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更新日:2017年4月1日
(省略)
登校拒否という状態は、表のような≪子供側の要因≫≪家庭側の要因≫≪学校側の要因≫≪社会的な要因≫が複雑に絡まり合って生じます。従って、これらの要因が登校拒否の背景や原因になります。
登校拒否の背景や原因はこの30年間にさまざまに論じられて来ました。単純に「子供が悪い」「家庭が悪い」「学校が悪い」という表面的なとらえ方では何も解決されないと言うことは明らかになっています。それを敢えてここで検討するのは、単なる調査や研究のためではありません。登校拒否への指導や治療のために欠かせないからです。登校拒否の事例に出会った時に、≪子供側の要因≫の中のどの項目がその事例に見られるか、≪家庭側の要因≫の中ではどの項目か、≪学校側の要因≫の中ではどの項目か、などを的確に把握することが、その事例の背景や原因を考える際の視点になるからであり、その視点が対応や治療に結びつくからです。また、難しい事例を再検討する時に、この表をチェックリストとして、それぞれの要因の中に当てはまる項目はないか考え直してみることも有用です。
例えば、中学2年A君の登校拒否の事例では、≪子供側の要因≫は、受身の人間関係の持ち方の項目、≪家庭側の要因≫は、親が表面的なことだけで内面を見ないで子供を評価してしまうことの項目、≪学校側の要因≫は、受験本位の授業になり、学習が遅れている子供への救済策がないことの項目、などが見られ、これらに取り組んでいくことがA君の事例への対応策となります。
ただし、1つの要因だけに、登校拒否の背景や原因があることはまずありません。子供のしつけの悪さだけ、教室のいじめだけ、母親の育て方だけにとらわれていると、登校拒否はいたずらに長期化するだけです。
しかしながら、長期化している事例の中に、≪家庭側の要因≫も≪学校側の要因≫も解消されたのに、登校拒否の状態が依然として続いている事例をしばしば経験します。また、中学での登校拒否が何とか改善したのに、高校に進んで再び登校できなくなる事例もよく見られます。これらの事例では、≪子供側の要因≫の中の人間関係の持ち方の片寄りがなかなか変っていかないことがその最大の原因と思われます。ここでいう人間関係の持ち方とは、子供が親や教師に対してあるいは友達の中で、いつもどのように自分の本当の気持や意見を表わしてそれを行動に移しているのか、ということです。この人間関係の持ち方の片寄りは否定的に見るのでなく、今まで家庭や学校の中でそうするしかなかったと肯定的にとらえることもできます。また、登校拒否の子供に限らず、非行の子供や普通に登校している子供にも多く見られます。
ここでも指導や治療のために、この≪人間関係の持ち方の片寄り≫をさらに3つに分けてあります。具体的には、最初に、このような子供の人間関係の持ち方を親に十分に理解してもらう必要があります。親の理解があって初めて、親と子供が対等で余裕のある関わりが持てるようになるからです。その後に、過剰適応のタイプの子供には、そんなに無理して背伸びをしないで、本当の自分の姿をそのままに出すように根気よく支えていくことが大切です。受身のタイプの子供には、その子供が本当はどうしたいのかを表せるようにじっくりと接します。また、一人でも関われる教師か友達を学校の中に探していくことが欠かせません。そのような人が一人でも校内にいるだけで、子供はとても気が楽になります。衝動のコントロールがへたな子供には、学校の内外に関われる友達の仲間や集団を見つけ、その中で自分の衝動をコントロールして行動することが身につくように支えていきます。もちろん、以上のような取り組みは、≪家庭側の要因≫および≪学校側の要因≫を改善させていく取り組みと平行して行わなければなりません。
1
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A過剰反応のタイプ |
①教師や同級生の気持を敏感に察してそれに沿うようにふるまう。 ②自分の意見は言っても相手の気持を傷つけないように配慮する。 ③教師や同級生からは、よい子、優等生と見なされている。 ④自分の気持をそのままに表わせないので、気持の葛藤は徐々に強くなる。 |
B受身のタイプ |
①教師や同級生に言われる通りにふるまう。 ②自発的に自分の意見を言ったり友達をつくったりできない。 ③しかし、教師や同級生からは、よい子、真面目な子と見なされている。 ④自分の気持をそのままに表わせないので、気持の葛藤は徐々に強くなる。 |
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C衝動コントロールが下手なタイプ |
①自分の衝動がコントロールできないで、周りの状況を無視して、自分勝手な行動に出たり、目立った行動をしたりするため、教室やクラブ活動で次第に孤立する。 |
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※ この過剰適応や受身のタイプは以前は優等生の息切れ型と呼ばれていたものですが、今は成績に関係なく、優等生でなくてもこのような子供が見られます。 |
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2 |
学習障害や境界線上の知能水準のために、学習能力が低下したり偏ったりして、学習の場面を避けたいという気持が強くなる。 |
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3 |
(保育園・幼稚園や小学校の低学年の登校拒否の場合) |
教師はこの項目の一つ一つを自分自身の問題としてもう一度考え直してみる必要がある。
1
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①試験の成績などの表面的なことだけで、内面を見ないで、教師の価値観だけによって子供を評価してしまうこと ②点数や受験本位の授業になり、学習の遅れている子供への救済策が不十分なこと ③いじめの存在に気付かなかったり、その対応が遅れていること ④一人一人の子供の個性を把握した学級づくりが遅れていること ⑤人間関係に片寄りのある子供を考慮した学級づくりが遅れていること ⑥子供の方から教師に相談しにくいこと ⑦教師の間で子供に対する言動が異なること ⑧子供の不安のサインを見逃していること ⑨厳しいだけの校則が押しつけられていること ⑩特定の子供を公然と批判してしまうこと ⑪子供の不信感をあおる行為をすること ⑫子供に対して一面的な見方や高圧的な指導をすること ⑬子供の希望を無視して中学で進路指導がなされること |
2
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①怠けと見なすこと ②子供の気持や状態を無視して無理に登校させようとすること ③子供の気持や状態を無視して家庭訪問をすること ④厳しい欠席日数の制限によって留年や退学に追いこむこと ⑤親が悪いとして親を非難すること ⑥家庭との連絡がなくなること ⑦教師を支える体制が校内になく教師自身の不安や落ち込みが強くなること ⑧教師の間で子供や親に対する指導が異なること |
1 |
①親の別居、離婚、死別 |
2 |
①親が内面を見ないで表面的なことだけで子供を評価してしまうこと ②親が試験の成績だけで子供を評価してしまうこと ③親がいつも兄弟や友達と比較して子供を評価してしまうこと ④親が子供に無関心であったり、身勝手な態度をとること ⑤父親が不在であったり、存在感がないこと ⑥母親が過保護、過干渉であること ⑦夫婦関係が険悪だったり、不安定なこと ⑧嫁姑関係が険悪なこと |
3 |
①怠けと見なすこと ②親自身の不安や落ち込みが強くなること ③子供の気持や状態を無視して無理に登校させようとすること ④子供の気持や状態を無視して相談機関や病院を連れ回すこと ⑤登校しないのならと病院や施設に入れること ⑥学校が悪いとして学校を非難すること、特に子供の前で ⑦学校との連絡がなくなること |
①価値観が多様化し、それに伴って親や教師の権威が失墜したこと ②技術革新と能率至上主義が叫ばれ、それに従えない人が脱落していること ③高学歴志向の競争社会となり、学歴のない者が蔑視されていること ④核家族化が進み、子育ての機能が低下していること ⑤学校や家庭を含めた地域社会の連携が希薄になっていること ⑥子供を知らない若い世代が子育てや教育に当たっていること ⑦人と接しない遊びが氾濫していること(テレビ、ビデオ、ファミコン、マンガ、プラモデル等) ⑧学校教育が画一化していること |
※ ここ数年の登校拒否の激増は、この社会的要因が深刻になっていることが強く関係していると思われる。実際の指導や治療の際には直接に関係してこないが、これへの対策を講ずることも重要である。この調査研究では、社会的な要因には触れず『学校として家庭として何ができるか』という視点から考えている。
前節のように登校拒否の背景や原因をとらえていくと、登校拒否の子供を指導・治療していく時の目標は、次の3点にしぼられます。
子供が学校を休むことの意味はさまざまであり、最初の頃は、子供自身も気持が不安定でその意味に殆ど気づいていません。子供の気持を十分に受入れるようにしてつきあっていくと、すなわち子供と余裕のある対等な人間関係ができるようになると、子供の方から休むことの意味が少しずつ語られるようになってきます。そのような中から子供は自分の内面の整理をしていきます。この過程に寄り添っていくことが指導・治療であり、それは子供のパーソナリティーの発達への援助とも言えます。
子供の内面の整理がなされていくと、子供は自分の意見や気持を進んで話すようになります。その中に、これからどうしたいのかという話も含まれてきます。登校拒否の子供は『学校にまた行きたい』という選択をすることが殆どです。しかし、1の過程がなされないままに、教師が性急に登校を前面に出して指導すれば、子供との信頼関係が築かれることは決してないでしょうし、子供は学校に目を向けるようにはならないでしょう。
子供が再登校という選択をした時には、教師は子供と相談しながら登校しやすい学校や教室をつくっていくことが大事です。さらに、登校できた後、子供が教師と持てたような人間関係を同級生とも持てるかどうか、同級生の中に入って自分の気持や意見を自然に言えるのか、という点は注意して見守っていかねばなりません。
高校生の場合には、社会に参加するという選択をすることもあります。その時にも、子供は援助を待っています。
子供が学校を休むことの意味の中には、子供を取り巻く家庭や学校への問題提起が含まれていることもあります。家庭や学校が変っていくことが大事なのは言うまでもありません。
登校拒否の場合には、担任の教師が一人で子供を抱えこんでしまうことが多いのですが、非行の場合と同様に学校全体として取り組んで行くことが大切です。また、担当の教師が自ら相談機関に出向いて、相談の場に参加することも欠かせません。
「登校拒否の背景や原因」で述べたように子供側の要因、家庭側の要因、学校側の要因、社会的な要因が複雑に絡み合って、登校拒否が生じている。これらの背景や原因のうち学校として、家庭として何ができるかを考えたい。
①子供を人格を備えた一人の人間として尊重し、共に歩もうとする姿勢に欠けてはいないか。
②子供の立場や気持ちを察するよりも、教師が自分の考えや立場を一方的に押しつけたり、決めつけたりしていないか。
③外から規制することばかり考えて、子供が自ら洞察し、変容するような援助を怠ってはいないか。
④教えることや覚えさせることに性急になり、子供自身が考え、解決する力を育てることに手ぬかりはないか。
⑤子供の言い分を聞こうとせずに、すぐに説教や叱責をするようなことはないか。
⑥子供のペースを考えずに追い立てたり、たたみかけたりして待とうとする姿勢が欠けていないか。
⑦子供の欠点ばかり指摘して子供の努力や工夫のあとを認め、励ます姿勢が欠けていないか。
⑧子供が抱えている問題について、子供の主体性を尊重しながら、ともに考え、ともに解決しようとする連帯意識に欠けてはいないか。
①開かれた学校体制づくり
秘密主義、密室での指導を排除する。
②校長、教頭の登校拒否に対する姿勢の確立
校長、教頭の姿勢が一校の指導の成否を決める。
③担任が一人で抱え込まないような協力体制づくり
学年、学校全体でのかかわりを大事にする。
④生徒指導における教師の力量向上への努力
教科研究のみに重点を置かない研修体制づくりをする。
⑤高校における単位認定の弾力的運用
登校拒否の子供が立ち直っても、欠席が1/3以上といった内規から単位不認定になるといったことが、立ち直りの障害になっている。
⑥登校拒否の子供の高校入試に対して、温かい配慮をする。
⑦家庭と学校との信頼関係、協力体制を確立し、指導に当たる。
⑧問題をもった子供を排除する学校の姿勢の意識改革
校長の中には登校拒否の子供をすぐ施設へ入所させようとする校長がいる。一番指導の大事な時期に親から離してしまうことは問題である。
⑨アット・ホームな学校づくり
登校拒否の傾向をもった子供に学校内で安心できる場所をつくるために、空き教室や図書館等を利用する配慮が必要である。この場合出席時数に数えることも検討したい。
⑩PTA運営の工夫
成績のよい子供、問題を持たない子供の親だけが発言できるような雰囲気でなく、問題のある子供の親が意見を述べることができ、問題を持った親同士で本音で話し合えるような 雰囲気をつくる。
自校のPTAだけでなく、他校のPTAとの連携、更に地域の子育ての活動にまで広げる努力が必要である。
⑪成就感、達成感、存在感、子供たち相互の連帯感を体験させる場の配慮
⑫部活動、クラブ活動への参加を高める努力
⑬子供の希望を生かした進路指導
⑭関係諸機関との連携
ケースによっては、学校と家庭がよく話し合い、関係機関の指導や援助を受ける。この場合面接等に子供を連れて行く時は、本人の了解を得ることや、全てをその機関に任せてしまうことのないようにすることが大切である。
⑮登校拒否を怠けとみたり、無理に登校を促すことはしない。また家庭訪問も子供に負担になる場合もあるので、十分な配慮をする。
①成長段階に応じた課題や、人間としての基本的生活習慣を身につけさせ、過保護、過干渉、放任でない家庭になっているか。
②会話のある温かい家庭になっているか。
③夫婦姑間で子育ての共通理解をし、一貫性のある子供への対応指導がなされているか。
④父親の厳しさ、母親の優しさの調和のとれた家庭になっているか。
⑤学習成績を第一に考えるような子供への接し方をしていないか。
⑥親の価値観を押し付けず、子供の自主性や自立性を育てるようにしているか
⑦家庭の中で仕事を分担し、責任を持たせてやらせているか。
⑧友達と泥まみれになるなど、戸外で遊ぶようにさせているか。
⑨家族全員揃って1日1回は食事をしているか。
①家庭の中に豊かな人間関係を築く。
ア、親として家庭教育の基本方針を持つ。
イ、親の生き方、考え方を子供に語る。
ウ、子供の考え、主張、希望等をじっくり聴き、共に考える。
エ、子供と本音で付き合う。
②家庭と学校が緊密な連携をとる。
ア、学校と協力して子供を指導する。
イ、教師とは本音で語り合う。
③登校拒否の子供を持つ家庭の具体的な対応
ア、まず家庭の中で、子供が何で苦しんでいるのか理解しようとする熱意が大切である。
イ、学校を休んでいるからといって、家庭の中を暗くしないようにすることが大切である。(困った顔だけでも子供を追込むことになる)
ウ、学校とか勉強より、子供が今したいというものを満足するまでやらせる。(テレビをみる、パソコン・ファミコンをやる、部屋に籠もる、スナック菓子を食べる等)
エ、必要があれば、アルバイト等も快く認めてやり、続かなくても決してなじらない。
「3日も出来た」と理解し、次の挑戦まで焦らずに待つことが大切である。
オ、子供が今困っている事を解決して、学校へ行けそうな状態になったとしても、学校へ行く行かないは本人が決めるようにする。
カ、父親、母親が相談機関等を利用して子供の苦しみに理解を深める。(子供を無理やり連れて行くことはしない)
キ、本人が希望しないのに、登校拒否の治療のために施設に入所させるようなことはしない。
登校拒否に対する指導方法は10人10ケースと言われるように多岐にわたる。特に、初期における対応、指導がきわめて重要である。指導に当たっては、先に示したⅠの2「登校拒否の背景や原因」をもとに、個々の事例を考察、分析し、併せて以下の手引によって登校拒否に対する理解を深め、指導の在り方を確立していく必要がある。
なお、この〈手引〉は、昭和62年8月10日刊行の指導資料No.37「学校へ来られない児童生徒への援助」の部分再録である。
Q 登校拒否の子供には「学校に関することに触れない」ように言われましたが、登校拒否になるとどのような状況になるのでしょうか。 |
登校拒否とは「心理的な理由によって学校を欠席するもののうち、登校刺激に対して特異なすくみ反応を呈するもの」と言われています。(愛知教育大学、梅垣弘氏)欠席の理由が客観的には不明確なことが多く、欠席の初期には、自宅にこもり、少なくとも授業時間帯のなかの外出はほとんどみられません。また、「学校へ行かないの」などの登校刺激に対して、特異なすくみ反応を示します。すくみ反応というのは、親や周囲の人が学校のことに触れると、途端に、怒ったり、緊張したり、自室に閉じこもったり、心身の不調を訴えるなど情緒的反応を引き起こすことや、登校時刻をピークに泣きわめいたり、落ち着かなかったりしていたが、午後から夜にかけては落ち着き、元気な状態に戻るなどの姿のことをまとめて表現したものです。
(表1)
広義の登校拒否 |
狭義 |
(1) 神経症登校拒否 ① 分離不安定・・・・・・・・親と子が離れることへの相互不安が原因のもの ② 優等生の息切れ型・・・・・・・・良い子が急速に不登校を起こす場合 ③ 甘やかされ型・・・・・・・・わがままで断続的欠席から次第に長欠するもの |
(2) 精神病またはその前兆のもの |
上記のうち、登校拒否(表中(1)の①②③)と怠学(表中(5)の①②)の違いは次のようにまとめることができる。
(表2)
登校拒否 |
項目 |
怠学 |
①非合理で客観性に欠ける。 |
欠席理由 |
①客観的に明らかな場合が多い。 |
②すくみ反応が顕著である。 |
登校刺激への反応 |
②すくみ反応はほとんど見られない。 |
③自宅にこもり、外出はほとんどない。 |
生活態度 |
③自宅にいるとは限らず、外出は多い ・家から金品を持ち出す。 ・酒・たばこ・シンナー等を経験している。 ・熱中して何かをするということがない。 ・何事も自分から進んでやらない。 |
④ほとんど見られない。 |
交友関係 |
④仲間との交流は盛んである。 |
⑤学校への不安・恐怖感を示す。 |
学校に対する態度 |
⑤学校への嫌悪感を示す。 |
⑧休んでいることを親は知っている。 |
親の態度 |
⑧休んでいることを親は知らない場合が多い。 |
(注)○の番号で示したものは、各項目を代表する傾向であることを示す。
登校拒否には、さまざまな姿や進行の程度がありますから、その子が今、どの程度のところにいるかを見定めて、適切な援助をしていく必要があります。次に登校拒否に陥ってから立ち直りに至るまでの典型的な例を5つの時期に別けて、その主な姿に触れてみます。
(表3)
時期 |
子どもの生活の様子 | ||
病状の悪化 |
1 |
心身の不調を訴える時期 (心身症の時期) |
主として身体の苦痛を訴える。 |
2 |
攻撃的な行動をとる時期 |
さまざまな攻撃行動をする。(家庭内暴力に発展する) ①身体的攻撃―特に母親への直接的な暴力行為が多い。 ②器物破損―窓ガラス、食器、唐紙、壁板などを壊す。 ③言語的暴力―親への無理、難題を言う。 「おれが学校へ行けなくなったのはおまえ(母親)のせいだ」 「50万円のステレオを買ってよこせ」 |
|
3 |
無気力な生活に陥る時期 |
自宅に引きこもって家族とも口をきかず、孤立した状態に陥る。 |
この間はかなり長期にわたることが普通です。
病状の回復 |
4 |
日常生活の立て直しを始める時期 (登校準備の時期) |
日常の生活習慣が、次第にきちんとできるようになる。 |
5 |
自立への歩みをみせる時期 |
日常生活がさらに整い、外部との交渉が始まる。 |
Q 学校では、登校拒否の子供にどのような指導や援助をしていったらいいか教えてください。 |
登校拒否に陥った子どもたちへの指導、援助は「登校拒否した子ども自身が、自主性と自立性を獲得し、自分の問題としてこれに取り組む姿勢を作る」ことを基本に据えて進めて行く必要があります。
一般的に学級担任を中心にした指導、援助の手順は次のように考えられます。
①欠席状況
②欠席して家庭にいるときの生活状況
③性格傾向、生育歴、登校拒否の前歴、学業成績など
④家族構成と家庭状況
⑤校内での生活状況・友人関係
以上のような内容について学年会や係会等で検討し、1、表3のどの時期に当てはまるか、2、表1のどのタイプに入るか、などをはっきりさせます。
①至急に解決すべき問題とその対策
②継続的に本人との相談に応じていく者(原則としては学級担任、または本人の最も信頼している教職員)
③家庭と接触し相談をしていく者(原則として生徒指導主任、学年主任等)の決定
④チームとして、組織的にどう対処していくかの検討メンバー(最大4~5人)役割分担の決定
学級担任一人に背負い込ませないために、是非チームを作る必要がありますが、その際、養護教諭の参加はもちろん、本人が最も深く信頼している教職員の参加も忘れないことが大切です。
こうして、組織的に援助を行う場合、中心になって働く人を選び出し、その指示にしたがって有機的に動けるようにします。
本人と面接する教職員が、本人との間の信頼関係作りに努めます。そのためには、本人に対する先入観で評価をせずに、心から「今、ここで」の気持ちで素直にかかわる態度が必要です。
そして
①登校刺激を取り除いて(学校へ行けと言うことや、授業、友達など学校に関する総ての事柄に触れないようにし、ひたすら本人の話を聞くこと)、本人の心身の安定を図ること、に専念します。
②本人自身の訴えること(身体の調子が悪いこと、家庭や学校への不満など)をよく聴き、相手の気持ちを受け入れていきます。ただし、本人が会いたがらないときは決して無理をしないこと、担当者が来たことも母親の判断で伝えなくても構いません。
会う時間は、放課後や休日が、抵抗が少ないようです。
登校拒否をしている子どもに家族がどう接するかが、回復を早めるか長引かせるのか大きなカギになります。その意味で、本人との接触と並んで大切なのが、その家族に対する援助です。登校拒否の子どもをかかえた家族の混乱や不安、不満などが和らげられるような面接をすることが重要です。次のようなことを徐々に理解してもらうといいでしょう。
①登校拒否が、自立のときの心のつまずきであること。
②登校刺激を与えないこと。
③登校できるようになるまで長時間かかるので、決してあせらぬこと。
④生活の乱れが現れても、親が片付けたりしないで、本人の責任に任せること。
⑤本人の苦しい心中をくみ取るような受容的な態度で接し、できたら母親と子どもの言葉(会話)をノートに記憶していくこと。それを担当者に見せ、母親の子どもに接する態度が受容的かどうか検討しあうこと。
⑥家族みんなが本人を暖かく見守っていくこと。特に両親の協力が大切であること。
本人の顕著な動きがあったり、互いに伝えておいたほうがいい情報があったり、指導に行き詰まったときなど、少なくとも1週間に1度はチームの会を開いて具体的に検討して行きます。そうすることで、より明確な方針のもとに対応出来るようになります。
ケースによっては、教育センターや児童相談所、精神衛生センター、専門医(精神科)、保健所などへ連絡して指導や援助を受けることが大切です。
こうした場合注意しなくてはならないのは、
・学校と家庭がよく話し合って、必ず本人の了解を得たうえで面接等に出向くこと。
・すべてをその機関に任せてしまわず、学校の担任者はこれまでどおり本人や家族と接触していくこと。
・保護者は他の機関に相談をもちかけることに、ためらいや迷いを感じるのが普通なので、その気持ちを受け入れながら、どういう機関なのかていねいに説明すること。
いずれにしても、不断の援助を続けることが、本人の早期の学校復帰のために重要なことです。
長いこと休んでいた子どもたちは、再登校したとき、次のような気持ちをもっていると思われます。
・家庭に気持ちが引かれていて落ち着かない。
・孤立感、不安感、罪悪感をもっている。
・学業の遅れを気にしている。
・教師の暖かい態度を期待している。
従って、教師は、対人関係、学業、将来の進路、クラブ(部)活動等への、きめの細かい配慮が要求されます。時には、登校しても教室に入れない子どももみられます。そんときは決して無理をしないで、その子の最も安心していられるような場所(保健室、図書館等)で、かかわりのもてる職員が対応するなどの配慮が大切です。
一般的に登校拒否は、“強い母性、弱い父性”という家庭関係の中で、成長のための一つのつまずき、として現れると理解されています。従って、まず、家庭で親子関係、家族関係が安定したものであるか(構成員一人一人が自らの立場にふさわしい在り方をし、働きをしているか)に注意を払う必要があります。
しかし、登校拒否になる直接の原因は学校生活にあることが多いわけですから、学校でこそ原因を取り除く努力をすることが大切です。具体的には、
①教師対子ども、子ども対子どもの人間関係が相互の信頼で結ばれ、あたたかい学級集団になっているか。
②子どもたちが、自らの精神的な問題に気付き、それを解決するような教師の日常的な指導や助言が行われているか。
③授業が分かって楽しく、クラブや部活動で充実感を味わっているか。
④学校行事が魅力的なものになっているか。
⑤日ごろの生活の中で登校拒否や怠学傾向に陥りやすい子どもの姿がとらえられるように、教師自身が研修を重ね、自分の力量を高める努力を続けること。
≪登校拒否早期発見のチェックポイント≫1 かぜ、腹痛、頭痛などを理由にした欠席が多くなってきた。 |
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