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更新日:2025年2月13日
ただいま提出いたしました令和7年度当初予算案をはじめとする議案の説明に先立ち、新年度に向けての県政運営に関する所信などについて申し述べさせていただきます。
【パラダイムチェンジと信州未来共創戦略】
現在、世界は劇的な変革期を迎えています。先進諸国では少子化が進み、気候変動の影響が拡大し、人工知能やロボット等急速な技術革新が社会や経済を大きく変えつつあります。歴史的には80年周期で大きな変化が訪れるとも言われています。ちょうど80年前の第二次世界大戦の終結後、我が国は焼け野原から立ち上がり奇跡的な経済復興を遂げました。さらに遡ること80年、1860年代の幕末動乱、そして明治維新の後に、今日の社会制度等の基礎が築かれました。このように大きな変革期こそ、新しい社会を創造するための重要な機会となります。
現在、私たちは多くの課題や困難に直面していますが、長期的な時間軸で考えれば、新たな時代の入口に立ち、未来への可能性に満ちた時期であるとも言えます。急激な人口減少は様々な課題を生む一方で、未来への希望の種を蒔く機会をもたらしてくれています。労働力の不足により、これまで働きたくとも働くことができなかった人たちの活躍機会が増え、思い切った省力化投資を進めることも可能となります。子どもの減少は、子育て世帯に対する手厚い支援や個別最適な学びを実現する機会となります。しかし、従来の価値観に囚われ続ければ、課題は更に深刻化します。今こそ、新たな発想で未来を切り拓く時です。
こうした中、今月5日に令和国民会議(令和臨調)が、人口減少や自然災害に適応した持続可能な社会に向けて、多様な生き方・働き方へのパラダイムチェンジを提言しました。本県としても、この歴史的な転換期を私たちが望む未来を創造するための好機ととらえ、若者の価値観や発想も活かしながら、様々な分野でのパラダイムチェンジに挑戦してまいります。具体的には、若者の社会参画促進や性別による格差の解消に取り組み、多様な生き方が尊重される「寛容な社会」の構築を目指します。短時間勤務や副業・兼業、育児休業の取得など働き方改革を進め、多様な人材の活躍を後押しします。また、子どもたちのやりたいことを支える新しい教育モデルを信州から発信するほか、楽しいまちや便利な交通、分散から集住をキーワードに県土のグランドデザイン策定にも取り組みます。さらに、様々な分野における省力化投資やDXの推進、経営基盤の強化などを徹底的に支援し、付加価値労働生産性の向上を図ります。
これらの政策は、「私のアクション!未来のNAGANO創造県民会議」が、県民全体で人口減少社会に向き合う羅針盤として取りまとめた「信州未来共創戦略」とも重なるものであります。令和7年度は、「しあわせ信州創造プラン3.0」に基づき、県民の皆様との対話と共創を基本に、確かな暮らしを守り、真にゆたかな社会を実現するための施策を推進するとともに、新たな時代へのパラダイムチェンジを強く意識して県政を進めてまいります。
【令和7年度当初予算案】
今定例会に提出いたしました令和7年度当初予算案及びその他の案件について、御説明申し上げます。
令和7年度当初予算案の総額は、一般会計1兆118億5,725万2千円、特別会計4,310億4,854万1千円、企業特別会計480億3,722万6千円であります。特別会計は公債費特別会計など11会計、企業特別会計は総合リハビリテーション事業など4会計であります。
一般会計予算の総額は前年度比約127億円の増となっています。県税や地方消費税清算金等の増加により、実質的な一般財源総額は前年度比約126億円増加する見込みです。実質公債費比率及び将来負担比率は引き続き早期健全化基準を下回る見通しですが、高齢化による社会保障関係費の増加などにより今後も厳しい財政運営が続く見通しです。持続可能な財政基盤の構築に向け、長野県行政・財政改革実行本部のもと、徹底した業務改革、投資的経費の重点化、社会保障関係費の適正化等に取り組みます。
以下、新年度予算案における主な施策につきまして、「しあわせ信州創造プラン3.0」の5つの政策の柱に沿って順次御説明申し上げます。
【誰にでも居場所と出番がある社会をつくる】
若者や女性、外国人も含め、県民一人ひとりが必要とされ活躍できる、誰にでも居場所と出番がある社会の実現を目指します。
(子ども・子育ての幸せを社会で支える)
妊娠、出産を望む方への支援や子育てに伴う経済的負担の軽減などにより、子ども・子育てを社会で支えます。不妊治療に係る先進医療を多くの方が自己負担なく受けられるよう助成額を10万円に倍増するほか、病気等により妊孕性の温存が必要な方の卵子凍結等の費用を新たに助成します。子ども医療費助成や3歳未満児の保育料軽減などに加え、新たに県立大学、技術専門校など県立高等教育機関等の授業料・入学料の免除対象を世帯年収380万円未満の県民世帯まで拡大するとともに、県有施設における子ども利用料金の無償化を検討します。児童養護施設等で暮らす子どもの習い事や就業支援に係る経費を新たに補助するとともに、里親支援センターの設置や特別養子縁組に関わるあっせん手数料の補助などを通じ、社会的養育を推進します。
(性別による固定的役割や格差の解消)
職場や地域社会も含めて、固定的な性別役割分担意識や格差の解消に取り組みます。組織リーダーの行動変容を促すため、「女性から選ばれる長野県を目指すリーダーの会」の参加者拡大と活動充実を図るほか、男性の育児休業取得を促進するための奨励金支給などにより多様で柔軟な働き方ができる職場を増やします。また、女性起業家養成講座を新たに開催するほか、女性の視点から地域イノベーションについて考えるプロジェクト「WE-Nagano Global Conference」を長野県立大学と共催します。市町村や地域の取組を促進するため、ジェンダーギャップの現状を可視化するとともに、自治会等における女性参画の先進事例を広く共有します。
(若者施策の充実・強化)
未来の創り手である若者の社会参画を促進し、困難を抱える若者を支援するなど、若者のための施策を充実・強化します。プレコンセプションケアの視点も含めて若者が主体的に人生設計を考えられるようライフデザインセミナーを充実します。若者が集い・交流する信州みらいフェスや信州若者みらい会議を継続して開催し、若者からの政策提案機会などを設けるとともに、県の審議会には30代までの若者を加えることを原則とするなど、若い世代の社会参画の場を増やします。高校生等の居場所となるユースセンターの設置を支援するほか、婚活支援センターの運営や異業種交流イベントの開催等により、若者の出会いと交流を支援します。新たに「子ども・若者総合相談センター」を設置して困難を抱える若者等の相談支援体制を強化するほか、ヤングケアラーの実態調査、ケアリーバー(社会的養護経験者)の自立支援のための拠点設置、ニューロダイバーシティ推進員の配置などに取り組みます。
(人権が尊重され、外国人も暮らしやすい社会の実現)
SNSによる誹謗中傷など人権課題が多様化・複雑化する中、全ての人がかけがえのない個人として尊重され、互いを認め合う社会の実現を目指し、人権全般を包括する条例の検討に着手します。また、深刻化している孤独・孤立の問題について、官民連携プラットフォームを設置して今後の対策の在り方を速やかに検討します。国際化の進展等により、外国人県民の一層の増加が見込まれる中、有識者等による「外国人政策検討会議(仮称)」を設置して、外国人材の受入れ等に関する課題や今後の外国人政策の在り方を検討するほか、「長野県多文化共生推進本部(仮称)」を庁内に設置して、日本語教育や生活相談の一層の充実を図り、外国人にとっても暮らしやすい社会の実現に取り組みます。
【誰もが主体的に学ぶことができる環境をつくる】
学校の改革、教員の処遇改善と業務削減、学校と地域等との連携・協働などを一体的に推進し、誰もが主体的に学ぶことができる環境づくりを進めます。
(学校の改革)
子どもたち一人ひとりに合った学びを実践する「ウェルビーイング実践校TOCO-TON(トコトン)」として指定した小中学校等における改革を伴走支援するため、教育委員会に「学校改革支援センター(仮称)」を設置するほか、オンライン授業に取り組む中山間地小規模小中学校を支援します。
県立高校の特色化・魅力化については、今後、生徒や地域の皆様の御意見を踏まえて全高校が特色化の方針案を策定する予定であり、全県的な視点も持ちながらその具体化を教育委員会とともに支援します。また、生徒からの高校魅力化提案の具体化を財政的に支援するほか、生徒の参画によるホームページのリニューアルや中学生向け学校説明会を実施します。木曽青峰高校森林環境科及びインテリア科、小諸新校音楽科については、令和8年度から生徒の全国募集を行うこととし、既に全国募集を行っている白馬高校国際観光科、飯山高校スポーツ科学科を含めて広報を強化するほか、市町村が運営している寮の運営費等に対する支援を強化します。現在進めている県立学校の再編整備については、引き続き学校関係者や地域の皆様との合意形成を大切にしながら進めてまいります。このほか、外国語指導助手の増員による英語コミュニケーション力の強化、つばさプロジェクトによる留学支援の拡充、連携コーディネーター配置を通じた地域における職業体験等の充実などに取り組みます。
(多様な学びの場の創出と心の支援)
様々な個性や能力を持つ子どもたちのため、多様な学びの場の確保・充実を図るとともに、子どもたちの心の支援に取り組みます。全国初の取組である「信州型フリースクール認証制度」により、これまでに37か所を認証いたしました。来年度は、補助対象経費を拡大し、学校等と連携するための推進員を増員します。また、中学校の校内教育支援センターにおける専任の支援員配置を新たに助成するほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる相談・支援体制を拡充します。
(教員の勤務環境の改善)
教員が子どもと向き合う時間を十分に確保できるよう、勤務環境の改善を進めます。病気などによる欠員や産休・育休等に備え、公立学校の代替教員の増員等を行います。また、へき地手当の支給率を近隣県と同水準に、任地で居住する場合に支給するへき地手当に準ずる手当の支給率を全国トップ水準にそれぞれ引き上げます。また、インターネット出願システムの導入やパソコン用モニターの配備等により、県立高校教員の負担を軽減します。
(学校と様々な主体との連携・協働)
地域ぐるみで子どもたちを育む取組を進めてまいります。中学生の多様なスポーツ・文化芸術活動を持続可能なものにするため、指導者・協力者と地域クラブ等とのマッチングを進めるなど、部活動の地域移行を促進します。また、学校と社会をつなぐ連携コーディネーターを増員するなど、学校と様々な主体との協働を一層推進します。
【創造的で強靱な産業の発展を支援する】
多様な人材の労働参加を促進するとともに、付加価値労働生産性の向上を支援し、新時代に適応した創造的で強靱な産業への発展を目指します。
(人材確保の推進)
「多様な人材の労働参加」と「外国人材の誘致・定着」、「産業分野の特性に応じた取組」の3つの観点から人材確保を推進します。先進的な働き方を普及させるための県独自認証である「職場いきいきアドバンスカンパニー」や、子育てサポート企業として国が認定する「くるみん」等の取得企業数を2030年までに現状の3倍超の2,000社に増加させることを目標とし、資金面での優遇も含めて働き方改革に対する支援を強化します。若者の県内就職を促進するため、県内企業の魅力発信や移住支援金の給付、就職活動費の助成対象の拡大を行うとともに、奨学金返還支援補助金については、年額12万円までは企業負担が生じないよう制度を拡充します。また、小中高校生に地域産業の魅力を伝える職業体験支援コーディネーターを新たに配置します。外国人材の定着を図るため、県内高等教育機関の留学生等と県内企業との出会いの場づくり、海外IT人材のインターンシップ支援、介護福祉士を目指す留学生のための奨学金支援などに取り組みます。さらに、保育士確保のための魅力体験会の開催や修学資金貸付金の大幅な拡充、林業人材確保のためのリカレント教育講座の開設、農業法人への就農者確保のための研修、建設産業の魅力発信などにも取り組みます。
(付加価値労働生産性の向上)
地域経済の活力を高めるためには、コストカット型経済から脱却し、賃上げと投資が牽引する成長経済への移行を促進することが重要です。そのため、「企業の規模拡大と連携」、「DX・省力化の促進」、「海外展開とブランド力の向上」に取り組み、事業活動の付加価値労働生産性の向上を図ります。企業の事業承継やM&A、業務の共同化や協業などを、関係機関と連携して徹底的に支援し、企業の経営基盤を強化します。農業についても、地域計画に基づく農地の集積・集約化を支援し、経営力の強化を図ります。
様々な分野での省力化とDXを促進します。省力化投資を後押しするための融資メニューの創設、ICT機器の導入等に対して助言を行う専門家の派遣、ITに精通した副業・兼業人材と企業とのマッチングなど、企業に対する支援を強化するほか、信州ITバレー構想を引き続き推進しIT企業・IT人材の集積を図ります。また、走行時の画像をAIで解析する道路パトロール、ドローンを活用した肥料や農薬散布、宿泊施設におけるセルフチェックインシステム等の導入、介護施設における見守りシステムの活用など、分野ごとの取組も進めます。
世界の成長を取り込むため、海外市場への進出とブランド力の向上に取り組みます。新たに「海外展開企業サポートネットワーク(仮称)」を立ち上げるほか、海外展開の方針を策定し、工業製品、農畜産物等県産品の一層の輸出拡大を図ります。伝統的工芸品や日本酒、味噌など発酵食品を対象とする高付加価値商品の開発支援や、インフルエンサーを活用した「GI長野」の認知度向上などを通じ、ブランド力の強化にも取り組みます。
(しあわせバイ信州運動の推進)
エシカル消費と地域内経済循環を促進するため、「しあわせバイ信州運動」の一層の拡大・浸透を図ります。県民向け物産フェアや大学生等が新商品などのアイディアを出し合うイベントの開催、学校、幼稚園における有機給食への支援などを行います。木質バイオマスへのエネルギー転換を進めるため、ペレット用のストーブやボイラーの導入を支援します。このほか、品質の高い県産材の利活用を進めるため、県有施設、商業施設等の木造化・木質化の推進、JAS構造材の安定供給体制の整備などに取り組みます。
(世界水準の山岳高原観光地づくり)
世界水準の山岳高原観光地づくりのため、観光MaaSの推進をはじめとする観光地域づくり、アウトドアカルチャーの発信などの観光プロモーションを推進するとともに、インバウンド誘客の一層の拡大に取り組みます。交通・観光事業者等と観光MaaSの推進体制を構築し、必要な調査研究を進めます。「Japan Alps Cycling Road」については、環境整備と情報発信に取り組み、国のナショナルサイクルルートとしての指定を目指します。また、「アウトドア」をテーマとした戦略的なプロモーションを展開し、大阪・関西万博の自治体参加催事にも出展するほか、本県を舞台とした映画「名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)」と連携した情報発信を行います。堅調に推移するインバウンド需要を着実に捉えるため、旅行業者向けモニターツアーの実施や、独・米・豪に設置した現地コーディネーターを通じた旅行商品の造成支援等を行います。
(宿泊税の創設)
本県が観光県として飛躍していくためには、必要な財源を持続的・安定的に確保することが不可欠であるとの考えから、観光振興財源の在り方について検討を深めてまいりました。県民の皆様の御意見も踏まえ、今定例会に長野県宿泊税条例案を提出させていただきました。税率は一人1泊300円の定額とし、低料金の宿泊者の負担感に配慮して免税点を6,000円としております。なお、コロナ禍からの回復途上にある観光産業への影響を緩和するため、施行から3年間は税率を200円とします。総務大臣の同意を経た上で令和8年6月から施行したいと考えており、宿泊事業者のシステム改修支援や広報など、税の導入に必要な経費を今回の予算案に計上いたしました。条例成立後は使途の具体化などの諸準備を速やかに進めてまいります。
【持続可能で安定した暮らしを守る】
県民の皆様の持続可能で安定した暮らしを守るため、物価上昇への対応、脱炭素化、県内移動の利便性向上などを推進するとともに、防災対策、犯罪防止対策、医療・福祉サービスなどを充実します。
(物価上昇への対応)
物価上昇局面における暮らしを守るため、1月補正予算の早期執行に努めてまいります。生活就労支援センター「まいさぽ」での生活や就労に関するきめ細かな相談支援に対応するとともに、生活必需品の提供や生活にお困りの方に対する給付金の支給等を進めます。また、事業者に対しては、中小企業融資制度資金による資金繰りの支援、社会福祉施設・医療機関等に対する食材・燃料費等の支援などを行ってまいります。全国上位の高値が恒常化しているガソリン価格の抑制も重要な課題です。経済団体やJA、市町村等の参加のもと、サービスステーションの経営課題に関する検討会を開催すべく準備を進めていたところ、県石油商業組合の加盟事業者によるガソリンの価格調整の疑いが報じられました。現在、同組合に対して事実関係の調査と調査結果を踏まえた対応についての報告を求めているところであり、報告内容も踏まえて今後の対応を考えてまいります。
(脱炭素化の推進)
2030年までの温室効果ガス正味排出量6割削減を目指し、様々な政策を動員して脱炭素化を進めます。再生可能エネルギー及び省エネルギーの更なる普及促進のため、屋根ソーラーの設置義務化を視野に入れ、「長野県版・初期費用ゼロ円ソーラー」の制度創設や屋根ソーラー等の設置補助を行うほか、市町村と連携したソーラーシェアリングの推進、ペロブスカイト太陽電池の県有施設での設置検討など、潜在力の高い太陽光発電の徹底的な拡大に取り組みます。市町村や事業者等による小水力発電施設等の導入を引き続き支援するほか、新たに地中熱の普及拡大に向けた調査・検討を始めるなど、太陽熱、バイオマス熱等を含む熱利用の普及にも取り組んでまいります。太陽光で発電しEVを蓄電池として活用するV2H(ビークルトゥーホーム)機器の導入を進めるため、補助金額を10万円から20万円に倍増するほか、高断熱で再エネ設備を有する「信州健康ゼロエネ住宅」の普及促進と併せて新築住宅のZEH水準適合義務化の検討を進めます。脱炭素化に取り組む事業者向けの「サステナビリティ・リンク・ローン」の活用を促進する融資制度を構築するとともに、産学官のコンソーシアムにより水素等の利活用を推進します。
(県内移動の利便性向上)
昨年策定した長野県地域公共交通計画に基づき、通院・通学や観光のための移動の保証を含め、公共交通の維持・発展に取り組んでまいります。地域就労支援センターにおける運輸業に関する相談窓口設置、バスドライバーとして就業する方に対する移住支援金の支給など、人材の確保・育成を支援します。県内の主要都市間を結ぶみすずハイウェイバスの実証的な増便、しなの鉄道株式会社が行う緊急安全対策に対する支援、JR大糸線の本格的な利用促進などに取り組み、必要な交通ネットワークの維持・発展を図ります。公共ライドシェア、日本版ライドシェア等の多様なサービス展開を支援し、「交通空白」の解消に取り組みます。地域連携ICカードやバスロケーションシステムの導入を支援し、バス利用者の利便性を向上させます。基幹的なバス路線に対する県としての支援策を検討するなど、今後とも最適な交通ネットワークの構築に向け鋭意取り組んでまいります。
(地震災害死ゼロの実現その他の防災対策)
令和6年能登半島地震を踏まえて策定した「長野県地震防災対策強化アクションプラン」に沿って、「地震災害死ゼロ」を目指します。住宅の耐震改修補助予算を前年度当初予算比で倍増するほか、市町村が行う通信機器整備への助成や、ドローン活用のための実証実験への支援等により、孤立地域発生への備えを強化します。また、緊急輸送道路の重点的整備や道路啓開計画の見直しも進めます。さらに、県内21か所の広域物資輸送拠点における運営マニュアルの整備、男女共同参画の視点も踏まえた避難所運営セミナーの開催、避難所として指定されている特別支援学校3校の体育館への空調設備の導入、罹災証明書の迅速な発行のための研修会の開催、専門家が連携して被災者を支援する災害ケースマネジメントの仕組みづくりなど、ハード・ソフト両面で対策を進めます。
このほか、幹線道路ネットワークの強化、流域治水対策、土砂災害対策、インフラの老朽化対策等を、国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策も活用して着実に推進します。また、「逃げ遅れゼロ」の実現のための地域中核人材の育成を進めます。松本市で開催される日本火山学会秋季大会に合わせて「信州 火山防災の日」のイベントを開催するなど、火山防災意識の向上にも努めます。
(犯罪防止対策等の充実)
先月22日、JR長野駅前において、大変痛ましい無差別殺傷事件が発生しました。お亡くなりになられた方と御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、負傷されたお二人に心からお見舞いを申し上げます。
この度の事件も踏まえ、警察本部と連携して、犯罪防止対策の強化と被害者等への支援の充実に取り組んでまいります。今月運用を開始した長野県警察安全・安心アプリ「ライポリス」の普及を促進し、犯罪発生情報のタイムリーな発信等に努めます。街頭防犯カメラ設置補助金の予算額を増額するとともに、プライバシーに配慮した防犯カメラ設置の在り方も含めて「安全安心なまちづくり」に係る方針を有識者を交えて検討します。警察力強化のため警察職員定数を8年ぶりに10名増員するほか、いわゆる「闇バイト」による強盗・窃盗等への加担と被害を防止するための教育・啓発の強化、自主防犯ボランティアの育成支援などを通じて、防犯意識の向上に取り組みます。また、犯罪被害者等の支援体制充実のための検討を開始します。
(地域医療・福祉サービスの充実)
持続可能な医療提供体制を構築するため、施設整備への助成等を通じて医療機関の適切な役割分担と連携を促進してまいります。長野県立病院機構においては、「子どものこころ総合医療センター」の開設など、各病院の役割や経営基盤の強化を盛り込んだ令和7年度からの中期計画を策定しました。この計画に沿った取組が進捗するよう、不採算部門に対する運営費負担金の増額、経営改善への支援などを実施します。木曽病院においては令和8年度からの分娩が中止される見通しであることから、圏域を越えた医療機関の連携促進、妊産婦への交通費助成の拡充など、安心して分娩できる体制の構築に努めます。また、「摂食障がい支援拠点病院」を新たに指定し、摂食障がいの早期治療と社会復帰を促進します。
福祉分野に関しては、要介護状態や認知症になっても地域で希望を持って暮らすことができるよう、医療と福祉の連携や課題の「見える化」などにより、地域包括ケア体制の構築を促進します。農林業分野における障がい者の就労促進のためのコーディネーターを配置するなど、農福連携、林福連携を推進します。総合リハビリテーションセンターについては、地盤の状況や浸水対策の必要性等を考慮し、近隣の県営住宅跡地への移転を前提に敷地調査を実施します。
【快適でゆとりのある社会生活を創造する】
快適でゆとりのある社会生活の創造に向けて、県土のグランドデザインの策定、移住・二地域居住や交流の促進、デジタル・先端技術の活用、文化・スポーツの振興などに取り組みます。
(県土グランドデザインの策定とまちづくり支援)
人口減少下においても安全・安心で快適に暮らせる持続可能な生活圏の形成を目指し、「県土グランドデザイン」の策定に取り組みます。そのためには、病院や学校などの社会インフラや住宅等の立地の在り方に加え、交通の利便性の向上や楽しいまちづくり、地域の災害リスクの低減、生業の確保など、広範な検討が必要です。まちづくりや交通のみならず、医療、教育、産業、観光など様々な分野を視野に入れ、長期的かつ広域的な視点から県土政策の方向性をお示しできるよう、基礎的な調査と県民の皆様との対話を始めてまいります。
他方で、各地域では特色あるまちづくりが進められています。県としても、リニア駅近郊の土地利用に関するグランドデザインの策定や、信州地域デザインセンター(UDC信州)を通じた市町村支援などにより、各地の魅力あるまちづくりを積極的に応援してまいります。
(本州中央部広域交流圏の形成)
本州中央部広域交流圏を形成するため、中部横断自動車道や中部縦貫自動車道、三遠南信自動車道の整備を促進し、伊那木曽連絡道路の姥神峠道路の延伸、松本糸魚川連絡道路の安曇野道路の整備に取り組みます。信州まつもと空港については、地域の皆様の御理解・御協力をいただきながら、一層の利用促進と路線の拡充に努めるほか、国際チャーター便の誘致や空港機能強化のための調査・検討を進めます。
(移住・二地域居住・関係人口増への取組強化)
移住したい県としての強みを最大限に発揮し、移住と二地域居住、そして関係人口の更なる増加にオール信州で取り組みます。まず、東京のふるさと回帰支援センターに配置している相談員を2名から4名に増員するとともに、地域おこし協力隊員を県内4エリアに配置して広域での移住施策を推進します。田舎暮らし「楽園信州」推進協議会において効果的なプロモーションを検討するなど情報発信力を強化します。住まいの選択肢を増やすため、空き家を流通させるための仕組みづくりに取り組みます。「仕事」と「暮らし」をセットにして人を呼び込む「信州で暮らす、働くフェア」の開催回数と出展企業数を増やします。二地域居住については、「広域的地域活性化基盤整備計画」を都道府県として初めて策定いたしました。多様な生き方・働き方を先導する県として、積極的に取り組みたいと考えており、「信州ワーキングホリデー」や農ある暮らしの希望者と実践者の交流の場づくりなどを進めてまいります。
(デジタル・先端技術活用の推進)
デジタル・先端技術を積極的に活用し、教育、防災、医療など暮らしに関わる幅広い分野と行政のDX、ドローン等次世代空モビリティの利活用を推進するため、「長野県DXアクションプラン(仮称)」を今年度中に策定します。暮らしのDXについては、高校生がオンラインで先進的な講義を受講できる環境の構築、へき地や初期救急医療におけるオンライン診療の普及などに取り組みます。時間や場所を問わず県の行政手続を御利用いただけるよう、パスポートの取得などニーズの高い手続からオンライン化に取り組み、全ての手続におけるオンライン対応の実現を目指すほか、外部のデジタル人材も含むアドバイザーチームにより市町村のDXを支援します。また、ドローンの実証実験の補助対象に新たに空飛ぶクルマの事業化準備を加えます。
(輝く農山村地域の創造)
時代の最先端をいくオンリーワンの輝く農山村地域の創造を目指し、現在、りんごと森林をそれぞれの中核資源とする飯綱町・根羽村を対象に人的・財政的支援や地域づくり専門家による伴走支援を行っています。ふるさと納税における農山村体験メニューの造成や森林資源を活かした新商品開発などにより、関係人口の創出や地域資源の高付加価値化などの取組が進められています。 来年度からは、地域ぐるみの農業生産で成果を上げている飯島町を支援対象に加え、アグリビジネスの創出や環境保全型農業の推進などを支援してまいります。
(沖縄県との交流促進)
沖縄県とは、令和5年に締結した交流連携協定に基づく交流を進めています。先日、県議会や経済団体の皆様とともに沖縄県を訪問し、玉城デニー知事との会談や、経済団体との懇談を行ってまいりました。また、長野県遺族会主催の沖縄「信濃の塔」追悼式と、佐久市が平和学習の場として整備した「糸洲の壕学習環境整備事業」の竣工式に参列し、戦争の記憶や歴史を語り継いでいくことの重要性を改めて痛感いたしました。戦後80年を迎える中、改めて平和の尊さを深く胸に刻み込み、県政を進めてまいります。来年度は、信州まつもと空港と沖縄とのチャーター便に対する支援や物産展の開催、子どもの交流などに加え、将来を担う若者の相互訪問を新たに開始するなど、幅広い分野で交流を進めてまいります。
(文化・スポーツの振興)
心豊かな社会を目指し、文化芸術の振興を図ってまいります。「信州アーツカウンシル」を中心に文化芸術団体等と連携して地域の文化活動を支援します。東山魁夷館開館35周年を記念した展覧会の開催や民俗芸能の保存・継承の促進に取り組むほか、新しい県史の編さんに向けた準備を進めます。また、障がい者の文化芸術活動を支援するため、展覧会の開催、アート作品の貸出し、支援者の育成等に取り組みます。
国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会の開催を3年後に控え、スポーツの振興に一層力を注いでまいります。新たに国スポ・全障スポ大会局を観光スポーツ部内に設置し、両大会の準備を本格化します。総合開閉会式会場となる松本平広域公園陸上競技場の整備を進めるほか、冬季大会の施設も含めて市町村が行う競技施設整備を支援します。国スポの開催に向けては競技団体を通じた選手の育成・強化や競技役員の養成等に、全障スポの開催に向けては障がい者スポーツの普及や競技団体の強化等に取り組んでまいります。また、県内プロスポーツチームとの連携を一層強化し、試合観戦と周辺観光を一体で楽しむための仕組みづくりなどを進めます。
【伝わる広報の実現】
多くの県の施策は県民の皆様に知っていただいてこそ効果を発揮することができます。フィードバックを受けながら政策の質を高めていくためにも、「伝える」ではなく、「伝わる」広報が重要です。このため、広報に関する組織、予算を抜本的に強化します。部長級の広報担当参事と専門的知見を有する外部人材を配置し、広報予算を1.6倍に増額します。ターゲットに応じた最適な媒体を活用し、職員のスキル向上のための研修を実施するなど、全庁的な視点で戦略的に広報を実施してまいります。
【組織風土改革「かえるプロジェクト」の推進】
職員が高い志と仕事への情熱をもって活躍できる県組織を目指し、組織風土を改善するための「かえるプロジェクト」に取り組んでいます。これまでに職員提案による約230件の業務効率化に取り組み、生成AIも先月から本格的に活用を始めたほか、フリーアドレス化などのオフィス改革も進めています。全庁的に取り組む重点アクションについても、いわゆるレクの勤務時間外実施ゼロを達成した所属が昨年8月以降継続して9割を超えているほか、ペーパーレス化の推進により昨年4月から12月の資料等の印刷枚数が前年比約3割減少するなど、一定の成果が上がっています。来年度も、職員が明るく楽しく前向きに働ける職場環境づくりと、県民の皆様に真に役立つ組織づくりを一層推進してまいります。
【条例案ほか】
最後に、条例案などについて申し上げます。
条例案は、新設条例案3件、一部改正条例案30件であります。
このうち、「特別支援学校設置条例の一部を改正する条例案」は、特別支援教育の一層の理解促進を図るため、令和8年4月から「養護学校」の名称を「支援学校」に改めるものです。
事件案は、24件であります。
このうち、「高等学校の統合について」は、上伊那農業高等学校と駒ケ根工業高等学校の統合に係るものであります。
専決処分報告は、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」など9件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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