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更新日:2017年4月1日
学校が、どの子にとっても、充実感の持てる居場所となるためには、日々の学級活動を通しての確かな存在感や、学習の場での成就感を感得できるようにすることが大切です。学校での取り組みを紹介しながら、この問題を、共に考えていきたいと思います。
平成7年2月20日 長野県教育委員会 生徒指導幹
学校における児童生徒の人間形成や成長は、その大部分が学級を場とする生活の中で行われています。そして、それは、教科や道徳、特別活動等だけでなく、朝の教室での仲間関係、休憩時あるいは放課後の遊びや様々な活動等、極めて多様です。
ですから、生徒指導は、学校生活すべての中で行われる必要があり、学級経営と深い関連を持っています。
つまり、学級経営が、生徒指導の推進力の役割を果たしているだけでなく、同時に、生徒指導は、学級経営の重要な内容の一つであると考えられます。特に、教師と児童生徒や、児童生徒相互の間の関係を調整し改善するという、人間関係づくりは、学級経営の大切な具体的方法です。
どの子にも「居場所」を保障し、どの子も、「存在感」と「生きがい」をもって学校生活を送るため、学級経営に当たって、次のような点に留意することが望まれます。
5年生の後半には、授業中に騒ぎ立てる子や、教室から出て行く子が出始め、いじめがきっかけとなって、不登校も起きるようになった。
そこで、6年生に進級する時、児童の新しいものに向かう気持ちを大切にしながら、
を柱に、不登校気味のB子も含め、学級の中で、どの子も「居場所・生きがい」を見つけ、自信を持って力を発揮できるような学級づくりを考えた。
6年生になると、学校全体にかかわって、数多くの活動がある。その様々な活動を通して、個々の子どもたちが、やり遂げた満足感を味わうことで自信をつけ、自分や友達の良さを見つめ直すことも願い、活動を開始した。
今まで、授業中に集中できなかったこともあり、6年生の学習は、かなり抵抗がある様子であった。
まず、活動途中での感想や活動を終えての感想を、できるだけ子どもたちに書いてもらうことにした。内容は、自分が頑張ったことと、友達が頑張ったことの2点を必ず入れるようにし、それを紹介し合った。
最初のうちは、担任に仕方なく合わせた感じで、形式的であった拍手も、この取り組みを継続するなかで、「頑張ったね」と自然に沸き起こるようになってきた。
また、担任が見とったことをあわせ、学級だよりに載せ紹介した。友達や保護者だけでなく、校長、教頭、学年の先生方にも認められ、ほめられた子どもたちは、自分のやってきた活動を振り返るとともに、少しずつ自信を持ち始めた。
B子も、「5年生の時、私たちは頑張ろうという言葉を忘れていました。でも、6年生になって、頑張ろうという言葉を少しずつ思い出し、自分に言えるようになってきました」と、新しい課題に対して、前向きな姿勢で臨むようになった。
C中学校では、平成5年度より、学級集団づくり・人間関係づくりの時間を創設した。平成6年度は、学校裁量の時間を41時間充てている。
『学級づくりの時間』は、不登校生徒への個別の適応指導から、一歩踏み込んで、活動内容別グループを単位とした活動を仕組むことにより、集団としてのエネルギーを充填し、望ましい人間関係を育みたいという願いから設けられた。
活動内容は、担任の支援のもとに、一人一人が熱中でき、充実感を味わうことのできるものとなるよう、生徒の願いや興味、関心をもとに、自分たちで話し合い、決定している。
また、活動の中で、次々と新たな課題が生まれてくるが、それを、生徒と担任の創意と協力により達成していく、連続性と発展性のある活動でもある。
D男は、小学校時より、不登校傾向があり、中学でも、入学式翌日からその傾向が続いている。
学校から心が離れていく生徒をみていると、心の底では、学びたい、知識を得たい、という願いはありながらも、学校生活が、無意味で、どうでもよいものになってしまっている、と感じられることがよくある。それらの生徒たちは、学校生活が自分の生活の重要な部分から消えたり、離れていってしまう場合がほとんどである。
(参考資料)生徒意識調査結果の考察から
生徒が、学校や学校生活をどうとらえているか(平成5年度 2学年生を対象に実施)
学校へでる主な理由(動機づけ)
共通性
これらの対応策は、いろいろと考えられるが、基本的には、教師と家庭の、粘り強い連携姿勢に負うところが多い。
学校から心のはなれる生徒の日常生活は、非常に不安定で、欠席、遅刻、早退、中抜け(部分的に、時限単位で授業に出ないこと)を繰り返すのが特徴となっている。
そこで、毎日の、細かい、ひとつひとつの現象に目を向けて、その都度、担任を中心に個別面談をもつなどして、繰り返し指導を継続している。
また、これと並行して、家庭連絡を密にし、学校生活における当該生徒の実態を知らせるようにしている。それも、両親に知ってもらうことが大切であり、そうでないと、効果が期待できないばかりか、両親の間に認識の差異が生じ、誤解からトラブルが生じることもある。
担任や係による指導を重ねても、なかなか改善がみられない場合には、家庭訪問により、3者(本人、保護者、担任)あるいは4者(本人、両親、担任)面談を行い、粘り強く指導を続けている。
また、保護者に学校へ来てもらい、担任だけでなく、授業担当者あるいは教頭、係主任等からも、いろいろな角度から面接指導を行っている。そして、このような機会を通して、保護者に、学校の指導方針について、理解してもらうよう努力している。
保護者の理解・協力が得られないと、いくら労力、努力を重ねても、効果や改善は望めない。
年度 |
2 |
3 |
4 |
5 |
長期欠席者数(年間30日以上) |
23人 |
20人 |
25人 |
26人 |
欠席・欠課指導のために学校が行った保護者同伴面接指導 |
47回 |
60回 |
69回 |
55回 |
学校に対する興味関心を高め、学校へ目を向けさせるために、日常的に行われる直接的な生徒指導に加え、理解しやすく取り組みやすい授業、生徒の個性や実態に即した授業を工夫し、提供するということを基本にしなければならない。
努力して得た成就感や、分かる、出来る喜びを持つことのできる授業をつみ重ねることにより、学校に対する興味関心を高め、怠学、無関心、無気力傾向に、一定の歯止めをかけることが可能になっている。
学年 |
教科 |
内容等 |
1 |
英語 |
2クラスを、3講座編成で |
2 |
英語 |
(7年度には国語も予定) |
3 |
国語 |
ティームティーチング、15~20人単位での作文指導 |
欠課のかさむ生徒に対しては、それぞれの学校独自の内規により、枠がはめられている。当該生徒にとっては厳しいが、怠学や無気力などの生徒の、登校・学校参加を促すためには、やむを得ない。しかし、そのハードルは、できる限り低くし、「やる気」を引き出せるように、余裕のある制度として、
等の見直しを行い、内規の弾力的適用も図ってきている。
児童相談所は、県内5か所に設置されており、児童福祉司及び心理判定員が、不登校、いじめ、非行、心身に障がいを持つ児童の相談等、児童生徒に関する様々な相談に応じています。
不登校から家庭内暴力に至り、家庭内が大変混乱したため、担任と児童相談所や福祉事務所など関係機関が連携の上、養護施設を利用することにした。施設利用にともなう転校後は、気持ちが安定し、進学を目指して毎日頑張っている。
担任と児童相談所が定期的に連絡を取りながら、児童相談所でソーシャルトレーニングを継続し、登校できるようになった。担任、養護教諭と児童相談所で、対応を話し合うとともに、職員会に提案して学校全体の理解を図りながら、保健室登校から学校復帰ができるよう態勢を整えていった。
いじめや不登校等への対応に当たって、学校と児童相談所とが、今後、より一層、連携を図っていくことが必要です。
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