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更新日:2024年2月2日

林業総合センター

研究報告32号(2018)

安全な路網計画のための崩壊危険地ピンポイント抽出技術-CS立体図を用いた崩壊危険地形判読技術の開発-(p1-16)

戸田堅一郎

低コストで安全な森林路網を作設するためには,崩壊リスクが高い場所を把握し,開設時に適切な対策を講じる必要がある。本研究では,既往の研究により開発したCS立体図を改良し森林路網計画における微地形判読に適したCS立体図の作成と,これを用いた崩壊危険地の判読方法を確立することを目的とする。CS立体図は,DEMから作成した標高,傾斜,曲率の各レイヤに着色し,重ねて透過処理することで作成する。治山レーザーによる0.5mメッシュDEMを用いてCS立体図(第2版)を作成した。CS立体図(第2版)では,CS立体図(第1版)に比べ,歩道や小さな沢などの微地形が鮮明に表現されるようになった。10mメッシュDEMを用いて全国CS立体図(10mメッシュ)を作成した。全国CS立体図(10mメッシュ)は,大縮尺での微地形判読には適さないが,小縮尺での中~大地形判読には適する。作成したCS立体図はG空間情報センターから公開した。CS立体図は,GoogleEarth等のソフトウェアを用いると3D表示が可能になり,地すべり等の地形判読が行いやすくなる。また,GPS機器やスマートフォンの地図アプリにインストールすることにより,現地での利用が可能になる。CS立体図の判読事例として,0次谷,湧水地,表層崩壊,地すべり地形,土石流,地質境界を掲載した。

キーワード:森林路網,崩壊危険地,地形判読,数値地形モデル,CS立体図

針葉樹人工林の低コスト更新技術の開発(p17-28)

大矢信次郎・近藤道治*・清水香代・小山泰弘・小林直樹*・西岡泰久

造林作業の効率化・省力化を図り,従来に比べて低コストで更新を行う技術を開発することを目的として,県内各地に試験地を設定し調査を行った。大岡県有林においてカラマツの大苗,コンテナ苗,普通苗を比較植栽した結果,活着率に差はなく,普通苗の5成長期後の樹高に大苗は3年,コンテナ苗は4年で達し,成長の優位性が認められた。また,坪刈りによる下刈り省力化を検討した結果,3苗種とも成長の抑制が認められ,低コスト化にはつながらないと判断された。浅間山国有林及び佐久穂町有林においてカラマツのコンテナ苗と裸苗を10月上旬~11月下旬に植栽し,活着率を春植えと比較した結果,カラマツの秋植えは,裸苗では10月下旬以降が望ましい一方,コンテナ苗では10月上旬でも可能であることが示唆された。根羽村の村有林において架線系作業システムによる一貫作業を実施し伐出作業と植栽作業の生産性を調査した結果,帯状伐採による小面積皆伐は間伐による伐出作業の3倍に相当する生産性を示した。高森町有林の林床植生が欠如していた41年生過密ヒノキ人工林において,普通間伐,強度間伐,列状間伐による搬出間伐を行った後に多数発生したヒノキ実生の動態を調査した結果,実生の生存率及び樹高は,相対光量子束密度と相関関係が認められ,過密ヒノキ林における間伐がヒノキ更新木の育成に寄与する可能性が示唆された。

キーワード:コンテナ苗,大苗,一貫作業,生産性,天然更新

ナラ類の積極的利用とナラ枯れ被害拡大防止技術に関する研究(p29-52)

山口健太・柳澤賢一・吉田孝久・今井信・奥原祐司・山内仁人・山岸信也・岡田充弘・柴田直明

ナラ枯れ被害の防除やナラ健全木の積極的利用を効果的に進めるため,ナラ枯れ被害拡大予測モデルの適合性を検証するとともに県内ナラ類の分布と樹種別の被害状況を把握した。その結果,北信,下伊那,木曽のいずれの地域でも,被害発生予測マップでナラ枯れが発生すると判定された箇所で85.7%以上の高い的中率で被害が発生した。また,ミズナラが被害を受けやすい傾向があり,ミズナラが多く分布する北信地域では被害が激害化したが,コナラが多い県南部では被害の激増を免れていた。

長野県産のコナラ・ミズナラの板材(20×100×2,000)について標準的な乾燥スケジュールを決定するため,それぞれについて電気定温乾燥機により100℃急速乾燥試験を行った。さらにこの結果から誘導された標準的な乾燥スケジュールにより,仕上がり目標含水率を8~10%として乾燥試験を実施した。その結果,採用した乾燥スケジュールでの乾燥により目標含水率をほぼ満足したが,曲がりやカップが大きい結果となった。県産ナラ類について,標準的な乾燥スケジュールは確立できたものの,全体として曲がりやカップ等が大きく,末口径30cm以下の原木においては,短尺材や幅の狭い材としての利用が示唆された。

ナラ枯れ被害の発生が予測された林分のミズナラを中心に,被害前の県産ナラ類を短尺材等として利用していくことが,利用と防除の両側面で有効であると考えた。

キーワード:ミズナラ,コナラ,ナラ枯れ,大径材,乾燥,被害発生予測システム

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