ホーム > 県政情報・統計 > 県概要 > 知事の部屋 > 県議会における知事議案説明要旨 > 令和6年11月県議会定例会における知事議案説明要旨
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更新日:2024年11月28日
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。
【人口減少への対応】
最重要かつ緊急の課題である人口減少に対応するため、若者をはじめとする県民の皆様との意見交換、県議会の少子化・人口減少対策調査特別委員会や、県民会議準備会合における議論を踏まえ、今般、「信州未来共創戦略~みんなでつくる2050年の長野~(仮称)案」を取りまとめました。人口減少は、働き方や暮らし方、それを支える価値観など、様々な要因が複雑に絡み合って生じており、経済・社会全体に幅広い影響を及ぼします。この戦略案は、明るい未来のビジョン、すなわち2050年の「ありたい姿」を実現するために、行政はもとより、企業や団体、そして県民一人ひとりが今から具体的な行動を起こすための羅針盤となるものです。
まず、人口減少の現状を県民の皆様と共有し、ジェンダー平等の実現や年功序列意識の払拭など、新しい時代に向けて価値観の転換を図ってまいります。そして、「若者・女性から選ばれる寛容な社会づくり」「信州の強みを活かした移住・関係人口の増加」「安心・便利で持続可能な生活圏の整備促進」「変革期を乗り越える経営等の革新」の大きく4つの方向性で取組を進めてまいります。
今回、私たちは「寛容性」に注目いたしました。民間シンクタンクの調査研究によれば、地域の「寛容性」と地域からの流出意向や東京圏からのUターン意向との間には密接な関係があるとされています。このことは、ハーバード大学の研究で、私たちを幸福にするのは富や名誉ではなく良き人間関係であるとされていることとも符合します。温かな人間関係を築く上で必要なことは、他者に対してどれだけ理解を示すことができるかという「寛容さ」だからです。こうした観点で、若者の社会参画の促進、性別による固定的役割分担の解消、共育ても当たり前にできる働き方への変革などに取り組み、若者や女性を含む県民の幸福度を高めることにより、安心して結婚・出産・子育てができる社会の実現を目指します。
若者との意見交換では、「楽しいまち」と「便利な交通」への要望が数多く寄せられました。一方、人口減少に対応しながら必要なインフラや公共サービスを維持するためには、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の視点に加え、災害への強靱さも意識したまち・むらづくりが必要です。住居の適正配置やインフラの最適化を図ることにより、「都市の利便性」と「地方の豊かさ」を両立させた広域的な生活圏の整備に取り組みます。
産業を発展させ、生活サービスを維持するためには、付加価値労働生産性を徹底的に高めるとともに、多様な人材の労働参加と省力化投資を進めていくことが必要です。県としても、各事業所・各産業におけるDXの推進や経営革新、海外展開や人材確保等を積極的に支援してまいります。
人口減少に伴う様々な課題に立ち向かうためには、多様な主体による共創が不可欠です。今後、県民の各界各層が結集する「私のアクション!未来の長野創造県民会議(仮称)」を来月23日に設立し、戦略を決定するとともに、具体的な対策を議論し、推進します。超長期にわたった人口増加時代の常識を捨て、新しい社会を創造するとの強い決意で取り組んでまいります。
【海外との連携強化】
(アメリカへの訪問)
県産品の販路拡大やインバウンド旅行者の増加を目的に、食品製造、宿泊施設等の事業者の皆様とともに、先月27日から今月3日にかけて、アメリカのニューヨーク、ポートランド、ロサンゼルスを訪問いたしました。
全米最大の都市ニューヨークでは、「発酵・長寿NAGANOの食」をテーマにレセプションを開催し、本県が誇る味噌や日本酒などの発酵食品をはじめ、米や蕎麦、おやき、信州プレミアム牛肉などの魅力を、現地の流通・小売業者やメディアに紹介し、販路の開拓を進めてまいりました。
ポートランドでも同様のレセプションを行うとともに、オレゴン州経済開発局やポートランド広域行政府を訪問し、経済連携の強化やコンパクトで持続可能なまちづくりについての意見交換を行いました。
カリフォルニア州最大の都市ロサンゼルスでは、富裕層を顧客に持つ旅行会社、航空会社等を対象に本県の多彩な観光資源をアピールするレセプションを開催するとともに、本県観光の特色をメディア向けに発信いたしました。また、現地での商談会でも旅行会社から好意的な反応が得られ、アメリカでの認知度向上に手応えを感じています。
アメリカは、県内産加工食品の最大の輸出先であり、富裕層による旅行市場も非常に大きいため、アメリカ、特にカリフォルニア州を中心とする西海岸地域は、本県の海外戦略において極めて重要です。今回の成果を活かし、県産品の販路拡大やインバウンドの誘客をさらに進めてまいります。
(ドイツとの協力関係)
昨年10月、ドイツのフラウンホーファー研究機構の応用情報技術研究所を訪問し、協力関係の構築に向けた共同宣言を締結いたしました。この宣言に基づき、先月、同研究所の関係者をお招きし、日独連携シンポジウムやセミナー、IT分野等における企業相談会などを集中的に開催するとともに、工業技術総合センターに同研究所のサテライトオフィスを開設いたしました。
EU最大の経済規模を誇るドイツとの連携は、本県産業の発展にとって極めて重要です。また、気候変動対策や交通政策などドイツから学ぶべき点も数多くあります。産業のグローバル展開やイノベーション創出、さらには世界共通の課題解決のため、ドイツとの協力関係を一層強化してまいります。
(ブラジルとの交流)
在ブラジル長野県人会65周年記念式典及び第一アリアンサ入植100周年記念式典に参加するため、今月15日から24日にかけて、関昇一郎副知事、山岸喜昭県議会議長、羽田健一郎町村会長らがブラジルを訪問しました。
第一アリアンサ移住地は、日本からのブラジル移住の先駆けとして長野県民が開拓した地域で、現在も日本文化が色濃く残る場所です。盛大に執り行われた式典では、祝意を表し、今後の交流継続を約束いたしました。
ブラジルは中南米最大の経済国で、今年のG20議長国も務める重要な国です。長野県人会など日系社会をはじめとするブラジルの皆様との関係の維持・発展に努めてまいります。
(海外戦略の強化)
人口減少が進む中、県内産業を活性化し、地域活力を高めるためには、世界の知見や成長を積極的に取り込む必要があります。そのため、これまでの成果を踏まえ、本県の海外戦略を抜本的に強化します。その際、世界各地の県人会組織や、本県におけるJETプログラム経験者など、人的なネットワークの構築、活用にも力を入れてまいります。
【信州から学びの「新しい当たり前」を創る】
本年7月、信州学び円卓会議から、新しい社会の創り手を育むため、学びの「新しい当たり前」を共に創ろうとのメッセージが出されました。子どもたちのやりたいことを支える、教員のチャレンジを支えるなど、重点取組項目も示されています。これを受け、日本の学びの新しいモデルを信州から創るとの決意を、武田教育長とともに表明いたしました。今後、市町村や教職員、保護者や地域の関係者などとも目指す方向性を共有し、学びの改革に取り組みます。
まず、公立の小中学校等を対象とする「ウェルビーイング実践校TOCO-TON」の指定を進めます。子どもたちが「好き」や「楽しい」、「なぜ」をとことん追求できるよう、一斉一律の授業から一人ひとりに合った学びへと転換してまいります。
教員が意欲を持って教育に取り組めるよう、勤務環境や処遇の改善にも力を入れてまいります。現在、教育委員会において、教員の欠員解消策や学校における外部専門人材の活用、へき地手当の支給割合引上げ、学校改革支援センター(仮称)の設置などを一体的に検討しています。「教員になるなら長野県で」と思っていただける環境を整えるべく、教育委員会と連携して取り組んでまいります。
本年9月、教育委員会が「県立高校の特色化に関する方針」を策定しました。この方針では、大学進学支援や高大連携の強化、起業家マインドの醸成や英語・デジタル教育の強化、ICTを活用した中山間地校での多様な授業展開、特色ある高校での全国募集実施など、時代にあった高校づくりのための重要な方向性が示されています。各高校では今年度末を目途に特色化の方向性を取りまとめる予定であることから、それぞれが個性を持ち魅力あふれる学校となるよう、教育委員会とともにその具体化を支援し、時代に即した高校づくりを進めてまいります。
【宿泊税(仮称)の検討】
本年9月に発表した「長野県観光振興税(仮称)骨子」をもとに、県内4会場での説明会や市町村・関係団体との意見交換を行ってまいりました。また、あわせて実施したパブリックコメントでは、50以上の個人・団体の皆様から御意見をお寄せいただきました。観光振興のために目的税を導入することについては、概ね御理解をいただけたものと考えておりますが、「観光振興税」という名称、合宿等に対する課税の是非、特別徴収義務者の負担軽減策などについて、更なる検討を求める声が出されたところです。
これらの御意見を踏まえ、観光目的以外の宿泊者も含めて御理解をいただきやすくするため、名称は「宿泊税(仮称)」とし、また、部活動や合宿など大学、高校等が認める活動については、本県におけるその重要性に鑑みて課税免除の対象にしたいと考えております。低価格での宿泊者については税の負担感が大きいのではないかとの御意見もあることから、免税点を骨子でお示しした3,000円から引き上げることを検討します。
特別徴収義務者になっていただく宿泊事業者の負担を軽減するため、税の導入に伴い必要となるシステム改修に対する支援や、納税者に対する適切な広報などを行います。また、無許可営業の宿泊施設については、確実に捕捉して必要な指導を行ってまいります。
今後、県議会をはじめ、市町村、関係事業者等の御意見を改めてお伺いした上で成案を取りまとめ、2月定例会での条例案提出に向け取り組んでまいります。
【銀座NAGANOのリニューアルオープン】
2014年10月、一般的なアンテナショップとは一線を画し、「信州のヒト・コト・モノ」を総合的に発信する拠点として「銀座NAGANO」を開設しました。開業から10年を経過する中で、来場者数は延べ700万人以上、売上高は22億円を超えるなど多くの実績を上げ、信州ファンの拡大と信州ブランドの価値向上にも重要な役割を果たしてきました。
10周年の節目にあたり、各フロアの機能を再整理し、より利便性が高く分かりやすい店舗とするため改装を行い、先月26日にリニューアルオープンいたしました。1階は物販に特化してバリアフリー化することで、多くの方々が利用しやすい空間としました。2階はバルコーナーとイベントスペースとを一体化させた体験フロアに転換し、5階には移住や観光の相談機能を集約しました。
このリニューアルを契機に、県内事業者によるテストマーケティング機会の一層の拡大、市町村や民間事業者と連携したイベントやセミナーの充実などを図ります。また、長野県に関心を持つ若者たちによる定期的な交流の場として「NAGANOコネクトサロン」を設け、地域の魅力を共有しながら新たなつながりを生み出してまいります。
【しあわせバイ信州運動の展開】
県産品の購入等を通じて地域内経済循環を高め、地域経済を活性化するため、「しあわせバイ信州運動」を推進してきましたが、残念ながら県民の認知度は14.4パーセントにとどまっています。消費行動を通じて「ゆたかでしあわせな未来を実現する」という考え方はエシカル消費と共通することから、両者の取組を一本化し、新たな視点で「しあわせバイ信州運動」を本格的にスタートしました。
個々の消費行動はたとえ小さなものであっても、多くの人がエシカル消費や地域内経済循環を意識して物やサービスを購入すれば、社会を大きく変える力となります。例えば、福祉施設で作られた商品を選ぶことが障がい者への支援となり、地元産の野菜を購入することが地域の活性化につながるといった効果が生まれます。まずは、この運動の意義を県民の皆様に広く知っていただき、実際の消費行動につなげていただくことが重要です。小中学校での出前講座や「エシカルマップ」の作成、テレビCMや全県的な集中キャンペーンの実施など、様々な方法を通じて認知度の向上に努めてまいります。
この運動を進めるには、商品やサービスを提供する事業者の御協力が欠かせません。昨年9月には、運動に賛同いただける事業者や団体を「パートナー」として登録する制度を設け、これまで1,300を超える事業所に登録をいただきました。さらに先月、「しあわせバイ信州運動共創ネットワーク」を発足させ、パートナー同士がつながり、連携できる体制を整えました。県としても、庁内関係部局の連携・協力体制を一層強化し、運動の効果的な展開を図ってまいります。
【信州F・POWERプロジェクトへの対応】
信州F・POWERプロジェクトに関しましては、発電事業を担うソヤノウッドパワー株式会社の事業が、この度、綿半ホールディングス株式会社と株式会社九電工が共同で設立する新会社に引き継がれることとなりました。
綿半ホールディングス株式会社には、製材事業を担う旧征矢野建材株式会社に対する支援に続いて発電事業にも御参画いただけますことに、また、株式会社九電工には、引き続き発電事業の経営に携わっていただけますことに、それぞれ深く感謝申し上げます。
県としては、これまでプロジェクトにおける役割と責任を誠実に果たしてまいりましたが、結果的に当初の計画通りに事業が進捗せず、関係者の皆様に多大な御迷惑をおかけすることになりました。このことにつきましては、大変に心苦しく、申し訳なく思っております。
今後は、発電用燃料材の確保に向けたサプライチェーンの構築や、主伐・再造林の推進など、事業の持続的な発展に向けた関係者の取組を適切に支援することにより、当初の事業目的である「森林資源の有効活用による林業・木材産業の活性化」を実現できるよう取り組んでまいります。
【令和7年度当初予算編成】
令和7年度の当初予算編成について申し上げます。
来年度予算においては、「人口問題への対応」、「ゼロカーボンの加速化」及び「地震防災対策の抜本的強化」に重点的に取り組むとともに、「しあわせ信州創造プラン3.0」を着実に推進します。また、デジタル技術の積極活用や効果的な広報にも力を入れ、メリハリの効いた予算となるよう取り組みます。
また、社会保障関係費の増加等により今年度を上回る財源不足が見込まれることから、クラウドファンディングの活用や宿泊税(仮称)の導入検討を進めるほか、若手職員や現場の意見を取り入れながら既存の事務・事業を徹底的に見直し、収支差の縮小に努めます。さらに、予算編成プロセスを見直し、協議事項の重点化やペーパーレスの徹底などにより、質の高い事業構築と職員の負担軽減との両立を図ってまいります。
なお、市町村とともに在り方を検討してきた「地域発 元気づくり支援金」については、その対象事業を広域的な連携事業と持続可能な地域づくりに真に資する事業に来年度から重点化します。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
補正予算案は、一般会計1億6,805万9千円、企業特別会計295万3千円であります。
一般会計補正予算案には、先ほど申し上げました人口減少対策を推進するための県民会議の運営に要する経費のほか、若者や子育て世帯等を三大都市圏から県内に一層呼び込むための移住支援金の増額に要する経費を計上しました。また、消費生活センターを来年4月に松本に集約し、その機能を強化するため、オンライン相談窓口の設置や県民に対する広報活動に要する経費を計上しました。あわせて、市町村支援や消費者教育を充実するための新たな人員配置や相談員の処遇改善を進め、複雑化・高度化する消費生活相談に的確に対応できる体制を構築してまいります。さらに、春・夏の観光シーズンに向けた道路舗装の修繕や、除雪等により不鮮明となった道路区画線の補修、横断歩道の塗り替えなどを行うための債務負担行為を設定しました。この補正予算案の財源として、繰越金1億280万9千円、国庫支出金4,425万円、県債2,100万円を見込み、計上しました。今回の補正を加えますと、今年度の一般会計予算は1兆149億3,776万8千円となります。
企業特別会計の補正予算案は、総合リハビリテーション事業に係るものであります。
なお、今月22日、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」、「国民の安心・安全の確保」を三つの柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」が閣議決定されました。現在、国では補正予算の編成が進められていることから、県としても積極的に情報を収集し、速やかに必要な予算を編成できるよう検討を進めてまいります。
【条例案、事件案、専決処分報告】
次に、条例案は、一部改正条例案8件であります。
このうち「職員の勤務時間及び休暇等に関する条例の一部を改正する条例案」は、職員が高い士気をもって効率的に勤務できる環境を整備するため、週休三日も可能とするフレックスタイム制を新設しようとするものであります。
事件案は、地方独立行政法人長野県立病院機構第4期中期目標の制定についてなど19件であります。
専決処分報告は、交通事故に係る損害賠償の専決処分報告など6件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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