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更新日:2014年6月24日

水産試験場

ふ化仔魚の初期飼料

シナノユキマス物語コレゴヌス養殖技術開発の記録

ふ化仔魚の初期飼料

羽毛田 則生

 シナノユキマス卵は、アユやワカサギ卵よりもやや大きい程度であることから、当然ふ化仔も小さく、初期餌料は動物プランクトンに依存せざるを得ない。しかし、ふ化時期は2~3月であり、放養池は佐久の厳寒気候もあり結氷しているのが常である。氷下には、ケンミジンコの類が多少発生しているが、300平方メートルの池へ50~60万尾のふ化仔を放養するのであるからとても追い付くわけがない。そこで、動物プランクトンを佐久地方よりも比較的温暖で量的にも発生している塩田地区の溜池から採集して給餌する方法と、動物プランクトンに代わる飼餌料の開発を検討した。具体的には、冷凍ワムシ・ミジンコ、アルテミア、そしてアユ等の人工配合飼料である。
 まず、冷凍ワムシ等であるが、これは諏訪支場でアユの種苗生産をしていることから、舟島主任研究員にお願いして大量にストックしておいていただき、冷凍のまま飼育池へ投餌した。しかし、冷凍ワムシは生残率は高いが、成長が悪いのが難点であった。
 アルテミアについては、有望な餌料となるであろうと期待していたが、水槽実験では、給餌2週間くらいまでは生残・成長とも活プランクトン給餌区と全く遜色のない成績であったが、その後大量へい死が起こり、これは何回かの試験でも同じ結果であった。当時、ε3高度不飽和脂肪酸の含有不足等が指摘されていたことから、カリフォルニア産、中国渤海湾産と産地を取り替えてみたり、鶏卵の卵黄を媒介して魚油を添加したりと可能とみられる方法を試みた。しかし、いずれも結果はおもわしくなく、アルテミアはあくまで補助的な飼餌料でしかないというのが結論であった。
 残るは、人工配合飼料である。最初に、市販されていたアユ用初期飼料を検討した。毎年、5社程度の飼料を用いて水槽試験を行った。結論から言うと、いずれも生残率は低かったが、何とか使えそうであった。なお、水槽試験で良い成績をおさめた飼料であっても、水面に長時間浮上している飼料は、寒風が吹きすさぶ野外飼育池では吹き溜まりで波にもまれて沈降し、飼料の栄養面からの検討以前に問題があることから、実際に使用するに当たっては除外するか水に溶かしてジョウロで給餌した。
 市販飼料の検討と並行して、ダブロスキー博士、東京水産大学竹内教授(当時は助教授)にもシナノユキマス独自の人工配合飼料の開発をお願いした。なお、この試験の中でシナノユキマスは、ふ化してから約2週間絶食状態にあると、その後どんなに摂餌してもへい死することもわかり、給餌システムを考える上で大変参考になった。
 このように、いずれも天然プランクトンより劣ることは明らかになったが、かといって天然プランクトンの量的な確保には限界があることから、実際の給餌ではこれらの飼餌料を組み合わせた給餌システムを考えて対応した。
 今日では、人工配合飼料の品質が飛躍的に向上したせいか、当時問題となっていたエラ蓋欠損等の奇形魚も見られなくなるとともに、給餌体系も人工配合飼料中心になり、給餌管理も比較的容易になったが、当時は採卵とともに初期飼料の開発が大きなテーマであった。

写真:シオミズツボワムシ(0.1~0.2mm)
シオミズツボワムシ(0.1~0.2mm)


 

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