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更新日:2021年1月22日
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。
【豚コレラのまん延防止】
今月14日、県畜産試験場の飼養豚が豚コレラに感染していることが確認されました。その後、関係機関の協力の下、349頭の豚の殺処分及び埋却を含む防疫措置に直ちに着手し、16日午後までに必要な対応を完了いたしました。また、高森町の養豚農場での感染が今朝確認され、現在、防疫措置を行っているところです。
豚コレラ対策については、これまで、県として出来うる限りの対策を講じてきたところですが、県内における発生を食い止めることができなかったことは誠に残念であります。今後とも、養豚農家の皆様の思いに寄り添いながら、必要な対策を迅速に講じてまいります。
まず、養豚農場に対しては、侵入防止柵の設置や専門家による衛生指導など、ハード・ソフト両面への支援を引き続き行うとともに、豚の早期出荷により衛生管理レベルの向上等を図る農場に対しては、国による支援の対象にならない場合でも、県独自の支援を行ってまいります。
また、野生イノシシにおける感染拡大を防ぐため、現在、猟友会の皆様の御協力もいただきながら戦略的な捕獲や追い払い等を行っているところです。今月下旬からは、国とも連携して、散布する量及び地域を大きく拡大して、経口ワクチンを散布する考えです。
さらに、人や物を介した感染リスクを低減するため、市町村の協力を得て、きのこ狩り等で入山される方々に対する注意喚起を行うとともに、県の施設や登山道の入口、幹線道路等における消毒の実施を徹底してまいります。
以上のような対策を推進するため、今月1日付けで、農政部に家畜防疫対策室を新設するとともに、林務部の鳥獣対策・ジビエ振興室の増員を行い、体制強化を図ったところです。
全国的に見ると、昨年9月の岐阜県での感染確認以降、飼養豚での感染は中部・近畿の7府県に拡大し、岐阜県と愛知県ではそれぞれ6万頭を超える豚が殺処分されています。さらに、埼玉県においても2例目の飼養豚への感染が確認されるなど、これまでの対策では終息が全く見通せない状況です。そのため、国の責任において緊急ワクチン接種を早急に決定することをはじめ、養豚農場におけるバイオセキュリティレベルの向上対策への支援や、野生イノシシ対策の強化を国に対して強く求めてまいります。
引き続き、養豚農場への豚コレラ侵入を防ぐため、県として全力を尽くしてまいります。
【火山防災対策】
先月7日、浅間山が約4年2か月ぶりに噴火し、入山が規制されるレベル3へと噴火警戒レベルが引き上げられました。噴火自体は小規模なものであり、現在は噴火警戒レベル2へと引き下げられていますが、引き続き、気象庁と連携して火山活動を注視してまいります。
浅間山をはじめとする火山の噴火対策は、地元市町村や隣接県等と連携して取組を進めているところですが、ひとたび大規模噴火が発生すれば、隣接県にとどまらず、より広範囲にその影響が及ぶおそれがあります。そのため、これまで以上に国が責任を持って火山対策を進めることが重要との考えから、私も発起人となり7月に「火山防災強化推進都道県連盟」を立ち上げました。火山の監視・調査研究を一元的に行う政府機関の整備や噴火の予測精度の向上に加え、広域的なハザードマップや避難計画の国主導による作成などを強く求めてまいります。
御嶽山の噴火災害から今月27日で5年を迎えます。改めて、犠牲になられた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。木曽町をはじめ関係者の方々の御努力で、今年は登山シーズンの始まりから、剣ヶ峰頂上までの入山が可能となりましたが、噴火災害前と比べると、まだまだ十分な登山客をお迎えできているとは言えない状況です。県としても、引き続き、シェルターの設置や火山マイスターの活動に対する支援を行うなど、地元市町村とともに御嶽山の安全対策や地域振興を進めてまいります。
【ITバレー構想の推進】
AI・IoTに代表されるIT技術は、新たな製品やサービスの創出、ビジネスモデルや企業文化の変革等、あらゆる産業におけるイノベーションの源です。
社会全体のデジタル化が進み、第5世代移動通信システム「5G」の実用化が迫る中、産業競争力を維持・向上させていくためには、ものづくり産業はもとより、観光業、農林業、医療福祉サービス等、あらゆる分野において、IT技術を駆使して生産性向上や技術革新を進めていくことが不可欠です。
こうした中、長野県経営者協会、長野県立大学などからの御提案も踏まえ、産学官で構成する「長野県産業イノベーション推進協議会」で検討を進め、「信州ITバレー構想」を取りまとめました。産学官の力を結集して、多彩なIT人材の育成・誘致と、ITビジネスを活性化させる共創の場の形成を図ることにより、県内IT企業の事業内容を開発型へと転換するとともに、IT技術を活用した新たなビジネスモデルによる創業や新事業への展開などを促進します。さらに、地方版IoT推進ラボに選定されたAI・IoT等先端技術利活用支援拠点の取組等とも相俟あいま って、県内産業がIT技術の利活用に積極的に取り組む風土をつくり上げてまいります。
今回の補正予算案には、本構想を推進するための事業をコーディネートする専門人材の配置や、国内外のITトップランナーが集うウィンターフォーラム(仮称)の開催などの経費を計上しました。あわせて、ICT産業等立地助成金についても、新規雇用の要件撤廃や、付加価値が特に高いと認められる事業者等に対する助成額の増額など、制度を充実する予定です。
【営業本部の海外戦略】
本年度新たに設置をした営業本部では、際立った品質・特長を持つ県産品を高価格で海外へ販売するためのプロジェクトを開始いたしました。
経済発展が著しいアジア地域に関しては、富裕層をターゲットとして販路を開拓するべく、各国の小売業者等との連携強化を図っています。例えば、先月訪問したタイでは、味噌やそば、凍り豆腐など本県を代表する食材をタイ料理風に調理して試食商談会で提供したところ、現地のバイヤー等から高い評価をいただいております。また、台湾では、今月から12月にかけて主要4都市の百貨店で信州フェアをリレー開催する予定であり、県産品のブランド確立につなげていく考えです。これまで県としての対応が必ずしも十分ではなかった北米地域についても、本格的な営業活動のための情報収集を進めており、今月16日には、ニューヨークで初めて、流通業者向けの県産食材に関する試食イベントを開催いたしました。
いずれの国でも長寿を支える本県の食文化に対する注目度は高く、海外展開については大きな手応えを感じております。今後、国ごとの食生活や経済状況を十分に研究して、実効性ある輸出戦略を展開してまいります。
【信州まつもと空港の神戸線開設】
「信州まつもと空港の発展・国際化に向けた取組方針」で第一の柱に掲げた国内路線の拡充を図るため、これまで航空会社に対する働き掛け等を行ってきたところ、来月から新たに神戸線が定期路線として開設される運びとなりました。関西方面への定期路線の開設は長年の悲願であり、特に神戸空港は関西国際空港と近接していることから、信州と海外とをつなぐ新たなルートとしても期待されるところです。
神戸空港は初めての就航先ということもあり、路線の認知度を上げ、観光やビジネスにおける新たな需要を喚起することにより、利用促進を図っていくことが重要です。このため、県内はもとより関西方面等でのテレビCM等による路線の周知、旅行商品の造成に対する支援等に要する経費を補正予算案に計上いたしました。今後、市町村や経済団体、株式会社フジドリームエアラインズとともに、神戸線の定着に取り組んでまいります。
【東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成】
来年3月から7月にかけて、東京2020 オリンピック聖火リレーが全国を巡ります。本県においては、4月2日・3日に、長野オリンピック・パラリンピックの会場地をはじめ、国宝の善光寺や松本城、アルプスを望む田園地帯などを通るコースで実施される予定であり、警備や広報等に必要な経費を補正予算案に計上いたしました。かつて冬季オリンピック・パラリンピックを成功させた地域として、東京大会への関心や期待を一層高めるべく、全ての人の心に残る聖火リレーとなるよう準備を進めてまいります。
東京大会に向けては、本県は中国を対象国とするホストタウンを務めることとなります。また、中国では2022年の北京冬季大会を見据えて、ウィンタースポーツ人口を大幅に増やすための取組が進められています。こうしたことを契機として、スポーツ選手の合宿受入れや教育旅行の促進などを通じた青少年交流の更なる拡大と、スキー場等への観光誘客の一層の促進を図るため、先月、長野県日中友好協会や長野県スキー連盟の皆様とともに中国を訪問いたしました。北京市でのスキープロモーションや苟忠文国家体育総局長との会談を行ったほか、蔡奇北京市書記や許勤河北省長との会談では、今後の友好交流や信州まつもと空港へのチャーター便就航などについても意見交換を行ってまいりました。
東京パラリンピックを2020年に控え、また、2027年には全国障害者スポーツ大会が本県で開催されることも見据えて、誰もが一緒に楽しむことができるパラスポーツの普及に向けた新しい波を起こしていきたいと考えています。そのため、現在、日本財団パラリンピックサポートセンターの協力も得ながら、パラウェーブNAGANOプロジェクトを推進しています。県内全ての市町村におけるパラスポーツ体験イベントの実施に加え、障がいの有無等に関わらず誰でも参加できる県大会の開催や指導者の養成などを行うボッチャプロジェクトを今月から開始したところです。多くの県民の皆様に御協力をいただきながら、パラスポーツを通じた共生社会づくりを進めてまいります。
東京オリンピック・パラリンピックを契機として日本の文化を発信する「日本博」が全国で展開されており、県立歴史館の開館25周年記念事業である「土偶展」が、その参画プロジェクトとなりました。本県が誇る「縄文のビーナス」、「仮面の女神」を含む全国の国宝土偶5点が、地方で初めて一堂に会する機会であり、信州文化の奥深さを発信してまいります。
【緊急交通安全対策】
高齢ドライバーが加害者となる事故が全国で多発している現状を直視し、全県を挙げて対策に取り組んでまいります。市町村をはじめ、交通、福祉等の幅広い関係機関とともに、安全運転サポート車の普及など安全運転に対する支援や、タクシー等を活用した移動への支援、運転免許証返納後の日常生活支援などについて、具体的な施策を幅広く検討し、可能なものから速やかに実行してまいります。
5月に滋賀県大津市で発生した痛ましい事故を受け、未就学児の交通安全対策も急務となっています。警察官が県内全ての保育所等を訪問して聞き取り調査を行い、安全対策が必要と考えられる680か所を抽出いたしました。これらの箇所について、警察及び道路管理者が今月末を目途に、ガードレール、車止めポール等の安全施設の必要性について点検を完了する予定です。緊急性の高い箇所から速やかに具体的な対策を実施してまいります。
【県財政の状況と令和2年度当初予算編成】
来年度の県財政は、地方消費税の増収が見込まれる一方で、米中貿易摩擦の激化等を背景として法人関係税の先行きが不透明であること、また、社会保障関係費については更に増加していく見込みであること等から、引き続き厳しい状況が続くと考えております。
こうした中で、「あれも、これも」ではなく、選択と集中により事業を効率的に実施していかなければなりません。令和2年度当初予算編成に当たっては、しあわせ信州創造プラン2.0に掲げた重点目標の達成に向けて施策を厳選し、限られた財源や人的資源を効果的に活用することにより、具体的な成果を上げることができるよう取り組んでまいります。予算編成のプロセスについても極力効率化し、県組織におけるしごとの質と生産性の向上を図ってまいります。
【最近の経済情勢と雇用対策】
先月公表された政府の月例経済報告では、我が国の景気について、「輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」との判断が示されています。先行きについては、通商問題を巡る緊張の増大が世界経済に与える影響に注意する必要等はあるものの、「緩やかな回復が続くことが期待」されています。また、県内経済については、日本銀行松本支店が今月公表した金融経済動向によると、6か月連続で「生産の一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している」とされています。
こうした中、長野労働局が公表した7月の有効求人倍率は1.60倍となっており、引き続き、多くの業種で人手不足感が強い状態となっています。昨年の15歳以上の就業率は、62.3パーセントで全国第5位であり、女性活躍のための施策や人生二毛作社会に向けた取組等がある程度成果を上げているものと考えます。しかし、急激な人口減少下において、様々な分野で必要とされる人材を確保していくためには、若者のUターン就職率の向上や、女性や高齢者等が働きやすい職場環境づくり等に、これまで以上に力を入れて取り組んでいかなければなりません。
今後は外国人材の活用も重要な選択肢です。外国人材の受入れに当たっては、法令を遵守した適正な受入れを推進することはもとより、外国人を職場や地域で温かく迎え入れるための環境づくりが必要です。農業や製造業の分野では、既に多くの外国人材に県内で働いていただいておりますが、インバウンド需要が高まっている観光と要介護高齢者の増加が見込まれる介護については、今後、外国人材の受入れが特に必要な分野であると考えています。このため、本県への人材送り出しが急増しているベトナムを先月訪問し、ベトナム政府との間で「観光・介護分野の人材協力に関する覚書」を締結いたしました。グエン・スアン・フック首相との会談では、ベトナムとの積極的な交流への謝意と、覚書に基づくベトナム人材の受入れに対する期待の表明がなされました。今後、県内観光業者の合同採用面接会を現地で開催するほか、介護分野においては、現地の教育機関などと一緒に人材受入れのための具体的な仕組みを検討していく考えです。
人材確保は重要な分野であることから、「長野県就業促進・働き方改革戦略会議」の議論を踏まえながら、構成団体と連携して取組を進めてまいります。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
一般会計補正予算(第4号)案は17億2,654万1千円であり、先ほど申し上げました早期出荷への支援や野生イノシシの感染確認検査等の豚コレラまん延防止などに要する経費のほか、道路や河川等に係る災害の早期復旧等に要する経費、特別支援学校のスクールバス配備や県立学校の安全性向上のための施設・設備の緊急整備、子どもの自殺を防ぐための講習会の実施に要する経費などを計上しました。その財源として、県債9億2,100万円、繰越金6億4,574万6千円、その他国庫支出金など1億5,979万5千円を見込み、計上いたしました。
一般会計補正予算(第5号)案は3,860万円であり、豚コレラに感染していることが本日確認された養豚農場の防疫措置等に要する経費を計上しました。その財源として、国庫支出金と繰越金それぞれ1,930万円を見込み、計上いたしました。
本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8,883億2,815万2千円となります。
【条例案、事件案、専決処分報告】
次に、条例案は、一部改正条例案6件、廃止条例案1件であります。
一部改正条例案のうち、「一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」は、一般職の非常勤職員の任用等の適正化を図るため、期末手当の支給など処遇に関する規定を整備し、会計年度任用職員の制度を導入するものです。あわせて、大規模イベントなど一時的な業務量の増加に対応するため、新たな任期付き職員の制度を導入します。
また、「長野県県税条例及び長野県警察関係許可等手数料徴収条例の一部を改正する条例案」は、自動車の新規登録に係る手続をインターネットにより一括して行うためのシステムの導入に伴い、自動車税徴収方法の特例等を規定するものです。
事件案は、来年3月に開館する県立武道館の運営に係る「指定管理者の指定について」など9件であります。
専決処分報告は、豚コレラ対策に係る「令和元年度一般会計補正予算の専決処分報告」2件など14件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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