ホーム > 長野県林業総合センター > 研究の成果 > 研究報告 > 研究報告39号(2025)

ここから本文です。

更新日:2025年3月19日

林業総合センター

研究報告39号(2025)

研究報告39号(2025)結合版(PDF:9,756KB)

大径・優良材生産を目指した人工林管理技術の確立(PDF:718KB)

大矢信次郎・二本松裕太・田中裕二郎*・小山泰弘

高齢級人工林において大径・優良材を生産するための管理技術及び成長予測技術を検討した。南佐久郡川上村の115年生カラマツ人工林において伐倒木の梢端部及び造材位置から円盤を採取し樹幹解析を行ったところ、樹高及び直径の成長は100年生を超えても継続していることが確認された。しかし、樹齢とともに成長は緩やかに減少していたことから、カラマツ人工林の伐期は120年程度にとどめることが妥当であると考えられた。また、13~14齢級時に間伐を実施し7~10年が経過したカラマツ、ヒノキ、スギの各人工林間伐試験地において毎木調査を行った結果、高齢級人工林においても樹冠長率を維持し直径成長を促すためには間伐が必要であることが示唆された。次に、航空レーザ計測によって得られた単木樹高データの利用を検討したところ、樹高曲線中心線の地位指数(40年生時の樹高)は式の種類に関らず約20であり、カラマツの標準的な樹高成長をほぼ反映し高齢級における樹高成長も持続する線形が得られた。この曲線をガイドカーブとして地位指数曲線を作成することにより、地位の優劣に対応した高齢級カラマツ人工林の樹高成長予測が可能となった。

キーワード:高齢級人工林、間伐、航空レーザ計測、樹高成長曲線、地位指数曲線

 

同一地域におけるニホンジカが出現しやすい環境条件の把握(PDF:715KB)

~景観スケールにおける亜高山帯針葉樹林の更新に及ぼす風倒撹乱と獣害の相互作用的影響~

小山泰弘・柳澤賢一・二本松裕太・三澤美菜

北八ヶ岳麦草峠周辺の亜高山帯針葉樹林で、自動撮影カメラによりニホンジカの行動を4年半にわたって調査したところ、無雪期(6~10月)は、調査地のどこかでほぼ毎日出現していたが、積雪期となる1~4月はほとんど出現しなかった。ニホンジカの出現頻度は調査地によって大きく異なり、頻度が高い場所では滞在時間が長く、ニホンジカが好む場所と避ける場所が存在していた。ニホンジカの好む場所は、主要な餌資源であるササやグラミノイドと呼ばれる餌資源となる植物の植被率が高い場所であることが多かったが、ササが優占し植被率が高くてもニホンジカが避ける場所があった。ニホンジカが避ける場所は、地面に足を取られるリスクがあるような歩きにくい場所だった。樹木の剝皮被害率は、ニホンジカが好む場所でも避ける場所でも差はなかった。ニホンジカの被害は、個体密度との関係が大きいことを考えると、ニホンジカが避ける歩きにくい場所は、個体密度が高い時期に入り込み、樹木を剝皮加害したと判断した。以上のことから、ニホンジカの個体密度を現在の麦草峠周辺と同程度に抑えることができれば、ニホンジカが避ける出現しにくい場所が生まれ、被害の回避につながるといえた。

キーワード:亜高山帯針葉樹林、ニホンジカ、ササ地、立木被害、個体密度

 

ニホンジカの季節別生息状況に応じた効率的捕獲の実証(PDF:1,246KB)

柳澤賢一・田中裕二郎*・小山泰弘

シカの効率的捕獲を進めるために、自動撮影カメラでシカの生息状況を時間的空間的に把握したうえでシカを捕獲しやすい条件を明らかにするとともに、その条件により足くくりワナによる捕獲実証試験を行い、狩猟初心者が実際に捕獲できるか検証した。カメラ調査の結果、塩尻市東山地域ではシカの撮影頭数は秋季の高原または山麓の開放地が特に多かった。カメラデータに基づきシカの日撮影頭数が多い箇所で捕獲を実施した結果、カメラを使いワナ捕獲に比べ捕獲効率は約5倍となり効率的に捕獲できた。また、日撮影頭数と捕獲効率の関係から、捕獲期間30日間でシカを1頭以上捕獲できる条件は、ワナ設置前30日間の平均日撮影頭数が1頭以上の箇所と考えた。狩猟初心者がこの条件を満たす箇所を探索しワナを設置した結果、ワナ設置7日後に初めてのシカ捕獲に成功した。

キーワード:ニホンジカ、自動撮影カメラ、日撮影頭数、捕獲効率、狩猟初心者

 

災害防止につなげるための森林情報の集積手法の検討とデータ活用(PDF:1,625KB)

~防災教育支援のためのデータ共有技術の確立~

小山泰弘・柳澤賢一・戸田堅一郎*

山地に囲まれた長野県の森林管理では防災対策も重要である。防災対策を行うためには、森林内で発生する被害リスクを管理するため、森林路網の位置や気象害・病虫獣害の発生位置の情報を集積し、災害危険地情報へ活かすことが必要である。本研究ではCS立体図から森林路網の抽出を行うとともに、スギの梢端枯れ被害発生地の解析、ツキノワグマ大量出没予測に利用している堅果類豊凶調査と実際のツキノワグマ捕獲状況との関係を整理し、森林管理につながる情報の集積手法を検討した。
森林路網データについては、集積方法が確立できたことで長野県が行う森林路網DX事業へと発展させることができ、路網情報の蓄積につながったが、当初検討していた災害発生予測につながるリスク評価までは至らなかった。森林管理につながる気象害や病虫獣害の情報は点的にしか集積できなかったが、実態が把握できたことで、気象害を受けた被害木の長期的影響を把握するための現地適応化事業へ進展した。またツキノワグマの出没予測に使われてきた堅果着果量調査と捕獲地点との乖離があったことから、調査箇所を見直し、調査定点を変更することとなり、今回の研究成果はすぐに施策へ活かすことにつながった。

キーワード:GIS、森林路網、気象害、獣害、ツキノワグマ

 

ホンシメジの菌床栽培技術の開発(PDF:257KB)

片桐一弘・古川仁・増野和彦

ホンシメジの菌床栽培技術を開発するために、栽培容器や培地組成など栽培方法に関する試験及び新たに収集した菌株の子実体形成能の確認試験を行った。その結果の概要は、以下のとおりである。
栽培容器は、大型ビンを使うことで、優れた子実体発生特性が得られることが示唆された。特に、大型ビンを使用し、広葉樹チップを用いた培地では、商品価値が高いと考えられる、個体重の大きな子実体の発生が複数の菌株で確認された。トウモロコシを用いた培地は、本研究に用いた菌株の栽培には適さないと考えられた。また、菌株毎に適した培養期間等を検討することが重要と考えられた。
新たに収集した野生株の内、子実体の形成される菌株が見つかる確率(10分の1)は比較的低い結果となった。

キーワード:ホンシメジ、菌床栽培、培地組成、栽培容器、子実体形成
 

味認識装置を用いた味分析による日本産ナメコの「味」の見える化(PDF:514KB)

増野和彦・古川仁

美味しいナメコの生産技術開発のために,味認識装置による味分析を活用して以下の成果を得た。(1)北海道から九州までの全国のブナ林で収集したナメコ野生株について栽培試験を行い,得られた子実体の味分析結果を図示して,優良育種素材を5系統選抜した。(2)栽培試験によって把握したナメコ野生株の栽培特性に基づき,生産効率から優良育種素材を4系統選抜した。(3)味分析による優良育種素材と生産効率による優良育種素材の両者に選抜されたナメコ野生株1系統を,生産効率と美味しさを合わせ持つ菌株として選定した。(4)ナメコ野生株の味分析による数値を用いて主成分分析を行い,得られた主成分得点の散布図を作成して,野生株の味の特徴を解析した。(5)美味しいナメコを採取するために適した日本国内の地域について,味分析結果から考察し味の地域間差を把握した。

キーワード:ナメコ,味認識装置,菌床栽培,野生株,主成分分析

 

減圧下における高温セット処理条件と材面割れの関係(予備的検討)(PDF:314KB)

奥原祐司・吉田孝久・山口健太※

カラマツ心持ち正角材の減圧下における高温セット処理条件と材面割れ発生の関係を探るため、4条件の高温セット処理(A:蒸気高温セット110℃18時間、B:減圧蒸気高温セット130℃6時間、C:減圧蒸気高温セット120℃12時間、D:減圧蒸気高温セット101℃24時間)を行い、材面割れの発生状況を調査した。その結果、減圧下における条件Cでの高温セット処理が、現在推奨されている条件Aでの蒸気高温セットと同程度の材面割れ防止効果があった。また、その他の減圧蒸気高温セット処理(条件B、条件D)においても材面割れ防止効果があることが明らかとなり、減圧下における高温セット処理による材面割れ防止が可能であることが示唆された。

キーワード:カラマツ、心持ち材、高温セット処理、減圧蒸気高温セット

 

カラマツ大径材から製材した枠組壁工法構造用製材寸法形式210と新用途の開発(PDF:2,832KB)

小池直樹・今井信※・吉田孝久・奥原祐司・山口健太※・吉川達也※

長野県産カラマツ210材の乾燥について、4日間の95℃中温乾燥スケジュールにより仕上がり含水率15%とすることが可能であった。FJ材について、「甲種たて継ぎ材の接着の程度」の評価試験を実施した結果、煮沸繰返し試験及び減圧加圧試験の全ての試験片の平均剥離率が5%以下であり、「枠組壁工法構造用製材及び枠組壁工法構造用たて継ぎ材の日本農林規格」の「甲種たて継ぎ材の接着の程度」に適合していた。カラマツ210材を用いたNLTについて、実大曲げ試験と釘せん断試験を実施し、木造建築新工法性能認証を受けているNLTの強度計算方法が、今回の試験体製作条件において実用上問題がないことが確認できた。

キーワード:カラマツ、ツーバイフォー、210材、フィンガージョイント、NLT

 

長野県産カラマツ大径材からの集成材ラミナ採材シミュレーション(PDF:723KB)

小池直樹

長野県産カラマツのヤング係数分布モデルを用いて大径材から採材できる集成材ラミナのラミナ等級推定分布図を作成した。

キーワード:カラマツ、集成材、ラミナ、大径丸太、強度推定

 

長野県産ヒノキの樹幹内半径方向強度分布(PDF:717KB)

小池直樹

長野県産ヒノキの樹幹内半径方向の曲げヤング係数及び曲げ強度を確認したところ、曲げヤング係数、曲げ強度ともに明確ではないものの髄から樹皮に向かっての減少傾向が確認できた。また同一林分同林齢の2立木間や番玉間で若干異なる半径方向強度分布が確認でき、分布傾向に個体差や番玉間差が存在することが明らかになった。

キーワード:ヒノキ、大径丸太、強度性能、強度分布

Adobe Acrobat Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要です。Adobe Acrobat Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

お問い合わせ

所属課室:長野県林業総合センター 

長野県塩尻市大字片丘字狐久保5739

電話番号:0263-52-0600

ファックス番号:0263-51-1311

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

PC版を表示する

スマートフォン版