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更新日:2022年2月16日

平成31年2月県議会定例会における知事議案説明要旨(平成31年2月13日)

 はじめに、謹んで一言申し上げます。
 天皇陛下におかれましては、本年、御即位30年をお迎えになられましたことを、県民とともに心からお喜び申し上げます。
 この間、天皇、皇后両陛下におかれましては、長野オリンピック・パラリンピック冬季競技大会や全国植樹祭などに御臨席賜りましたことに加え、満蒙開拓平和記念館への御来館など幾度となく本県にお越しいただきました。長野県北部地震で大きな被害を受けた栄村をお見舞いいただいた折には、仮設住宅で避難生活を送る方お一人お一人に温かなお言葉を賜り、復興への大きな励みとなりました。
 30年もの間、国民に常に寄り添い続けてくださいましたことに改めて深く感謝申し上げますとともに、ますますの御健勝と皇室の一層の御繁栄を心より祈念申し上げます。

 さて、ただいま提出いたしました平成31年度当初予算案をはじめとする議案の説明に先立ち、新年度の県政運営に向けての所信などについて申し述べさせていただきます。 

【新しい時代への転換】 
 「平成」という時代が幕を閉じようとしております。この30年間で、私たちを取り巻く社会経済環境は大きく様変わりしました。
 平成元年のマルタ会談による東西冷戦の終結以来、国際社会は連帯を強める方向に向かっておりましたが、近年は排他的なナショナリズムが各国で台頭するなど、世界の枠組みは複雑さを増しています。また、平成3年にワールド・ワイド・ウェブが実用化されてからわずか28年間で、スマートフォンなどのデジタル機器が世界中で爆発的に普及し、今では様々なものがインターネットでつながる超スマート社会となりつつあります。
 我が国では、戦後一貫して右肩上がりだった人口が平成20年をピークに減少に転じ、人口増加を前提とした社会の仕組みは通用しなくなりつつあります。また、阪神・淡路大震災や東日本大震災を契機に、インフラの安全性やエネルギーのあり方への関心が高まり、バブル経済の崩壊やリーマン・ショックといった経済危機を経る中で、心の豊かさを重視するライフスタイルも広がりをみせています。
 本県は、平成10年のオリンピック・パラリンピック冬季競技大会の開催・成功を機に世界に知られるようになり、海外からも多くの観光客が訪れるようになりました。また、長野自動車道や上信越自動車道の県内区間の全線開通、信州まつもと空港のジェット化、北陸新幹線の開業・延伸など、高速交通網の整備が飛躍的に進んでまいりました。
 このような大きな潮流の中で、我が国は新たな時代を迎えようとしています。未来を的確に見通すことは困難ではありますが、私は、「創造性」、「持続可能性」、そして「共生」の3つが、長野県の発展にとって重要な視点であると考えます。デジタル革命やグローバル化が急激に進行する中、新たな経済・社会システムを構築するためには、様々な分野における創造性の発揮と、そのための教育・人づくりの充実が不可欠です。また、人口が急速に減少していく中、住民生活を守るため、上下水道や交通などのインフラ機能を維持するとともに、持続可能な社会保障制度や財政システムを確立することが不可避です。さらに、格差や貧困等の社会的課題を克服し、心豊かな暮らしを実現していくためには、性別や障がいの有無等に関わらず、全ての人に活躍の場があり、互いに支え合い助け合う共生社会の構築が急務です。私は、こうしたことを念頭に置き、しあわせ信州創造プラン2.0が掲げる「確かな暮らし」、すなわち「明日への希望」と「暮らしの安心」に満ちた長野県を実現するため、全力で県政に取り組んでまいります。

【現下の経済情勢】 
 我が国の経済は、先月公表された政府の月例経済報告によると、13か月連続で「緩やかに回復している」との判断が示され、県内経済も、今月公表された日本銀行松本支店の金融経済動向によると、17か月連続で「緩やかに拡大している」とされています。
 来年度の我が国経済は、先月閣議決定された「平成31年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によると、10月に消費税率の引上げが予定される中、需要変動を平準化するための支援策などの政策効果もあいまって、内需を中心とした景気回復が見込まれるとされています。

【国の予算編成】 
 国の平成31年度予算案は、消費税増収分を活用した幼児教育の無償化をはじめとする社会保障の充実、消費税率引上げによる経済への影響の平準化、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に重点を置いて編成されました。
 平成31年度の地方財政計画については、今年度を上回る一般財源総額を確保しつつ、国と地方の折半対象財源不足を解消し、臨時財政対策債を大幅に抑制していることから、地方財政の健全化に向けた第一歩として高く評価するところです。しかし、依然として地方の財源不足は解消されていないことから、地方交付税の法定率引上げなど、持続可能な地方財政制度の確立を国に求めてまいります。

【平成31年度当初予算編成】 
 今定例会に提出いたしました平成31年度当初予算案及びその他の案件について御説明申し上げます。
 平成31年度当初予算総額は、一般会計8,859億7,311万円、特別会計4,896億8,101万1千円、企業特別会計336億9,719万円であります。特別会計は公債費特別会計など11会計、企業特別会計は流域下水道事業など3会計であります。
 一般会計では、重要度が高い防災・減災対策事業の実施、幼児教育の無償化や福祉人材の処遇改善等により、前年度比で、投資的経費が約371億円、社会保障関係費が約26億円それぞれ増加し、歳出総額は約396億円の増加となります。歳入面では、国庫支出金が約172億円増加する一方、臨時財政対策債は約80億円減少するものと見込んでおり、県税や地方交付税に県税交付金等を加味した実質的な一般財源は0.4パーセントの減となる見込みです。
 県債については、防災・減災対策事業を今年度からの3か年で集中的に実施するため、発行額、残高ともに一時的に増加いたしますが、2021年度には県債残高は現在の水準を下回り、その後も着実に減少する見込みであり、実質公債費比率と将来負担比率についても引き続き健全な水準を維持する見通しです。
 人口減少や高齢化の進展に伴い、中長期的に厳しい財政状況が続くと見込まれる中、持続可能な行政経営体制と財政構造の構築が急務です。このため、新たに、行政・財政改革実行本部を設置し、外部有識者の御意見もお伺いしながら、具体的な改革を実施してまいります。
 来年度予算案は、私にとって知事3期目の最初の当初予算です。県民の皆様からの負託に確実にお応えし、しあわせ信州創造プラン2.0に位置付けた施策の本格展開を図るため、「未来への投資」と「人口減少社会への対応」を強く意識して編成いたしました。

 以下、今回の当初予算案の概要につきまして、しあわせ信州創造プラン2.0に掲げた6つの政策推進の基本方針に沿って順次御説明申し上げます。

【学びの県づくり】 
 まず、「学びの県づくり」です。
 誰もがやりがいや生きがいを感じながら充実した人生を送ることができるよう、学びの機会の充実と学びの改革を推進してまいります。

(生涯にわたる学びの充実)
 先月27日、元陸上選手の為末大さん、教育経済学者の中室牧子さんをお招きして、「学びの県づくりフォーラム」を開催しました。お二人の講演やトークセッションを通じて、多くの方々が、これからの時代に必要な「学び」について考えを深め、自らの学びを捉え直す機会となったものと考えています。
 県立長野図書館に整備を進めてきた「信州・学び創造ラボ」がいよいよ4月にオープンします。利用者同士の交流、県内の図書館や公民館とつながる講座の開催、デジタル工作機器を使ったものづくりなどを通じて、共に学び合い共に価値を創る空間にしてまいります。また、現行の図書館業務システムを改修し、他機関の蔵書や史資料等を横断検索できる「信州・知の入口ポータル」を構築します。さらに、シニア大学、ウィメンズカレッジ、消費者大学、信州環境カレッジの内容を一層充実させ、様々な方々の学ぶ意欲に応えることができるよう、人生100年時代にふさわしい学びの場づくりを積極的に進めてまいります。

(学びの改革の推進) 
 幼稚園・保育所から高校までの連続性を重視し、各段階における学びの質を高める「学びの改革」を推進いたします。
 幼児教育については、信州幼児教育支援センターを開設し、外部有識者の助言をいただきながら、幼稚園教諭と保育士が実践的なフィールドで学び合う研修、幼保小接続カリキュラムの開発などに取り組んでまいります。
 高校教育については、新たな高校のあり方を創造していくため、大学・研究機関と連携した探究的な学びや、専修学校・大学と連携した実践的な産業教育などを行う「未来の学校」実践校を指定します。また、今年度から取り組んでいる高校生の海外留学支援「信州つばさプロジェクト」については、来年度、県が企画するプログラムを拡大するとともに、個人留学に対する助成も開始します。
 特別支援学校については、児童生徒の可能性を最大限に伸ばす学校を目指し、授業ごとのねらいや学習内容等を明確化したカリキュラムポリシーの策定、自立活動担当教員の増員等を行うとともに、老朽校舎の改築など学習環境の整備について検討いたします。また、インクルーシブな社会をリードする学校を目指し、地域の小中学校との交流を推進する副学籍コーディネーターを配置するとともに、児童生徒の才能を発掘して最大限伸ばすことができるよう、スポーツ選手や芸術家など外部の専門家による指導を充実します。

【産業の生産性が高い県づくり】
 次に「産業の生産性が高い県づくり」です。
 第4次産業革命とも言われる技術革新が急速に進展し、経済・社会の枠組みが大きく変化する中で、県内産業の生産性と競争力を高めるための政策に全力を傾注してまいります。

(産業イノベーション推進本部の機能強化)
 AI・IoTやロボットの普及、ビッグデータの活用等により、我が国、そして世界の産業構造は、今後劇的に変化することが見込まれます。製糸から精密機械、そして電子・情報機器分野へと、その時々の風を巧みに受け止めつつ的確に転換を遂げてきた本県産業を更に発展させるためには、第4次産業革命の動きを見据えた未来志向の産業政策が不可欠です。
 こうした認識のもと、新たな製品・サービスの創出や生産性革命を促進し、先端技術の社会実装の進行とともに限りなく壁が低くなっていく産業分野の枠組みを越えた産業政策を立案・実行するため、「産業イノベーション推進本部」の機能を強化します。産業支援機関との連携を一層強固なものとするため、中小企業振興センター、テクノ財団、長野県立大学の各理事長に本部員として参画いただくほか、信州大学、関東経済産業局などからも知見をいただき、本県の産業政策の旗印を明確にし、その下で研究開発、販路開拓、人材育成、金融・財政等の産業支援策を一体的に推進してまいります。
 今月18日に予定している会議では、医療機器産業振興ビジョンの策定等について意見交換を行うとともに、経営者協会等から御提案いただいている信州ITバレー構想の具体化方策や、地域産業の未来像を描く「産業集積連邦(峰)構想(仮称)」についての検討を行いたいと考えております。

(先端技術の利活用による生産性向上) 
 世界が超スマート社会に向かう中、先端技術の活用はもはや必須です。このため、「AI、IoT、ロボット等利活用戦略(仮称)」を今年度中に策定し、多様な産業分野における先端技術の迅速な普及、拡大を図ってまいります。
 まず、中小企業振興センター内に「AI・IoT等先端技術利活用支援拠点」を新設するなど推進体制を整備します。また、専門家による相談・助言体制の充実や、産業ごとの先進事例と支援措置を取りまとめた「利活用マニュアル」の作成・配付、セミナーやワークショップの開催等により、事業者が優れた先端技術を知る機会を増やします。さらに、先端技術を使いこなすことができる人材の育成や、各種技術を導入するに際しての技術面、金融・財政面からの支援を強化するほか、本県産業のデジタル化に寄与する企業の誘致や、プログラミング教育の充実等により、デジタル技術利活用先進県に向けた環境整備も進めてまいります。
 今回の予算案においては、介護事業所におけるロボットの導入支援、森林資源を分析・管理するためのドローン活用の促進、水田の水管理を省力化するためのセンサー等の農業者への貸与などに加え、公立諏訪東京理科大学との連携による社会人向けのAI・IoT教育の実施などに要する経費も盛り込み、先端技術の普及を促進してまいります。

(成長期待分野への展開支援)
 本県の産業が将来にわたり持続的に発展することができるよう、世界的に成長が期待される分野への企業の進出支援や産業の構造転換にこれまで以上に力を入れて取り組んでまいります。
 まず、医療機器産業については、今年度中に振興ビジョンを策定し、完成品の開発支援のため、「信州医療機器事業化開発センター」をテクノ財団に設置するとともに、グローバルな販路開拓を進めるため、「信州メディカルデバイスグローバル展開センター」としての業務を諏訪圏ものづくり推進機構に委託して実施してまいります。
 また、松本市にある工業技術総合センター環境・情報技術部門に「AI活用/IoTデバイス事業化・開発センター」を設置し、専門人材による開発支援や、様々な産業分野におけるニーズと企業の技術とのマッチングを進め、世界的に競争力を持ち得るIoT機器の開発を促進してまいります。
 航空機産業の振興については、飯田市にある開発拠点「エス・バード」における信州大学、JAXA等との航空機システムの共同研究開発を加速させるとともに、システム機器の設計を担うことができる人材の育成や、欧州の展示会などへの出展支援による販路の拡大に取り組んでまいります。
 食品製造業の更なる発展に向け、長野市にある「しあわせ信州食品開発センター」内にインキュベート機能を備えた「機能性食品等開発拠点」を開設して、エビデンスを有する機能性食品の研究開発に取り組む企業を支援するほか、「発酵・長寿県」宣言の具現化のため、発酵・長寿文化の国内外への積極的な情報発信・販路開拓や、発酵食品の素晴らしさを体感していただくためのツアー造成などを行い、本県加工食品の付加価値向上を図ります。
 「日本一創業しやすい県づくり」を掲げる本県として、多彩な創業者を育成することができるベンチャー・エコシステムの構築を目指します。そのため、地域課題解決に取り組む創業者への助成制度の創設や、創業者に対する経営コンサルティング企業等による伴走型支援を拡充するとともに、創業時における中小法人の経営安定化のため、法人事業税の減税措置を継続したいと考えています。

(長野県営業本部の設置)
 本県には、高品質で際立った特徴を持つ農産物や加工食品、伝統工芸品などが数多くあり、国内外の需要を拡大し、付加価値を向上させていく余地はまだまだあるものと考えております。
 そのため、新たに長野県営業本部を設置し、マーケティングデータの調査・分析や、国内外への販路の開拓、ターゲットを定めた高付加価値での販売、市場ニーズの生産者等へのフィードバックなどに取り組むことといたします。また、こうした営業活動と連動して、本県の魅力の情報発信・プロモーションを行うことにより「信州ブランド」の価値向上を図ってまいります。
 まずは、信州を代表するもの、新しく開発されたものなど、対象を定めて重点的な営業活動を行うことにより、本県産品に対する市場や消費者からの認知度や評価の向上を目指します。このため、営業本部の事務局となる営業局を産業労働部内に設置し、銀座NAGANOを首都圏におけるサテライトとして物販・外商や情報発信の拠点とするとともに、各産品の生産振興担当部局や中小企業振興センター、県観光機構など関係機関と緊密に連携・協力する体制を構築してまいります。

(新たな森林管理システム等への対応)
 森林資源を有効に活用し林業の生産性を向上させるため、4月から新たな森林管理システムが導入され、所有者が自ら経営できない森林の管理を市町村が担うこととなります。森林環境譲与税の創設による財源措置はあるものの、専門人材の不足等から、小規模な市町村を中心に、その役割を果たすことが困難な場合も想定されます。このため、森林経営管理支援センターを設置して、専門的事項についての助言や広域的な連携体制の構築支援を行うとともに、森林管理の担い手となる林業経営者を育成することにより、新システムの円滑な導入を図ってまいります。
 今年度からスタートした第3期森林づくり県民税については、台風災害における倒木被害の発生状況等を踏まえ、みんなで支える森林づくり県民会議の御意見も伺った上で、税の活用対象を拡大し、ライフライン沿いの倒木対策や高速道路沿線の枯損木処理にも充当することといたしました。引き続き、防災・減災対策や住民等による里山整備などにも有効に活用させていただくとともに、活用状況等について、分かりやすい情報提供に努めてまいります。

(主要農作物等種子条例案(仮称)の検討)
 主要農作物種子法が廃止されたことを踏まえ、将来にわたって高品質で安全・安心な食料供給が行われることを担保するための条例制定を検討してまいりました。
 先月公表した条例骨子案では、主要農作物として同法が規定していた稲、麦類、大豆に加え、本県特産のそばを対象としたほか、県や種子管理団体、種子生産者等の役割を明確化しました。また、多様な食文化を支える伝統野菜等の種子についても、その維持・保存を支援する旨を明記いたしました。パブリックコメントや関係団体からの御意見を反映させた上で、6月定例会には条例案を提出することができるよう、検討を進めてまいります。

(産業人材の確保と働き方改革)
 昨年12月の県内の有効求人倍率は1.68倍となっており、多くの企業・事業所は深刻な人手不足に直面しています。そのため、「就業促進・働き方改革戦略会議」において、短期間に効果が期待できる就業促進策とそのために必要な働き方改革を中心とする「当面の取組方針」を今年度内に取りまとめ、産業界や労働界などと協力して、具体的な事業を進めてまいります。実効性ある人材確保策とするため、若者、移住者、女性、障がい者など働き手の属性別に具体的な施策と数値目標を明示するとともに、産業分野別会議での議論を踏まえ、農業や観光など産業ごとに取り組む施策も盛り込みたいと考えています。
 当初予算案においては、受入希望企業とのマッチング事業やインターンシップ参加費用補助制度の対象を拡大するなど学生のインターンシップを充実するほか、東京圏をはじめ愛知県・大阪府からUIJターンして中小企業等に就業する方への助成制度を創設するなど、即戦力となる人材の確保にも取り組んでまいります。また、介護職員の資格取得費用を助成するとともに、離職者・転職者を対象として、保育士や大型自動車運転手を育成する職業訓練講座を開設し、専門人材を確保してまいります。
 こうした人材確保を進めるためにも働き方改革の推進は急務です。この4月から順次義務化される長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などを促進するため、労働局や関係団体などと連携して取組を進めるほか、「職場いきいきアドバンスカンパニー」制度に上位認証を創設するなど、多様な働き方ができる職場環境の整備に取り組む企業の支援に努めてまいります。
 なお、人口の急激な減少が進む中、人材確保については中長期的な観点での取組も必要であることから、来年度は戦略会議において、教育・人づくりや若者が定着したくなるまちづくりなどを含む広範な課題について更に検討を行い、本格的な方針をとりまとめてまいります。

(外国人材の受入れ)
 昨年10月末現在、約1万8千人の外国人の方々が県内で就労しています。出入国管理及び難民認定法の改正により、新たな在留資格である「特定技能」が創設されたことを受け、外国人材の確保・受入れに必要な予算を計上しました。
 介護分野では、受入施設が実施する日本語学習や介護技術研修、住居の借上げなどに要する経費を助成します。また、観光人材の採用面接会を海外で開催するほか、留学生等を対象とした合同企業説明会を県内外で開催することにより、製造業等における外国人高度人材の確保を図ってまいります。
 外国人が地域社会に溶け込めるよう、日本語の学習支援を充実するとともに、生活・就労等の総合的な相談窓口の設置に向けた準備を進めるほか、「長野県多文化共生推進指針」について、今日的な視点からの検討を行った上で改定し、外国人にも選ばれる地域、外国人が地域の担い手として活躍する地域を目指してまいります。

【人をひきつける快適な県づくり】 
 第三に、「人をひきつける快適な県づくり」です。
 国内外から多様な人をひきつけ、住む人も訪れる人も豊かな自然や文化を楽しめるよう、本県の魅力づくりと快適な生活空間の整備を進めてまいります。

(感動県信州の創造)  
 日本一多い美術館・博物館、様々な伝統芸能、国宝善光寺・松本城等の文化的資源、セイジ・オザワ 松本フェスティバル等の芸術イベント、世界に名だたる雄大な山岳景観、豊かな自然環境の中で楽しむアウトドア・スポーツなど、本県は訪れる方々に感動をもたらす数多くの資源を有しています。こうした魅力・特性を最大限に活かし、「感動県信州」として観光ブランドの確立を目指します。感動に直結する観光情報の積極的な発信や、様々な感動を体験できるポイントを組み込んだ観光ルートの提案などを行うことにより、本県を観光する方々に繰り返し訪れていただけるよう取り組んでまいります。特に、自転車を観光に積極的に取り入れることとし、美しい日本アルプス等を背景に楽しむ本県でのサイクリングを「ジャパンアルプスサイクルツーリズム(Japan Alps Cycling)」ブランドとして、国内外に強力に情報発信してまいりたいと考えております。
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて増加するインバウンド需要を積極的に取り込むため、外国人旅行者の受入環境整備に取り組みます。JRと県内私鉄4社、地元の観光事業者がタイアップした外国人を対象とする周遊型交通パスの造成や、キャッシュレス決済の普及、外国人にも分かりやすい案内標識の整備などを進めるほか、今月末に設立予定の「長野県インバウンド推進協議会」と連携し、様々な事業をスピード感を持って実施してまいります。
 観光情報の発信を質・量ともに充実させます。現在運用している3つの公式観光サイトを統合し、AIの活用により顧客の嗜(し)好に応じた情報を発信するとともに、宿泊や体験の予約を行うことができる機能を持たせてまいります。また、長野県観光・交通案内アプリ―信州ナビについても、閲覧者の関心に沿った情報を通知するプッシュ機能を付加するなどの改良を行います。

(文化芸術の振興) 
 文化芸術の更なる振興を図るため、芸術監督団に対する活動支援や「長野県版アーツカウンシル」の構築準備などを進めてまいります。特に、文化芸術に関する情報発信を強化するため、美術館・博物館の展示情報はもとより、伝統芸能からダンスに至るまでの情報を幅広く発信するウェブサイトを構築します。また、より多くの方々に文化芸術と触れ合っていただくことができるよう、信濃美術館に展示する触(ふ)れる彫刻などの制作や、児童養護施設等の子どもたちの芸術鑑賞機会の充実などにも取り組んでまいります。
 包括連携協定を締結した東京藝術大学とは、芸術を通じて子どもたちの創造性を育むためのプログラムの実施や、アートの力を産業や観光、福祉などに活かすための取組を、共同で検討・実施してまいります。
 信濃美術館については、文化芸術振興の新たな拠点とするべく、来年度から本館の建設工事に着手し、2021年度の開館を目指します。引き続き、県民の皆様との丁寧な対話を行いながら、開館に向けた準備を着実に進めてまいります。なお、収蔵品の充実を図るため、夭折(ようせつ)画家の貴重な作品で知られる「信濃デッサン館コレクション」390点を取得することといたしました。 
 県立歴史館では、開館25周年を記念して、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」をはじめとする国宝土偶5体を一堂に展示する企画展を開催します。縄文王国信州を知る上で貴重な機会となる今回の企画展等を通じ、多くの方々に本県の歴史・文化の奥深さに触れていただけるよう取り組んでまいります。

(国民体育大会・全国障害者スポーツ大会の準備とスポーツの振興)
 2027年に開催予定の国民体育大会・全国障害者スポーツ大会に向け、準備を着実に進めてまいります。昨年11月の準備委員会において、第一次の会場地選定が行われたところですが、2020年度中には全ての正式競技についての会場地を選定したいと考えています。また、大会での活躍が期待される少年部門の強化合宿や指導者養成に対する支援の充実、長野大学と連携した障がい者スポーツの指導者養成などを実施し、競技力の向上にも力を入れて取り組みます。
 県立武道館については、来年3月の開館に向け、着実に整備を進めており、今後は管理や運営の詳細について検討を進めてまいります。
 
(信州暮らしの推進) 
 県外から様々な人材を呼び込み、活力ある地域をつくっていくためには、県と市町村、関係団体が目標を共有し、一体となって取り組むことが重要です。そのため、信州暮らし推進の新たな方針を今年度内に策定し、関係機関と力を合わせて移住・交流施策を進めてまいります。特に、「働く場としての信州」の魅力を提案することにより、移住を就業に積極的につなげていくほか、継続的に信州と関わりを持つ「つながり人口」の拡大に力を入れてまいります。


(魅力あるまちづくり)
 4月25日から6月16日まで、第36回全国都市緑化信州フェア「信州花フェスタ2019」を開催いたします。メイン会場となる松本平広域公園では、近年の緑化フェアで最大級となる700品種100万株を超える花と緑で、残雪の北アルプスの麓に広がる絶景のお花畑を演出します。100を超える庭園などを御覧いただけるガーデンショー、花や緑と触れ合う体験プログラムなどを通じ、信州の素晴らしい自然や風土を来場者の方々に体感していただけるよう鋭意準備を進めるとともに、このフェアの開催を契機に、緑豊かなまちづくりが一層広がるよう取り組んでまいります。
 若者等の定住促進も視野に入れ、誇りを持って人々が住み、集い続ける「まち」をつくるため、今年の秋頃を目途に「信州地域デザインセンター」を開設します。県と住民や企業、大学等が連携して、まちづくりに関する情報の収集・発信、人材育成等を行い、広域的な視点、分野横断的な視点、専門的な視点から、市町村とも協働したまちづくりの実践に取り組んでまいります。

(先端技術の社会実装) 
 加速度的に発展している様々な先端技術を、今後、産業の生産性の向上だけではなく、生活の利便性向上や地域の活性化に役立てていくことが重要です。しかし、特に生活分野等においては市場原理に委ねるだけでは効果的な活用は望めません。そのため、先端技術活用推進課を企画振興部内に新設し、先端技術の社会実装を統括する最高デジタル責任者(CDO)を置き、産業イノベーション推進本部とも連携しながら、キャッシュレス決済、シェアリングサービス、第5世代移動通信システムの活用など、Society(ソサエティ)5.0の実現に向けた取組を積極的に進めてまいります。

(交通ネットワークの確保)
 自家用車に過度に頼らなくとも暮らせる社会を目指し、広域・基幹的な交通の最適化に着手いたします。来年度は、高速・特急バスや3つの広域圏内のバス路線について、人口動態、生活拠点や観光拠点との接続状況、乗車人数や経常収益等のデータを収集・分析し、路線ごとの現状や課題を診断するカルテを作成し、市町村域を越える効率的・効果的なバス路線のあり方について検討を行います。
 しなの鉄道では、老朽化が進んでいる車両について、環境性能に優れ、トイレも備えた新型車両に順次更新していく予定であることから、来年度は、国や沿線市町とともに6両の車両更新を支援いたします。
 また、各鉄道路線の利便性向上や高速化についても取り組んでまいります。特急あずさの停車本数の削減に関しては、住民の利便性の低下や経済・観光への影響が懸念されることから、今後、地域の声を真摯に受け止めて対応するよう、引き続き関係市町村等とともにJR東日本に強く求めてまいります。

(高速交通網の整備)
 信州まつもと空港は、来年度、発展・国際化に向けた取組方針の第2期である「上昇」期間に入るとともに、7月にはジェット化開港25周年を迎えます。今年度は、多くの方々の協力により、札幌(丘珠(おかだま))線の新規開設や31便の国際チャーター便運航などの成果を上げることができました。今後、季節便の期間延長や国際チャーター便の更なる増便に取り組むとともに、空港施設の機能を強化するための調査に着手してまいります。
 リニア中央新幹線の開業効果が最大化するよう、リニアバレー構想の推進に一層力を入れるとともに、具体的なまちづくりにも取り組んでまいります。昨年12月、国のスーパー・メガリージョン構想検討会において、中間駅周辺での民間投資を促進するための制度や、政府機関や企業の研究拠点などの移転促進を国に提案いたしたところですが、今後、関係市町村等とともに具体的なまちづくりの構想を取りまとめたいと考えております。
 高規格幹線道路等の道路ネットワークは、快適な暮らしと経済の発展を支える重要な社会資本であることから、中部横断自動車道や中部縦貫自動車道、三遠南信自動車道、松本糸魚川連絡道路、リニア関連道路等の整備を推進してまいります。

【いのちを守り育む県づくり】 
 第四に、「いのちを守り育む県づくり」です。
 人と自然のいのちを守り、安全・安心な暮らしを次世代へと引き継いでいくため、災害や事故等のリスクの低減、福祉・医療の確保、地球環境の持続可能性の向上などに取り組んでまいります。

(消防防災航空体制の再構築) 
 消防防災ヘリコプターの痛ましい事故から、間もなく2年を迎えます。改めてお亡くなりになられた隊員の御冥福をお祈りし、二度とこのような事故を起こすまいとの強い決意で消防防災航空隊の体制強化に取り組みます。安全運航管理幹の配置やダブルパイロット制の導入など、安全性を高める努力をこれまでも進めてまいりましたが、今年1月に航空指導幹として操縦士1名を採用し、操縦士を育成するための体制を整えました。今後、2020年度末に予定している新機体による運航開始に向けて、必要な訓練等を着実に実施してまいります。なお、事故の記憶を風化させることがないよう、御遺族の御意向も踏まえ、来年度、鉢伏山の事故現場に通じる歩道の整備を進めてまいります。

(防災・減災対策の緊急実施) 
 「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が閣議決定され、国の来年度予算案と今年度補正予算に所要の事業費が計上されました。
 本県においても、重要インフラの緊急点検の結果を踏まえ、近年頻発・激甚化している災害から県民の生命と財産を守るための防災・減災対策を、今年度からの3か年で緊急的に実施いたします。豪雨や地震の発生時に、住宅地や病院等の重要施設、ライフライン施設等に対する被害を最小限に抑えるため、河川内の樹木や堆積土の除去、道路や林道の法面対策、土砂崩落防止対策、橋梁やため池の耐震化など、国の予算を積極的に活用して取り組むこととし、今年度補正予算案に約245億円、来年度当初予算案に約318億円の補助公共事業費を計上いたしました。なお、緊急点検の結果、対策を講じる必要があると考えられる箇所のうち、緊急対策の対象とはならないものについては、通常の公共事業費により対応してまいります。
 こうした取組とあわせ、ICT等の先端技術を活用した生産性の向上や、週休2日工事の普及等による労働環境の改善などを官民連携の下で進めることにより、建設産業が今後とも発展することができるよう取り組んでまいります。

(暮らしの安全・安心の確保)
 平成30年7月豪雨では、大雨特別警報の発表や避難勧告の発令等がなされたにも関わらず、西日本を中心に甚大な人的被害が発生しました。こうした被害を極力減らしていくためには、県民の皆様一人ひとりが災害を常に自分事として捉え、いざという時には迅速に避難行動等を行う「自助」を促すとともに、地域における支え合いとしての「共助」が適切に機能するよう取り組むことが重要であり、こうした観点からの取組を一層強化します。
 住民向けの防災教育や災害時住民支え合いマップの作成などの具体的な取組方法を「いのちを守る防災力向上プログラム」として取りまとめて、市町村に提供するとともに、危機管理部を中心に、健康福祉部、建設部、地域振興局が相互に協力して、地域における防災マップの策定や防災訓練などを支援してまいります。
 災害拠点病院等は、発災後72時間分の燃料を備蓄することとされておりますが、大規模災害時に寸断された輸送路の復旧等には更に時間を要する場合も考えられることから、ガソリンスタンド等の協力により、災害拠点病院等における必要量の3割程度を備蓄することとします。
 豪雪地帯においては、屋根の雪下ろし作業等による事故が後を絶たず、平成29年度は死者8人、負傷者41人にものぼりました。特別豪雪地帯に指定されている市町村が所在する3つの地域振興局長からの共同提案を踏まえ、落雪型克雪住宅の補助基準である屋根勾配基準の緩和、住宅除雪支援員の対象業務の拡大などを行い、雪下ろしの負担軽減と死亡事故の防止を図ってまいります。
 犯罪は時代とともに広域化・巧妙化しており、殺人等の重要犯罪や特殊詐欺事案の発生件数も高水準です。このため、県警察が有する事件情報の一元的な管理や犯罪発生場所の予測を可能とする予測型犯罪抑止システムを構築するなど、犯罪に対する抑止力・検挙力を強化してまいります。

(豚コレラ発生への対応)
 今月6日、県内の養豚場に搬入された子豚等が豚コレラの疑似患畜と確認されました。疾病のまん延防止のため、自衛隊や長野県獣医師会、宮田村等の協力のもと、当該養豚場の飼育豚とそこから出荷された豚の全頭を殺処分とし、8日までに全ての防疫作業を完了いたしました。今後ともまん延防止策の徹底を図るとともに、畜産農家への経営支援、風評被害の防止など、必要な対策を実施してまいります。

(自転車の安全で快適な利用に関する条例案)
 自転車の安全で快適な利用に関する条例案については、自転車関係団体等で構成する検討連絡会議等における様々な御意見を踏まえて成案をとりまとめ、今定例会に提出いたしました。
 条例案の基本理念は、「安全・安心な県民生活の確保」と「自転車の利用促進」です。県として、自転車通行空間の整備、ライフステージに応じた安全教育の充実、レンタルサイクル事業者の登録制度など、安全な利用環境を確保する様々な方策を講じることに加え、万が一自転車事故が発生した際の被害者に対する補償を確実なものとするため、自転車損害賠償保険への加入を義務化いたしたいと考えております。
 また、「長野県自転車活用推進計画」を今年度中に策定し、安全対策に加え、自転車を活用した健康増進や環境負荷を低減するための取組、観光の振興等についても総合的な展開を図ってまいります。

(医療・介護の確保)
 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、持続可能な医療・介護提供体制の構築に取り組んでまいります。
 国民健康保険等の保険者が保有する医療・介護・特定健診のデータを集約し、入通院の履歴や介護サービスの利用状況、生活習慣等のビッグデータを相互に関連付けて分析することにより、医療・介護に関するサービス提供体制の検討、市町村における健康指導やケアプランの作成などに活かしてまいります。
 小規模病院等に対して医師派遣を行う地域医療人材拠点病院を拡充するほか、県内医療機関において総合診療研修を提供する体制を整備することにより、県内への中堅医師の転職・移住を促進します。また、医師偏在対策を進めるため、来年度、確保すべき医師数の目標を広域圏ごとに定める医師確保計画を策定してまいります。
 昨年12月、市町村長の代表者と健康づくりについての意見交換を行い、問題意識を共有して「信州ACE(エース)プロジェクト」に取り組むことを確認しました。まずは本県の大きな課題である「減塩」を主たるテーマに据え、塩分摂取量1日8グラム以下を目指した取組を進めてまいります。

(環境負荷の低減)
 6月15・16日の2日間、軽井沢町で「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開催されます。参加国や閣僚数も多いことから、国とも緊密に連携し、警備をはじめとする諸準備に万全を期してまいります。
 昨年12月の気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)では、中島副知事が本県の先進的な環境エネルギー政策を世界に向けて発信してまいりましたが、G20関係閣僚会合の関連イベントにおいても、積極的な情報発信を行ってまいります。なお、プラスチックごみが世界的な課題となっている中、ストロー、ペットボトル等のプラスチック製品の使用を抑制するなど、環境に配慮した運営となるよう、国や軽井沢町と協力して取り組んでまいります。
 再生可能エネルギー100%地域を目指す本県としては、来年度、ソーラーマッピングを活かした太陽光発電や太陽熱利用の普及、企業局による新規電源の開発、住宅の断熱性能向上の促進などに積極的に取り組むほか、昨今の技術革新等も踏まえつつ、次期環境エネルギー戦略の検討に着手してまいります。
 本県では、これまで「信州・気候変動適応プラットフォーム」の場において、幅広い関係者が気候変動の影響に関する情報の共有を行ってまいりました。こうした取組を一層強化するため、4月から新たに「信州気候変動適応センター(仮称)」を設置し、高温に強い農作物の開発など、本県の地域特性に応じた具体的・効果的な気候変動対策を進めてまいります。
 中央アルプス県立公園については、今後、リニア中央新幹線の開業に伴い、観光客が更に増加することが見込まれる中、人の活動による影響を受けやすい希少な自然環境の厳正な保護と、公園の適正な利用との両立がますます重要になっていることから、国定公園化を推進してまいります。今後、「特別保護地区」の設定を含む規制計画や、施設の整備等を盛り込んだ国定公園計画案を作成し、できるだけ早く環境大臣に対する申出を行いたいと考えております。
 
【誰にでも居場所と出番がある県づくり】
 第五に、「誰にでも居場所と出番がある県づくり」です。
 性別や障がいの有無、世代や国籍の違いなどに関わらず、多様な価値観を認め合い、誰もが個性や能力を発揮できる社会の構築に取り組んでまいります。

(児童虐待への対応)
 昨年3月に東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死した事件に続き、先月、千葉県野田市で10歳の女の子が父親からの虐待で亡くなるという大変痛ましい事件が発生いたしました。こうした状況を踏まえ、一時保護を解除した後の子どものフォローアップ体制について、児童相談所を中心として、警察、教育委員会、女性相談センターが相互に情報共有を図ることを改めて確認いたしました。 
 今後、児童虐待死を絶対に起こさないという強い決意のもと、児童福祉司の増員による児童相談所の体制強化を図るとともに、国が策定する予定の緊急対策を踏まえ、児童相談所が在宅で指導している全ての虐待事案について児童の安全確認を行ってまいります。

(子ども・若者の希望が実現できる社会づくり)
 未来の長野県を担うすべての子どもたちが、様々な困難を乗り越え、希望を持って将来へ進むことができる環境をつくるため、虐待だけではなく、貧困、いじめなど、子どもたちが抱える様々な課題や悩みに正面から向き合ってまいります。
 子どもたちやその家族を温かく支える社会システムを「子ども家庭支援ネットワーク」として構築するべく、県と市町村とが密接に連携しながら、必要な体制整備を進めます。具体的には、児童相談所が行っている相談業務や一時保護等を補完する機能を有する「児童家庭支援センター」を増やすほか、2022年までに全市町村で「子ども家庭総合支援拠点」が設置されるよう、研修会の開催や児童相談所による助言等を行ってまいります。また、児童養護施設の退所者に対する継続的な訪問・相談等を行う児童養護施設を県独自で支援します。
 地域における子どもの居場所として、食事提供のほか学習支援等の機能を有する「信州こどもカフェ」を一層普及させるため、来年度から新たに食材費等運営経費の一部を助成してまいります。

(魅力ある子育て環境づくり)
 平成29年10月に松本市で保育所等利用待機児童が発生して以来、本県でもその解消が急務となっています。ニーズが高まっている3歳未満児を対象とし、比較的小規模な施設で運営される地域型保育事業の開設を促すため、県独自で助成制度を創設します。
 約1万人の有資格者を対象とした就業希望調査や保育施設と求職者との丁寧なマッチングを保育士人材バンクで行うなど、保育士の確保にも力を入れてまいります。
 今年10月からの幼児教育無償化は、幼稚園や保育所にかかる経済的負担の大幅な軽減に資することから、制度の円滑な導入に向けた準備を市町村とともに進めてまいります。あわせて、所得や保育の必要性に関わらず、本県が推進している「信州やまほいく」を受けることができるよう、無償化の対象とならない信州型自然保育認定園の利用者に対して、県として独自に保育料の2分の1を助成します。
 子どもたちが利用する県有施設のうち、松本平広域公園のスポーツ施設や白馬ジャンプ競技場など個人から利用料金を徴収する施設において、第3子以降の子どもに係る利用料金を4月から無料化します。また、県立の文化会館等が主催するコンサートなどの料金も一部軽減を図ることにより、「多子世帯応援プレミアムパスポート」協賛店の一層の拡大等につなげてまいります。

(誰もが活躍できる環境づくり)
 女性が仕事や地域社会、家庭において、個性や能力を十分に発揮できる社会をつくるため、全庁的に女性活躍を推進する職を新たに設けることとし、県組織における女性の登用もあわせて進めてまいります。また、女性の学びの場としてのウィメンズカレッジや、出産や育児で社会から離れている女性たちがチームで仕事ができる仕組みづくりの推進などにより、女性が活躍しやすい環境整備に努めてまいります。
 県組織における障がい者の雇用に関しては、法定雇用率の算定誤りの問題を教訓として抜本的にそのあり方を見直します。昨年12月、「障がい者の採用・活躍の場の拡大等に向けた取組方針」を定め、採用・活躍の場の拡大、職場環境の整備、職員の意識改革の3つの柱で取組を進めています。現在、今年度第2回目となる常勤職員としての採用選考を進めており、また、知的障がい・精神障がいのある方も対象とする非常勤職員の採用についても募集人員を大幅に拡大することといたしました。来年度からは、障がい者雇用推進アドバイザーとして障がい当事者の方をお迎えするとともに、障がいのある職員の活躍を支援するスタッフを県庁及び各地域振興局に配置するなど、全ての職員が働きやすい職場づくりに取り組んでまいります。
 障がい者の就業を拡大するため、出会いの場としての合同企業説明会の開催や、JAが農家と障がい者就労支援事業所とのマッチングを行う仕組みの構築などに取り組むほか、障がい者を雇用する企業等に対する事業税軽減措置の対象重点化と減税率の引上げを行いたいと考えております。

【自治の力みなぎる県づくり】
 第六に、「自治の力みなぎる県づくり」です。
 地域の課題解決にきめ細かく対応するため、市町村やNPO、住民など多様な主体との協働を進めるとともに、職員の政策力を高めるなど「学ぶ県組織」への転換を加速させてまいります。

(地域課題解決に関わる人材の確保)
 本県では、全国で2番目に多い人数の地域おこし協力隊員が活躍していますが、任期終了後の県内定着率は低下傾向にあります。そのため、新たに県が地域おこし協力隊員を採用し、協力隊の経験者とも連携しながら、市町村や地域における受入体制の整備や市町村隊員の活動支援などを行ってまいります。
 地域づくり活動を支える多様な人材を確保するため、公民館等で住民の活動に寄り添った支援を行う人材の育成や、県外に在住しながらも住民と協働して地域の課題解決に取り組む人たち、すなわち「つながり人口」の増加に取り組んでまいります。また、農ある暮らしを志向する方々を農村に呼び込むため、専門アドバイザーの配置や農業を体験・実践する機会の充実を進めます。

(地域振興局を核とした地域づくり)
 地域振興局を設置してもうすぐ2年が経過します。各圏域の特性を活かした地域づくりを県として進めていくためには、地域振興局長のリーダーシップが重要であり、引き続き、県政の最前線で主体的に取組を進めていってもらいたいと考えております。
 来年度予算案の編成におきましても、地域振興局長からの提案や意見の反映に努めたところです。例えば、先に御説明したサイクルツーリズムの推進や総合的な雪対策の実施といった施策は、複数の局長からの共同提案に基づくものです。また、諏訪地域振興局長からの提案による諏訪湖を活かしたまちづくりは、AIを活用して貧酸素水塊の発生・拡大条件の分析を行うほか、ヒシの除去や覆砂などの水質改善対策、サイクリングロードなどの湖畔整備を実施するものです。
 今後とも、地域課題に的確に対応する施策の立案・実行に努め、現場重視の県政を進めてまいります。

(学ぶ県組織への転換)
 「学ぶ県組織」への転換を目指し、職員育成基本方針を今年度中に改定します。具体的には、職員研修体系を見直し、政策力の向上に資する研修や海外派遣研修を充実させるとともに、資格取得や大学院修学などの自発的な能力開発を支援することにより、職員の意欲を引き出し、その能力を最大限活かしてまいります。また、職員ができる限り若いうちから責任ある業務を経験できるよう、人事管理のあり方についても検討してまいります。
 職員の意識と行動の変容を促すためには、職場環境を変えることも重要です。県職員のパソコンを順次モバイル化し、机に縛られない働き方を可能とします。また、RPA(ロボットによる業務自動化)を今年度の3業務から30業務へと大幅に拡大し、単純作業を省力化することで、職員の時間と労力をより創造的な業務に振り向けてまいります。また、政策に関する県民の皆様からの御意見を公開の場でお伺いする「政策対話」の実施などにより県民起点での政策形成を徹底し、社会の要請に的確に対応してまいります。 

(SDGsの推進)
 以上申し上げました来年度当初予算案は、経済・社会・環境の三側面を統合的に向上させようとするSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも資するものと考えております。経済界、NPO、大学など多様なステークホルダーの参画のもと「信州SDGs推進プラットフォーム」を構築し、優れた取組の創出と共有・普及を図るとともに、海外の国や地域とも積極的に交流・連携を図りながら、SDGs未来都市としての取組を本格化させてまいります。

【平成30年度補正予算案】
 次に、平成30年度補正予算案について申し上げます。
 補正予算案は、一般会計304億2,335万6千円、特別会計1億994万2千円であります。
 今定例会に提出した補正予算案は、国の補正予算を最大限に活用して編成いたしました。
 防災・減災対策については、土砂災害や水害の防止対策、道路法面の落石や崩落防止対策、地籍調査の加速化、障がい者施設のブロック塀改修、緊急輸送路上の信号機の電源装置整備など、3か年の緊急対策の初年度として速やかに着手するべき事業を計上いたしました。
 TPP協定の発効に対応するため、農道や林道、農業水利施設の整備、畜産施設の規模拡大や高性能林業機械の導入などにより、農林業の生産基盤を強化し、国際競争力を高めてまいります。
 地域の中核企業等によるイノベーションを促すため、最先端の評価機器を工業技術総合センターに整備するほか、保育士確保を図るため、保育士養成施設の学生に対する修学資金の貸付原資を社会福祉事業団に対して助成します。
 一般会計補正予算案の財源として、県債155億3,200万円、国庫支出金143億8,727万3千円、その他分担金負担金など5億408万3千円を見込み、計上いたしました。
 今年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8,875億7,831万1千円となります。
 特別会計の補正予算案は、流域下水道事業費及び県営林経営費に係るものです。

【条例案ほか】
 条例案は、新設条例案1件、一部改正条例案14件の、合わせて15件であります。
 新設条例案は、先ほど御説明した「長野県自転車の安全で快適な利用に関する条例案」であります。
 一部改正条例案のうち、「長野県手数料徴収条例の一部を改正する条例案」など5件は、10月からの消費税率引上げに伴う使用料・手数料の改定等、所要の改正を行うものです。
 「長野県流域下水道条例の一部を改正する条例案」は、流域下水道事業について、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るため、地方公営企業法の財務規定等を適用するものです。
 「資金積立基金条例の一部を改正する条例案」は、森林環境譲与税を財源として、新たな森林管理システムの取組を進めるため、長野県森林経営管理基金を設置するものです。

 事件案は、「副知事の選任について」など23件です。
 副知事については、太田寛(ゆたか)氏と小岩正貴(まさき)氏の選任をお願いするものであります。太田氏は、この4年間、副知事として私を補佐して優れた実績を残し、これからも山積する県政課題に対応するために不可欠な人材であり、また、しあわせ信州創造プラン2.0を着実に進めていくためには、企画振興部長としてプランの取りまとめに手腕を発揮した小岩氏の力が必要であると考えております。
 
 専決処分報告は、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」など10件です。

 以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。

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