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更新日:2023年9月7日
林業総合センター
こんにちは。わたし、林みどり。ぼく、森りんたろうです。
加藤さん、この茶色っぽい液体は何ですか?ちょっとこげくさい、酸っぱい臭いがします。
これが「木酢液(もくさくえき)」というもので、木を炭にするときに採れるのが木酢液、竹を炭にするときに採れるのが竹酢液(ちくさくえき)と呼ばれているんだよ。
品質検査用の木酢液
炭を燃やしてもこんな液体は出てこないけど、どうやって採るんですか?
炭をつくるときに出る煙(けむり)を冷やすと、木酢液が採れるんだ。
この写真は、林業総合センターで炭をつくっている様子だよ(左の写真)。土の中にはドラム缶の炭窯(すみがま)が埋めてあるんだ(右の写真)。炭をつくるときに炭窯から出てくる煙の温度が80℃を超えたら、煙を長い煙突(えんとつ)に通してやるんだ。
煙が煙突を通り抜けていくうちにだんだん冷えて、煙が液体になって集めることができるようになるんだよ。煙の温度が150℃になるまで採るんだ。
それから、こうやって採れた液体を数か月から1年程度、静かに置いておいてから得られるのが、上の写真のような澄んだ赤褐色(せきかっしょく:赤みを帯びたオレンジ色のような色)の木酢液なんだよ。
炭焼きの様子
ドラム缶の炭窯
木酢液を採るため、炭窯の煙の出口に煙を集める長いエントツを設置します。
煙突の先
へぇ~。煙を冷やすと液体になるんだぁ。なんだか不思議だね。
木酢液を採るときの、炭窯から出てくる煙の温度は、80℃以下や150℃以上ではいけないんですか?
80℃以下の煙は水蒸気(すいじょうき)ばかりが多くなり、有効な成分が少なくなっちゃうんだよ。それに、150℃以上だとタール分(粘気(ねばりけ)のある黒褐色(こっかっしょく:黒みがたった茶色)の油状の液体)や、人の体に有害な成分が入ってしまうんだ。
じゃあ、木酢液には何が入っているんですか?
8~9割は水分で、残りの1割に約200種類のいろいろな成分が含まれているんだよ。そのうちの主なものは「酢酸(さくさん)」という、お酢に含まれている酸なんだ。
そのほかに、殺菌(さっきん)効果のあるものなどが入っているよ。こういう成分が、人の役に立つ様々な働きをするんだ。
例えば、どんなふうに使うんですか?
主に農業で、栽培する土の質を良くしたり、作物を元気に育てるために使われるんだ。作物を植える前に薄めた木酢液を土にまくと、作物に有害な菌類を殺菌できるし、肥料を与えた後で散布すれば、作物に有害な病原菌を食べる有用微生物(ゆうようびせいぶつ:人間や動物、作物や自然環境に対して無害で有益な働きを持つ微生物)が増えて作物が丈夫に育つようになるね。それから、作物が土の中のミネラルを吸収しやすくなって、芽や根の成長が良くなるそうだよ。
動物を飼っているところにまくとイヤな臭いを抑えることができるんだ。エサに混ぜれば豚や牛の体質が良くなって、肉質が向上すると言われているよ。
それに、人間の生活に困った問題を起こす小動物や昆虫、ナメクジ等を寄せ付けない効果もあるんだ。林業総合センターでは木酢液を使って、ナメクジからきのこを守る試験を行ったんだ。
木酢液によりナメクジからきのこ栽培地を守る試験
木酢液を入れた枠の中に置いたきのこは、ナメクジにほとんど食べられない。
何も入れない枠や、水を入れた枠では中のきのこは食べられてしまう。
本当にいろいろ役に立つんですね。
そうなんだ。ただ、使い方を間違えるとせっかくの作物が枯れてしまうこともあるんだ。使う前には、薄める倍率や使うのに適した時期などを、しっかりと調べるように注意してね。
はい、わかりました。今日はありがとうございました。
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