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更新日:2024年6月20日

令和6年6月県議会定例会における知事議案説明要旨(令和6年6月20日)

 ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。

【人口問題への対応】
 本県の人口は、本年2月に約50年ぶりに200万人を下回り、2001年のピークから20年余りで約1割減少しました。日本全体でも2008年以降人口減少が続いており、国立社会保障・人口問題研究所によれば2050年には人口1億400万人余りとなり、東京を除く全ての道府県で2020年より減少する見通しです。
 こうした中で発表された2023年の全国の合計特殊出生率は、過去最低の1.20であり、全ての都道府県で前年を下回るという深刻な事態となっています。本県としても、出生数の急激な減少を抑えるために、保育料や子ども医療費等の負担軽減を図るための「子育て家庭応援プラン」の具体化をはじめ、若者の就職支援や交流の促進、結婚や不妊治療等への支援、「パパ育休応援奨励金」の創設による男性の育児休業取得支援などに一層力を入れて取り組んでまいります。今回の補正予算案では、こうした支援策や子育ての魅力を広く知っていただくための広報に要する経費を計上したところです。
 人口問題への対応には、県民の皆様と危機感や方向性を共有することが重要です。まずは、長野県立大学と信州大学で、未来を担う若者との県民対話「HOPE(ホープ)2050(ニセンゴジュウ)」を開催しました。大学生や若い社会人の皆様と2050年のありたい未来像についてディスカッションを行い、完全週休三日制の導入、年代別議会の導入、信州バーチャル大学の開校など、多彩なアイデアをいただくことができました。引き続き、市町村、産業界等を含めた幅広い県民の皆様との対話を進めてまいります。今後、出された御意見等を踏まえて検討を行い、年内にはオール信州で人口問題に対処するための県民会議の立ち上げと戦略の取りまとめを行いたいと考えています。我が国の人口は当面減り続けることが確実であることから、明日開催予定の県民会議準備会合においても、人口減少社会への適応策に重点をおいて議論を深めてまいります。
 東京大学名誉教授で県政参与の神野直彦氏は、全国知事会国民運動本部のセッションで、「人口問題は経済活動だけでなく、人々の生活活動や生活様式などが複雑に絡み合っており、人々の『幸福(well(ウェル)-being(ビーイング))』に深く関わっている」と指摘されました。歴史の峠を越えようとしている現在、将来世代のためにも、今を生きる私たちが明るい将来ビジョンを取りまとめ、実行していかなければなりません。外国人を含む県民や本県に関わりのある皆様のしあわせ(well-being)の実現を図ることを愚直に追求し、これまでの常識にとらわれることなく、長期的な視点に立って社会の大胆な変革に挑戦してまいります。

【地震防災対策の抜本的強化】
 令和6年能登半島地震発生から半年近くが経過する中、これまで延べ5,100名を超える県と市町村の職員が本県から被災地に入り、避難所運営や住宅被害認定調査などの支援を行ってきました。現在も県から長期派遣している4名の技術職員が道路や建築物の復旧に取り組んでいます。被災地の本格的な復興に向け、能登半島地震復興支援県民本部の参加団体と協力し、「チームながの」として息の長い支援を行ってまいります。
 今回の地震で生じた住宅の倒壊や孤立集落の発生、避難所の諸課題などは、本県でも十分に起こり得る問題であるため、県としても重点的に対策を進めているところです。今年度当初予算で補助制度を充実した住宅耐震改修補助の申請件数は、先月末時点で前年比約1.6倍の109件と増加しており、県民の関心も高まっています。今後、食料品等の備蓄や家具の転倒防止、地震保険加入促進などの呼びかけと合わせ、住宅の耐震化を一層推進してまいります。また、木曽地域では災害時の孤立集落への物資配送にドローンを活用するための実証実験を行っており、町村・事業者間の協力体制構築などを進めています。この取組を県内全域に展開するため、現在、市町村の意識調査と配送業者の掘り起こしを進めています。さらに、避難者の健康維持のためには避難所トイレの環境改善が重要であることから、組立式トイレの広域的な備蓄に必要な経費を補正予算案に計上しました。
 現在策定中の「地震防災対策強化アクションプラン(仮称)」では、「地震災害死ゼロ」を目指し、耐震化の促進、孤立地域の発生抑制と早期解消、避難生活の質の改善、女性や外国人等多様な方々に対する配慮などを重点項目として位置付け、施策の具体化を図ってまいります。

【地域公共交通の再構築】
 誰もが安心して暮らせる持続可能な地域社会を実現するためには、行政と交通事業者の役割分担も含めて公共交通をリ・デザイン(再構築)することが必要です。そのため、今月12日、長野県全域を計画区域とする地域公共交通計画を長野県公共交通活性化協議会において決定しました。
 モータリゼーションの進展や少子高齢化・人口減少の急速な進行を背景として、民間事業者の自助努力のみで地域公共交通を維持することは困難な状況です。このため、行政の主体的な関与により社会的共通資本である地域公共交通の維持・発展、利便性の向上を図ることとし、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築や担い手の確保、キャッシュレス決済の導入や脱炭素化の推進などに取り組んでまいります。特に、高齢者・高校生・観光客といった自家用車に頼ることができない方の移動の保証を図るため、確保すべきサービスの品質を定めたところであり、今後10広域圏ごとに関係者との議論を深め、取組の具体化を進めてまいります。
 また、地域の移動の足を確保するためには、自家用有償旅客運送やスクールバス、病院・商業施設・宿泊施設等の送迎サービスなど、多様な輸送資源を最大限活用することが必要です。自家用有償旅客運送については、交通空白地の解消に向けて市町村と連携した取組を進めるとともに、NPO法人等に対する補助事業により普及を促してまいります。軽井沢で開始された、いわゆる「日本版ライドシェア」については、引き続き、市町村や長野県タクシー協会、タクシー事業者等と取組状況や課題等を共有し、タクシー供給力が不足している地域への導入を促進してまいります。

【物流2024年問題への対応】
 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により導入された時間外労働の上限規制が、本年4月1日から自動車運転業務にも適用され、いわゆる「物流2024年問題」への対応が急務となっています。
県ではこれまで、問題の克服に向けて、関係する13組織の皆様と共同宣言を行うとともに、「物流2024年問題」への対応を含む総合経済対策の策定・実施などに努めてきました。しかし、先月開催した、必要な対策を検討するための関係者との意見交換会では、商慣行の見直しや価格転嫁の促進が未(いま)だ不十分であることが明らかになりました。
 今後は、その要因等を調査するとともに、業務の自動化・省力化の推進、地域のラストワンマイルなどに対応した新たな配送システムの構築、再配達を削減するための消費者の行動変容の促進などについて、実務者連絡会を開催して具体化を検討してまいります。

【リニア中央新幹線の早期開業に向けた取組】
 現在工事が進められているリニア中央新幹線の品川・名古屋間について、JR東海は3月29日に、「2027年の開業は実現できる状況になく、新たな開業時期も見通すことができない」と表明しました。このことは、建設工事に御理解、御協力をいただいている皆様や2027年の開業を期待されていた方々に大きな影響を与えるものであり、誠に残念です。
 4月22日にはJR東海の丹羽俊介社長と直接会談し、リニア中央新幹線の早期開業や、地域の皆様の御理解と御協力を得ながら工事を進めること、開業時期の延期について地域に丁寧に説明することなどを要請しました。また、長野県駅(仮称)を中心としたまちづくりや観光振興についても、JR東海が積極的に関与し、県や地元住民と一体となって取り組むよう求めました。さらに今月7日には、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会に参加する沿線各知事とともに、岸田文雄内閣総理大臣や斉藤鉄夫国土交通大臣を訪問し、地域の悲願であるリニア中央新幹線の一日も早い全線開業と中間駅周辺のまちづくりへの支援を要望しました。
 リニア中央新幹線は、東京一極集中から多極分散型国土への転換を促す大きな契機となります。県としては、伊那谷や木曽谷が新しい暮らし方や働き方を実現できる地域となるよう、「リニア開業に伴う新たな圏域形成に関する関係府省等会議」の力もお借りしながら、市町村や関係者とともにまちづくり・地域づくりを進めてまいります。

【観光・物販等関西圏との交流促進】
 北陸新幹線が敦賀まで延伸され、大阪から長野までの所要時間が約30分短縮されました。来年開催予定の「大阪・関西万博」には、海外からの約350万人を含む約2,820万人の来場者が見込まれています。
この機会を「交流人口の拡大」と「長野ファンの獲得」につなげるため、関西圏で人気があるアウトドアカルチャーの発信や、学習旅行の誘致などによる観光誘客の促進に努めるとともに、信州フェアの開催などを通じた県産品の販売促進に取り組みます。
 「大阪・関西万博」への対応としては、来年8月下旬にEXPOメッセにおいて、長野県の豊かな自然環境や自然の癒し、食文化と健康長寿といった魅力を発信するイベントを行うとともに、万博の開催期間中に大阪市内において、観光・物産プロモーションを行う予定です。
 関西方面からの観光客をJR大糸線沿線へと呼び込むため、今月からJR西日本、新潟県、沿線自治体と連携し、糸魚川・白馬間に臨時バスを運行しています。この実証事業は当初予算に計上した旅行商品の造成事業と一体的に実施し、夏休み期間における集中的な誘客などにより、大糸線利用者の増加につなげてまいります。

【観光振興税(仮称)の検討】
 観光振興財源を確保するためには、まずは「宿泊」行為への課税を検討することが望ましいとの観光振興審議会の答申を踏まえ、「観光振興税(仮称)」の具体的な制度設計を進めています。
本県観光が目指す「世界水準の山岳高原観光地」を形成するためには、自然公園やマウンテンリゾートの整備など「長野県らしい観光コンテンツの充実」、観光MaaSの実装や交通手段の確保・利便性の向上、宿泊施設の滞在環境向上など「観光客の受入環境整備」、広域DMOの機能強化など「観光振興体制の充実」が必要です。「観光振興税(仮称)」の税収は、こうした施策・事業を重点的に推進するための財源としたいと考えています。
 納税義務者と徴収方法等については、答申のとおり、納税義務者は、旅館業法に規定するホテル、旅館、簡易宿所と、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業に係る施設に宿泊する者とし、徴収方法は特別徴収、特別徴収義務者は宿泊施設の経営者その他徴収の便宜を有する者とする方向で検討しています。また、税収の一定割合を市町村に対して交付金として交付し、この税の趣旨に沿った活用を行っていただく考えです。税率や免税点については、使途等と併せて慎重に検討しています。
 今後も県議会の皆様や宿泊事業者、市町村など関係者の御意見をお伺いしながら、令和8年4月の導入を目指して丁寧に制度の構築を進めてまいります。とりわけ、同様の課税を検討している市町村とは十分に意思疎通を図り、全体として納税者等の御理解を得られる制度となるよう調整してまいります。

【クマ対策の推進】
 県内各地でクマの目撃が続いています。先月には里地での目撃件数が全県で106件、前年度の1.6倍となり、今月上旬には4件の人身被害が発生しました。こうした状況を受け、今月5日に初めて「ツキノワグマ出没注意報」を全県に発出し、県民の皆様に注意を呼びかけているところです。
 今月11日には「野生鳥獣被害対策本部会議」を緊急に開催し、人身被害を防ぐための集中点検を行うことを決定しました。来月12日までの約1か月間、市町村や専門家と連携して、クマの出没が予想される場所を集中的に点検し、クマが食べる木の実の処理や藪(やぶ)の刈り払いなどの対応策について、地域住民の皆様に必要な助言を行ってまいります。また、クマの出没情報を分かりやすくお伝えする仕組みについて現在検討中です。
 今後もクマによる人身被害を防ぐため、市町村や関係団体と連携し、必要な対策を進めてまいります。

【信州型フリースクール認証制度の創設】
 本県の不登校児童生徒は増加し続けており、子どもの居場所や学びの場として重要な役割を果たしているフリースクールの利用者が増えています。しかし、これらの施設は小規模で運営体制が脆(ぜい)弱なことが多く、支援者同士のつながりや情報発信の不足などの課題があります。こうした状況を踏まえ、「信州型フリースクール認証制度検討会議」において、認証基準や支援のあり方などについて議論を重ねた結果、本年4月、全国初となる「信州型フリースクール認証制度」を創設いたしました。
 第1期の認証には、20件以上の申請があり、現在、外部有識者の御協力を得て審査を進めています。書類審査だけでなく、現地確認も行い、子どもへの支援内容や子どもの様子をしっかり把握した上で、来月中には認証を行う予定です。認証された施設が持続的に運営できるよう、運営経費の補助に加え、職員研修や交流・連携の機会の提供など、継続的な支援を行ってまいります。認証された施設が、子どもたちの多様な学びの選択肢となることを期待しております。

【組織風土改革「かえるプロジェクト」の推進】
 今年度、「かえるプロジェクト」として、各所属のミッションの言語化や課内対話の促進、仕事の減量化に向けた提案を職員から広く募集する「サマーレビュー」の実施や予算編成作業の効率化、事務用品の調達・管理の一元化などに取り組んでいます。また、職員間のコミュニケーションの活性化や業務の効率化を図るための「オフィス改革」も県庁の一部で先行実施する予定です。
 こうした取組に加え、全職員が組織風土改革の効果をいち早く実感できるよう、「部局長への時間外レクの禁止」と「レクのペーパーレス化の徹底」に4月から取り組んでいます。来月からは、「時間内レクの徹底」を課室長へのレクにも拡大するとともに、「会議の見直し」による業務の効率化にも取り組んでまいります。
 職員一人ひとりが明るく楽しく前向きに働くことができる環境を整え、県民の皆様のために真に役立つ県組織となることを目指し、取組を進めてまいります。

【決算見込み】
 令和5年度の決算見込みについて申し上げます。
 昨年度は、「しあわせ信州創造プラン3.0」の初年度であり、計画に掲げた5つの政策の柱に基づいた施策を展開するとともに、総合経済対策や災害への緊急対応などに取り組んでまいりました。県財政につきましては、県税や地方交付税の収入が当初の見込みを上回ったこと、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が所要額を超えて交付されたことなどにより、一般会計の歳出総額は1兆1,106億円余、実質収支は83億円余の黒字となる見込みです。ただし、この交付金の不要額約26億円は返還が必要となることから、これを除いた本来の実質収支は57億円余の黒字となる見込みです。

【補正予算案】
 さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 一般会計補正予算案は30億4,702万7千円であります。これまで述べたことのほか、県民生活の安全・安心の確保、エネルギーコストの削減と脱炭素化の推進、教育環境の整備などに要する経費を計上しました。
 県民生活の安全・安心の確保としては、新興感染症への対応を担っていただく医療機関が行う施設整備等への支援や、県道園原インター線で本年3月に発生した法面崩落の緊急対策工事に取り組みます。エネルギーコストの削減と脱炭素化の推進としては、省エネ性能の高い家電製品の購入を支援する「信州省エネ家電購入応援キャンペーン第2弾」を実施します。「生活就労支援センター(まいさぽ)」における生活にお困りの方への支援や省エネ・再エネ設備を導入する中小企業への支援なども含め、物価上昇局面における県民の皆様の暮らしや経営をしっかりと支えてまいります。教育環境の整備としては、県立高校再編のため、赤穂総合学科新校及び須坂新校の設計を行うとともに、小諸新校の改築工事を実施します。
 この補正予算案の財源として、国庫支出金12億335万5千円、県債10億7,100万円、その他繰越金など7億7,267万2千円を見込み、計上しました。
 今年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと1兆21億5,957万4千円となります。

【条例案、事件案、専決処分等報告】
次に、条例案は、一部改正条例案7件であります。
このうち「長野県県税条例の一部を改正する条例案」は、県が作成する地域再生計画に基づいて本社機能の移転や拡充を行った事業者に対する課税の特例措置を2年間延長するものであります。 

事件案は、県庁災害対策用発電設備工事請負契約の締結についてなど17件であります。

専決処分等報告は、令和5年度長野県一般会計補正予算の専決処分報告など21件であります。

以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。

 
 

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