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更新日:2023年1月12日
水産試験場
DNA判別技術を使って | ||
「信州サーモン」のニセ物を見破ります!!! |
信州サーモンは、長野県が独自に開発育種したもので、市場に流通して5年目となります。 現在、ニセ物が市場に流通しているわけではありませんが、ご愛好いただいている消費者の皆さんに、確かな信州サーモンをお届けするため、水産試験場では、品種判別のための技術開発をしています。 |
「信州サーモン」は長野県がニジマスとブラウントラウトの交配により作り出した養殖用の新魚種です。2~3kgの大型魚として出荷され、主に県内のホテルやレストランなど業務用向けの刺身や切り身用食材として消費されています。平成16年度から稚魚の供給が始まり、長野県だけで生産される特産魚として生産量は伸びています。平成21年度には200tの生産量を見込んでいますが、味や品質の良い食材として評価していただき、卸売価格は高級魚であるヒラメなどと同格の単価で取引され、生産量は需要に追いついていません。
信州サーモンの外観は、従来から国内で養殖されている三倍体魚を含むマス類や輸入されたサケ・マス類と類似しており、刺身等に加工された食材となれば魚種の判別は非常に困難です。高値で取引される信州サーモンは生産量も不足していることから、これらのサケ・マス類の偽装によるブランドイメージの低下が懸念されます。水産試験場では食品の偽装を未然に防止するため(独)水産総合研究センター養殖研究所の協力を得て、信州サーモンを判別する技術の開発を行なっていますので、ご紹介します。
DNA判別技術 |
魚の品種を判別するため遺伝子の解析を行う方法が開発されています。信州サーモンはニジマスとブラウントラウトの交雑種のため両者の遺伝子を持っている特徴を利用し、それぞれの魚の遺伝子にある特異的な繰り返し配列(マイクロサテライト)を検出するマイクロサテライトマーカー法による判別を行いました。マイクロサテライトマーカーはいくつもの種類が知られています。判別に利用可能と思われる33種類のマーカーの中からニジマスとブラウントラウトの特異遺伝子を同時に、または、別々に判別できるマーカーを探し出しました。
材料として3系統の信州サーモンを9個体、三倍体のニジマスを6個体、普通(二倍体)のニジマスを6個体、ブラウントラウトを10個体、ニジマスとイワナの交雑種を3個体用いました。PCR分析にはアルコール保存したヒレからDNAを抽出し、特異遺伝子を遺伝子増幅器で増幅した後、6%アクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行ない、判別しました。
その結果、33種類のマーカーの内、ニジマスとブラウントラウトを同時に判別できる電気泳動バンドが出現するマーカーが3種類、ニジマスのみに電気泳動バンドが出現するマーカーが6種類、ブラウントラウトのみに電気泳動バンドが出現するマーカーが1種類見つかり、品種判別に利用可能と思われました。
右図は、ニジマスとブラウントラウトを同時に判別できるマーカーを使用した電気泳動像です。ニジマスは電気泳動バンドが190bp付近に数本出現しますが、ブラウントラウトは225bp付近に出現します。信州サーモンはニジマスとブラウントラウトの両者の遺伝子を持つため、190bp付近と225bp付近に電気泳動バンドが出現しています。一方、ニジマスとイワナの交雑種の場合はイワナの電気泳動バンドが出ないためニジマスのバンドしか出現していません。このマーカーを用いて分析し、検査食品から190bp付近と225bp付近に電気泳動バンドが出現すれば信州サーモンと判別できます。
今後は、ニジマスとブラウントラウトを同時に判別できるマーカー3種類を用いて、私たちが一般に目にすることが出来るサケ・マス類を対象に信州サーモンとの判別が可能か確認を行なっていきます。さらに、判別に利用可能な10種類のマーカーを活用し、正確な品種判別ができるよう分析精度を高めていく予定です。
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