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更新日:2016年12月1日
小学校・中学校・高等学校のどの学校においても、児童生徒の様子は多様になり、「子どもたちの気持ちがつかめない」、「何を考えているかわからない」、「集団づくりが難しい」という教師の声を聞きます
まずは、子どもたちとのコミュニケーションを大事にし、教師と児童生徒の心が「響きあう」ような信頼関係を作っていくことが大切です。困難な状況に置いてこそ、「基本に戻って」子どもたちと向かい合う教師のあり方を見つめ直したいものです。
次の「“やってみよう”リスト」は、子どもたちの実態を把握したり、コミュニケーションを深めたりするためのきっかけとなるかもしれません。気持ちを新たに、初めてみてはどうでしょうか。
平成12年12月27日 長野県教育委員会
明るいあいさつは生活の基本であり、お互いのやる気を生みます。あいさつの声や表情、態度で子どもたちの様子がわかります。
注意事項の連絡だけでなく、子どもたちの楽しみやニュースなどを共感しながら聞きましょう。子どもたちは、張り切つて一日のスタートがきれます。
朝、出欠席を確認し一人一人ていねいに健康観察をすることで、子どもたちの様子や気持ちが見えてきます。ふだんと違う表情や、態度など気になる子どもへの声がけをしましょう。
ほめられることで子どもは伸びます。子ども同士を比較したほめ方でなく、その子の応援団という気持ちで存在を認めましょう。
朝、休み時間、放課後はできるだけ子どもたちと会話をしましょう。身体を使う遊びや活動で一緒に楽しんだり、汗を流したりすることで心の距離が縮まります。
ていねいに教え、子どもから学ぶ姿勢で接しましょう。早退者や欠席者の授業の遅れに配慮し、つまずいている子どもにはその気持ちによりそいましょう。
子どもたちの話は、表情豊かに、うなずきながらしつかり聴きましょう。表情や行動からも心の声が聞こえます。信頼関係を築く鍵です。
教師は多数の子どもたちに対していても、子どもにとつては自分一人の先生です。教師の反応を注意深く、また、期待を込めて待つています。どの子にも温かい言葉がけをしましょう。
一緒に食事をすることは、自然に欲求の満足を共有でき、互いに心を開いて交流できる場面です。グループを巡回して、みんなと食事をしましょう。
ひとりひとりの役割がはつきりしていると、責任を持ってよく取り組みます。働くことの喜びや価値を見出せるように評価をしましょう。
子どもたちと、その日を振り返り、輝いた自分と輝いていた友人を発表し合いましょう。日々成長していることを評価することで、子どもの意欲が湧いてきます。
子どもたちが帰った教室を観察すると、指導のヒントを見つけることができます。下足箱も点検してみましょう。汚れていたら掃除をしておきましょう。
あいさつのことばを絵入りではっておくと、忘れていた子も元気よく「おはよう」と言って、
教室に入ってくることでしょう。
カードにうれしかったこと、「いいなぁ」と思えることを書いて出してもらう。
全員が受け取れるように、1枚は必ず隣の人のことを書くようにします。もちろん担任もね。
手作りのマイクと枠だけのテレビを用意し、朝の会でいろいろな出来事を発表します。
その気になって上手に発表してくれますよ。
自分や友達のよいところ、してもらってうれしかったことを、紙の葉っぱに書きます。
大きな木になったら、仲良しさん。
本の読み聞かせや朗読をさせると、子どもたちの集中力が高まり、気持ちを安定させることができます。
行事予定表を教室に掲示し、行事が終わるごとに思い出を俳句にしてはっていきます。
写真を加えても効果的
A子は身体は小さいし、弱かったので学校へ通いきれるか心配していました。
先日、発熱で学校を休んだときに「B先生とC先生にも私がお休みするのを伝えてくれた?」と聞きます。
「連絡は担任の先生でいいんだよ。」と言うと、
「だめだよ。B先生もC先生も毎朝、玄関で『おはよう』と言って、私が学校へ来るのを待っていてくれるの。
きっと心配しているよ。もう一度電話してきて。」と言います。
それを聞いて、私はこの子がこれまでがんばってこれたわけがわかりました。
先生方は毎朝、どの子どもにも「おはよう」を迎えてくださっていたのですね。
先生方が自分を毎日待っていてくれることが、A子の励みになっていたのですね。(母からの手紙)
子どもたちの誕生日を給食の時間に祝います。特別な用意はいりません。
牛乳で「乾杯!」と全員でお祝いしてあげるのです。時間があればカードなどを用意してもよいでしょう。
[給食の一場面]
「おはよう!」と声をかけてもさっと、うつむきながらすり抜けていくD君。
家庭事情で転入してきたばかりの生徒で、毎朝声をかけてもなかなか返事をしないし、表情も暗いのです。
ある日、D君のいる班に入って給食を食べた時のことです。
横の席のD君に「今日の給食おいしいね。」と声をかけると、
「今日はお腹が空いているんだ。」と素直に答えが返ってきます。
つづいて「そんなに空いているの。」と聞くと「うん、今日はね、朝ご飯食べてこなかったの。」
その言葉に、いつも朝、声をかけてもさっと行ってしまうD君の姿が重なりました。
2年生の6月頃から、大人しい性格のE君は具合が悪いといって週に2、3回休むようになりましたが、理由がよくわからないまま時間が過ぎていきました。
英語の先生から「E君、最近英語をよく休みますね。宿題も提出してないし、今回のテストも悪かったしどうしたんでしょう。」という話があり、担任が、E君の休んでいた日の時間割を調べると英語の授業が多いことに気がつきました。
E君の話をいろいろ聞いてみると、「英語は勉強してもわからないからおもしろくない。もうやりたくない。」とうち明けました。そのことが、生活全般に無気力状態をつくり欠席の引き金になっていたのです。
担任は、毎日声をかけることを目標にし、学習の仕方をアドバイスしたり、時には厳しくしかったりしてきましたが改善しないまま夏休みに入ってしまいました。
そこで担任は、夏休みにE君と、同じように英語を苦手としている数人を学校に呼び、英語の学習を1年の初めからやり直しました。E君をはじめ勉強会に参加した生徒達は、2時間程度の学習に、毎回一所懸命に取り組み、帰り際には満足げな笑顔で帰って行きました。
E君が、このまま休み明けも登校してくれるように、期待と不安を抱きながら指導を続けました。
しかし、夏休み明けの1日目は風邪で欠席。2日目も同じ。3日目もやはり母親から欠席の連絡がありました。
3日連続で休んだら家まで迎えにいこうと決めていた担任は、その考えのとおり家に行き、2階にあるE君の部屋まで上がって行きました。突然の出来事にE君は慌てたのか物陰に隠れてしまいました。担任もE君の予想外の行動に戸惑いながらも、その場に出てくるのを静かに待ちました。待つこと1時間。出てきたE君を強く抱きしめて、「E君がいないとこのクラスは寂しいよ。」と一言いいました。
「うん」とうなずくE君を、担任は学校へ連れて行くことができました。E君は翌日から1日の欠席もなく登校するようになり、時には「先生、また教えてや。」とにこにこしながら話しかけてくる元気な姿を取り戻しました。
今、子どもたちは、自分に寄り添い共に歩みながらも、厳しく自分の生き方を示してくれる教師の存在を求めています。
「困っている時、『どうした?』と声をかけ、悩んでいる時に話を聞き、良いことをしたらほめ、悪いことをしたらしかる」そんな教師を求めているのです。
教師が心のゆとりを持ち、じっくりと子どもたちに向かい合い、できるだけ一緒に活動するよう心がけましょう。子どもたちと感動を分かち合うことができれば、信頼関係は自然にできていくはずです。
互いの心が「ひびきあう」とき、学校は教師にとっても子どもたちにとっても、かけがえのない場所になっていくことでしょう。
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