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更新日:2014年6月24日

水産試験場

ユキマスにおけるバイテクの展開

シナノユキマス物語コレゴヌス養殖技術開発の記録

新しい技術開発

ユキマスにおけるバイテクの展開

沢本 良宏

 それは、前任の羽毛田研究員が残していった精子の紫外線不活性化試験のデータから始まった。採卵期に水カビが寄生し、ばたばたと死んで行くユキマスの親魚、ひどい日には漬物タル3杯にもなり、kg当たり1,500円として・・・思わず計算してため息をついてしまう。大きくしないと売れないユキマス、これを解決するには成熟しない三倍体ユキマスを造るしかない。
 平成元年(1989年)から受精卵を温度処理して三倍体の作出を試みたが、まず小さなロットの受精卵を管理する方法がなかった。ビン型ふ化器の開発により事業規模での種苗生産が可能になったが、300粒くらいの受精卵を収容するには、一体どうやったらよいのか。最初はアクリルチューブでビン型ふ化器のミニチュアを試作してみたが、通水がうまくいかず全滅させてしまった。次に発想を転換して小さなカゴの中に少量の試験卵を収容し、水面に浮かせることにした。これならば60cmガラス水槽に20区の試験区がセットできるので大量の試験区もこなせるし、死卵も除去できるし、ふ化後の飼育も可能だ。
 これは、ふ化までは大成功であった(試験卵を500粒も使用したために作業量の面からは大変たったが)。
 ふ化までの試験データは残されていったが、ふ化後の飼育が困難で、毎年、供試魚がほとんど残らない状態が続き、ふ化後の飼育方法が大きな壁として立ちはだかった。死亡は寄生虫によるものであることはわかっている。水槽の底に溜まった残餌や死魚を掃除し、定期的な塩浴や薬浴を行っても、一夜にして水槽の底が死魚で真っ白になってしまうのである。角型の水槽では1万尾のふ化仔魚から、せいぜい数十尾の稚魚しか得られない。それでも、性転換雄の作出方法や圧力処理での三倍体作出方法について、技術的課題はかなり解決されてきたが、このままでは三倍体の特性評価ができず、水産庁ヘユキマス三倍体利用の申請ができない。
 平成7年(1995年)になって、山本研究員のアイデアによる「カジカの円形水槽による飼育技術の開発」は、ユキマスのバイテク試験にとってまさに革命的な飼育方法として利用されることになった。
 平成7年度産は試験的に使用しただけであったが、たくさんの稚魚を残すことができた。平成8年(1996年)度からすべてのバイテクふ化仔魚をこの円形水槽で飼育することにしたが、例年以上の生残率であった。
 ユキマスのバイテク試験は、平成3年(1991年)度から平成7年度まで国の補助事業(地域バイオテクノロジー研究開発促進事業)として卵処理による全雌三倍体の作出を目標に行ってきた。平成8年度からは、四倍体利用による全雌三倍体作出技術の開発を目標に、同じく国の補助事業(地域先端技術共同研究開発促進事業)として実施されている。担当者も沢本から三城主任研究員へと変わったが、ユキマスのバイテク魚を世に送り出すところまではもう少し時間が必要となろう。

写真:プレス機で受精卵に圧力をかけて三倍体を作出
プレス機で受精卵に圧力をかけて三倍体を作出


 

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