるとともに,人工林における施業が残存木に与える影響及び各施業の生産性を調査した。13齢級以上の高齢級人工林において間伐を行った結果,間伐後の直径成長効果は判然とせず,間伐率や間伐前の胸高直径との相関関係も認められなかったことから,長期的な観測が必要と考えられた。複層林における上木伐採時の下木損傷を軽減するために,高密度路網を開設し伐出作業を行った結果,下木損傷率を20%程度に軽減でき,さらに作業道上において伐倒木を転回せずに造材を行った場合には,下木損傷率を9%程度に軽減することができた。過去に列状間伐を行った林分において搬出間伐(点状)を行った結果,過去の伐採列内に伐倒できた立木は44%でこれらを集材する際には残存木に損傷を与えることはなかったが,過去の伐採列外に着地した伐倒木を集材した際には集材経路付近の残存木の樹皮に損傷が生じた。北欧製のハーベスタ及びフォワーダを使用した林内走行による列状間伐作業は,同システムによる点状間伐より残存木損傷率がやや高い傾向がみられたが,従来型システムと損傷率を比較した結果,有意差は認められず,その高い生産性からさらなる普及が期待された。
キーワード:高齢級人工林,複層林,下木損傷,列状間伐,残存木損傷
岡田充弘・大矢信次郎・清水香代・小山泰弘*
剥皮食害を中心とするシカによる森林被害を,痕跡などから被害レベル及び生息レベルを評価するとともに,既存の剥皮被害の対策技術の検証などを進め,被害レベルにあわせた効果的な対策の組み合わせを検討した。樹種ごとの剥皮食害の材部への影響は,カラマツが他の獣害同様に進行しやすかった。樹種別の剥皮嗜好性は,造林樹種ではヒノキが高く,樹種別に嗜好性の違いがあることが明らかになった。また同一樹種ではサイズが小さい立木が選択されやすかった。造林木,下層木の剥皮嗜好性,ササの食害状況などを指標として作成したチェックシートで調査を行い,シカの多寡,被害程度等が確認できた。植生回復のための侵入防護柵による囲い込みは,確実にシカを排除することと,小規模で設置することが効果的であった。
キーワード:ニホンジカ,剥皮食害,痕跡,被害対策
岡田充弘・清水香代・小山泰弘*・浦野忠久*
長野県におけるカツラマルカイガラムシによる被害は,被害地域から外側に拡大するだけでなく,何らかの原因で小さな範囲で突発的に増加したことに起因するものがあることが再度確認された。森林内においてカツラマルカイガラムシは,個体数が増加してもその後その増加が急激に進まない事例が確認され,大発生には通常の自然要因とは異なる要因が関与している可能性があった。被害が終息した箇所では,寄生蜂(Pteroptrix sp.)などの天敵の密度上昇によりカツラマルカイガラムシの密度が著しく低下し,被害の再発にはかなりの時間が必要と判断された。また,現行の殺虫剤樹幹注入処理を改善するため実施した高濃度殺虫剤少量注入処理試験では,現行の殺虫剤樹幹注入処理と同等の殺虫効果が確認された。
キーワード:カツラマルカイガラムシ,被害拡大,防除技術
増野和彦・高木茂*・古川仁・片桐一弘
LEDは,蛍光灯と比較して耐用期間が長く消費電力が少ないため,省エネルギー型の照明として,人々から大きな期待が寄せられている。そこで,ナメコ菌床施設栽培におけるLED利用技術を検討するとともに,新たな光利用技術の開発を合わせて図った。その概要は,以下のとおりである。(1)菌床シイタケ栽培の先行研究を参考に,ナメコ菌床栽培における培養後期の青色LEDの照射効果を検討した。その結果,以下の成果が得られた。これまで光を照射していなかったナメコ菌床栽培の培養後期に,青色LEDを12日間程度照射することで原木栽培に近い大粒のナメコ生産が可能なことが分かった。また,培養後期に青色LEDを15日間照射することで,収穫所要日数が7日間程度短縮することが分かった。さらに,現地試験を行い,これらの技術が利用可能なことを実証した。(2)培養前期の照射により,子実体原基が多数形成される現象を観察するとともに,暗培養と比較すると培養前期の光照射が子実体個数を増加させる傾向を確認した。(3)白色LEDを用いてナメコ菌床栽培の現地試験を行ったところ,白色蛍光灯を用いた場合と同等の結果が得られ,白色LEDが白色蛍光灯の代替品として利用可能なことを示した。(4)森林総研及び東工大と共同して,ナメコの機能性向上のため, 培養後期及び発生時の青色LED照射が,ナメコのビタミンD含有量及び抗酸化作用に与える影響を調べた。
キーワード:青色LED,省エネルギー,ナメコ,菌床栽培,白色LED
古川仁・増野和彦・高木茂*
菌床ナメコ生産の高付加価値化及び地域資源活用のための技術開発を行った。その結果は,以下のとおりである。(1)育種の素材となる遺伝資源収集を図り,ナメコ野生株61系統,その他野生きのこ19種125系統を採取し,分離・培養して保存に供した。また,収集したナメコ野生株を用いて試験栽培を行い,栽培特性を把握するとともに菌床栽培特性に優れた菌株を選抜した。(2)原木ナメコに近い大型ナメコを菌床栽培で生産する方法として,培養後期の高温処理が有効であることを実証した。(3)ナメコ菌床栽培の培地基材として,カシノナガキクイムシ被害材のおが粉の利用適性を栽培試験により確認した。
キーワード:ナメコ,空調施設栽培,優良育種素材,カシノナガキクイムシ
柴田直明・吉田孝久・山内仁人
新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「安全・安心な乾燥材生産技術の開発」(2009~2011年度)の一環として,カラマツとアカマツの120mm心持ち正角を試験対象とし,天然乾燥材と過度の高温乾燥材の曲げ強度特性を比較した。カラマツの過度の高温乾燥材は曲げ強さが著しく低下し,国土交通省告示第1524号の無等級材や機械等級区分材の基準強度を大きく下回り,目視等級区分材の基準強度もほとんど満たせなかった。よって,カラマツの過度の高温乾燥は避けるべきであることが再確認された。アカマツの試験体はいずれの乾燥材も曲げヤング係数・曲げ強さが小さく,過度の高温乾燥による強度低下は軽微であった。
キーワード:カラマツ,アカマツ,天然乾燥,高温乾燥,曲げ強さ
吉田孝久,今井信,柴田直明,山内仁人,高野弌夫*
スギ桁材の乾燥資料を整備することを目的に,4種類の乾燥方法で乾燥試験を行ないその乾燥特性について検討した。その結果,(1)乾燥後3ヵ月間の養生が前提であれば,弱加圧型高温乾燥ではおよそ5~6日間,蒸気・圧力併用型乾燥では,今回やや過乾燥であったことを考慮しておよそ4~5日間,高温セット+中温型乾燥ではおよそ14日間,高温セット+高温型乾燥ではおよそ5~6日間で乾燥材のほぼ8割は含水率20%以下に仕上がると思われた。(2)材面割れは,高温セットの効果により全ての乾燥方法で少なかった。
最も少なかったのは高温セット+中温型乾燥であった。(3)内部割れは終始高温乾燥であった弱加圧型高温乾燥と高温セット+高温型乾燥に,また,やや過乾燥となった蒸気・圧力併用型乾燥に多かった。
キーワード:高温セット,蒸気・圧力併用型乾燥,スギ桁材,材面割れ,内部割れ
吉田孝久,今井信
カラマツの同一丸太から4本の心去り平割材を製材し,A=天然乾燥(ビニールハウス乾燥),B=70℃乾燥,C=90℃乾燥,D=110℃乾燥(高温セットのみ110℃)を行い,乾燥特性と強度性能について検討した。調湿処理を行わなかった人工乾燥(B,C,D)では,高い温度により,短時間で乾燥するほど仕上がり含水率のバラツキが大きくなり,これを無くすためには,乾燥後の十分な養生期間が必要であること、または乾燥後の調湿処理が重要であることが示された。乾燥時間を長くした90℃と110℃の再乾燥試験では,含水率を15%以下に仕上げることができた。曲げ試験では,どの乾燥方法であっても国交省告示に示された無等級材の基準強度26.7N/㎟を上回っていた。しかし,人工乾燥材は天然乾燥材に比べ,やや曲げ強さが低下する傾向がうかがわれた。ブロックせん断試験では,どの乾燥条件であっても,せん断強度の平均値は木材工業ハンドブック¹⁾に示されたカラマツ無欠点材のせん断強度8.0N/㎟を上回っていた。
キーワード:カラマツ,平割材,乾燥温度,曲げ強度,せん断強度
田畑衛・柴田直明・吉野安里*・山内仁人・今井信・守口海*
乾燥に伴い生じるねじれと,強度と相関関係が高く構造用製材の強度等級区分にも用いられるヤング係数について,カラマツを対象に原木段階や製造工程の途中で選別する方法を検討した。ねじれは,剝皮丸太や心持ち材の製材後の段階において,材面の干割れが大きく傾いている場合,乾燥に伴い大きなねじれが生じる確率が高かった。ヤング係数は,丸太から乾燥後最終製品として心持ち正角に仕上げるまでの,各工程における決定係数を調べたところ,丸太と心持ち正角のヤング係数には正の相関が認められ,選別は可能であった。なお,曲げヤング係数の予測の精度を高めるためには,径の揃った丸太から1丁取りすることと,丸太材積をより正確に把握することが有効であると推察された。
キーワード:カラマツ,原木,選別,繊維傾斜度,曲げヤング係数
田畑衛・吉田孝久・今井信・山内仁人・柴田直明
同一等級の正角材を上下に貼り合わせた「基本型」を応用し,経済性や強度特性上の優位性を想定してエレメントを構成した4つのタイプの応用型接着重ね梁を作製し,曲げ強度試験等を実施し以下の結果を得た。(1)上部エレメントを,2mの正角材を縦継ぎした4mのカラマツの短尺材利用型では,曲げ強度性能は基本型との違いは認められなかった。(2)髄を内側に寄せて製材し,上下に成熟材の占める割合が多くなるよう貼り合わせたスギの偏心エレメント利用型では,成熟材率が30%以上の接着重ね梁は,曲げ強度性能が基本型に比べ高かった。(3)平角材の上下に同一丸太の辺材部から製材した2枚の板材を貼り合わせたカラマツの強度補強1.型,及び心持ち正角材の上下に正角材を2つに割った平割材を貼り合わせたカラマツの強度補強2.型では,1.型については基本型に比べ曲げ強度性能が高い傾向が認められた。しかし、2.型については曲げ強度性能の優位性が認められず,強度補強材に成熟材を十分に配置できなかったためと推察された。
キーワード:接着重ね梁,短尺材,偏心,強度補強,強度試験
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