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更新日:2016年12月1日
平成10年3月10日 長野県教育委員会
本県では、文部省の事業委託を受けて、スクールカウンセラーの配置を、7年度は3校、8年度は10校、9年度は20校と、年々拡充して実施してきております。
この事業は、学校と外部の専門家との連携指導による、学校の相談機能の一層の充実を目指しています。社会環境や家族形態の変化などで、これまでには見られなかったような複雑な問題を抱えた子供が増加している状況を踏まえ、子供自身やその指導に悩む教師、保護者等に対して、子供の心理の専門家である臨床心理士や精神科医、大学の教官等が、カウンセリングや助言を行うものです。事業3年目になり、配置校では、カウンセラーと教師の連携は、それぞれの専門性を生かして、より密接なものになってきております。
この指導資料は、スクールカウンセラーによる生徒指導の実際面に関する提言、連携して取り組んだ事例等を特集しました。スクールカウンセラーの配置のない学校においても、本指導資料の提言や指導事例等を生かして、校内の役割分担や外部の専門家等との連携のあり方を工夫するなどして、自校の生徒指導の課題解決に努めていただければ幸いです。
小学校 |
中学校 |
高校 |
計 |
|
相談件数 |
993 |
1,786 |
379 |
3,078 |
相談人数 |
489 |
1,342 |
242 |
2,073 |
相談者 内容 |
児童生徒 |
教職員 |
父母等 |
計 |
不登校 |
651 |
273 |
508 |
1,432 |
友人関係 |
359 |
74 |
29 |
462 |
性格 |
93 |
103 |
32 |
228 |
教師・学校 |
111 |
70 |
31 |
212 |
しつけ・育児 |
49 |
6 |
118 |
173 |
学習・進路 |
87 |
23 |
21 |
131 |
いじめ |
48 |
43 |
12 |
103 |
〔傾向や特徴等〕
不登校の児童生徒への指導の第一目標は、児童生徒の心の健康を保つことにある。たとえ登校できなくても、その子らしく生き生きとすごせるよう、親身になって支えたい。
子供は、心の状態を言語で伝えられない面もあり、心の問題が身体の症状となって表現されることも多い。身体症状として現れるサインを見逃さずに対応したい。
低学年では、身体症状が半年以上続くこともある。高学年では身体症状を訴える期間が短く、暴力という形で訴えることもある。
学校では、生徒指導主事が抱えているケースを紹介され、面接を開始することが多い。そのようなケースを担当する場合は、生徒指導主事との連携の上で、お互いの役割分担を確認しながら、カウンセラーが、どの場面の、どの段階を、また、そこで何ができるか、などを明確にしながら仕事を進めていく必要がある。このような形態は、生徒指導主事とのコ・ワーク(共同作業)と言えるもので、コンサルテーションとは異なる。言わば横並びの関係で対象ケースに対する援助の一部を請け負いながら解決に向けて責任を果たしていくわけである。学校では、スクールカウンセラーが参入する前に、既に生徒指導係がその立場、役割を果たしていることが多いので、スクールカウンセラーが機能するためには、生徒指導主事とのコ・ワークが大切な条件になる。つまり学校では、スクールカウンセラーをこういった形態で位置づければ十分に活用することができるのである。
①時間的経過の中での関わり(一時期の請け負い)
いじめられた体験や学級内での友達関係のもつれなどから、学級内に居場所がなくなって欠席をしたり、学級にいても孤立して精神的に不安定だったりして不適応を示し始めた生徒に対して
②対象への役割の分担
① 「見立て」に基づいた助言
不登校生徒などの援助をしていく過程で、保護者面接などから知り得た家庭環境等の環境要因や、心理面接や心理テストなどで知り得た心理的要因などが、対象生徒に対する「見立て」と「手だて」を大きく変更させることがある。
不登校で指導が停滞していたケースに対してスクールカウンセラーが関わり、WISC-Rを実施したところ、総合でIQ74という結果であった。このように、知的能力がボーダーの場合は、洞察力や概念の操作、意志の伝達などの精神活動のさまざまな領域で不適応を起こしやすい傾向がある。
こういったケースでは、非指示的な対応はかえって不安や混乱を招きやすい。個別の安定した指示的かつ支持的な関わりが望ましいことを助言。指導が展開した。
② 学校外の諸機関等の活用と助言
学校だけでは対応に限界があり、より拡大した支援が必要になったときに、他機関を紹介したり、他機関との連携時に心理面のデータや指導の経過について専門的立場で情報交換したりする。また、それに基づいた助言やフォローを行う。
A子(3年女子)からの相談
数人で相談室に遊びにきていた女子の3人グループのなかのA子のポケベルに、ここ2~3週間、毎日いたずらメッセージが入る。いたずらは次第にエスカレートして、このごろは「死ね」とか「殺すぞ」というようなメッセージが入っている。親は自分がしっかりしていれば大丈夫、といっているが怖い。相談したことがバレるのも怖い。
A子の話す内容や状況から、いたずらの主はおそらく他クラスのB子ではないかという予想がついた。グループ内のC子はB子と同じクラスで、それなりに親しい。そのC子を、A子にとられてしまったように感じたB子がA子に対して、嫌がらせをしているようである。
最近は、B子とトイレですれ違っても「ぶっ殺すぞ」と言われるなど、嫌がらせも直接的になりつつある。
A子は、「チクったことがばれるとよけいひどい目に遭う。」と、eについては強く抵抗したが、「我々を信頼してほしい」と、時間をかけて説得した。その結果、「それがB子のためになるのなら」、ということでB子の担任にだけは話していいという了解を得た。
これまでの経過を教育相談係に報告。教育相談係が調整役になって〔B子の担任〕〔教育相談係〕〔スクールカウンセラー〕の3者で連携して対応することに決めた。(以下〔3者会〕という。)A子の担任には、経過報告をしながらさり気なく側面から見守る立場をとってもらうようにした。
① B子の状況
志望した進路に失敗。その前後に失恋。家庭でも居場所がない状況等が重なり、イライラしていた。……推察すると、これまでB子は、2度3度と夢や希望を失う体験を繰り返している(「対象喪失」)。反面A子はB子の失ったものを全て持っていてうらやましい存在。A子に攻撃を向けることにより、対象喪失から生ずる苦しみや怒り、失望といった感情を回避しているのではないか。
② 対応について
そのなかで・・・
定期的な3者会を持つ。担任とB子の面接状況とスクールカウンセラーとA子の面接状況とを情報交換しながら、必要に応じて対応の仕方を工夫していく。
記述してきたような援助体制で継続的に関わったところ、A子に対するいたずらメッセージはなくなった。
その後も同様なパターンで対応を続けた結果荒れていたB子も落ちつき、担任のアプローチに人懐こく応じ、すっかり明るくなって進路も決定することができた。
B子のいじめが消失して1か月ほど経って、A子に対する別の生徒のいじめが前回と同様のパターンで起きた。担任の観察や状況等から判断して、B子の友達のC子とD子ではないかと考えられたため、前回と同様の対応を基本にした。今回は、A子自身が、いじめに対する恐怖感を持っていなかったことから、A子の担任や友達にも積極的に援助を求めて対応した。
A子自身が、周囲に援助者がいることで安心したのか、いたずらを気にしなくなったのか、いじめの訴えはその後なく、スクールカウンセラーとの面談では、専ら進路についての期待や不安に関する話題が中心になった。担任の話では、家庭でも明るく母親と会話する姿が増えている、とのことである。
① いじめ発見とケアについて
② 担任・教育相談係・スクールカウンセラーの連携について
これは、第2回のスクールカウンセラー連絡会議においてスクールカウンセラーから出された、学校あるいは教師のあり方を指摘する意見です。この指摘のようなことは、どこの学校、どの教師にもありがちで、はっとさせられるものばかりです。初めて学校に継続的に入った外部の専門家であるスクールカウンセラーの意見は貴重です。真摯に受け止めて自分の足元を見てみたいと思います。
ひだまり
長野オリンピックが終わりました。選手の活躍が放映されるテレビの画面を見て、大人も子供も茶髪やピアスの若者も一斉に万歳をする姿に感動しました。心が見えないとか、踏むまで分からない地雷のようだ、などと言われている子供たちと、選手の活躍に思わず万歳する子供たちは果して違うのでしょうか。3月5日からは、パラリンピックが始まりました。一生懸命の美しさ、生き抜くことのすばらしさ、一人一人の命の尊さなど、感動と共に心に刻み込んでほしいものです。感動体験こそが、心を育てる原動力であると思うからです。
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