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更新日:2016年12月1日

指導資料No.71 「いじめ・不登校を考える集い」から学ぶ

目次

  1. はじめに
  2. 参加者の「声」
  3. 「集い」の声を聴くと
  4. おわりに
  5. 事例1
  6. 事例2

平成12年3月1日 長野県教育委員会

 1.はじめに

 平成10年3月、文部省は、児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議の報告「学校の『抱え込み』から開かれた『連携』へ」を発表しました。その中で、「問題行動への対応について学校は、万能ではなく、『抱え込み』意識を捨てるべきこと」を提言しています。
 本県でも、生徒指導推進事業の柱の一つに「家庭地域等との連携」を据え、その一環として平成9年度から「いじめ・不登校を考える集い」を県内6会場で開いてきました。児童生徒や保護者、また一般市民や学校関係者が一堂に会し、いじめや不登校について本音で語り合い、聴き合い、考え合いましょうというのがその趣旨です。3年間で3千人余の方々の参加をみました。
 「集い」では、実際にいじめに会った子どもたち、不登校の経験をもつ子どもたちや保護者から当事者でなければ分からない心の内が語られました。また、いろいろな立場の方々から子どもの理解や学校・教師への要望等についても、数多くの意見が出されました。
 「開かれた連携」を進めていく大前提は、お互いの信頼関係です。そして、信頼関係を築く第一歩は、相手の話を「聴く」ことではないでしょうか。「集い」に寄せられた数々の「声」、それらの中には私ども学校関係者をハッとさせるような貴重な指摘がいくつもありました。まずその「声」を聴くことから始めたいと思います。

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 2.参加者の「声」

(1)知ってください、心の内を

子どもたちから

「僕こんなにがんばっているのに、これ以上がんばれなんていわないで。がんばっても出来ないから苦しいんです。」
「『いじめ』という言葉には敏感なのに、他のからかい言葉に対しては、鈍感な先生たち。いじめられた相手に対する恐怖感は、大人になってもずっと続くでしょう。」

保護者から

「学校のにおいは、子どもにはうれしいような負担になるような揺らぎの間にある。」
「子どもは先生をこれでもかというように試しているように思う。家庭訪問などでも、先生のにこやかな笑顔が子どもの表情を大きく変えることがあります。」

教職員から

「母親や家族が、一緒になって取り組もうとしてくれないときは、とてもつらく戸惑います。」
「学校も変わらなくてはいけないが、学校を否定するだけでは、何も解決していかないのではないかと思います。」
「参加して感じるのは、私たちの人間性が問われているということです。」

(2)こんなふうに感じるんですが、

「生徒が挨拶しても、挨拶をかえさない先生がいるけど、誰にでも、挨拶をしてほしいなあ。」
「給食を同じ時間で同じような量を食べなければいけないというけど、自分の食事の量を自分で決定するのが本当では?」
「話をしていても、先生はいつも次の答えを用意しているように感じる。正解は一つなのかなあ。」
「『こんな事できないのか』など、きつい言葉を投げかける先生がいるけど、言われている子どもは………。」
「命令口調の呼び出し放送は、変ではないだろうか。」
「授業開始の男子○名、女子○名という挨拶は、どのような意味があるのでしょうか。何か軍隊のような雰囲気を感じてしまうのですが。」
「子どもに耳を傾けるのが一番。じっくり相談できる場がほしい。」
「何をしてくれというわけではないんです。ただ聴いてくれるだけでいいんです。」
「いじめの指導は、謝罪で解決したと思いがちですが、いじめられた悲しさをケアしていかなければならない。時間をかけて寄りそってほしい。」
「いじめている側も何かを周りに訴えている。それを敏感に察知してほしい。」
「相談所にいると、保護者が『学校には話してほしくない』という要望が出され、困ることがあります。」
「担任はよくしてくださったが、それが負担になってしまった。これが余計に自分自身を追いつめるようになってしまったようで、切なく思いました。」
「『~は、だめだね。』など、うまくいかないことばかり言われると、自分でも分かっているだけに気分も重くなります。中学校での懇談内容は、成績が話題になりがちです。うまくいかない子どもや親の悩みを感じ取ってほしいと思います。」
「日記などに表現された子どもたちの悩みなどに共感したり、応えたりしてほしいなと思います。」 

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 3.「集い」の声を聴くと…。こんなことができそうです。

(1)柔らかく温かな学校への変革

例1 今週の誕生日の人

 保健室の廊下に毎週張り出されるお誕生日の人の名前。自分の名が書かれているのを確認したり、友達や先生の誕生日を確認し、祝福したりする児童たち。そこに、皆が足を向ける温かな空間がある。

例2 中庭の花壇が見える場所にべンチ

 美しい花が咲き乱れる中庭。風が揺らす花や木々の葉に、心もさわやかに。ちょっと座って一息つくと、表情も柔らかになる。

例3 言葉がけ 一日ひとこと

 「それは、なあに」「どうしたの」「あのとき、~だったね」廊下や玄関で先生方に声をかけられる子どもたち。子どもからの話しかけも自然に増えている。全職員による言葉がけが、明るい学校づくりへつながっている。

※ ほっとできる場所、温かな場所があり、温かな言葉があることで、児童生徒は少しずつ変わっていきます。

(2)信頼関係の深まりとなる取り組み

  • 児童生徒との信頼関係づくりは、相手の気持ちを受け止め、支え、励ましていくことから、はじまります。
  • 保護者との信頼関係づくりは、相手の話を聴き、自分の考えを伝え、考えあうことからはじまります。
  • 地域との信頼関係は、先生方の社会人としての誠意と態度からはじまります。

①児童生徒とともに

例4 学級全員でいじめ解決作戦

 無視せざるを得ない苦しい気持ちなどを担任と共に考え合い、クラス全員が自分のしてしまった行為を振り返った。そしてその行為の重さを受け止め全員でいじめ撲滅を宣言した。
 子ども同士の信頼関係を取り戻し、何でも話し合える明るい学級を作り上げた。

例5 生徒会による取り組み
 生徒会人権宣言生徒によるいじめ対策委員会の結成
 いじめをなくすシンポジウム (事例1 参照)

※ 先生と子どもがいっしょになって、自分たちの身の回りの状況を考え、共に取り組んでゆくことで、問題の解決策も見い出され、信頼関係が育っていきます。

②保護者とともに

例6 学級懇談会での話し合い

 わが子が疎外されていた悲しさ、逆にわが子がいじめていた驚きと悲しみ、再びいじめが起こる心配とおそれを語り、集団づくりへの協力体制を確認した。
 家庭でのわが子への接し方を見直したり、親子スポーツなどの機会を利用して、学級の他の児童とも交流し、子どもたちの学級づくりを支援していった。

例7 『親の会』を毎月開催

(事例2 参照)

例8 担任が積極的にクラス懇談会を開催

 高校の場合、保護者と担任また保護者同士の関係が希薄になりがちであり、そのため意思の疎通が不十分であることからくるトラブルも起こる。
 担任が、クラス懇談会を積極的に設定することで、担任も交えた保護者同士が意見・情報を交換し易い雰囲気をつくり、生徒を支え合う協力体制ができた。

※ 本音を語り合える、保護者同士の良い関係が、学級集団づくりの支援をすることにつながり、児童生徒の豊かな人間性育成につながります。

③地域ととともに

例9 開かれた校長室づくり

 学校を開放したり、地域に積極的に出かけたりして、地域の様子を把握している校長。学習面でも児童と地域の方との交流をすすめている。
 また地域の方も校長室に立ち寄り様々な情報交換がなされ、お互いに協力して地域と結びついた学校づくりをすすめている。

例10 『学校だより』を地域にも配布

 学校での生徒の様子や話題を『学校だより』に載せ、定期的に地域に配布している。これにより、学校に関心を持ってくださる方が増え、地域の話題の一つになっている。

例11 選択体育で地域の方とスポーツ

 選択体育で、地域の方と一緒にスポーツを体験。生徒が指導する場面も多く、教えることの難しさやできたときの喜びを実感する。自分の存在価値を改めて感じ取る生徒も見られる。

※ 地域の方と様々な機会を利用し交流することで、開かれた学校づくりが進み、学校をより知ってもらうことができます。

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 4.おわりに

 「いじめ・不登校を考える集い」に参加した方々は様々な悩みや意見を持っており、それぞれに思いを訴えています。また、支える意見もあり、批判もあります。
 悩みを持ちながら「集い」「語り合う」ことから信頼関係の第一歩がはじまります。そして、相手の気持ちを受け止めることで、真の信頼関係に発展していくのではないでしょうか。
 ややもすると忙しさに埋没してしまいがちな日々の生活の中で、他者の話を聴くことができる気持ちの余裕も必要でしょう。私たちは虚心坦懐に耳を傾け、思いの奥にある真実を見つめるとともに、自分自身を振り返りながら、児童生徒・保護者・地域の方とかかわっていきたいものです。

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 事例1 生徒自らいじめ防止に取り組み、「いじめをなくすシンポジウム」を開催

(1)開催の経過

 県内外でいじめが大きな問題になった頃、生徒会で自分たちの学校でもそのような悲しい事件が起きないようにという声があがった。それを受け止め、「○○中学校生徒会人権宣言」が成立した。
 単なる宣言だけに終わらせず、全校で意識して、機能させるために「いじめ対策委員会」を結成し、いじめの状況を全校で把握し、解決したり防いだりするにはどうしたらよいか、全校生徒がより一層明るく楽しい学校生活を送るにはどうすればよいか、など、考えてほしい内容を提示した。
 さらに、文化祭で「いじめをなくすシンポジウム」を開催し、全校で考え合う機会とした。

(2)「いじめをなくすシンポジウム」での内容

 各クラスが楽しい学校にはいじめは少ないという前提のもとに話し合った内容を発表した。

 パネリスト1 「クラスの理想に近づくためにどうしたらよいか」全員の決意をテープにとった。

  • 悪口を言っている人に注意したい。
  • 困っている人がいたら助けたい。等

 パネリスト2 「クラス全員で作る割り箸金閣寺」を目標に活動してきた。

  • 誰とでも気軽に話せるクラスにする雰囲気づくりのために、全員で挨拶を交わし合ったら、クラスが明るくなった。

 A君 友達とのつながりを強めるために、分からない所を言い合える勉強会をしている。

 B君 グループ化、友達同士気を遣っているという問題点があり、全員が全員に良いところや直した方がよいところを手紙に書いて渡した。自分がどのように思われているかが分かった。

 C君 みんなが気軽に話せて、思っていることを言い合える「大親友計画」を実践している。

(3)生徒の意識の変化

 「○○中学校生徒会人権宣言」を意識し、自分たちの活動に誇りを持てるようになってきた。
 また、話し合いをしたことで、いじめをなくすこと、楽しい学校やクラス集団にしていくことへの意識の高まりが見られ、活動も定着してきた。

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 [事例2]

不登校等に関しての保護者への援助

(1)「不登校等を語る保護者の会」を開催

 不登校生を持つ保護者や、情緒障害学級の保護者を対象に電話で趣旨を説明し、参加希望の方だけ参加していただいた。ありのままの声を精一杯聴きその気持ちを受け止め、学校や教師に対する意見をそのまま受け入れようとした。

  • 第一回の主な発言
    「元気な子どもはいいですね。」
    「学校にも相談できる窓口があるんだと分かったとき、うれしかったです。」
    「まさか自分の子どもがと思っていました。今現実となって、初めて苦しみがわかりました。」
    「話を聴いていただき、気持ちが落ち着きます。子どもを理解し、待ってやろうと思って帰ります。」
    「欠席していても、子どものプライドは高いんです。」
    「先生にも本当の子どもの気持ちを分かってもらいたいと思います。」
  • 第二回からの様子
    「私たち親の意識も変わらなければいけないことがあったのではなかったかと思うようにもなりました。」
    「もう少し父親がかかわっていたら変わったのではなかったかと思うのです。」
    「この子のおかげで、父親が変われました。この子のおかげで、今の家族があります。」
    ※ 登校するという点では、大きな変化は見えていないが、親子関係をみつめなおすなど、精神的に落ち着いた話が出されるようになってきている。

(2)「集い、語り、聴き合う」場をつくろう

 毎日、子どもと直面する母親の悩みは予想以上に深く、時には担任や学校批判へもつながってくる。不登校に関して、生徒への援助はもちろんであるが、保護者への援助も必要である。
 母親への援助を通して、父親や家族、さらには子ども本人にも働きかけが通じていく。保護者が自由に思いを語り、自由に情報交換できる会が、信頼関係を創り出していく。

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お問い合わせ

所属課室:長野県教育委員会事務局心の支援課

長野県長野市大字南長野字幅下692-2

電話番号:026-235-7450

ファックス番号:026-235-7484

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