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更新日:2017年4月1日
学校が、教師と児童生徒が人間愛で結ばれ、どの子にとっても自己存在感を実感でき、安心できる「心の居場所」としての役割を果たすことを願っています。
増えつづける児童生徒の登校拒否(不登校)に対し、中間教室での具体的な対応事例を紹介するとともに、登校拒否児童生徒に効果のあったと思われる態様別の主な指導例を巻末に載せました。有効な活用をいただきたく思います。
平成6年8月31日 長野県教育委員会 生徒指導幹
文部省は「学校基本調査」のなかで、「理由別長期欠席者数」を調査している。
これは、3月31日現在、在籍する学校において、その年度に、連続又は断続して30日以上欠席した(指導要録の「出欠の記録」欄のうち、「備考」欄に校長が出席扱いとした日数が記載されている場合は、その日数も欠席日数として含める)児童生徒数、及び再掲として50日以上欠席した児童生徒数を、理由別に調査したものである。
欠席理由は、次のなかから主なものを一つ選ぶようになっている。
「病気」本人の心身の故障等(けがを含む)
「経済的理由」家計が苦しく教育費がだせないとか、児童生徒が働いて家計を助けなければならない等
「学校ぎらい」心理的な理由などから登校をきらっている
「その他」上記に該当しない理由
このなかの「学校ぎらい」の人数を、文部省では登校拒否児童生徒数としている。
長野県の5年度までの状況は、次のようになっている。
年度 |
平成元年 |
2 |
3 |
4 |
5 |
|
小学生 |
人数 |
148(0.09) |
187(0.12) |
359(0.23) |
459(0.30) |
455(0.30%) |
全国 |
(0.07) |
(0.09) |
(0.14) |
(0.15) |
(0.17) |
|
中学生 |
人数 |
541(0.56) |
675(0.72) |
1,028(1.12) |
1,115(1.25) |
1,079(1.25%) |
全国 |
(0.71) |
(0.75) |
(1.04) |
(1.16) |
(1.24) |
|
高校生 |
人数 |
360(0.43) |
394(0.47) |
642(0.78) |
407(0.51) |
397(0.52%) |
(上段は30日以上、下段は50日以上の欠席者)
文部省初等中等教育局中学校課生徒指導官 永山賀久 氏が、平成6年度適応指導教室連絡会議で話された内容から
平成4年3月の学校不適応対策調査研究協力者会議報告にあるように、従来の「登校拒否は、特別な要因が子どもや家族、家庭にあるのではないか」という考え方から、「登校拒否は、どの子にも起こりうるもの」との考え方に転換した。
6月下旬 |
6畳の真ん中に、ただ一人でうつむいて座っている。「体の具合が悪いのか。」と声をかけたが「別に。」と一言答えるだけだった。 |
8月 |
通室生がそろって、茶話会をしたとき、次のような会話があった。 B男:先生、おれ昨日眠かったんだ。夜3時間ぐらいしか寝てねえもんで。夜と昼、逆転しているんだ。おれ、今日も眠くて。 |
9月 |
欠席が続いたので、朝、電話をすると、母親が「寝ていて起きない。」と言った。昼間に訪ねてチャイムを鳴らしても、誰も出てこなかった。 |
10月 |
朝、B男の家に立ち寄ると、母親が「B男はこの頃教室へ行っているでしょうか。」と心配そうにたずねた。 母親は、勤めに出ていて、留守の間のB男の行動を知らないでいる。また、家庭内暴力に近い状態になっていたB男に、母親は聞けないでいた。 野外学習を計画したところ、B男も参加した。しかし、B男は眠そうで、一人で行動をしていた。昼食後、フリスビーで遊ぶ仲間に加わった。 翌日から、また、欠席が続いたので、通室生のC男が電話で呼び出すと、昼食時に来室した。午後、ポーカーやバドミントンなどで明るく過ごした。 しかし、その後も欠席が続く。 |
11月 |
ファミコンが教室に入ったので、電話で誘うと、翌日の朝から「先生、お早うございます。」と来室した。来室すると、男子とファミコンやバドミントンをする。昼食は持ってこずに、メンタルフレンドの作ってくれた味噌汁をおいしそうに飲んでいた。午後はワープロで住所の打ち方を教わり、また、バドミントンやポーカーを楽しんでいた。 |
12月 |
ワープロに取りつき、説明書と首っ引きで、妹の氏名、住所、電話番号、罫線、飾りを入れて、妹用のメモ用紙を10枚作った。部屋はB男の体臭でむんむんする。長いこと風呂に入っていないようである。 以後ほとんど休まずに来室して、ワープロに向かい、ときには夕刻まで取り組んだ。 |
12月9日 |
B男が「先生、冬休みも来ていい。」と突然言いだした。「どうして。」と聞くと、「おれ、勉強しなきゃ。」と言うので、「勉強か、喜んでお付き合いするよ。」と励ました。 その日の夕刻、担任へ電話をすると、担任が家庭訪問をしたことが分かった。その折のB男の様子を聞くと、ごく自然に対話ができた、とのことであった。B男と担任との関係は、以前から比較的よかった模様である。 |
12月14日 |
ボサボサの髪を切ってくる。E男が「床屋へ行ってきたのか。」と聞くと、「かあちゃんに切られちゃった。」と言う。母親との関係が正常になってきていることがうかがえた。 |
12月20日 |
数学の学習を始める。帰宅時刻になって「先生、もう少しワープロやっていい。お母さんに頼まれた年賀状30枚作っていきたいんだが。」と言う。そして、夕刻「先生ありがとうございました。」と言って、帰っていった。 |
12月22日 |
8時40分来室し「早く目が覚めちゃって。」と言う。「昼夜逆転状態はなくなったの。」と聞くと「なくなった。」と答え、すぐに数学の勉強に取り組む。家庭でも落ち着いた生活になったようで、風呂にも入り、体臭も感じられない。 |
12月24日 |
9時に来室し「進路は、昼間働いて夜T校の定時制へ。」と言う。 |
1月18日 |
D男の「昨日学校へ行ってきたよ。」(前日は臨時休室であった)の言葉に、「おれも行こうかと思った。」と言う。そこで、「寒中休み明けから登校してみないか。余すところ30日そこそこだ。卒業式の練習もあるし。」と勧めてみた。 |
1月24日 |
担任が来室し、B男と二人で登校について話し合う。後で担任から様子を聞くと、「初めはいい返事をしていたが、帰りがけに『でもなあ』と言っていた。」とのことであった。 |
2月5日 |
寒中休み明け、2日間来室しなかったので、学校に問い合わせると、学校にも来ていないと言う。B男の家に電話をして「無理しなくていいんだよ。教室においでよ。」と誘うと、翌日から休まずに通室を続けた。 |
3月11日 |
「卒業式にかかわる行事もあるし、卒業式の練習もあるし、学校へ行かないか。」と勧めると、「え、いい、卒業式の日に行く。」と答えた。 |
3月18日 |
卒業式後、母親と一緒に笑顔で来室する。「久しぶりで学校へ行って緊張しただろう。」と声をかけると、「それがねえ、不思議と緊張しなかった。」とにこにこしていた。母親は「B男はそんなことを言っていますが、私は終始緊張のしとおしでした。」と語った。 |
3月22日 |
昼頃「先生、合格した。」と元気よくとびこんで来て、「先生、合格した者は1時までに登校しなきゃいけねえだ。」と報告し、自転車で学校へ向かった。 |
3月29日 |
「先生、校長先生の離任式に行ってきた。」と顔を出し、年度末休み中も、来室している子どもたちと遊んでいた。 その後、B男は元気に高校へ通っている。 現在、この中間教室に8人が通室している。その半数を占める地元の中学校では、校長、教頭、生徒指導主任、養護教諭が時おり来室し、子どもたちと話をしたり遊んだりしていく。担任の来られない月は、指導員が学校を訪問して、一か月間の子どもの様子を知らせている。 |
校長先生から電話で派遣申請があった後、日程の打合せを教頭先生と行った(巡回適応指導員の派遣申請は、電話で出来るように配慮されている。)
F高等学校の研修テーマは「登校拒否の現状と対策」であったので、
についての話をした。
続いて、事例研究が行われた。
友人関係のもつれから不登校になり、留年した2年の女子生徒が、4月以来元気に登校している。この子の回復まで、ただ待ったのではなく、保護者との綿密な連携のもとに、本人の活力が蓄積されてくるまで見守り続け、機をみての登校刺激が効を奏した事例であった。
3年の担任より電話相談があった。概略は、「学級のH男は、5月の連休明けより欠席が目立ちはじめ、最近全く登校していない。担任が再三勧めて、期末テストに出席する約束をしたが、欠席した。保護者の、『高校だけはぜひ卒業させたい。』との強い願いも本人に通じず、担任も大変苦慮している。友人関係のもつれがあるかもしれないが、本人の意思確認ができずに因っている。」とのことであった。
一緒に、学校で保護者と面談をしてもよいし、保護者や本人が望むならば、家庭訪問も可能であることを伝えた。
電話で派遣依頼があったので、学校へ出向き、担任と更に相談をした。すると、本人は卒業への意欲を喪失していること、単位認定基準の校内内規から、7月中句ごろまでに登校するようにならないと、来春の卒業が難しいこと、などが分かった。
さらに、担任が事前に保護者へ連絡してあったので、担任といっしょに家庭訪問をし、本人、両親、担任を交えての5人で相談した。H男の表情は、比較的明るかったが、「学校へは行きたくない。」の一点張りで、その理由については何も語らなかった。
そこで、両親と担任との間で、次のことを確認するように話をすすめ、家庭訪問を終えた。
1.中学校では、不登校生の増加への対策として、今年度から対策委員会を独立させている。その第2回目の委員会へ出てほしい旨、電話で派遣の依頼があった。
そこでは、登校拒否生徒を抱える担任全員が参加して研修会が行われ、登校拒否に対する共通理解を深めあった。
この対策委員会は、養護教諭を中心に、登校拒否生徒の状況を把握したうえで、全員に周知する体制をとっている。
具体的には次のようである。
登校拒否生徒は、一人一人の事情が異なり、対応策も様々であるので、委員会での検討に時間を要し、これといった結論が出ないことが多い。したがって、直接生徒と接する担任の悩みや、苦しみは大きい。
そこで、巡回指導員が一緒に考え、相談にのっている。7月までに、3回巡回相談に行くと、継続相談だけでなく、新たな相談も加えられていった。
相談をしながら、次のような例を話した。
終わりに、いずれの場合も、保護者との信頼関係の樹立が基本であることを話している。
平成6年度第1回登校拒否児童生徒の状況調査の中で、平成5年度登校拒否であったが、改善がみられた児童生徒への主な指導から
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