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更新日:2014年6月24日

水産試験場

仔魚の飼育

シナノユキマス物語コレゴヌス養殖技術開発の記録

仔魚の飼育

塩瀬 淳也

 シナノユキマスはふ化すると、すぐに泳ぎだし数日内に摂餌を始めるが、ふ化仔魚が小さいため初めからマス類の配合飼料を使うわけにいかない。そこで、施肥をしてワムシ等をわかせた300平方メートルのD池等に入れて飼育したのであるが、池ではDO(Dissolved Oxygen:溶存酸素量)過剰による気泡病や水変わり等で半月から1か月前後に急激に減耗することがあった。この様な疎放的な管理は不明確なことが多すぎるということで、昭和53・54年(1978・79年)の春に50平方メートル池で集約的な飼育を試みた。
 池の注排水をコンパネとビニールシートで止め、井戸水を入れて自然冷却した清水での飼育を試みた。ふ化仔魚を入れ、溜池から採取してきたワムシ・ミジンコを与え、アユ等の初期用人工飼料を撒いてやった。水がきれいなため底の方まで魚がよく観察できるのが最大の長所であり、数日後、頼りなげながらも懸命に尾を振って池壁際を泳ぎ、補給水口に群れ、餌に飛び付く様子を見て、当初はこの方法に希望を持ったものである。
 しかし、だいぶ大きくなったと思った約1か月後、施肥池と同じく気泡病が起こり、また、水質悪化を起こしてへい死した。翌年は、気泡病防止のため、池の約半分を寒冷紗で覆う等対策を行ったが、今度は約1か月半後に腹腔内真菌症が発生して大量へい死となった。弱った状態の魚が池壁・池尻に見られるようになり、一日に何百、そして何千と死んでいった。
 この頃には池底にも糞や食べ残しの餌の沈澱が見えるようになり、水生菌でマット状になってきていた。ホルマリンなどでの消毒、頻繁な水替えを行い、池に入り、またはホースの先にビニールパイプを付けたサイフォン式で池壁から死魚を拾い、底の掃除を行った。この様な管理・対応に相当の労力を費やしたが、結局は効果的にへい死を止めることはできず、この小さな魚を冷水で集約的に飼育する困難さを認識させられた。

写真:佐久支場D池
佐久支場D池(300平方メートルの池が4面あります。)


 

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