ここから本文です。
更新日:2024年6月28日
畜産試験場
ようやく梅雨入りしたかと思えば、今年の夏は「ラ・ニーニャ現象」が発生する可能性が高いといわれています。「ラ・ニーニャ現象」が発生すれば酷暑になり、暑さに弱い牛たちにとってはたまったものではありません。各農家は牛の暑熱対策にさまざまな方法を駆使して力を尽くさなければなりません。
牛の暑さ対策としては扇風機で風を当てる、水を牛体に細霧して気化熱で冷やす、牛の毛を短く刈るなどいろいろな方法がありますが、近年、暑さに強いスリック遺伝子を持ったホルスタイン乳牛が注目されています。
スリック遺伝子とは、元々カリブ海の島在来の肉用牛が持つ遺伝子で、交配によりホルスタイン牛に導入され、その精液が日本にも輸入されはじめました。ちなみにスリック(slick)とは「滑らかな」という意味で、スリック遺伝子を保有する牛は生まれつき毛の量が少なく、また暑さに強い性質を持つという報告があり、暑熱対策の一助として期待されています。この精液は普及が始まったばかりなので、スリック遺伝子を保有する牛がどの程度暑さに強いのか、食欲や乳量への影響等を調査していく必要があります。当試験場でもこのスリック遺伝子の凍結精液を用い作出した子牛が今年11月までに5頭生まれる予定です。
「6月11日、最初の子牛が元気に生まれました!」と 大喜びしたいところですが、実は一筋縄ではいきません。この遺伝子は優性遺伝なので保有すれば必ず発現するものの、現在利用できる精液はスリック遺伝子がヘテロであるため、子牛がこの遺伝子を保有する確率は50%、もしかしたらスリック遺伝子を保有していない可能性があります。そのためスリック遺伝子を保有しているかどうかの検査が必要で、7月に結果が判明する予定です。果たして試験場スリック牛第1号になるのかどうか、飼育している職員は「いつもの子牛より毛が短い気がする!?」(※個人の感想です)と期待を膨らませています。
生まれた子牛
今回の子牛への遺伝
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください