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更新日:2022年5月10日

環境保全研究所

外来生物の現状把握と対策の検討

研究課題名:外来生物の現状把握と対策の検討に関わる調査研究

サブテーマ:外来植物群落の省力的駆除管理、植生転換と資源循環利用手法の開発

研究期間:H18~20年度(2006~2008年度)

 長野県のみなさんにとってはあまりにも身近にある植物のため、意外だと思われるかもしれませんが、ニセアカシア(ハリエンジュとも呼ぶ。学名Robinia pseudo-acacia L.)は駆除の困難な侵略的外来樹種の代表的なものです。また、地球規模での生物多様性の低下、生物相の均質化をもたらしている、国際的にも問題となっている植物種の一つでもあります。県内の主要な果樹生産地においてはニセアカシア林に隣接する果樹畑で炭疽病をもたらすなど、農業生産の面でも実害が近年発生しています。しかし、その反面、ニセアカシアの花からは良質なハチミツが採れるため、重要な養蜂資源にもなっています。そのため、全国一律に排除すれば問題解決になるのかというと、そういうわけにもいきません。このようにニセアカシア群落の管理は、地域の合意形成を前提として進めねばならない側面もあり、応用生態学系の研究課題としてはかなり難しい部類でもあります。

ニセアカシアの花環状剥皮試験林の様子

写真: ニセアカシアの花(左)、環状剥皮試験林の様子(右)

 この研究では、主に水辺域や里山に侵入、定着したニセアカシア群落を対象に、省力的な駆除や、在来種主体の林分への林相転換のための技術開発を目標としています。ニセアカシアは萌芽再生力が高いために、伐採による駆除が困難であることが経験的に知られています。そこで、環状剥皮(巻き枯らし)を主体とした駆除の効果を多面的に検証していきます。

付記 ニセアカシアの駆除的管理の事例

ニセアカシアの除伐(写真右下)で維持されるケショウヤナギ群落(写真右上 写真: 梓川_ニセアカシアの除伐(写真右下)で維持されるケショウヤナギ群落(写真右上)

牛伏川における林相転換事業 写真: 牛伏川における林相転換事業

おわりに

 本研究は、ニセアカシア林の分布拡大を抑え、里山や水辺を、地域の人々にとって好ましい環境に変えていく過程そのものが研究対象です。その過程で得られる現場の生のデータから、研究成果をまとめていきます。また、市民参加型の自然再生事業の一つとしても、この研究行為を社会貢献につなげていきたいと考えています。現在のところ、主な研究対象種はニセアカシアですが、他の、問題の大きい侵略的外来種についても、研究対象に加えていきたいです。本研究のタイトルには「資源循環利用手法」という言葉も含めています。薪ストーブやペレットストーブの燃料資源やフローリング材などの高付加価値のある建築材としての外来樹種の有効利用などについても、何らかの社会的な枠組み・仕掛けを作ってみたいと考えています。

本研究は、現在、次のような様々な団体、研究者の協力を得ながら実施しています。

 須坂市農林課、千曲川河川事務所、千曲川河川敷内共有地(須坂市相之島共有地組合)、県野菜花卉試験場・伊藤將視研究員、県林務部信州の木利用推進チーム

本研究に関連する研究発表に次のようなものがあります。

前河正昭・中越信和(1996)長野県牛伏川の砂防植栽区とその周辺における植生動態. 日本林学会論文集 107:441-444

中越信和・前河正昭 (1996) 75年を経過した砂防植栽地におけるニセアカシア林の動態, 森林航測 179 : 10-13.

Maekawa, M. & Nakagoshi, N. (1997) Riparian landscape changes over a period of 46 years on the Azusa River in Central Japan. Landscape and Urban Planning 37 : 37-43.

前河正昭・中越信和(1997)海岸砂地においてニセアカシア林の分布拡大がもたらす成帯構造と種多様性への影響. 日本生態学会誌 47: 131-143.

国内学会誌 報文・短報等

前河正昭 (1998) 帰化植物・ニセアカシア.自然の息吹 6 信濃毎日新聞社夕刊 8月31日版

諸岡伸康・久野勝治・前河正昭・平館俊太郎・藤井義晴(2000)ニセアカシアのアレロパシーの検証と作用物質の分析第39回日本雑草学会大会講演要旨、牛久市

Maekawa,M.(2000)The range expansion of invasive exotic plants in Nagano, Japan. 43rd Symposium of the International association for vegetation science. Abstarcts, 35p Nagano, Japan.(国際植生学会)

前河正昭(2001)GIS,現存植生図および重回帰モデルを用いたニセアカシア群落の分布推定-長野県東信地域の事例―.長野県自然保護研究所紀要 4 別冊1:343-349.

前河正昭(2002) ハリエンジュ ~かつての救国樹種が山・川・農地に逸出、厄介者に.pp.202-202,(外来種ハンドブック, 日本生態学会編, 村上興生鷲谷いずみ監修pp390,地人書館)

前河正昭(2003)フィールドノートから 侵略的外来樹種ニセアカシアの新しい里山的利用の試み.長野県自然保護研究所ニューズレター みどりのこえ 26: 13

前河正昭(2003)特集 NPOおよび行政への支援活動 アレチウリ駆除をめぐる生活環境課との共同戦線.長野県自然保護研究所ニューズレター みどりのこえ 27: 7

前河正昭(2004)長野県千曲川水系におけるニセアカシアの侵入 -景観・群落・個体群からみた生態特性と、多面的な管理の考え方-. 農業環境技術研究所シンポジウム「外来植物の蔓延実態とその生態的特性 -新たに導入する外来植物の生態系影響評価手法の確立に向けて-」第6回植生管理研究会講演要旨:33-49.

前河正昭・山本秀樹(2004)里山に生息する典型的な甲虫群集を指標として里山を保全・再生するためのビオトープ整備について. 第14回日本景観生態学会大会講演要旨:68.

前河正昭(2005)巻き枯らしを主体としたニセアカシア林の林相転換-須坂市千曲川における事例-.日本景観生態学会第15回大会講演要旨41P.

(サブテーマ担当 前河正昭)

お問い合わせ

所属課室:長野県環境保全研究所 

長野県長野市大字安茂里字米村1978

電話番号:026-239-1031

ファックス番号:026-239-2929

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