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更新日:2023年1月30日
水産試験場
コレゴヌス養殖技術開発の記録
稚魚取揚げにサイフォン利用
降幡 充
シナノユキマスの種苗は、最初、動物プランクトンを発生させた試験場内の止水池にふ化した仔魚を放す粗放的な養殖方法で作られる。試験場の止水池は底が泥であるため、池中にアオミドロやカナダモが発生してくる。飼育にはそれほど問題ではないが、稚魚を取り揚げるとき問題になってくる。
従前の取揚げ方法は、まず、目合いの細かい大きな網を給餌場の底に敷く。数日後、給餌しながら網上に多くの魚が集まった時、一斉に網の四隅を持ち上げて魚を捕獲した。この方法では、(1)アオミドロやカナダモがあるため、網を池の底に敷くことができない。(2)魚が網の下に入って死亡する。(3)網の中に入ったたくさんのアオミドロの中に魚が入り込み、魚が回収できない。(4)取揚げ終了までに敷き網操作を数回繰り返さなければならないなどの問題点があった。
そこで、最初は疑問の声もあったが、直径5cmほどのサクションホースを用いて、水位差を利用したサイフォン効果によって水とともに魚を移送する方法を試みてみた。この手法は、諏訪支場でアユの稚魚の選別を行う時に魚を取り揚げる方法として用いられている。アユは壁際や底に付いてしまうため、マス類の曳き網では上手に取れないからである。アユの体サイズやホースの口径にもよるが、飼育量のほとんどが捕獲され、また、スレ等の魚体に対する影響も少なく、非常に良い方法である。
シナノユキマスではどうだろう。アユの方法と同じ様に、稚魚が給餌機から送出された餌に集まる部分にホースの口を深さ1~2cm、水面に対して直角に設置した。他方のホースの口は収容する小池に置き、水中ポンプでホースの中に水を満たした後、収容池の水位を下げ、通水した。給餌機を運転すると餌に集まったシナノユキマスは、ホースの口から吸い込まれ、次々と収容池に面白いように送り込まれた。
この方法によって、網を敷く作業がなくなり、5~6人で行った取揚げが2人ほどでできるようになった。また、魚の死亡やアオミドロの混入の問題も解決した。しかも、取揚げ終了までには2~3日が必要であるものの、魚の大半は1日目で捕獲されてしまう。
こうして、以前に比べて取揚げ作業は、魚にとっても職員にとっても楽なものになったのではないだろうか。
稚魚は0.1gの大きさ(4月下旬)から池壁際を一定方向に泳ぎ始める。5月中旬の0.3g稚魚が列をなして泳ぐ姿は見事である。その後、この性質を利用して、稚魚の泳いで来る方向にホースの口を45度の角度にセットすることとした。すると、稚魚は次々に吸い込まれていく。これで半日で大半を、1日かければ99%の捕獲が可能となった。
池壁に沿って45度に仕掛けたサクションホースに 吸い込まれる稚魚 |
移送先の池に流れ出す稚魚 |
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