ホーム > 県政情報・統計 > 県概要 > 知事の部屋 > 県議会における知事議案説明要旨 > 令和6年9月県議会定例会における知事議案説明要旨
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更新日:2024年9月26日
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。
【地震防災対策の抜本的強化】
(長野県地震防災対策強化アクションプランの策定)
今月20日からの低気圧と前線による大雨は、震災の影響が残る能登半島に更なる被害をもたらしました。お亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。能登半島では今年1月の地震に引き続いての災害であり、本県としては、引き続き、職員派遣、義援金の募集など、被災者の皆様に寄り添った支援に努めてまいります。
こうした災害は、決して他人事ではありません。今般、令和6年能登半島地震の教訓を踏まえ、地震対策の更なる充実・強化を図るため、「長野県地震防災対策強化アクションプラン」を策定しました。基本目標として「『地震災害死ゼロ』に挑戦」を掲げ、予防対策・応急対策・復旧復興対策の3つの段階に応じた10のアクションを設定しました。
予防対策としては、「最低3日間、できる限り1週間分の物資備蓄」を県民の皆様に呼び掛けるほか、住宅の耐震化、孤立地域の発生に備えた情報・物資両面での対策強化、災害に強い道路網の整備などを推進します。
応急対策としては、高齢者、障がい者、女性、性的マイノリティ、子ども、外国人などの多様な視点で避難所運営マニュアル策定指針を改定するほか、入浴支援や温かい食事提供の仕組みづくりなど、避難所TKB(トイレ・キッチン・ベッド)の更なる進化を図るとともに、ライフラインの確保と早期復旧のための仕組みを構築します。
復旧復興対策としては、県外からの応援職員やボランティアのための宿泊場所の事前確保、デジタル技術の活用等による住家の被害認定調査の迅速化、県内企業の事業継続計画の策定・見直しの促進などを進めてまいります。
このアクションプランを推進するため、今回の補正予算案では、住宅耐震改修補助の予算を増額するほか、衛星通信機器の整備及び住宅の耐震化が遅れている地域等で耐震化を促進するための専門家派遣に要する経費を計上しました。
「地震災害死ゼロ」という高い目標の実現に向け、市町村はもとより、県民、事業者の御協力をいただきながら、全庁を挙げて取り組んでまいります。
(南海トラフ地震臨時情報の発表等)
先月8日、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、運用開始以来初めてとなる「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。本県では速やかに警戒・対策本部を設置し、冷静な対応と地震に対する備えの再確認を県民の皆様に呼び掛けるとともに、市町村や防災関係機関との連絡体制の確認、道路や農業用ため池、学校・文化施設の点検などを行ったところです。
臨時情報の期間中、県内では大きな混乱はありませんでしたが、市町村や企業からは、「イベントを開催するべきか悩んだ」、「宿泊予約の取扱いを地域全体で揃えてはどうか」など、様々な御意見が寄せられています。国が実施する「『南海トラフ地震臨時情報』アンケート」の結果なども踏まえ、今後の対応を検討してまいります。
【火山防災対策の推進】
死者58名、行方不明者5名と我が国における戦後最悪の火山災害となってしまった御嶽山の噴火から、明日で10年となります。犠牲になられた方の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げますとともに、被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
この間、二度と犠牲者を出さないとの強い決意のもと、避難シェルターの設置等登山者の安全確保対策の強化、研究観測体制充実のための名古屋大学火山研究施設の誘致、御嶽山火山マイスター制度の創設やビジターセンターの設置による火山と共生する地域づくりの推進など、御嶽山における火山防災対策の充実・強化に取り組んでまいりました。木曽町、王滝村をはじめ、御尽力、御協力をいただいてきた全ての関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
本県は6つの活火山を有する全国有数の火山県です。そのため、火山を知り、火山防災に対する意識を高めることを目的として、「信州 火山防災の日」及び「信州 火山防災月間」を昨年制定いたしました。今月14日にはその記念イベントを小諸市で開催し、浅間山の噴火の歴史や火山防災のこれまでの取組を参加者の皆様に学んでいただいたところです。
我が国を代表する山岳県として、安全に登山をお楽しみいただけるよう、御嶽山での取組を他の火山にも広げるなど、各地域での火山防災対策の充実・強化に努めてまいります。
【人口問題への対応】
人口問題は社会経済の様々な分野に与える影響が極めて大きく、本県にとって最も重要な政策課題です。
今年2月に策定した少子化・人口減少対策戦略方針案を基に、若者や子育て世代、移住者、関係団体など様々な方々と県内各地で約140回にわたり意見交換を重ねてまいりました。固定的な性別役割分担や年功序列などが若者や女性の生きづらさにつながっている現実を改めて認識し、寛容な社会づくりの重要性を痛感しました。また、多くの若者が交通を含めた楽しく便利なまちづくりに強い関心を持っていることも新たな気づきとなりました。
これらを踏まえて今回取りまとめた「人口戦略(仮称)骨子案」では、「人口減少の事実の共有と価値観の転換」、「個性きわ立つ信州づくりを通じた急激な人口減少の緩和」、そして「人口減少社会に適応した『ゆたかな社会』の実現」を大きな3本の柱として位置付けました。
「人口減少の事実の共有と価値観の転換」では、人口見通しなどを県民の皆様と広く共有するとともに、様々な取組の前提となる価値観の転換を図るべく、今までの常識を問い直して、新しい「当たり前」を県民の皆様とともに創り上げたいと考えております。
「個性きわ立つ信州づくりを通じた急激な人口減少の緩和」では、誰もが自分らしくいられる地域や職場づくりに力を入れて取り組むほか、育児休業を取得しやすい環境づくりなど多様で柔軟な働き方の普及、地域ごとの高校生等の居場所等になるユースセンターの設置促進、外国人の生活をサポートするための体制整備などを検討してまいります。また、豊かな自然環境や大都市圏との近接性を活かした移住や関係人口創出の一層の推進、一人ひとりの「好き」や「楽しい」、「なぜ」を追求する学びへの変革など、長野県の強みや特色を最大限に活かし、出生数減少の反転や人口の社会増を図ってまいります。
本県の人口は、2025年以降社会増減が均衡し、かつ、2040年までに合計特殊出生率が人口置換水準の2.07に上昇してそれ以降は維持されたとしても、2100年頃までは減少が続く見通しです。そのため、「人口減少社会に適応した『ゆたかな社会』の実現」に向けた取組を今から積極的に進めていくことが急務であると考えます。まず、都市機能の集約や公共交通の充実などを勘案し、県土全体の発展に向けたグランドデザインを策定します。社会の変革期にこそ多くのビジネスチャンスが存在するものと積極的に捉えつつ、徹底したDXや業務の共同化、産業のグローバル化や高付加価値化などを推進し、あわせて人材の育成・確保のための取組を重点的に進めます。必要な行政サービスを維持するため、市町村と県との新たな連携の在り方についても検討します。このほか、副業・兼業の促進など一人多役で活躍できる社会の実現や、社会課題解決の担い手たるソーシャルセクターの活性化なども進めてまいります。
この戦略の最大の特徴は、様々な個人や企業・団体が参加する県民会議を立ち上げ、オール信州で人口減少社会への対応を進めていくことにあります。現在、県民会議準備会合を開催して、県民の皆様の参画方法等について鋭意御議論をいただいているところです。12月には県民会議を立ち上げ、戦略を決定し、具体的な取組を展開してまいります。
【観光振興税(仮称)の検討】
本県は、豊かな自然や美しい景観、歴史的な名所などに恵まれ、四季折々に多彩な楽しみ方ができる、観光資源に富んだ地域です。しかしながら、今年7月に発表された旅行代理店による全国の旅行満足度調査によれば、本県は総合的な満足度こそ全国12位であるものの、「現地へのアクセスが良かった」、「現地で良い観光情報を入手できた」、「若者・子どもが楽しめるスポットや施設・体験があった」、「魅力ある特産品や土産物があった」などの項目別満足度においては軒並み全国平均を下回っており、残念な状況です。本県が目指す世界水準の山岳高原観光地を実現するためには、国内外の先進的な観光地に学びつつ、交通の利便性向上や観光分野のDX、スノーリゾート・温泉地や宿泊施設等の受入環境整備などに積極的に取り組まなければなりません。観光振興審議会観光振興財源検討部会が今年3月に取りまとめた内容を踏まえ、本日、「長野県観光振興税(仮称)骨子」として県の考え方を公表いたしました。
今回新たにお示しした主な点は、税率は1人1泊300円の定額、免税点は3,000円、修学旅行等の学校行事は課税免除とすることなどです。税収は観光振興の目的で「長野県らしい観光コンテンツの充実」、「観光客の受入環境整備」、「観光振興体制の充実」、「県内市町村への支援」のために活用することとし、基金を設けて管理します。納税者等に明確な成果をお示しできるよう、例えば、宿泊施設が集積する地域を重点的に支援するなど、税を充当する施策や地域については極力重点化したいと考えており、市町村、宿泊施設の代表者等の御参加のもと策定する「観光ビジョン(仮称)」で使途の具体化を図ってまいります。また、当初は3年経過後、その後は5年ごとに制度の在り方について検証を行い、必要な見直しを行ってまいります。
観光振興は、市町村と県とが協調して行うことが重要であることから、徴税経費等を除く税収の2分の1は市町村に交付することとします。そのうち3分の2は自由度の高い一般交付金(仮称)、3分の1は県が定める重点施策に活用してもらう重点交付金(仮称)とする考えです。また、宿泊行為に対して独自に課税を行う市町村については、県の税率を1人1泊150円に引き下げて市町村の課税余地を広げる一方、一般交付金(仮称)、重点交付金(仮称)のいずれも交付の対象外とします。なお、これらの交付金以外の県からの補助金については、他の市町村と同様に対象とする予定です。
観光先進県を目指す本県としては、国内外の他地域の取組に後れをとることは許されません。県議会、市町村等に対して速やかに骨子の考え方を御説明するとともに、関係事業者・県民向けの説明会やパブリックコメントを実施し、早ければ11月定例会での条例案の提出を視野に入れて取り組んでまいります。
【リニア中央新幹線開業を契機としたまちづくり】
リニア中央新幹線の整備については、本県内においても一部工事が遅れるとの見通しがJR東海から示されています。県としては、工事の長期化に伴う地域への負の影響を低減するため、発生土等の運搬ルートの再検討や運行時間帯の調整を行うこと、十分な交通安全対策を講じることなどを要請しているところです。地域の皆様の理解を得ながら工事を進めるよう、JR東海には今後とも強く求めてまいります。
今月9日に首相官邸で開催された「リニア開業に伴う新たな圏域形成に関する関係府省等会議」において、本県としては、東京一極集中を是正するための多極分散型国家のモデルとなる実証都市圏域を長野県駅(仮称)を中心に形成していく方針であることを説明しました。岸田文雄内閣総理大臣からは、リニア中央新幹線は日本経済を牽引する国家的プロジェクトであり、「各リニア駅について、整備効果が最大限発揮されるよう、駅周辺を含めたまちづくりを国として全面的に支援していく」との力強い御発言をいただいたところです。
今月18日には、飯田市長をはじめとする伊那谷・木曽谷の6市町村長とともに、丹羽俊介社長をはじめJR東海の幹部に対する要請活動を行いました。私からは、早期開業の実現と開業時期の明確化、建設工事等に対する住民理解の確保に加え、地域振興への積極的な取組、特にまちづくりの重要性について申し上げ、本社機能の一部移転の検討等JR東海としても積極的に協力するよう要請したところです。
今後は、関係市町村や地域の皆様と連携しながら、リニアバレー構想の実現に向けた取組を一層加速するとともに、リニア中央新幹線の開業効果を広域に波及させるための地域再生計画の策定に取り組んでまいります。
【パリ2024オリンピック・パラリンピックでの本県選手の活躍等】
先般開催されたパリオリンピック・パラリンピックで選手たちが躍動する姿は、私たちに大きな夢と希望、そして感動を与えていただきました。柔道女子57キロ級の出口クリスタ選手が夏季の個人種目では本県出身者として初となる金メダルを、総合馬術の大岩義明選手が馬術競技で日本として92年ぶりのメダルとなる銅メダルを、それぞれ獲得されたことをはじめ、本県にゆかりのある15名の選手たちが大いに活躍されました。
選手たちのたゆまぬ努力に深く敬意を表し、その健闘を心から讃えるため、メダルを獲得されたお二人にスポーツ特別栄誉賞を、他の選手にはスポーツ栄誉賞を授与させていただきました。各選手がますます御活躍されますことを祈念しております。
2028年に開催する「信州やまなみ国スポ・全障スポ」に向けては、選手の競技力向上、競技会場となる施設の整備、大会参加者の宿泊・輸送・医療救護体制の確保などの準備を計画的に進めております。全ての正式競技で会場地となる市町村が決定し、県民誰もが参加できるデモンストレーションスポーツの選定などを現在行っているところです。県民の皆様の心に残る素晴らしい大会となるよう取り組んでまいります。
スポーツを取り巻く環境が大きく変化する中で、国民スポーツ大会の意義や在り方が改めて問い直されており、主催者の一員である日本スポーツ協会において、今後の大会の在り方を考える有識者会議が設置されました。私も全国知事会の代表として参画しており、夏の知事会議で取りまとめた「3巡目国スポの見直しに関する考え方」を踏まえ、大会の開催意義や総合開・閉会式の見直し、財政負担の在り方等についての検討を強く求めているところです。「信州やまなみ国スポ」においても、式典の簡素化などを検討する必要があると考えており、「SAGA2024国スポ」等を参考に「体育」から「スポーツ」へと名称が変更された新しい大会の在り方を関係者の皆様とともに考えてまいります。
【クマ対策の推進】
今年度の里地におけるクマの目撃件数は、先月末現在で平年の約1.6倍となる1,094件に上っており、クマによる人身被害も10件11人と昨年度を上回っています。被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
こうした深刻な状況を踏まえ、6月5日に全県に「ツキノワグマ出没注意報」を発出し、さらに今月9日には出没件数が多い佐久・上伊那・木曽・北アルプス・北信の5地域を「ツキノワグマ出没警報」へと引き上げ、県民の皆様に一層の注意・警戒を呼び掛けているところです。警報発出地域においては、地域振興局、市町村、猟友会員等で構成する広域連携クマ対策チームを立ち上げ、クマの目撃や人身被害のあった集落周辺での集中的な監視活動を実施しています。速やかに出没痕跡や出没経路を確認することにより、人身被害の未然防止を図るとともに、早期の防除、捕獲につなげてまいります。また、追い払い機能や録画機能があるセンサーカメラを市町村に貸与するほか、クマ出没時の対応訓練を実施するなど、人身被害の発生防止に全力で取り組んでまいります。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
一般会計補正予算案は111億2,011万円であります。これまで述べたことのほか、県民生活の安全・安心の確保、教育環境の整備などに必要な予算を計上しました。
県民生活の安全・安心の確保としては、今年度の大雨により被災した道路・河川等の応急対策・復旧の実施、緊急輸送路や砂防施設等の防災・減災対策の推進に加え、損傷が進んでいる観光地へのアクセス道路等の集中的な修繕を行ってまいります。教育環境の整備としては、老朽化の著しい松本養護学校と若槻養護学校の改築に向け、既存施設の解体等の工事に着手します。また、駐日大使、海外メディア等に本県の魅力を発信するための外務省との共催イベントの開催、信州まつもと空港の駐車場増設に向けた用地測量・設計の実施、森林資源の有効活用のために需要者と供給者が連携して行うサプライチェーン構築への支援などに必要な経費を計上しました。このほか、建設事務所の維持管理事務所を統合するため、北信合同庁舎改修工事の設計に係る債務負担行為を設定しました。消費者行政を市町村とともに充実させるため、来年4月には県の消費生活センターを松本に集約したいと考えており、引き続き、効果的・効率的な県組織の実現に向けて取り組んでまいります。
この補正予算案の財源として、県債69億8,000万円、国庫支出金28億2,990万5千円、その他繰越金など13億1,020万5千円を見込み、計上しました。
今年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと1兆132億7,968万4千円となります。
【条例案、事件案、専決処分報告】
次に、条例案は、一部改正条例案2件であります。
このうち「個人番号の利用並びに特定個人情報の利用及び提供に関する条例の一部を改正する条例案」は、マイナンバーを利用する県の独自事務として、難病に係る医療費の支給等に関する事務を追加するものであります。
事件案は、長野県道路公社定款の変更についてなど14件であります。
専決処分報告は、交通事故に係る損害賠償の専決処分報告など8件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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