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更新日:2023年1月30日
水産試験場
コレゴヌス養殖技術開発の記録
標高の高い湖沼への放養
各地湖沼での試み
山本 聡
シナノユキマスは高冷地湖沼の増殖魚種としても期待されて移入された。外来魚を移入する場合、対象魚の増殖がうまくいくかよりも、在来種に与える影響が容認できるかが問題となる。放流試験の担当になった時、その食性から在来魚に対する食害は問題ないだろうと思った。産卵生態も親が卵を守るといったものではなく、日本における定着例も極めて少ないので異常繁殖することもないだろうと考えた。最も心配したのは、同じようなニッチェにあるワカサギやヒメマスとの餌の競合だった。ワカサギが増えすぎて、ヒメマスに影響がでたという十和田湖の例が頭にあった。
昭和59~60年(1984~85年)に行われた女神湖でのユキマス放流試験は、ワカサギヘの影響を知ることがメインテーマだった。肥満度や消化管内容物の調査結果から、ユキマスの存在はワ力サギの餌料環境に悪影響を与えなかったと考察した(第37回県内協で発表)。どちらかというと、ワカサギの方が優勢な印象を受けたが、はっきりとは示せなかった。ヒメマスとユキマスの関係については、調査水域がなく試験は行わなかったが、鰓杷数、身体の大きさ、遊泳層から考えて、同居すればどちらかが悪影響を受ける可能性は高いと感じた。これらのことから、ワカサギのいる湖へのユキマスの放流はあまり奨励せず、ヒメマスのいる湖には放流しないことになった。
外来魚を移入する際に、どのような審査を事前にすればよいかは今でも基準がない。最近の生物の多様性を重視する考え方からすれば、新魚種の移殖は多くの危険が伴い、大丈夫とは誰にも言えないという見解もある。
幸いにもユキマスが我が国の在来種に悪影響を与えた例は今のところないようである。
結氷した女神湖の氷に穴をあけて、稚魚を放流 |
刺網で放流魚を採捕して調査(美笹湖(佐久市)) |
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