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更新日:2017年4月1日

指導資料No.52 児童生徒の心に寄り添う教育相談の進め方

 教師にとって、子どもがみえるということは、子どもの心の発達や心の働きがみえることであり、子どもの内面があたかも自分の内面のように、教師の心に感ぜられることである。
 それは、教師が感じとろうと努力しなければ分からないことです。
 子どもがみえる眼力と感性を養うことによって、一人一人の子どもの内面と深くかかわることができ、子どもの自己実現を援助することができるのだと思います。

平成5年2月20日 長野県教育委員会 生徒指導幹

目次

  1. 学校における教育相談
  2. 学校における教育相談の基礎
  3. 場面に応じた教育相談の進め方
  4. 「きき上手」な教師に
  5. 指導実践事例

児童生徒の心に寄り添う教育相談の進め方

 児童生徒が登校拒否や学習ぎらい等の学校不適応を起こしたり、盗み、乱暴などの反社会的行動に陥るのには、それぞれにさまぎまな原因があります。
 その原因の一つに、教師の子どもへのかかわり方があげられます。
 児童生徒は「自分は担任に嫌われている」と感じると、理由をつけては教師の言動を批判し、自己防衛に努めることがあります。これは、裏をかえせば、「教師に自分をわかってもらいたい」という心情の吐露でもあります。
 以下、教師が児童生徒のこのような心情に着目し、本人の心に寄り添う努力をしていくために、どのような姿勢や態度で臨むことが大切かを、個別による指導・援助が中心となる教育相談を通して考えてみます。

 学校における教育相談

 学校での教育相談は、一人一人の児童生徒の発達と、教育にかかわる諸問題をめぐって、本人及び保護者などに、必要な心理的・教育的援助を行うものです。本人及び保護者が、自分の課題をとらえ直し、主体的に解決できるよう、側面から援助することを基本としています。
 このように考えると、学校での教育相談は、一部の教師が行うものでなく、それぞれの教師が教育相談的な心構え(カウンセリング・マインド)をもって、児童生徒それぞれに対して、あらゆる教育実践の場で行うべきものであります。

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 学校における教育相談の基礎

 学校における教育相談を充実させるためには、教師児童生徒の信頼感に基づく、日頃の人間関係が欠かせません。
 そのためには、教師の日頃の心構えとして、次の点が大切になります。

  1. 目の前にいる児童生徒の心や気持ちを大切にする。
     「君の将来のためにならないよ」「他の生徒に迷惑をかけてるよ」「君のために他の先生の前で恥をかかされた」
     児童生徒は、どの言葉を、自分のために先生がしかってくれたと感ずるでしょうか。「君の将来のためにならないよ」のようにしかられた生徒は、自分のためにしかってくれたと感ずるのではないでしょうか。
     教師には、自分の気持ちより、まず、目の前にいる児童生徒の心や気持ちをくんで接する姿勢が求められます。このような姿勢が、互いの信頼感に満ちた人間関係づくりの基本になります。
  2. 児童生徒をあるがままに肯定的にみる。
     教師が児童生徒を理解する場合、成績が良いと性格まで良く見てしまいがちです。逆に問題行動を起こした児童生徒については、悪い印象をもち、とかく低い評価をしてしまいがちです。
     教師は、児童生徒のありのままの姿を的確に理解し、児童生徒の行動などを肯定的にみようとすることが大切です。
  3. 教師自らが心を開き、率直な態度で児童生徒に接する。
     教師と児童生徒の親密で信頼に満ちた人間関係とは、教師と児童生徒が互いに心を開いて、安心して語り合える関係です。
     そのためには、例えば、教師は、自分の生育歴、体験、エピソード等を語ったりすることも大切です。また、子どもの善い行動は率直に喜びを交えて認め、不適切な言動はしかるだけでなく、自分の悲しい気持ちを伝える等まず教師自身が心を開き、自己を率直に話すことが必要になります。
     そのような教師の態度から、児童生徒は、人の心を理解する大切さを知り、生きるための指針を得て、自らを語るようになってゆきます。
  4. 児童生徒一人一人に、積極的な関心とかかわりをもつ。
     児童生徒は、教師が自分に関心を持ってくれていると感ずれば、教師に近づいていき、また親近感をもちます。
     そのためにも、児童生徒と廊下ですれ違ったときに声をかける、児童生徒の話し合いの輪に加わる、遊びの中に参加するなど、具体的にしかも積極的に、どの子にも公平な態度で接することが大切になります。

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 場面に応じた教育相談の進め方

学級担任が行う教育相談

 学級担任は、学級の児童生徒に最も近い関係にあり、日常的な触れ合い・かかわり合いをもつ立場にあります。
 そうした学級担任が教育相談を行うときの主な利点や困難点は、次のようなことです。

  • 利点
    1. 日常の交流により親和関係と相互理解がかなり深められる。
    2. 日常的に触れ合う機会が多いので、相談の機会と場所を幅広く求められる。
    3. 相談活動を効果的に進められるよう、学級内の諸条件を整えやすい。
    4. 教育相談に生かせる様々な情報や資料が得やすい。
  • 困難点
    1. 担任は、学習指導と学級集団の活動を導く立場にあるので、教科などの学習や集団活動を苦手とする児童生徒の中には、ふだんの担任との関係によって、相談を避け、心を開けない子どもも出てくる。
    2. 担任のふだんの意識や言動と相談活動時の態度に矛盾があると、相談関係が悪くなる場合もある。
      また、教育相談を行うためには、次のことに留意する必要があります。
  • 留意点
    1. 教師は、児童生徒と上下の関係のみでかかわるのではなく、横並びの関係をもつように心がける。
    2. 児童生徒の現実を、こうあるべきという価値観にとらわれた見方をするより、現実を受け止めた上で、そこからの小さな前進も認める。
    3. 児童生徒の問題面だけでなく、好ましい面を積極的に理解しようとする。
    4. 日頃から、子どもを見る目を深め、係や養護教諭との連携のなかで問題を解決していく。

係が行う教育相談

 生徒指導(教育相談)係が、児童生徒に対して直接教育相談を行うときの主な留意点には、次のようなことがあります。

  1. 依頼された相談については、担任と連携して進める。
  2. 係は、担任や教科担任に比ベフリーな立場で相談を行なえるが、児童生徒との日頃の関係が薄い場合には、落ち着いた雰囲気で安心して話せる条件整備と、自分の内面が語れるような教師の働きかけが必要である。
  3. 児童生徒が教育相談を受けることをためらう原因(秘密保持への不安や心配等)の、解消に努める。
  4. 係からの働きかけで呼び出した場合でも、児童生徒自身の問題として、共に考える方向で進める。
  5. 担任より児童生徒との関わりが希薄なので、児童生徒が「相談しようかな」と思えるように、日頃から顔見知りになり、身近な存在となるように努める。

養護教諭が行う教育相談

 養護教諭は、教育相談をしやすい立場にあります。養護教諭が相談を行なう時の主な利点や困難点には、次のようなことがあります。

  • 利点
    1. 「児童生徒の心身の健康を守る」という職務がある。
    2. 養護教諭は保健室に常に在室している。
    3. 授業や学級活動に直接かかわらないので、児童生徒は、自由かつ率直に自己を表現しやすい。
  • 困難点
    1. 保健室を利用する児童生徒が多く、個々の相談に十分時間をかけて応じられない。
    2. 秘密保持と連絡調整をどう両立させるか。また、教育相談を行なうためには、次のことに留意する必要があります。
  • 留意点
    1. 教育活動全体の中で、養護教諭の役割と保健室の機能を明確化し、全教職員の共通理解を図っておく。
    2. 相談は、担任その他の教師に対する援助者としての役割を持って行なう。
  • 担任との連携で留意したい点
    • 情報提供は慎重に行う。
    • 児童生徒や保護者の担任に対する信頼を傷つけることのないよう、十分な配慮する。

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 「きき上手」な教師に

 教育相談は、まず児童生徒の話をよく聴くことから始まります。聴き方はなかなか難しいものですが、教師が勝手に解釈したり評価したりせず、ただひたすら聴くことです。
 上手に聴くと、児童生徒が、「私をわかってくれた」「ぼくのことを本気で考えてくれた」「私の気持ちを大事にしてくれた」と感ずるのです。
 このように、学校での教育相談は、それぞれの教師が、教育相談的心構え(カウンセリングマインド)をもって行なうことが何より大切になります。

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 指導実践事例

子どもの見方を変えて(小学校の指導事例)

1.いらだつ毎日

 A先生は、現在の6年生の学級を4年生から担任しています。学級経営が難しいクラスであることは、前担任から聞いて承知していました。落ち着きのない児童の指導は、当初から悩みの種で、学級全体が授業に集中できない状態が続いていました。
 特に、B君を中心とした数人のグループが、目立つ存在でした。A先生は、何とか授業に集中させようと、大声を張り上げることが日常的になってきました。しかし、苦労する割りには、目に見えた効果が表れないことへのいらだちや不安を感じながら、毎日を過ごしていました。そうした中で、4年生の後半には、担任の指導に対し、保護者から、暗に不満を示す電話があり、その都度状況を説明し、その場を収めていました。

2.保護者の不満

 5年生の1学期、B君の母親から教頭に電話が入り、クラス担任のA先生のことで相談したいとのこと。
 翌日、教頭に会いに来校したのは、B君の母親だけでなく、クラスのPTA役員2名が一緒でした。相談はおよそ次のような内容でした。
 B君の母親は、「先日、孝が、クラスの女子に濡れたぞうきんを投げつけ、洋服を汚したとの理由で、先生に激しくしかられました。孝は自分がやったのではないと強く主張したのですが、先生は相手にしてくれなかったとのことです。泣きながら訴える孝の様子から、今回のことは孝を信じてあげたい。A先生とも電話で相談したが、全く聞き入れてくれません。教頭先生から話していただけないでしょうか。」と訴えました。そして他のPTA役員も、「昨年から、A先生の指導について、多くの保護者が不満を持っています。その一番の理由は、子どもたちをしかるだけで、子どもや親の話を充分聞いてくれない。最近の子どもたちの様子を見ていると、心配で仕方ありません。何とかしていただけないでしょうか。」と言いました。
 クラスの何人かの父母と相談して、お願いにきたとのことです。教頭は、よく調査をし善処することを約束しました。

3.A先生の反省

 教頭から連絡を受けたA先生は、保護者がこれ程不満を持っているとは思っていませんでした。しかし、クラス経営が必ずしもうまくいっていないことや、保護者からの不満の電話などを考え合わせると、今までの指導の在り方について反省せざるを得ませんでした。
 早速、B君の件について調査したところ、B君は直接かかわっていなかったことがわかり、母親とB君に心から謝罪しました。
 今までの学級経営、児童への接し方等について、次の点について反省しました。

  • 子どもの気持ちをわかろうとせず、児童の行為を、しかることで直そうとする傾向が強かったこと。
  • 保護者との意志疎通が、充分でなかったこと。
  • 児童と授業時間以外での触れ合いが少なかったこと。

そこで、今後の指導の方向を次のようにしました。

  • 児童の言うことによく耳を傾け、気持ちを大事にし、心の交流を更に深めたい。
  • 触れ合いの中で、良い点を認め、ほめることを大切にし、余裕とゆとりのある指導を目指したい。
  • 児童の毎日書く日記を大切に扱い、その内容を通して児童との会話を多くしたい。
  • 家庭との交流を深めるために、学級通信をこまめに発行していく。
4.児童と家庭と共に歩む
  1. 機会をとらえ、児童への言葉がけを多くすることに心掛けました。また、児童の言動で気になったときは、まずその言動の状況や背景を児童から聞き、できるかぎりしかることを避け、担任としての願いや感じたことを伝えるという姿勢に努めました。その結果、児童も、担任が話を聴いてくれることがわかり、児童の方から話しかけてくるようになってきました。
  2. 昼休みや放課後は、児童と共に過ごす時間を多くするように心掛けました。校庭でドッヂボールやサッカーをしたり、教室でも、児童の話や遊びに加わったりしました。担任は、これらの中で、それまで気づかなかった児童の姿や児童の友人関係などがわかり、新たに目が開かれてきました。
  3. 土曜日の放課後には、児童と野外に出て、水棲動物や昆虫、植物等の観察や採取などをしました。日頃から、動植物に関心のある男子児童のみならず、女子の児童も参加しました。動植物の知識が豊かな児童を先生にして、採り方や飼い方、さらに、その動植物のおもしろい性質や特徴を聞きました。教えあうなかで、友達同士のすばらしさを認めあうことができました。これは、担任にとっても、教室を離れた場で、自由に生き生きとふるまう児童の姿から、今までの自分の指導を反省し、方向を変えてきたことが良かったと、実感する時でもありました。
  4. B君を中心としたグループヘのかかわりも、なぜ彼らがグループをつくり、反抗的態度をとらざるを得なかったのかを考えながら、接しました。時には、子どもたちを自宅に招き、自分の子どもたちと一緒に遊ぶこともしました。こうした中で、担任は、このグループの児童の気持ちの中に、担任の思い込みや一方的決めつけで児童に接していたことへの反発があったことに気づきました。
  5. 学級通信が、父母や児童と担任との交流の場となるよう心掛けました。話題は、具体的な子どもの姿で伝え、共に考えることを目指しました。学級通信に載せた主な内容は、次のようでした。
    • 児童の作文、日記、詩、友達を大事にする児童の姿
    • 父母の意見、雑感、特に、学年末には、特設コーナーで父母全員の作品を掲載しました。

 小学校においては、個人的教育相談もさることながら、担任が、学級全体に対して、日頃から教育相談的態度で接していくことが、いかに大切であるかを、児童の変容から、体験的に学んだ事例です。

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 相談担当教師の取り組み(中学校の指導事例)

1.生徒の状況

 2年生のC男やD男を中心とした6人のグループが、夏休み以降、授業に出ずに校内を徘徊し、注意した教師に反抗するようになりました。日を追って、器物損壊をするようになり、事態は深刻になっていきました。学級担任を中心に様々な指導を試みましたが、改善されず、かえって保護者との関係も悪くなり、学年や生徒指導係の援助もゆきづまってしまいました。
 年度末、今までの指導を見直し、今後の指導のあり方を求めて、全職員で検討しました。
 その結果の一つとして、新年度から生徒指導係とは別に、相談担当の係を置くことになりました。相談担当の係は、生徒の相談相手になることに徹し、また、教師の生徒とのかかわり方について、助言をしていくことになりました。

2.相談担当教師の方針

 新年度になり、相談担当となったE先生は、担任や生徒指導係とは違った立場で、まず生徒と自由にものが言え、聞きあえる関係をつくろうと考えました。
 6人グループの様子は、2年生の時とあまり変わらず、荒れ狂ったときは、全職員で対応することもありました。そんなときも、E先生は、それとなく彼らに付かず離れずの位置を保ちながら、彼らがどんな思いで、何を訴えようとしているかを感じとることに努めました。

3.グループとのかかわりを求めて

 E先生が常に在室するようになった相談室に、グループの生徒が訪れるようになったのは、6月になってからのことです。
 ある日、グループが散らかした物を片づけていると、

  • C男 「てめえ、なにやってんだ」
  • 先生 「困りもんだ。こんなにちらかして」
  • C男 「俺たちにまた文句か」
  • 先生 「文句言うさ。だけど、今年この学校に来てさ、何していいか分からなかったが、これでおれの役目ができたなぁ」

 数日後、昇降口でたむろしている彼らに、「こんな所にいないで、俺の部屋にこないか」と声をかけました。
 次の日、彼らは相談室に来ました。

  • C男 「相談室って何するとこだ」
  • 先生 「おしゃべりしたり、困ったことがあれば相談したりするところさ」
  • C男 「センコウに相談に来る奴なんかいるか」
  • 先生 「いないな。暇だよ。勉強はできていいが、たまにはだれかと話したくなるよ」
  • C男 「タバコ吸わせてくれるなら、俺たち来てやってもいいぜ」
  • 先生 「タバコ吸いたいんだ」
  • C男 「吸ってもいいか」
  • 先生 「ここは禁煙室、君達には我慢室」
  • C男 「それじゃ来てもしょうがねえな。みんな帰ろうぜ」

 しかし、その後、彼らは時々相談室に来ては、彼らのペースで振る舞っていましたが、次第に担任や親への不満、将来への心配などを、自分たちの間で話すようになりました。
 このことは、E先生が、相談室を、生徒達が警戒感を解き、身構えずに自由に話ができる場にしようと努力した結果でもありました。

4.登校拒否気味の生徒との交流

 相談室には登校拒否気味の女子生徒が、時々訪れていました。しかし、C男達が来ると、保健室へ行ってしまいました。
 そんなある日、C男達と女子生徒が鉢合わせになってしまいました。C男達は、女子生徒が部星から逃げられないようにしながら、いろいろ話しかけたそうです。自分たちの担任の悪口をさんざん言った後で、「お前のとこの担任は話せそうだ。今から学級にでないと、先が長くて大変だぞ。保健のおばちゃんは話せるか。この部屋のセンコウはどうか。」などを話したとのことでした。
 このことがあってから、C男達の相談室へ来る回数が増え、また、保健室へ頻繁に出入りするようになりました。それにともなって、校舎内の徘徊がめっきり減りました。さらに、登校拒否気味の女子生徒も口数が多くなりました。C男達が来ても逃げ出さなくなる、級友の持ってきてくれる給食を待つようになる、などの変化がみられるようになってきました。
 E先生は、傍で見守りながら、この生徒たちの交流を大切にしていきました。

5.切実な願いと悩みを受け止めて

 夏休み直後、C男一人で相談室に来ました。ぽつり「俺を入れてくれる高校あるかなぁ」とつぶやきました。そこで、進路について1時間あまり話し合いました。E先生は、C男の進学したい気持ちに寄り添い、話の内容に一つ一つ丁寧に応じて、まだこれから努力すれば、希望がかなうことを話しました。
 次の日、C男は不得手としている数学を、E先生に教えてくれと言ってきました。E先生は、数学をC男と一緒に学ぶ姿勢をとり、C男のペースで学習を進めました。学習の合間に、C男からC男達のこと、仲間のこと、将来のことが語られることもあり、数学の学習を通して、また一段と信頼関係が深まっていきました。
 このことをきっかけにして、C男はかなり落ち着き、授業にも出るようになっていきました。
 C男の変化は、グループ内の他の生徒にも良い影響を及ぼし、次々と学級に戻っていきました。
 その後、F中では、学級担任を中心に、C男たち6人グループに対して、個別指導を含む進路決定に向けての援助を開始しました。

6.この事例から学んだこと

 つっぱり傾向を示す生徒がグループ化した時の対応は、思うにまかせず、苦労することが多い。
 この事例では、相談室担当のE先生を、生徒の相談相手であるという立場を明確にし、E先生もその立場に徹することで、つっぱりグループとの関係がついたのです。
 そして、ちょっとしたきっかけを生かし、彼らの気持ちや思いに焦点をあてた対応をすることで、信頼感が深まったのです。
 彼らの言動に振り回されずに、そうせざるを得ない彼らの心情に、焦点をあてたかかわりをすることの大切さが、示唆されました。

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 生徒相談室の指導を通して(高等学校の指導事例)

1.はじめに

 G校には、「生徒相談室」というカウンセリング室が開設され、生徒指導専門教員が常に在室しています。
 この相談室は、安定した学校生活が送れるように、生徒の悩みへの相談をすることを、主な目的としています。
 G校では、悩みや不安を抱いていても、解決への手立てを持てない生徒が急増している中で、この生徒相談室の果たす役割は重要になっています。
 ここでは、相談室で行なった相談事例の中から、H君の事例について述べます。

2.H君との相談過程
  1. H君のプロフィール
    • 普通科1年生
    • 長身、色白、顔にソバカス(本人の悩みの種)
    • 運動が苦手で、中学生のとき、保健の授業では見学が多かった。
    • 趣味・特技
      囲碁に対しては関心が強く、中学3年時には県大会個人戦で準優勝。
      本年は県大会高校個人戦で入賞。(自称3段)
  2. 家庭環境
     父、母、姉、妹2人、祖母の7人家族、
     共働き、父親は自分本位で、母親は口数が極めて少ない。
     両親共に、子どもの教育に対する関心は薄い。祖母は、たった一人の男の孫ということで、Hを幼少時より溺愛していた。
  3. H君との出会い
     H君は入学後の2週間目、体の不調をうったえて保健室に行ったが、養護教諭の指導から相談室に来ました。
     うったえは、「俺、もう学校が嫌だ。学校を辞めたい」ということでした。
     理由として、
     ・友達がいない。
     ・女子が俺に接して、「不潔、汚い」という。
     ・顔にソバカスがあるといって、からかわれる。
    などでした。
     話の中で、将棋が得意と言うことが分かり、将棋の話を交えながら、約2時間、H君の話しを聴きました。
     相談しながら感じたことは、
     ・思考が極めて自己中心的
     ・被害妄想的
     ・存在感を強く認識出来る場を求めている。
     などであった。当初は話を聴くだけにとどめました。
     学級担任には、この状況をただちに伝え、中学時代の姿や、高校入学後の様子等を聞きました。
     その後何回か相談に来たのち、次のことをH君と確認し合いました。
    • 毎週火曜日の放課後、定期面接を実施
    • 本人が不安定になった時は、授業中でも面接に応じる
  4. 担任や中学校等の連携のなかで
     中学時代の担任と連絡をとり、中学校での様子を尋ねたところ、日頃の言動から、クラス内では「嫌われ者」で、いじめの対象にもなっていたこと。中学後半では、担任の指導もあり、H君への理解が深まったため、取り立てて問題になることはなかったこと。また、H君から聞いたことの中て、同級生から乱暴を受けたことは事実だが、180日も休んだと言うことは全く嘘であることもわかりました。
     相談を進める一方で、H君の話をゆっくりと最後まで聞くことを家庭にお願いしました。
    さらに、H君のようすを職員会に報告し、相談や指導について、全職員の理解や協力をお願いしました。
     担任からも、保護者へ連絡を重ね、地区懇談会、各学期毎の三者懇談会等の面談には、相談の担当者も加わって、学校での様子や家庭状況、本人の悩みや願いなどについて、共通理解を深めました。
  5. 相談室以外でのかかわり
     その後、会ったときは、極力声をかけるようにしました。本人も定期的な相談以外でもたびたび相談室を訪れました。その時は、将棋をさしたりしながら「先生、俺、好きな人がいるが、話もできない」などの話ができるくらいに、担当者との信頼関係が深まってきました。
     その間、ささいなことからクラスでトラブルを起し、暴力行為に及んだこともありました。自分より弱い者には、強く出る傾向が見られましたが、その都度担任と連携をとり、協力して指導にあたってきました。
     ある土曜日の午後、3階の教室の窓から両足を出して遠くを眺めていたことがあり、目撃した先生が、刺激をしないように穏やかに「オーイ危ないから、そんなところに座っていないで中に入れよ」と言いながら、それとなく近づいたところ、「景色を眺めているんだよ。でも、落ちて死んでもかまわねえや」と言ったので、先生が静かに話しかけ、教室内に戻すという、肝を冷やすようなこともありました。
3.今後の指導

 相談室や校内で会った際には、積極的に話しかけて来て、自分の気持ちを吐露できるようになってきました。そこで、次の点に配慮した指導を進めていきたいと思っています。

  • 日頃のかかわりを多くして、本人の悩みや願いを見落とさないように、相談を進める。
  • 学級集団の中で、本人の居場所や存在感をもてるように、集団(クラス)の中で責任あるポジション(役員に)への立候補を、担任の協力のもとで本人に勧め、実現するように支援していく。
  • 担任を通して、家庭との連携を密にし、信頼関係をさらに強めていく。
4.この事例から示唆されたこと
  • 定期的な面接が実施でき、H君の心情がわかり、安定ヘと導けたこと。
  • 家庭や中学校との密接な連携により、生徒のようすを理解し、適切な指導ができたこと。
  • 全校職員で、共通理解のもとで指導にあたったことにより、同一歩調でH君にかかわれ、H君にとって、学校が安心できる場となりえたこと。
平成3年度電話教育相談の主な相談内容と相談対象者別相談件数
 

相談内容

相談対象者別相談件数

小学生

中学生

高校生

計(件)

計(%)

1

登校拒否

525

662

261

1,448

55.6

2

進路

5

114

90

209

8.0

3

学習

50

66

35

151

5.8

4

情緒障がい

37

61

11

109

4.2

5

教師

39

36

9

84

3.2

6

学校生活

28

27

25

80

3.1

7

いじめ

14

43

10

67

2.6

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お問い合わせ

所属課室:長野県教育委員会事務局心の支援課

長野県長野市大字南長野字幅下692-2

電話番号:026-235-7450

ファックス番号:026-235-7484

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