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更新日:2021年1月22日
ただいま提出いたしました平成30年度当初予算案をはじめとする議案の説明に先立ち、新年度の県政運営に向けての所信などについて申し述べさせていただきます。
【消防防災航空体制の再構築】
昨年3月5日の消防防災ヘリコプター「アルプス」の事故から、1年を迎えようとしています。改めて殉職された隊員の御冥福をお祈りいたしますとともに、来る3月5日には生前の御活躍を偲ぶ追悼式を松本市において執り行うことといたしました。高い志と強い使命感を持って職務にあたってこられた隊員の皆様の御功績に報いるためにも、一歩ずつ着実に消防防災航空体制の再構築を進めてまいります。今後、民間航空会社からヘリコプターの借上げ及び操縦士等の派遣受入れを行うとともに、十分な訓練を実施し安全な運航体制を確立した上で、4月以降の早期の運航再開を目指し、取り組んでまいります。
【平昌(ぴょんちゃん)冬季オリンピック・パラリンピックの開催等】
人々に大きな感動と勇気をもたらした長野冬季オリンピック・パラリンピックから20年が経ちました。「NAGANO」の名を世界に広めたこの大会の開催により、新幹線をはじめとする高速交通網やスポーツ競技施設の充実、一校一国運動等による国際交流の促進、ボランティア文化の定着など、今も私たちの暮らしに息づく有形無形のレガシー(遺産)が形成されました。こうしたレガシーを積極的に活用するとともに、次の世代へと引き継いでいくべく、オリンピック・パラリンピック20周年記念式典を今月4日に開催いたしました。
今月9日から平昌冬季オリンピックが開幕し、連日熱い戦いが繰り広げられています。27名の本県関係選手が出場する中、早くもノルディック複合の渡部暁斗選手とスピードスケートの小平奈緒選手が銀メダルを獲得するなど、選手たちの健闘が伝えられています。
今回、友好交流を行っている韓国江原道(かんうぉんど)の崔文洵(ちぇむんすん)知事からオリンピック開会式に御招待をいただき、今月9日から11日まで同地を訪問してまいりました。
現地では、崔知事及び本県と長い間友好交流を続けている中国河北省の徐建培(じょけんばい)副省長と個別に会談を行い、崔知事とは、オリンピックを契機とした地域の活性化、観光交流やチャーター便の就航等について、徐副省長とは、冬季スポーツにおける青少年交流やスキー教育旅行の誘致等について意見を交わしました。冬季オリンピック開催地という共通のレガシーを持つこととなる長野県、江原道、河北省が連携して、冬季スポーツを振興し、東アジアの発展と平和を目指す未来志向の交流に取り組んでいく方向性を確認したところです。
【しあわせ信州創造プラン2.0の策定】
本年度が最終年度となる現行総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン」の推進に当たっては、県議会をはじめ県民の皆様の御理解と御協力をいただき、数多くの成果を上げてまいりました。
「貢献と自立の経済構造への転換」としては、「日本一創業しやすい県づくり」を目指した取組の結果、創業支援資金の平成28年度の利用件数は1,103件と5年で約3倍となり、開業率も平成24年度の3.32パーセントから平成28年度には3.61パーセントへと上昇しました。農業農村総生産額も果樹オリジナル品種の生産拡大等により平成28年には3,117億円、平成24年に比べて200億円の増加と、順調に伸びています。全国的にも先進的な環境エネルギー政策を進めることにより、発電設備容量でみるエネルギー自給率も当初の目標を既に達成し90パーセント程度にまで向上しました。
「豊かさが実感できる暮らしの実現」については、信州ACE(エース)プロジェクトの推進等により平均寿命は男女とも着実に延伸し、自殺者数も減少してきています。県内大学生の就職内定率や障がい者就職率も好調に推移してそれぞれ目標を達成したほか、移住者数が昨年度は2,000人を超えるなど人口の社会増への転換も視野に入ってまいりました。
「人と知の基盤づくり」に関しては、信州型コミュニティスクールが全小中学校の99.1パーセントで実施されるとともに、全県立高校が信州学に取り組み、9割の高校生が就業体験活動を行うようになるなど、学校と地域との連携が進んできました。また、信州やまほいく認定制度を創設し、自然を活かした教育も普及しつつあります。総人口は減少基調にあるものの、県婚活支援センターの開設や保育料軽減等の結婚・子育て支援施策等を推進する中で、合計特殊出生率も平成21年の1.43から上昇し、平成28年には1.59となりました。
しかし、一方で、観光消費額や健康づくりの取組を行っている人の割合が目標値に達していないなどの課題もあることから、引き続き次期総合5か年計画の中で問題意識を持って取り組んでまいります。
我が国は、急速な人口減少と少子高齢化、東京圏への人口一極集中が進み、右肩上がりの経済成長や人口増加を前提とした旧来型の社会システムはもはや通用しなくなりつつあります。また今日、AIやIoTなどが牽引する「第4次産業革命」が世界規模で進行中であり、こうした技術を活かして超スマートな社会(ソサイエティ5.0)の実現を目指した取組も始まっています。
このように、私たちを取り巻く環境が加速度的に変化する中、県民の皆様が将来にわたってしあわせに暮らし続けられるよう、長野県の持つ豊かな自然や固有の文化、健康長寿などの価値を大切に守り育てながら、新しい時代にふさわしい社会の仕組みを創造していかなければなりません。
一昨年の9月、県民の皆様の夢や希望を実現するためのビジョンを描くべく、次期総合5か年計画を策定することを表明して以降、総合計画審議会での審議と並行して、県民の皆様との対話や政策の検討に県組織を挙げて取り組んでまいりました。この間、県議会におかれては、研究会を設置し、熱心な御議論、また建設的な御提案をいただきました。心より感謝申し上げます。
以上のような認識と背景のもと、おおむね2030年の長野県の姿も展望しながら、今後5年間の総合計画として「しあわせ信州創造プラン2.0~学びと自治の力で拓く新時代~」(案)をとりまとめ、本定例会に議案として提出いたしました。
(総合計画の基本目標と特色)
県民の皆様が明日への希望を持って暮らせる社会、そして万が一の時には温かな支援が受けられる安心感がある社会が、私たちの目指すべき社会のあり方であると考えます。そのため、現行計画に掲げる「確かな暮らしが営まれる美しい信州」という基本目標を引き継ぎつつ、サブタイトルを「学びと自治の力で拓く新時代」といたしました。
本プランには、大きく6つの特色があります。
第一に、「学びと自治の力」を政策推進のエンジンとして位置付けたことです。
元来、人間は知る喜びを感じることができ、学びは個人の生きがいやしあわせ実現につながるものです。加えて大きな時代の転換期では、学びこそが社会の原動力となります。今年でちょうど150年を迎える明治期以降、我が国は近代国民国家への歩みを進め、内閣制度や議会政治の導入など、国の基本的な形を築き上げ、近代化を進めてきました。こうした取組が成功を収めた大きな要因は、義務教育の導入や師範学校の設立などによる教育の充実に加え、若者が積極的に海外に留学し、政府が外国人を招へいするなど、常に学びを重視してきたことにあると考えます。心の豊かさが重視されるとともに、人口減少や技術革新が急速に進み時代が大きく転換しつつある今日、私たちがより豊かで安心な社会を創造していくためには、改めて学びに焦点を当てることが重要です。明治初期の就学率が全国で最も高く近代の教育を牽引してきた本県だからこそ、新しい学びの創造を通じ、時代を切り拓いていきたいと考えています。子どもから大人まで一人ひとりの学びを大切にする県、主体的で能動的な学びの環境がある県、あらゆる政策の基本に学びを位置付ける県、そうした学びの県づくりを県民の皆様とともに進めてまいります。
価値観が多様化する社会にあって「確かな暮らし」を実現するためには、自治の充実が不可欠です。特に地域が多彩な文化や産業を育みながら発展してきた本県において、県民のしあわせを実現していくためには、地域住民が力を合わせた活動や、地域における独自の取組が極めて重要です。
昼夜を分かたず地域の安全を守っている消防団活動、子どもたちの居場所であり拠り所であるこどもカフェなどのように、身近なコミュニティでの取組が私たちの社会を支えています。また、市町村や広域圏単位での主体的な取組が活発で、小さくともきらりと輝く市町村の存在は本県の大きな特色です。さらに、産業や観光の振興などについては、県レベルでの独自の取組もますます重要になっています。そのため、県としては、こうした自治の取組が今後更に活性化するよう積極的な支援や協働を行うとともに、県自らも広域的な自治体として地域の実情や特色を踏まえた主体的な取組を積極的に推進していかなければなりません。
こうした観点で、「学びと自治の力」を政策推進のエンジンとして、これからの時代を牽引する新しい価値観や生き方、暮らし方を長野県から創造してまいります。
第二に、チャレンジプロジェクトと称する6つの大きな政策の方向性を掲げたことです。5年間という総合計画の期間を超えた中長期的な視点でバックキャスティング的に講ずるべき政策や、急速かつ絶え間なく変化する社会経済環境の中で弾力的、機動的に対応するべき政策があります。加えて、「人生100年時代」、あるいは、「持続可能でイノベーティブな社会づくり」というような大局的な方向感を持ちながら新しい時代に向けた挑戦をしていくことが重要です。こうした観点で、「人生を豊かにする創造的な『学び』の基盤づくり」、「共創を促進するイノベーティブな産業圏づくり」、「未来に続く魅力あるまちづくり」、「美しく豊かな木と森の文化の再生・創造」、「安心できる持続可能な医療・介護の構築」、「人生のマルチステージ時代における多様な生き方の支援」の6つのテーマを設定しました。今後、部局や職位の垣根を越えたプロジェクトチームを編成し、専門家の知見も取り入れるなど、県組織内外の様々な力を結集して、未来に向けて取り組む先駆的な政策を構築してまいります。
第三に、地域計画を充実したことです。今回のプラン策定に当たっては、地域重視・現場重視の県政を進めるべく、昨年4月に設置した地域振興局が中心となって市町村や様々な団体等の皆様とも対話を重ね、各地域の特色が十分に打ち出せるよう努めました。
第四に、国際社会の構成員として、誰一人取り残さない社会の実現を目指すSDGs(持続可能な開発目標)の理念を反映いたしました。経済・社会・環境の三側面を統合的に解決する観点で政策を推進してまいります。
第五に、一昨年度策定した信州創生戦略を継承したことです。政策や目標を引き継ぎつつ、人口減少対策に真正面から取り組んでまいります。
第六に、「学ぶ県組織」への転換を掲げたことです。新たなプランを実効性あるものにするためには、県組織自らが、「学ぶ県組織」へと転換しなければなりません。最高品質の行政サービスを提供することができる県組織となるよう、組織構造から人材育成、組織風土まで、広範な検討、見直しを行ってまいります。現在、大北森林組合等補助金不適正受給事案の教訓を踏まえてコンプライアンスの推進に努めており、全国に先駆けて取り組んでいる内部統制の仕組みづくりなどを進め、県民の皆様や社会の要請に的確に応える組織に変革します。
(政策推進の基本方針)
今回の総合計画では、6つの政策推進の基本方針を掲げました。未来志向でクリエイティブな社会をつくる観点での「産業の生産性が高い県づくり」と「人をひきつける快適な県づくり」、県民の思いに寄り添いながら安心で希望あふれる社会をつくるという観点での「いのちを守り育む県づくり」と「誰にでも居場所と出番がある県づくり」、そして全体の推進エンジンである「学びの県づくり」と「自治の力みなぎる県づくり」です。また、政策推進に当たっては、人口減少社会への対応、県民起点・現場重視、先端技術の活用、様々な主体との連携やグローバルな視点などを十分意識しながら取り組んでまいります。
【現下の経済情勢等】
昨年の我が国経済は、海外経済に支えられて生産と輸出が好調で、実質GDP(国内総生産)は、8四半期連続でプラス成長となるなど全体としては緩やかな回復基調が続き、本年1月の政府月例経済報告では、我が国の景気は、「緩やかに回復している」との判断がなされております。県内経済も、今月の日本銀行松本支店による「長野県の金融経済動向」によれば、「緩やかに拡大している」とされています。こうした状況の中、昨年12月の県内の有効求人倍率は1.74倍となっており、中小、小規模企業を中心にして人手不足感が強まっています。県としても喫緊の課題と認識しており、産学官労が連携して人材確保対策を講じていきたいと考えております。
【国の予算編成】
補正予算案と同時に編成された国の平成30年度予算案は、「人づくり革命」や「生産性革命」などをはじめとする現下の重要課題に対応する施策に重点化が図られており、「学びの県づくり」や「産業の生産性が高い県づくり」を目指す本県の取組方向に合致した予算が計上されています。
地方財政計画については、本年度を上回る一般財源総額が確保されたこと、臨時財政対策債が縮減されたこと、地方創生に関して引き続き「まち・ひと・しごと創生事業費」として1兆円が確保されたことなど、一定の評価ができる内容となっていますが、引き続き、地方財政基盤の確立に向け、臨時財政対策債の廃止や地方交付税の法定率の引上げなど、制度の抜本的な見直しを国に求めてまいります。
【平成30年度当初予算編成】
今定例会に提出いたしました平成30年度当初予算案及びその他の案件について御説明申し上げます。
平成30年度の当初予算総額は、一般会計8,463億9,563万3千円、特別会計4,650億6,731万2千円、企業特別会計148億7,738万4千円であります。特別会計は公債費特別会計など12会計、企業特別会計は電気事業及び水道事業の2会計であります。
当初予算案は、国の平成29年度補正予算を最大限活用し、後ほど御説明する補正予算案と一体的に編成することによって、「しあわせ信州創造プラン2.0」の実現に向けた確かな一歩を踏み出してまいります。プランで政策推進のエンジンと位置付けた「学びと自治の力」とAI、IoTなどの「先端技術の活用」を念頭に置きながら、6つの政策推進の基本方針に基づき編成し、特に部局横断的に推進する重点政策を14の政策パッケージとしてまとめました。
高齢者人口の増加等により社会保障関係費が約24億円増加する一方で、公債費、人件費など義務的経費の縮減、県立大学整備の大部分が終了したことによる投資的経費の減などにより、予算総額は前年度比約162億円の減少となりました。歳入面では、地方交付税、臨時財政対策債が減少する一方、県内景気の回復基調を反映して法人関係税等の県税が増加し、主要一般財源全体では約13億円の増加となる見通しです。
県債については、次の世代に過大な付けを回すことのないよう、引き続き発行抑制に努めました。その結果、臨時財政対策債を除く元金ベースのプライマリーバランスで約238億円の黒字を維持しており、平成30年度末の残高見通しは、通常債で約237億円、臨時財政対策債を含む県債全体でも約93億円、それぞれ対前年度比で減少する見通しです。
健全化判断比率である実質公債費比率及び将来負担比率は、引き続き健全な水準を維持する見通しですが、当初予算編成段階で財政調整のための基金を活用せざるを得ない状況であることから、歳入確保、歳出削減に引き続き取り組み、持続可能な財政運営に努めてまいります。
以下、プランに掲げる6つの政策推進の基本方針に沿って、部局横断的に推進する政策パッケージを中心に主な施策を順次御説明申し上げます。
【学びの県づくり】
まず、「学びの県づくり」についてです。
「学び」は、人々がやりがいや生きがい、そしてしあわせを感じることができる暮らしを送るための原点です。人生100年時代を迎え、子どもから大人まですべての県民が主体的に学び、それぞれが持っている能力を社会の中で十分に発揮していくことができる県づくりを進めます。
(生きる力と創造性を育む教育の推進)
子どもたちへの教育では、これからの時代に必要な「生きる力と創造力」を育む学びを幼稚園・保育園から小・中・高校までを通じて実現してまいります。
幼児教育については、すべての就学前児童が質の高い教育を受けられる体制を整備するため、「幼児教育支援センター(仮称)」の設置に向けた具体的検討を進めます。
知識習得型の教育から「自分で考え創造する力」を育成する学びに転換するため、各学校の優れた取組を集めて、授業の改善に活かしていくべく信州型ユニバーサルデザインとして構築することに加え、課題発見・解決能力や論理的思考力を育む探究的な学びへの転換を促すため、大学・産業界の協力による探究心を刺激する授業の実施や、2020年度までの全校整備を目指した県立高校における電子黒板、タブレット端末等のICT機器整備を進めます。
また、本県の豊かな自然を活かした自然教育・野外教育を推進するためのプログラムを検討するとともに、「中山間地域リーディングスクール」を指定して、ICTの効果的な活用など、少人数であることの良さを活かした新しい学習スタイルの開発に取り組みます。
県立高校については、新たな学びと再編整備を進めるため、来年度、改革の「実施方針」を策定するとともに、県立高校の将来像を検討するための協議会を順次各地域で立ち上げてまいります。
(特別支援教育の充実と障がい者への支援)
特別支援教育の充実、障がい者の就労支援などにより、生きる力を育む学びを保障し、共生社会の実現を目指します。
発達障がいのある児童生徒が適切な教育を受けられるよう、信州大学と連携して専門医等育成体制を強化し、通級指導教室については小中学校に増設するとともに県立高校に新設します。特別支援学校の教職員配置については、自立活動担当教員をこの4年間で80名増員してきましたが、来年度は、寄宿舎指導の職員を含めて、更に20名増員します。
(高等教育の振興による知の拠点づくり)
人材の育成・定着を図り、地域社会を維持・活性化させるため、高等教育の更なる振興を図ります。
開学間近の長野県立大学の一般入試志願者倍率は4.7倍に達し、新大学への期待の大きさを感じています。グローバルな視野を持ち、地域にイノベーションを起こす人材が育つ知の拠点として発展していくことを期待し、県としても必要な連携、協力を行っていく考えです。同大学に設置する「ソーシャル・イノベーション創出センター」では、地域コーディネーターが関係機関と連携し、社会的課題に取り組む起業家の育成やビジネス創出の支援を行ってまいります。
また、来年度、高等教育振興課を新設し、高等教育機関を核とした地域づくりを進めるとともに、県内大学の改革や魅力の向上を引き続き支援します。地域医療を支える看護職員の確保を図るため、清泉女学院大学及び長野保健医療大学の各看護学部の設置に要する経費を補助します。高校生等に対する県内大学の魅力発信を一層強化するとともに、大学が持つ様々な知見を県政に活かすため、県内外の大学との連携協定の締結を推進してまいります。
(生涯を通じて学べる環境の整備)
人生100年時代を見据え、県民が生涯を通じて学べる環境の整備を図ります。
既設のシニア大学やウィメンズカレッジに加え、来年度から新たに「消費者大学」や「信州環境カレッジ」を開設することにより、学びの場を増やしてまいります。さらに、いつでも、どこでも、誰もが学べる環境を整備するため、ウェブ上で配信するバーチャルな講義とリアルな学びの双方の特長を活かした「信州・タウンキャンパス(仮称)」の具体化に向けた検討を行います。
また、県立長野図書館内に「信州・学び創造ラボ」を整備し、市町村立図書館や公民館等との間でオンラインワークショップを開催するなど、創造的な学びの場として位置付けるとともに、同様の機能を全県的に広げてまいります。
【産業の生産性が高い県づくり】
第二に、「産業の生産性が高い県づくり」です。
人口減少に伴う労働力の減少下において、地域経済が持続的に発展するためには、労働生産性の向上が急務となっています。より付加価値が高く、成長が期待される分野への進出・展開や、AI、IoT等先端技術の導入などを積極的に支援し、県内産業の稼ぐ力を高めます。
(革新力に富んだ産業の創出・育成)
世界水準のIoTデバイスの開発に産学官一体となって取り組むため、松本の工業技術総合センター環境・情報技術部門に、「IoTデバイス事業化・開発センター」を補正予算で新設し、AI・IoTに精通した専門人材を招へいします。また、製造業はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、IoTの利活用を促進するため、有識者の知見を得て「利活用戦略」を策定するとともに、産業支援機関や金融機関等で構成する協議会を設置します。
航空機産業の振興については、飯田の航空機システム拠点に国内唯一の燃焼・耐火性試験設備を整備するとともに、フランスで開催される「エアロマート・トゥールーズ」に初出展し、新たなサプライチェーンへの参入を促進します。また、食品分野では、しあわせ信州食品開発センター内に「機能性食品開発拠点」を補正予算で整備し、市場のニーズが高まっている機能性食品や発酵食品の研究開発に、信州大学、県立大学等と連携して取り組みます。
また、高機能医療機器部品の海外市場への展開支援や、電気自動車関連の部品開発、販路開拓に取り組むなど、県内企業の成長期待分野への進出を更に支援してまいります。
起業・スタートアップへの支援については、多彩なベンチャーを創出するエコシステムの形成を目指して産学官金の連携を強化するとともに、イノベーティブな創業のロールモデルを創出するべく、投資機関や県立大学等の知見を活用して、創業者に寄り添い課題の解決を目指す伴走型支援を試行的に実施します。
(収益性と創造性の高い農林業の推進)
農林業については、生産、マーケティング、経営のそれぞれの側面でのイノベーションを促進し、生産性が高く、稼げる産業への転換を図ります。
農業分野では、現在、産学官連携で進めている水田畦畔除草機やレタス収穫ロボットの開発に加え、ドローンやAI等を活用した病害虫防除やICT等を活用した家畜の飼養管理モデルの構築などにより、先端技術を活用した生産の省力化、低コスト化、高品質化に取り組みます。また、新設予定の「IoTデバイス事業化・開発センター」内に、「農業IoT支援室」を開設し、生産性向上に資するロボットや計測器等の製品開発を支援します。他方、木材生産についても、ICTの導入・活用を促し、森林施業の効率化・省力化や需要に応じた生産等を可能にする「スマート林業」を推進してまいります。
マーケティングについては、県オリジナル品種のブランド力を強化するべく、リンゴ長果25(シナノリップ)などの市場へのPRやナガノパープルの機能性成分分析を踏まえ、健康長寿県としての強みを活かした販売戦略を展開します。また、80年生以上のカラマツ人工林の資源量が全国一という強みを活かして、信州プレミアムカラマツのブランド化とサプライチェーンの構築に取り組むとともに、子どもの居場所の木造・木質化や薪・ペレットの消費拡大等を通じて、木と森を暮らしに活かす文化の発信に努めてまいります。
経営力の強化については、人材の管理・育成のためのマネジメント研修やトヨタ式カイゼン手法の導入により、農業経営のイノベーションを促進します。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、国際水準GAP認証の取得等を支援します。林業分野においては、地域の中核的な林業の担い手である森林組合の経営改善を推進するとともに、林業大学校を抜本的に改革し、経営感覚を持った林業人材を育成できる我が国林業の学びの拠点にしていきたいと考えています。また、林業先進国オーストリアとの技術交流や人材交流を一層深め、国際的な展示会に出展を行うなど、本県林業及び木材製品の魅力を世界に発信します。
(郷学郷就の産業人材育成・確保)
人口減少や技術革新の進展等に伴い、人材不足や雇用のミスマッチが様々な分野に及んでいます。それぞれの県民がその持てる能力を最大限発揮していただくとともに、人材不足が産業や地域が発展する阻害要因とならないよう、信州で学び、信州で働く若者を応援する「郷学郷就」の推進をはじめ、キャリア教育の推進や産業人材育成の強化、働き方改革や処遇改善を通じた多様な人材の就業促進、AIやIoTの活用による業務の効率化等に、中長期的な視点から総合的に取り組んでまいります。
県内産業界に必要な人材育成の強化を図るため、工科短期大学校や技術専門校において、新規学卒者・離転職者等を対象に、就職に必要な技能・知識等を習得するための職業訓練を実施するとともに、産業構造の変化や技術の進歩等に対応した教育訓練の実施に向けた検討を行います。
また、本県への将来的な定着を促進するため、高等学校と地元企業が連携して行う企業実習(デュアルシステム)等により地域の産業への理解を促進するとともに、小中学生や高校生を対象にした信州ものづくりマイスター等による講話や技術体験を通じたキャリア教育を推進します。
さらに、モデル企業における生産現場のIoT化を支援して労働生産性の向上につなげるとともに、長時間労働是正に取り組む企業への専門家の派遣や、経営者等を対象にした先進企業の事例を学ぶ研究会の開催などにより、働き方改革の取組を支援し、多様な人材の就業を促進します。
【人をひきつける快適な県づくり】
第三に、「人をひきつける快適な県づくり」です。
人々の価値観が多様化する中で、大都市圏から比較的近く、豊かな自然や文化が息づく長野県は、様々なライフスタイルを選択できる地域として注目されています。今後、高速交通網の整備や地域交通の充実、新しい技術や仕組みを活用したまちづくり、文化芸術・スポーツの振興等により、生活の質と利便性を一層高め、人生を楽しむことができ、多くの人たちをひきつけることができる快適な県づくりを目指してまいります。
(世界を魅了するしあわせ観光地域づくり・信州と関わりを持つ「つながり人口」の拡大)
先頃、世界中の観光地を紹介する米CNNテレビのウェブサイト上で「2018年に訪れるべき18の場所」として、日本から唯一、長野県が選ばれました。平成28年の外国人延べ宿泊者数は約113万人、現行の総合計画前と比べて約4倍に急増しています。外国人観光客から注目が集まり始めた今こそ、本県観光のプレゼンスを高める好機です。そこで来年度を、「信州観光改革元年」として位置付け、世界的な観光大県として脱皮するべく、観光の担い手としての経営体づくり、観光地域づくり、インバウンド戦略等に総合的に取り組みます。
まず、県観光機構の機能を強化するとともに、「DMO形成支援センター」を設置して広域型DMOの形成や観光の視点からのまちづくり支援等を行います。また、新たに観光インターンシップ推進員を設置し、県内観光業への就職を促進するとともに、長野大学と連携した寄附講座を開設し、観光地域づくりを牽引する人材の育成確保を図ります。
観光地域づくりに向けた基盤整備については、温泉地のあり方を先進地に学び検討するとともに、今後設置を検討する「信州地域デザインセンター(仮称)」も活用して、観光客にとっても魅力あるまちづくりを進めてまいります。
観光地としての質やブランド力の向上も重要です。障がい者等が利用できるデュアルスキーなどの導入支援などにより「ユニバーサルツーリズム」の本格的な普及に取り組むことに加え、「信州感動健康料理アカデミー」を開催して「信州の食」のブランド化を推進します。また、国際会議や大規模イベントを積極的に誘致するため、「長野県MICE誘致推進協議会」を設置するとともに、信州フィルムコミッションネットワークやスポーツコミッションにそれぞれ専門家を登用し、ロケ誘致や聖地巡礼、スポーツ合宿等の誘致に取り組みます。
さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、欧米市場へも積極的な誘客プロモーションを展開するとともに、県観光機構内に「インバウンド支援センター」を設置し、ICTを活用したインバウンド受入環境の整備や、まちなかでの多言語表記に取り組むなど、ソフト・ハード両面で世界中から観光客を呼び込む体制を強化します。
本県は移住先として高い人気を集めています。そうした期待に応えられるよう、市町村等と連携して「つながり人口」を拡大するためのモニターツアーの実施、トライアル移住や創業の機会を提供することによるクリエイティブ人材の誘致など、県外からの移住施策に引き続き取り組んでまいります。
(心豊かな暮らしを実現する文化芸術の振興)
文化芸術は私たちに心豊かな暮らしをもたらすとともに、これからの地域における魅力の源泉です。
このため、新たにアートマネジメント(文化芸術経営)の専門人材を県庁に配置し、文化芸術に関する人材育成や情報の一元的発信を担う「長野県版アーツカウンシル」の構築に取り組みます。県文化振興事業団に配置した芸術監督団による音楽、演劇の公演や地域文化振興の取組を支援し、文化芸術に触れる機会の拡大や人材の育成を促進します。
特に本年は、ウィーン楽友協会との姉妹提携35周年を記念して、「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」の演奏会を開催するとともに、第42回全国高等学校総合文化祭(2018信州総文祭)の開催により、全国的・国際的規模での文化交流を推進します。また、「信濃の国」を後世に歌い継ぐべく県歌制定50周年事業を実施するとともに、東京2020オリンピック・パラリンピック文化プログラムへの参画により、地域の文化芸術活動や障がい者の優れた芸術作品の発信を行います。
信濃美術館本館の全面改築については、2021年度の開館を目指して着実に設計、運営面の検討等を進めます。施設については、国宝等の重要展示品にも対応できるように展示空間や収蔵部分についても十分な配慮を行いつつ、高低差のある地形を活かし、隣接する公園と一体感のある開放的な構造とし、アートに身近に触れることができる美術館としてまいります。なお、併設する東山魁夷館については、2019年度のリニューアルオープンに向けて改修工事を実施します。
地域に根付く文化芸術の継承・活用については、地域の宝である文化財を災害から確実・迅速に保護するため、文化財レスキューの体制構築・資機材整備を進めるとともに、文化財の修理・防災対策を支援します。
(2027年国民体育大会・全国障害者スポーツ大会に向けたスポーツ振興)
国民体育大会と全国障害者スポーツ大会の2027年開催に向け、昨年12月20日に準備委員会を立ち上げました。また、県民の期待に応え、開催県としてふさわしい成績を収められるよう、来年度新たに競技力向上対策本部を設置して、中長期的な「競技力向上基本計画」を策定するとともに、2027年に主力となるジュニア選手の発掘・育成を強化するなど計画的に選手及び指導者の養成を進めます。
スポーツによる元気な地域づくりを進めるため、総合型地域スポーツクラブの活動を支援するなど、県民が気軽に参加できる身近なスポーツ環境の整備を進めます。また、パラスポ・フェスティバルをはじめ、各種大会の開催や障がい者スポーツ指導員の養成等を通じて、障がい者が日常的にスポーツに親しむことができる環境を整備するとともに、一般スポーツ関係団体との連携強化等により障がい者スポーツの一層の振興を図ります。
来年度からは、県立武道館の建設工事も本格化します。武道振興の中核的拠点として、国体をはじめ全国レベルの武道大会が開催できる規模とし、弾力性のある床など武道に適した施設とするとともに、武道以外のスポーツやコンサートなどの文化活動にも幅広く活用できるよう、2019年度中の開館を目指して整備を進めていきます。
(本州中央部広域交流圏の形成と生活を支える地域交通の確保)
高速交通網の充実を通じた国内外との交流拡大を目指し、本州中央部広域交流圏の形成促進に引き続き力を入れてまいります。
まず、鉄道の整備促進・利便性の向上に取り組みます。リニア中央新幹線や北陸新幹線金沢以西の整備促進、中央線をはじめとする在来線の利便性向上等について、JR等関係機関に積極的に働きかけてまいります。特にリニア中央新幹線の整備は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を1時間で結ぶことにより、世界にも類を見ない人口約7,000万人のスーパー・メガリージョンの形成につながります。県としては、リニア関連工事に対する県民の皆様の不安や懸念に向き合いつつ、地域の未来像を地元経済界や自治体の皆様と共有し、リニア中央新幹線の開通が伊那谷はもとより長野県全体の発展につながるよう最大限努力してまいります。
高規格幹線道路等の道路ネットワークは、産業や観光の振興のみならず、医療、防災面でも重要な社会資本です。ミッシングリンクを解消し、県内外の交流を活発にするため、中部横断自動車道、中部縦貫自動車道、三遠南信自動車道、松本糸魚川連絡道路やリニア関連道路等の道路整備を推進します。
信州まつもと空港については、本日、札幌丘珠空港との間で新路線を開設するとの発表がFDAからありました。発展・国際化に向けた取組方針で定めた「集中・具現化期間」として、この2年間、関係者の御支援をいただきながら精力的に取り組んできた結果、昨年は、定期便の利用率で前年を上回り、また、約2年ぶりに国際チャーター便が就航するなど、成果が出始めております。
今後は、2019年度からの「上昇期間」に向け、より利便性が高い空港となるよう、施設・機能のあり方について検討を進めるとともに、国内線では、札幌丘珠線や大阪線の運航期間の拡大、国際線では、将来の定期便開設をにらんだ国際チャーター便の誘致に取り組みます。
人口減少や高齢化が進行する中、自家用車に過度に頼らずとも不自由なく安心して暮らせる地域を目指し、公共交通の利便性向上にも積極的に取り組みます。長野県観光・交通案内アプリ「信州ナビ」に、路線バスの位置情報を提供するバスロケーション機能を追加するとともに、新たな試みとしての定期券タクシー等の導入を支援するなど、交通事業者と十分に連携を図りつつ、新しい取組にチャレンジしてまいります。
【いのちを守り育む県づくり】
第四に、「いのちを守り育む県づくり」です。
全国トップレベルの健康長寿県として、県民の健康づくりについて先導的な役割を果たし、併せて保健・医療体制の更なる充実を図ります。また、自然災害や不慮の事故等への対策・対応を強化するとともに、美しく豊かな自然環境・地球環境を守り、次世代へと継承してまいります。
(県土の強靱化)
現在改定作業を進めております「長野県強靱化計画」に沿って、災害に強いインフラ整備をはじめとした県土の強靱化を進めることにより、各種災害による被害を最小限に抑え、県民の生活と財産を守ります。
御嶽山の火山対策については、山頂付近において地元自治体が設置する避難施設の整備を支援するとともに、後世に教訓を伝えるべく噴火災害の記録集を制作します。また、登山者や観光客らに情報発信を行うビジターセンターの設置に向けては、県も地域振興局を中心に木曽町・王滝村が進めているセンターの構想策定に協力していきます。他方、登山者や観光客、地元住民に対する火山防災の知識の普及や啓発を担う「御嶽山火山マイスター」の育成については、3月に初めての認定を行う予定であり、地元町村と連携しながら人材育成を進めます。
先月23日、群馬県草津町に位置する草津白根山の本白根山が噴火し、1人が死亡、11人が重軽傷を負いました。お亡くなりになられた方とその御遺族に対し深く哀悼の意を表しますとともに、現在も火口付近の入山が規制される噴火警戒レベル3の状態が継続しており、今後観光シーズンを迎えるにあたり影響も懸念されることから、草津白根山に近い山ノ内町や高山村と連携を密にし、必要な対策を講じてまいります。
大規模地震から命を守るためには、建物の倒壊防止が重要です。住宅所有者向けの相談会や改修事業者のための講習会を実施し、住宅や避難施設等の耐震化の一層の促進に努めます。また、人工衛星の情報を活用して県内山間地の地盤変動を定期的かつ広域的に監視することにより、大規模山腹崩壊や地すべりの早期把握につなげます。
豪雪地帯を抱える本県では、平成26年2月の大雪の検証結果などを踏まえ、「第七次総合雪対策計画」を策定しているところであり、幹線道路での滞留車両の発生を抑制するための除排雪体制の構築や雪に強い道路整備、克雪住宅の普及など、安全安心な生活の確保に取り組みます。
(医療・介護提供体制の充実)
安心して住み続けることができる県づくりのため、医療・介護提供体制の更なる充実に取り組みます。
医師の地域的な偏在に対応するため、移住施策と連携して医師の県内就業を促進するとともに、新たに地域の拠点病院が医師不足病院を支援する仕組みの構築・支援を行います。また、認知症疾患医療センターの現在の3か所から5か所への拡充や、全医療圏のがん拠点病院等設置に向けた検討、本年8月からの子ども医療費の現物給付化にも取り組みます。
地域包括ケアシステムを一層充実するため、在宅看取りの体制構築・運営に取り組む医療機関等を支援するとともに、豊富な経験を有する看護職員(プラチナナース)の再就業に向けた研修や、訪問看護師が医師の判断を待たずに行える特定行為の研修受講についての支援を行ってまいります。
(生命・生活リスクの軽減)
誰も自殺に追い込まれることのない信州を実現するため、日本財団や自殺対策に取り組むNPOとも連携し、現在、自殺対策推進計画を策定しているところですが、まずは、自殺死亡率が、2022年までに過去最低となるよう、市町村、関係機関等と協力し、生活困窮者対策や就労支援対策、高齢者の居場所づくり等、施策を総動員して支援を行います。加えて、全国と比較して高い水準にある未成年者の自殺対策として、SOSの出し方教育の推進や、昨年全国に先駆けて実施したSNSを利用したいじめ・自殺相談の充実に取り組みます。
山岳観光県である本県にとって、山岳遭難への対応は重要な課題です。平成25年の300件をピークに減少傾向にありながらも依然として後を絶たない遭難事故を防止するため、首都圏におけるセミナーの実施や、山小屋等を安全登山の学びの場とする「信州山岳アカデミー」の開設等により、安全登山に関する情報提供や普及啓発を一層強化してまいります。
犯罪のない安全な社会は県民すべての願いです。日本一安全・安心な県づくりを目指す県警察の体制を強化するため、治安維持や災害警備対応の拠点となる木曽警察署の現地改築に向けた測量調査を実施するとともに、安曇野警察署の増築、交番・駐在所の整備などを行います。
消費生活の安定と向上については、消費者被害などのリスクや、多様化・複雑化する消費者問題を学ぶ場として、新たに消費者大学を開設するほか、人・地域・社会・環境へ配慮した消費行動で持続可能な社会をめざす「エシカル消費」を推進するシンポジウムを開催します。
(地球環境への貢献)
様々な主体のパートナーシップによって本県の豊かな自然環境を保全するとともに、環境負荷の少ない社会づくりを推進することにより、地球環境の保全にも積極的に貢献してまいります。
昨年9月の「地域再生可能エネルギー国際会議」での宣言に沿って将来的には「再生可能エネルギー100%地域」の実現を目指しつつ、当面5年間で、再生可能エネルギー自給率8.0パーセントを12.9パーセントに引き上げるよう取り組みます。
まずは、徹底した省エネルギー対策として、既存住宅などの省エネ性能について簡易診断を無料で実施することにより、省エネ改修を促進するほか、県障がい者福祉センターへのESCOの導入や照明のLED化など県有施設の省エネ改修を推進します。また、太陽光発電や太陽熱利用の導入ポテンシャルを見える化するソーラーマッピングにより、住宅用太陽光発電の設置件数が2030年度までに現在の5倍増の約35万件となるよう取り組みます。新たに木質バイオマス熱利用や太陽熱などの再生可能エネルギーを導入した環境配慮型住宅の新築・改修についても支援を行います。将来の事業化可能性を見据えて水素エネルギーの利活用のあり方を研究するため、企業局において水素ステーションと燃料電池車を整備します。
自然保護センターを豊かな自然と触れ合うエコツーリズムの拠点とするため、「ネイチャーセンター基本方針」を新たに策定し、まず霧ケ峰自然保護センターの具体的活用策について検討してまいります。
また、現在策定中の「諏訪湖創生ビジョン」を踏まえ、人と生き物が共存し、誰もが訪れたくなる諏訪湖を目指して取り組みます。生態系保全や水辺整備等と併せた水質保全対策を推進するとともに、諏訪湖をはじめとする県内河川・湖沼の調査・研究体制を強化するため、「諏訪湖環境研究センター(仮称)」の設置に向けた検討を進めます。
【誰にでも居場所と出番がある県づくり】
第五に、「誰にでも居場所と出番がある県づくり」です。
性別、世代、国籍の違いや、障がいの有無などにかかわらず、すべての人が等しく社会からその存在と役割を認められ、自らの可能性に挑戦し、自分らしく生きていくことができる県づくりを目指します。
(多様性を尊重する共生社会づくり)
信州あいサポート運動の拡大や人生二毛作社会づくりの推進等により、お互いに多様性を尊重しながら、地域で共に暮らせる共生社会づくりを進めます。
信州あいサポート運動の一環として、援助や配慮が必要な方が周囲にその意思を知らせることができる「ヘルプマーク」を新たに導入し、公共交通機関や医療機関等と連携して普及・広報を行います。また、LGBTなど性的少数者に対する社会全体の理解を促進するため、企業人権セミナー等により啓発を実施します。他方、県長寿社会開発センターのシニア活動推進コーディネーターを現行の6人から11人に増員し、シニア層の就業・社会参加に向けた支援を強化してまいります。
高齢や障がい、生活困窮等の複合的な課題を抱える方への支援については、モデル地域を設定し関係機関の連携による包括的な相談支援体制を整備するほか、犯罪や非行をした人の社会復帰支援と再犯防止のための支援ネットワークを構築し、新たに生活相談窓口を設置します。
人工呼吸器装着等の医療的ケアを必要とする障がい児の在宅支援については、窓口となるコーディネーターの育成や、医療、福祉、教育等の関係機関による連携会議の設置等を行います。また、動物愛護センターが実施する動物とのふれあいを通じた、不登校や引きこもり児童生徒への支援を全県に拡大します。
(女性が輝く社会づくり)
「女性が輝く社会づくり」を推進するため、女性の就業環境の整備や学びの場づくりを進めるとともに、男性の家庭や地域への参画を促進します。
企業トップや市町村長等を対象とした女性活躍推進に関するセミナーを新たに開催するとともに、長野県ウィメンズカレッジでは、離職中の女性やこれから社会に出る大学生等を対象に、将来のライフデザインを考えるための講座やスキルアップセミナーを実施するほか、さまざまな県内団体の研修情報の提供に力を入れてまいります。子育て中、あるいはひとり親家庭の母親の就業継続や再就職を促進するため、就業相談体制の整備、資格取得の支援や正規雇用を実現させるマッチング支援等を実施します。また、女性技術者の労働環境を改善するため、建設現場における女性専用トイレの設置等を進めます。
(子ども・若者が夢を持てる社会づくり)
子どもを産み、育てやすい環境づくりを更に進めるため、関係機関が連携して切れ目なく包括的に支援する「信州こどもサポート(仮称)」を構築します。まず来年度は、子どもや子育て家庭の様々な課題を早期に把握し、解決・改善につなげるための仕組みをモデル市町村等とともに検討します。
一場所多機能な子どもの居場所「信州こどもカフェ」については、運営の中心となる人材の発掘・育成を新たに支援するとともに、一層の普及に努めます。また、幼稚園教諭の処遇改善を図り、人材の確保・定着につなげるため、私立の幼稚園に対する補助を充実します。
すべての子どもが置かれた環境にかかわらず自分の未来を切り拓けるよう、里親の新規開拓から里親委託後の養育・相談までを一貫して担う里親支援機関による新たな質の高い里親養育体制を構築します。また、予期せぬ妊娠に悩む妊婦等を継続して支援するため、医療機関や乳児院等と連携して相談窓口の設置等を行います。
【自治の力みなぎる県づくり】
最後に、「自治の力みなぎる県づくり」について申し上げます。
昨年新たに設置した地域振興局を中心として、星空を活かした観光地域づくりや空き家対策、就農とタイアップした移住・定住の促進など、地域の強みや特性を活かした地域づくりへの取組が始まっています。今回の当初予算編成においては、地域振興局長から提案、意見を受け付ける取組を試行的に実施したところ、諏訪湖の環境改善の推進、御嶽山に係る火山防災対策の推進など、地域性に富んだ提案等があり、当初予算案にも反映いたしました。今後も元気づくり支援金や地域振興推進費等を活用し、地域振興局を核とした地域の課題解決を推進します。
定住自立圏など国の支援制度が適用されない木曽地域においては、移住相談窓口の設置など定住の受け皿づくりに向けた町村間の連携事業を新たに支援してまいります。
また、地域課題の解決に向けて住民をサポートできる人材を育成し、地域に派遣することで、中山間地域等における住民主体の地域づくりを支援します。
地域における自主的な防災力の向上については、消防団の活動に協力する事業所等を有する法人等に係る事業税の軽減措置の適用期限を2020年度末まで延長するとともに、自治体消防制度70周年記念長野県大会を開催するなど消防団の充実・強化を推進します。
【県が取り組むべき喫緊の課題】
次に、当面、県として取り組むべき喫緊の課題である「健康づくり」と「産業人材の確保」について申し上げます。
(“学びと自治の力”による健康づくりの新展開)
厚生労働省が公表した平成27年における本県の平均寿命は、女性が87.675年、男性が81.75年となり、女性は引き続き全国1位となったものの、残念ながら男性は2位となってしまいました。健康で長生きしたいという多くの県民の皆様の希望を実現するため、安心を保障するための医療・介護体制の充実と併せて、県民の健康づくりに一層力を入れて取り組んでまいります。
国保データベース等を活用して生活習慣や健診受診の状況など市町村ごとの健康課題の見える化を図り、シニア大学等の学びの場を通じて県民の気付きを促すとともに、市町村や健康保険組合、企業等が行う健康づくりの取組の充実につなげます。
また、市町村や企業・団体等と協働で信州ACE(エース)プロジェクトを強力に推進していくため、「健康づくり推進会議(仮称)」を設置するなど関係者間の連携協力体制を再構築し、本県の「健康自治力」を高めます。さらに、働き盛り世代の運動習慣の定着、若者の食生活の改善、高齢者のフレイル(虚弱)予防など、ターゲットを明確にした取組を「ACE(エース)・フラッグシップ・プロジェクト」として強力に推進してまいります。
(人手不足の今を生き抜く信州の産業人材確保)
景気回復に伴い有効求人倍率が極めて高い水準で推移し、県内企業は人手不足が顕著となり、製造業などでは受注を控えざるを得ない状況も生じるなど、今や人材の確保は喫緊の課題です。
このため、経済団体、労働団体等との連携による「長野県就業促進・働き方改革戦略会議(仮称)」を設置し、産業分野や地域ごとの求人ニーズを的確に把握し、効果的な就業促進策を早急に立案、実施します。
プロフェッショナル人材戦略拠点において、大都市圏の大手企業等と連携の強化を図り、即戦力となる専門人材を誘致します。また、ジョブカフェ信州において、キャリアコンサルティング等を行うことにより、学生を含む若者を確保するとともに、インターンシップを実施する企業と学生が一堂に会するフェアを新たに開催しマッチングを行うことにより、県内外の若者の県内就職を促進してまいります。
さらに、高齢者や女性、障がい者の就業を促進するため、企業説明会を開催し、マッチングを支援するなど、企業による多様な人材の採用に向けた取組を積極的に支援します。
人手不足が深刻な福祉・介護分野では、福祉・介護職場のPRやマッチング支援に加え、先月、日本福祉大学と締結した「Uターン就職促進協定」の活用などにより、福祉・介護人材の県内就職を促進します。
【その他の主な施策】
その他の主な施策として森林づくり県民税を活用した事業と社会資本の整備について申し上げます。
(森林づくり県民税活用事業)
喫緊の課題を抱える里山を整備し、森林に関する多様な県民ニーズに応えるため、平成30年度以降5年間、森林づくり県民税を継続させていただくことといたしました。
平成30年度当初予算案では、昨年11月に取りまとめた「長野県森林づくり県民税に関する基本方針」に基づき、「防災・減災」及び「住民等による利活用」のための里山等の整備のほか、間伐材等の利活用、森林づくりに関わる人材の育成、観光地の景観形成や学校林の整備をはじめとする森林の利活用などを、森林づくり県民税を活用した事業として計上しました。
事業の執行に当たっては、森林づくり県民税の成果を身近に感じていただける取組を充実するとともに、副知事を座長に新たに設置した「森林づくり県民税活用事業推進会議」で事業成果の検証や必要な制度・事業の見直し等を行うこととし、「みんなで支える森林づくり県民会議」にも御意見をいただきながら適正かつ有効な事業推進に努めてまいります。
(社会資本の整備)
広大な県土を有する本県においては、快適な生活と経済活動を支える基盤整備や、安心・安全を確保するための防災・減災対策推進などが強く求められていることから、社会資本の整備にも引き続き取り組んでまいります。
施設整備等については、信濃美術館の整備や県立武道館の建設に加え、県立長野図書館における信州・学び創造ラボの整備や県有施設の耐震化、県立文化会館の改修、県立学校における老朽校舎の修繕やトイレ整備等を進めます。
公共事業については、県内外の交流・連携を促進するため、三遠南信自動車道や国道18号長野東バイパスをはじめとする国直轄事業に対し負担金の支出を行うとともに、県が実施するリニア関連道路や木曽川右岸道路など幹線道路網の整備を推進してまいります。また、観光地域づくりを推進するためサイクリングロードの整備等を地域戦略推進型公共事業として実施するほか、安全で快適なまちなか空間を確保するための無電柱化や歩道整備を推進するとともに、2019年に開催される「第36回全国都市緑化信州フェア」の会場整備などを進めます。
防災・減災対策の推進として、河川・砂防施設の整備や維持修繕を行うほか、ため池の耐震化や荒廃山地の復旧・予防対策を実施します。農林業を支える生産基盤を強化するため、かんがい施設の長寿命化や農地の大区画化、森林整備に直結する林道の整備などに取り組みます。
国の補正予算も活用した結果、特に維持修繕に係る事業費については、平成29年度当初予算比24.5パーセント増の事業費としたところであり、既存施設の有効活用や安全性向上を図ってまいります。
【平成29年度補正予算案】
次に、平成29年度の補正予算案について申し上げます。
補正予算案は、一般会計210億7,820万1千円、特別会計2,579万1千円であります。
今定例会に提出した補正予算案は、国の補正予算を最大限活用して編成いたしました。
まず、革新力に富んだ産業の創出・育成に向けては、先ほど御説明した「IoTデバイス事業化・開発センター」と「機能性食品開発拠点」の整備を行います。農林業の振興については、生産出荷体制の効率化を図るため、野菜集出荷施設等の整備、高性能林業機械の購入、森林整備に直結する作業道や木材加工施設の整備を支援します。
安全・安心な社会を目指し、災害時の緊急輸送路整備や氾濫防止のための河川改修、砂防や治山施設の整備、ため池の耐震化、搬出間伐による森林整備などを実施いたします。また、国が補正予算により実施する道路や砂防等の直轄事業に係る負担金を追加いたします。さらに、地域の鉄道事業者が行う施設整備等の安全対策や、障がい福祉施設の整備に対する支援を行います。
一般会計補正予算案の財源としては、県債102億1,500万円、国庫支出金100億4,950万8千円、その他分担金及び負担金など8億1,369万3千円を見込み、計上いたしました。
本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8,920億2,684万6千円となります。
特別会計の補正予算案は、県営林経営費に係るものです。
【条例案ほか】
条例案は、新設条例案2件、一部改正条例案28件、廃止条例案1件の、合わせて31件であります。
新設条例案のうち、「長野県住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例案」については、住宅宿泊事業法に基づき、本県における事業の実施を制限する区域及び期間等を定めるとともに、事業者の責務その他必要な事項を定めるものです。
住宅を活用して宿泊の用に供するいわゆる民泊事業は、急増する外国人観光客の多様なニーズに対応することができる一方で、騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化も懸念されます。このため本条例案では、地域の実情を踏まえた市町村の意向を踏まえ、条例で定める事業実施の制限に関し、規則により具体的な対象区域を定め、又、全県一律の制限の緩和などができることとし、民泊事業に期待する声とその実施に不安を覚える声の両方に可能な限り配慮できる仕組みとしたところです。
また、本条例案では、事業実施に伴うトラブルの防止や事業の適正実施のため、周辺地域の住民に対する事前説明等を住宅宿泊事業の届出をしようとする者の責務として規定するとともに、事業実施の制限に係る規則の制定又は改廃等について、知事の諮問に応じて調査審議を行う「長野県住宅宿泊事業評価委員会」を設置することなどを規定しました。
事件案は、「長野県総合5か年計画の策定について」など18件であります。
このうち、「権利の放棄について」は、県道路公社が管理する有料道路のうち、平井寺トンネル有料道路が本年8月24日をもって事業完了となり、一般道路化されることに伴い、県道路公社に対する県出資金11億250万円について、権利を放棄するものです。
専決処分の報告は、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」など14件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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